10日目 小樽・札幌
11日目 登別・支笏湖
12日目 洞爺湖・大沼・函館
13日目 あけぼの
14日目 帰宅




10日目   9月10日

3時、突然腹が痛くなって、目が覚める。とんでもないことに駅のトイレが閉 まっているので、迷った末、近くにあったタクシーの事務所に行く。「すいませ ん。トイレ貸してもらえます?」おじさんびくっり。そりゃそうだ。深夜3時に 見知らぬひげ面の男が、突然トイレ貸してくれって言って来たら、ぼくだってび っくりする。でも、ありがたく貸してくれる。 寝袋に戻り、腹薬を飲んで再び 熟睡。
8時20分 起きる。気温がちょうど良くて気分爽快。とても心地よく眠れた。 寝起きからハイな気分になってるということは、ぼくには滅多にあることではな いから、よほど気持ち良かったのだろう。

9時 ニッカウヰスキー原酒工場に見学に行く。ここは東京ドームの3倍の敷地がある。制服を着た女性が敷地 内の乾燥、蒸留、熟成などの製造過程をガイドしてくれる。蒸留機が印象に残る 。ウイスキーの原料は麦とトウモロコシ。日本果実工場の「に」と「か」をとっ てニッカと名付けたそうだ。試飲コーナーでウイスキー、アップルワイン、シロ ップなどを飲み、ゆでたトウモロコシを買って食べる。今日は本当にいい天気で 、やっと夏到来といった感じだ。

11時頃小樽駅に着く。小樽駅改札口の駅員は凄まじく無愛想だった。
小樽運河へ。淡緑色の運河と古い倉庫群。運河沿いにはライトアップのライトと遊歩道 、遊歩道には花壇、ガス灯、オルゴールの音。古い遺跡を見事に観光地化してい る。
小樽の街を歩く。古い建物がポツポツとあり、その周辺ではガスステーション も建物を同じような色に塗り、景観の美化に一役買っている。様々な昔の銀行が あり、かつてここ小樽が金融の中心地だったことを偲ばせる。

内装が豪勢なJR北海道バスで高速道路を通り、小樽から札幌へ。
13時20分 札幌駅到着。コインロッカーにリュックを入れる。ロッカーはグローリー社のもの が良く、ぼくらの大きなリュックを二つ押し込むことができる。
北大でクラーク博士の胸像、ポプラ並木。北海道道庁で赤レンガ造りの旧本庁 庁舎。時計台は工事中で見れなかったけれど、また北海道に来る口実ができた。
大通り公園で、ベンチに座って人の流れを眺める。NHKのテレビ塔、噴水、 群れるハト、観光客、修学旅行の学生。やがて降り出す雨。いろんな人が集まっ て、いろんなことがあったであろう公園。今日もいろんな人間模様がある。その 中の一人にぼくもいる。 記念撮影
ススキノを歩く。新宿の歌舞伎町をゆったりした感じ。学校の友達にそっくり な呼び込みの兄ちゃんに声をかけられる。しゃべり方までそっくり。「あれ、今 日行かないんですか?」「いやー、結構です。」

しばらく徘徊した後、本場札幌ラーメンを食べに、ラーメン横丁へ。狭い通りに何軒もある中から一軒、来々軒を選ぶ。いろんな有名人が来て おり、近いところでは巨人のガルベス、マリオが来てる。頼むのはみそラーメン 。協定があるらしく、どこのラーメン屋も同じ700円。ぼくたちが店に入ると 、後から他の客も入ってきて、狭い店は一気に満員に。人がいるところに客が入 るという法則があるようだ。波があって、客が入っていない店でも、入り始める と一気に埋まる。逆に満員の店でも、客が退けてしまうとしばらく入らなくなる 。玉が出るのを辛抱して待つパチンコのようなものかもしれない。
さて、味の方はというと、正直分からない。美味しいんだけど、ぼくの中では 美味しいって言うのは当たり前になっていて、それよりさらに上の何か違ったも のを求めてしまっている。ラーメンのレベルは高い所まで行ってしまっており、 塩、しょうゆ、みそで勝負するんだったらこれ以上のものは、もう作れないのか もしれない。環七の「土佐っ子」のように明らかに違う味だと、斬新なおいしさ があるのだけど。   旅にもこれに通じるものがある。

時計台の19時の時報が聞こえる。札幌の街を散策し、駅へ。札幌も気持ち良く 感じることができた。
22時 急行はまなすで出発。23時56分 眠くなった頃、今日の宿である東室蘭 駅到着。ここまで来るとお金を払って宿に泊まろうという気は全くなくなってい る。シャッターが閉められてしまい、待合室では寝られないので 通路で寝る 。人が通るが今日もすぐに眠りに入る。




11日目   9月11日

人がぼくの目の前を歩いていく。起き上がって辺りを見渡してみると朝の通勤 時間のようだ。開いた待合室に移動して、じゅうたんが敷いてある場所で、瞬間 眠りに落ちる。8時 起きる。待合室には人がたくさんいて起きたぼくを見てい る。片が言うには、どうやらぼくは周りをかまわずぐっすり眠るようだ。確かに 夢も覚えてないし、ひたすら寝ている。しかも、うなり声をあげるらしい。これ にはリトルショック。

東室蘭駅でマツダレンタカーを見つけ、紺色のキャロルを借りる。3速オート マ、2ドアハッチバック。メーター類やミラー、ライトなどが丸く、全体的にも 丸っこく柔らかい感じの車だ。この車を「 ファニー 」と名付け、持ってきた布袋のテープをかけて出発。北海道のコンビニはセブ ンイレブン、セイコマートの割合が多い。街には必ずコンビニがあり、食料調達 には困らない。24時間のガソリンスタンドは見かけなかった。

登別温泉 11時30分到着。地獄谷では煙が上がり、間欠泉がボコボコいってる。大湯沼 では沼から湯煙がかなりの勢いで上がっている。この沼の温度は表面で80℃、 深いところでは130℃もあるそうだ。沼が蒸発してしまわないのか不思議だっ た。

リフトで山の上まで上り、クマ牧場へ。入り口には子グマの檻が。子グマは脈絡がなく、突拍子で、筋が通ってい ない動きをする。とてもかわいいけど、爪とか歯はやはりクマのものだ。
第2の檻にはメスのクマが集められている。クマの餌を買い、上から投げてク マにあげることができる。投げると口でナイスキャッチする。人が餌を上に掲げ ると、クマが立ち上がったり、手を叩いたり、拝む仕草をしたりして、いっせい に餌をもらおうとする。これがとてもかわいい。中には、水をバシャバシャやっ て人の目をひいておいて、その後拝む仕草をするという高等技術を持ったクマも いる。人間が餌をやりたくなるつぼを心得ている。テリトリーがあって、他のク マのところにいった餌はとらない。とろうものならもの凄い争いになる。もとも とクマは単独行動の動物。それが狭い場所に数多くいるから暮らしにくいと思う 。
←餌を待つクマ
第3の檻にはオスのクマが集められている。オスの方は迫力がある。飼育係に 糞を水で流してもらった直後にまた糞をしている。クマは見ていて飽きない。
ヒグマ博物館ではクマの剥製がたくさんある。屋上からは摩周湖についで日本 二番目の透明度を誇るクッタラ湖が見える。アイヌ村で踊りを見る。帰るとき店 の人に、アイヌの服を着て踊らないかと誘われる。
クマ牧場を十分楽しみ、下山。

登別温泉へ。ホテルの中にあるのでとてもきれいで、いろいろな種類の湯を楽 しめる。

支笏湖へ向かって出発。キャロルはスタートダッシュが効かない。36号線→苫 小牧市街→樽前国道→支笏湖。支笏湖には波がある。樽の形をした樽前山が見える。 支笏湖前でファニーとともに
もう夕暮れ。今日が一番時間が経つのが早かった。ヒグマの巣窟である風不死 岳を見ながら走る。この山にかかる雲がヒグマの姿に似ており、本当にクマがい そうだ。苔の洞門前に17時15分到着。苔の洞門に行くには車道から1.2キロ森 に入らなければならない。ここはヒグマの巣窟、風不死岳の麓。入るところには ヒグマ対策の注意が書かれている。夕方に森に入らない、遭わないように音を出 せ、遭ったら目をそらさない、いきなり逃げない、興奮させない、逃げるときは 荷物を落としながら...。あまりにやばそうなので行くのはやめておく。

どんどん暗くなっていく寂しい山道を走り、見つけた蟠渓温泉に入る。観光客 はいなくて地元に密着しており、休憩所に畳とテーブルがおいてあるのがうれし い。すっかりくつろいで旅行記をつける。19時50分出発。夜の洞爺湖到着。街の食堂で焼き肉重と「北のきりん」ビールを飲む。今日は、洞爺湖が 目前にある公共駐車場に車を停め、車内で寝る。ラジオからはTBSラジオ「宮 川まさるの誰なんだおまえは」。




12日目   9月12日

車内は狭く、シートの寝心地は良くないけど、しっかり寝ている。5時20分起 床。目の前には洞爺湖が静かに水をたたえていた。眠気覚ましに 朝の踊り 。ファニー(車)に乗り昭和新山へ。元は小麦畑だったのが、突然地面が盛 り上がって山になったというマニアックな山である。反対側には有珠山。5時50 分 すごくいい太陽が昇る。オロフレ峠を通り、カルルス温泉 6時50分。本当 は10時からだけど、7時30分までなら入っても良いという許可を得て、入れても らう。入っているのはぼくたちだけ。浴場の床に寝転がっていると気持ちいい。 これが北海道で入った最後の温泉だった。入った温泉は全部で9つ。どれも味が あり、心体を生き生きとさせてくれた。

レンタカーを返すまでまだ時間があるので地球岬に行く。室蘭市は産業都市で 、工場が建ち並び煙突がたくさん見える。時間通りにレンタカー返却。総走行距 離292q。北海道のレンタカーには制限距離というのがあり、それを超えると 1q当たりに金を払わなければならない。ぼくたちは規定220qを72qオー バーしており、1q当たり20円払う。安いものだ。

列車で大沼公園駅 13時03分発。列車の中で寝てしまい、片に起こされなきゃ 気づかなかった。うまいもので、どちらかが熟睡しているときは、どっちかが起 きている。大沼を一周するため、二人乗り用自転車を借りる。この自転車は前の人だけが方向 転換をでき、後ろの人は前に従うしかない。こぐのは前後一緒で、後ろががんば るとターボがかかったようになる。坂道を二人でがんばってこぐ。坂を上りきっ た後の爽やかな風。
駒ヶ岳と静かな大沼 。きらきら光る大沼、湖の心地良さを感じながら走る。ここでキャンプした ら気持ち良いだろうなあ。
12qを一周し、北海道で是非食べたかった一品、ウニ丼を食べる。下の米が 見えないほどウニで覆われている。ほんのり甘み、そして苦み。口の中で溶けて いく食感。たまらない。

北海道最終目的地、函館 16時45分。まずバスで五稜郭公園へ行く。あえて上から見ないことにして、 自分たちで地面に五稜郭を創ることにする。靴底で地面を削り輪郭を作り、その 上にビニール袋いっぱいに集めた松ぼっくりを並べる。落ちていた鳥の羽を真ん 中に3本刺して完成。 ぼくたちだけの五稜郭 だ。創っている間、妙に楽しかった。名所というものは、自分たちの動きよ うでどうとでもなる。つまらないと思ったらそれまでだ。通りすがりのツアー客 の人がほめてくれる。人にほめられるために創った訳じゃないけど、ほめられる と素直に嬉しい。

ガスをまき散らさない市電に乗り、函館市内を走る。ライトアップされている ハリストス正教会を見て、函館山を登るバスに乗り、頂上に向かう。途中、走っ ているバスから2合目と7合目からの夜景を見ることができる。が、あえて見な いで頂上まで我慢することにする。その方が感動が大きいと思ったからだ。他の 乗客があげる「すごーい。」「きれーい。」の声に期待は高まる。

標高334メートルの函館山山頂到着。さあ期待の夜景は、というと霧で見えない。時折、霧が薄くなって 夜景が姿をぼんやり現すが、クリアーなのは拝めない。考えた末、山を歩いて下 ることにする。距離にして4.8q、15sのリュックを背負ってだ。下山開始  20時20分。道は真っ暗にも関わらず観光のバス、タクシーがひっきりなしに通 るので身の安全のため、懐中電灯を振りながら歩く。山を歩いて下りる人なんか 誰もいない。
7合目 ここまでは霧も来ておらずクリアーな夜景を見ることができた。夜景 の一部分に赤いライトがたくさん集まっているところがあり、これは信号機だ。 その信号機が一斉に青に変わるとライトは見えなくなる。赤いライトがいかに良 く見えるかが分かる。
再び山を下り、2合目へ。しばらく座って夜景を見る。イルミネーションが多 い、海がある、空気がきれい、夜景を見られる山がある、こういった条件が世界 三大夜景(香港、ナポリ、函館)と言われる夜景を生むのだろう。でも人それぞ れ感じ方は違う。
2合目を後にし、21時50分 山を下り終える。山の終盤から一気に疲れてくる 。リュックが肩に食い込み、足が重い。駅までの残り1.2qも市電に乗らず、 歩いてやろうという気になってくる。信号で歩きが止まるたびに道に寝転がる。 今ならどこでも寝られる。へろへろになって駅へ22時20分到着。リュックを背負 って函館山の頂上から駅まで6q歩ききったぞ。妙なものを達成してしまった。 もちろんこの旅で最も疲れた出来事。

今日の寝床は函館駅内のうどん屋の前。床はかなり汚く、少し臭うけど構わな い。ここに身をゆだねよう。




13日目   9月13日

6時30分 うどん屋のおばちゃんに起こされる。店を開けるようだ。
7時 朝市へ。片がおばちゃんとカニの値段交渉。40分ねばって毛ガニ2匹を競り落と す。そのおばちゃんにイクラ丼のうまい店に連れて行ってもらう。最後まで 我慢してきたイクラ丼 。新鮮なイクラはとても美味しい。そしてごはんと良く合う。ゆっくり味わ いたかったけれど、一気に食べてしまうほどの美味しさ。一気に食べるとさらに 美味しく感じるのだ。
朝市を歩いてみる。六花亭チョコレート、白い恋人、チーズ、乾燥ほたてなど 、おみやげを買い始める。買い食いした夕張メロンがジューシー。店先では様々 な海産物が売られている。函館山は昼見るとかなり高い。あそこから歩いて降り てきた自分を褒めたい。土産屋のおばちゃんの話によると、函館山の中には抜け 道が通っており、それを通れば15分で山を下れるそうだ。昨日のぼくたちは1 時間30分かかったけど、それはそれで良いと思う。
赤レンガ倉庫群へ。電線を地下にひいて景観を美しくしている。
朝市街に戻り、回転寿司屋へ。寿司とイクラ・カニ・ホタテの三色丼を食べる 。

13時55分海峡線で函館駅から出発し、青森に向かう。乾燥ホタテをつまみに、 サッポロクラシックビールを飲み、北海道に別れを告げる。14時50分 青函トン ネル突入。トンネルを抜け本州へ。16時30分 1年ぶりの青森駅到着。降りるとき、外国の老婦人に「良く働きましたね。見せてもらいたか ったわ。」と言われる。片によると、この老婦人は、ぼくが列車内で旅行記を書 き続けていたのをずっと見ていたそうだ。この旅で2本の水性ボールペンを使い 切り、たくさん文を書いた。今回の旅からクレヨンを使って絵を描くという技が 加わり、さらに素敵な旅行記を創り上げることができたことを嬉しく思う。

青森駅を出て、1年前にも行ったラーメン屋に行く。去年と同じ女性が今年も いる。みそラーメンは、量も辛さも去年と同じだ。店内の貼り紙や、置いてある マンガも去年と同じ。店の女性が店内に出てきて、座ってテレビを見出すのも去 年と同じだ。いろんなことが1年前と同じで、あの頃を思い起こさせてくれる。

18時01分 あけぼの9号車7番B個室で青森駅出発。北斗星と比べて部屋はとても狭いけれど、窓が 広いのが良い。19時30分 ぼくの部屋で片と旅の感想を語る。ぼくが風景よりも 、人や物や出来事に感動していることが分かる。片が部屋に戻った後、一人で旅 を回想し、眠りにつく。




14日目   9月14日

5時50分 起床。外では雨が降っている。
6時34分 大宮駅到着。こっちの方が函館より寒く感じる。2週間がんばって くれたリュック(ベプシー)を胴上げ。片と別れる。この旅の成功も、気の合っ たクレイジーな相棒、片のおかげだ。
7時 帰宅。無事帰ってきました。
使ったお金(全て込み) 115,950円。

思えば、この夏はほとんど家にいなかった。学校のテスト終了後、準備をして すぐに海外旅行に旅立ち、タイから帰ってきた10日後に北海道へ。疲れるのがむ しろ楽しかった。
2日後からゼミ合宿だ。しかもぼくは合宿委員。切り替えていかなきゃ。長ら く伸ばしたヒゲとも次の旅までお別れ。




     
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