15年ほど前はじめて原子の姿が撮影され、「全ての物質は原子や分子からできている」ということを今では誰も疑うことはありません。しかし、それらがどんな形で結びついているかは分かりにくいものです。しかし、手元に結晶格子の模型があればイメージアップにつながることは間違いありません。さっそく製作にとりかかりますが、材料は市販の発泡スチロール球を使用します。入手可能な大きさは5mm間隔のため実際の原子の大きさの比とは一致していません。たとえば最初に作る体心立方格子のナトリウム(直径3.72Å)も、次の面心立方格子のアルミニウム(直径2.86Å)もともに直径30mmの発泡スチロール球を使用します。
金属中の原子は近接原子と電子を共有して共有結合を作るものの、結合に用いる軌道がその軌道を埋める電子数より多いため共有結合は用いることができず、原子間の位置の間を共鳴します。金属結晶の場合この共鳴が全結晶構造にわたってひろがり、それによって大きな安定が得られています。
陽イオンと陰イオンという反対電荷のイオン間に生じるクーロン引力によってイオン結合は形成されています。たとえば食塩の結晶を形作っているナトリウムイオンNa+と塩化物イオンCl-の場合は、それぞれが正八面体に配列した6個の反対電荷のイオンににとりかこまれ(配位は6:6)、これによって強く引っ張られて安定な位置を保っています。一方、塩化セシウムのCs+とCl-の場合は、それぞれが8個の反対電荷のイオンにとりかこまれ(配位は8:8)ており、こうした配位の違いは陽イオンと陰イオンの半径の比に関係しています。
イオン結合による構造では、結晶学的配位数は半径比(rc/ra)で決まり、結合には方向性がないのに対し、共有結合による構造では、結合に方向性があります。また周期表の第N族の元素は1原子あたり(8−N)個の共有結合をつくることができ、その配位数は小さく、ふつう4かそれ以下になります。しかし、水分子(H−H)の場合のように、H+−H−
と H−−H+ も結合に関与していることが知られており、完全な共有結合をもつ結晶はほとんどないと言われています。そのためダイヤモンドも「その結合は等価であるものの、いくらかイオン性をおびた共有結合」と考えられています。