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気 質

平成になっても、いわき人≠ヘ、大正から、かわっていないかも・・・

福島県石城郡誌・風俗習慣より

 風俗の由来するもの種々の事情に基くものなれども、その土地の状態の影響を蒙ること大なるものなり。
 故に高原に生まるるものは常に高処にありて他物を見下ろす傾あるためにや尊大自重の風あり。
 又渺茫たる海洋の海辺に住居するものは冒険的の思想に富むもの多く、熱閙喧噪の間に奔走するものは機敏怜悧の資となり、村落或は深山幽谷に人となり、静閑寂寥の地に屏息するものは質朴淳良の風があるが如し、之に反して父祖の遺伝、社会の形勢、口碑、歴史等の感化により、直接間接に其の影響を受くること亦大なるものなり、而して人類が其の天性に則り互に相結びて一団をなし、住居を同じくするか若くは一家一村一国皆各々固有の気風あり、就中地形によりて成立するの習慣は千歳変ずべからざるものあるも、其の他は時勢に従て変遷するものなれば、素より一言以て掩ふべからず、今や本郡各部の風俗は一定不変ならざるも、領主岩城氏以後久しく幕領に帰し、その後屡々領主を替へ、且つ幕領は貢租雑役等藩領に比すれば頗る簡易にして、諸般の制裁も亦寛大なりしかば自ら放恣安逸に流るるは自然の勢いにして、其の後領主を替ふる毎に風を替へ俗を移し、民其の適従する所を知らざるの情態なりしならん、其の嘗て平、湯長谷、泉、笠間、棚倉等の各藩制の治下にあるや、城下士の外在郷士と称し各村に在住して禄を受け、農に従事せるものあり、故に士族の数甚だ多く、士家一般に目にして天領風となし各自不羈独立の性情を具備し、互に門地を誇称して躯ら修めざるものの如し、今や同一行政区域の下に治めらるるが故に稍々相接するの感あれども、未だ全く固有の風俗習慣を脱せざるものの如し、之れ地方人士の反省に値すべき所ならんか本郡の地たるや、気候温暖にして植物亦豊に、生活を営む上に於て自ら遊惰に陥りしものか、忍耐努力に乏しく、小安之れ事とし、奮闘邁進の元気に缺如たりとの詐あるを聞く、地方人士たるもの多少自然の刺激少なき感ありとも前面に洋々たる大海を控え、後背に仏具、湯嶽、赤井、一帯の高山大沢ありて、浩然の気を涵養するに於て、敢て缺如あるにあらず維新前後小藩割據より区々相争ふ人士の輩出したるにより世の批難を招ぎたることありと雖も、今や過去時代に属して士気勃発事業の劃策時代となり、地方人士の結合を要する益々切なるものあるなり。 
 

福島県石城郡誌   大正十一 石城郡役所著

(旧漢字をわかる限り常用漢字にして)   2003年11月11日  転記     浜 耕

 


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浜耕(はまこう):自称、分楽者。  

関心、疑問、探求。砂浜は、掘っても、穿っても、何も実らない。にもかかわらず、分けては楽しんで、分かった事で楽しみ、分からなかった事が分かるまでも楽しみ。