[ザガレツキー][レ ペチロフ][ソフィヤ][チャーツキー][喜劇「知恵の悲しみ」の意義]

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ザガレツキー

 プーシキンは、ザガレツキーの人物の創造者としてグリ ボエードフの芸術的技量を高く評価した。明確に、彼は、ザガレツキーの人物像を、彼についてのゴリチャやフリョストヴァの批評の中に、また、ザガレツキー 自身の言葉の中に描き出している。ザガレツキーをチャーツキーに紹介しながら、ゴリチャは言う。

  彼は上流社会の人物で
  札付きのペテン師、詐欺師です。
  アントン・アントニッチ・ザガレツキー
  彼には用心しなさい。巧みに心変わりし
  カルタ賭博してはいけない。裏切られる。
    (Человек он светский,
     Отъявленный мошенник, плут:
     Антон Антоныч Загорецкий,
     При нём остерегись, переносить горазд,
     И в карты не садись: продаст!)

 このザガレツキーの性格描写をフリョストヴァも確認す る。

  彼は嘘つき、カルタばくちに夢中の人、盗人。
    (Лгунишка он, картёжник, вор.)

 ザガレツキーは、「政治捜査に近い人 (человек, близкий к политическому сыску.)」という基本的考えは失われていない。ザガレツキーが、たとえ検閲官に任命されたとしても、それは作り話とは思えないと語るそれなりの根拠 がある。例えば、

  絶えざる嘲笑、獅子への!鷲への!
  何も話さないのは人によりけり
  動物でさえ、それでもツァーリ。
    (Насмешки вечные над львами! над орлами!
         Кто что ни говори:
     Хотя животные, а всё таки цари.)

 ザガレツキーは、猛烈に語る。「熱(жаром)」を 帯びて、絶えず信じられぬほど大げさに急激に話に尾鰭をつけながら、またそれをためらいながら。辛辣な彼の評判にも腹を立てることもなく、すべて冗談とし て笑い飛ばしながら。ゴリチャの棘のある批評に、彼は答える。「変人で気むずかし屋、だがほんのわずかの悪意もなく(Оригинал, брюзглив, а без малейшей злобы.)」「仕える巨匠(Мастер услужить)」。ザガレツキーは、自らのよからぬ気質にもかかわらず、至る所で受け入れられ、モスクワの貴族の家にも快く受け入れられる。ゴリチャ が「私たちのところでは、どこでも悪口をいって罵るが、どこでも受け入れられる。(У нас везде ругают, а всюду принимают.)」と言うのも理由のあることである。

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レペチロフ

 А.А.ペストゥジェフ-マルリンスキー(Бестужев-Марлинский)(デカブリストの作家)への書簡の中で、プーシ キンは、こう書いている。「ところで、レペチロフとは一体何者だ。彼の中には、2、3、10もの性格がある。(Кстати, что такое Репетилов?  В нем 2, 3, 10 характеров.)」プーシキンは、彼の中にある愚かさ、従順さ、軽薄さにも、素朴さにも気づいていた。これに、非常な社交好き、あらゆる流行への 熱中を付け加えることができる。彼の姓は、フランス語の repeter(繰り返す)から派生したもので、「повторять(繰り返す)」の意味であり、彼の特徴を示している。--他人から聞いたことを繰り 返したい、自分自身の見解や意見の欠如を。

 レペチロフは、彼自身の定義(判断)によれば、「おしゃべり(пустомель)」である。彼は、最先端を行っている人に見られよ うと志すが、彼の言うことすべて、彼の信念・確信であるようには思われない。彼は、当時の進歩的人々を興奮させていた問題を何も理解しないし、レペチロフ のような人物は、「騒ぎ立てている、ただそれだけ(шумят и только)」なのである。

 レペチロフの話は、その語彙の面から見ると - 19世紀20年代のモスクワの人々の話し方である。откудова, невзначайのような言葉やособенноの代わりに особливоを、заурядныйの代わりにзаурядなどの言葉を使うのは、当時のモスクワで典型的なものであり、それゆえに彼の口から飛び出 す。

 演劇への熱中から、彼の話には、фарс, водевильчик, прелюдииなどの単語が言葉とし て出て来る。レペチロフは、フランス語の言葉を話に入れたり、フランス語流にロシア語の名前を変えるのが大好きだ。Левでなく、Левонのように。し かし、これと並んで、レペチロフの話には、多くのロシア語固有の表現もある。--「пил мертвую」「мы благо на ходу」などの ように。

 饒舌ではあるが、次々と素早くテーマを変えていくところは、レペチロフの内面の空虚さを特徴付けている。

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 ソフィヤ 

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 チャーツキー

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