目次
[MUSICA MUNDANA No.88] 2008年5月30日発行
 
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 「MUSICA MUNDANA No.88」をお届けします。

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           MUSICA MUNDANA NO.88
             May.30.2008
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             ◆ 目次 ◆

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 ◎ 音楽史
    ◆14世紀イギリス音楽◆
 ◎ 数学史
    ◆翻訳者たちの世紀◆
 ◎ Homepage Updated (May.25.2008)
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 ◎ 随想
 ◎ あとがき
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━━[音楽史] ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ◆14世紀イギリス音楽◆

 イギリス音楽は、イタリア音楽より遙かにフランス音楽と緊密な関係にあ
りました。「Triumphat hodie/Trop avet fet/Amy」でのように、フランス
の世俗のテノールを宗教的モテトゥスに用いさえしています。それは、
Oxford, New College 362(14世紀初期イギリス音楽の重要な資料)と
Brit.Lib.,Add.24198 とから継ぎ足して作られています。New College 362
の二つのモテトゥスは、共に、テノールとしてヴィルレの旋律
「Mariounette douche」を用いています。一つは、それを器楽的に用い、三
つのパートがあり、もう一つは、中声に新しいテキスト「Virgo mater」が
あって、その三声の曲では最も低いパートは器楽的で名ばかりのテノールで、
明らかに後に作曲されたものです。

テノールのカントゥス・フィルムスを最も下のパートではなく、真ん中のパ
ートに置くことは、実は、イギリスでは普通に行われていることでした。こ
れらの New College のモテトゥスは、またイギリスの技法の別の特徴も例
示しています。それは、イギリス音楽をフランス音楽の主流と区別するもの
で、私たちは、そのことでイギリス音楽の特徴を語ることができます。私た
ちは、ウォルター・オディントン(Walter Odington)が、テノールのパート
が完全に交替し、コンドゥクトゥス様式の同時のリズムに合わせるイギリス
特有のロンデルス(rondellus)の技法をどのように述べているかをすでに見
てきました。

「Triumphat hodie」では、テノールは、下の二つの声部の間で交代します。
このように、その二つの声部は、真のテノールとその対位するものとを交替
に歌います。- しかし、曲は、完全なフランスのホケトゥスで終わっていま
す。四声部の「Mariounette douche」は、リズムの同時性においても、平行
3度や6度、6度やオクターヴで解決する不完全な協和音を頻繁に採用する
ことにおいても、コンドゥクトゥスのようです。これは、他の文脈において
も同様に、その時期のイギリスで最も一般的なカデンツァ(終止形)でした。

 平行3度と6度は、とりわけイギリス音楽の著しい特徴であり、あまりに
も陳腐なものですが、このように、一目見て単旋律聖歌の上に、即興で「デ
ィスカントゥスを付ける」ことが実践されていました。それは、イギリスの
ロンデルス・コンドゥクトゥス・モテトゥス(rondellus conductus-motet)
の典型であり、また、イギリスで重要性を増していた典礼作品の一つの型で
もあります。下の二つのパートが、テノールのフレーズ - ウスター
(Worcester)とセーラム(Sarum)の交唱聖歌集の「Ave Rex」、音楽的には、
ローマのアンティフォン「Ave Regina caelorum」(Liber Usualis, p.1864)
と同一のもの - をロンデルス様式で交替させるだけでなく、同時に上の声
部も同様にフレーズを交替しています。

一方、この同じ写本の後の部分にある四つのモテトゥスは、記譜と技法とに
おいて、アイソリズムのあるフランスのものです。その一つ、「Domine
quis habitabit/De veri cordis/Concupisco」は、実は、イヴレア写本
(Ivrea codex)に「Se paour d'umble astinance/Diex tan desir estre
ames d'amour/Concupisco」として現れます。「Sub Arturo」同様、それら
は、その世紀の中頃以降に年代付けられなければならないでしょう。

このように、イタリア音楽にフランス音楽が影響を与えていたのと同じ頃、
フランスの影響の新しい波がイギリスでも感じ取られていたように思えます。
フランスとイタリアとの著しい対照について、残念なことに、私たちは、こ
の時期の世俗のポリフォニーあるいは俗語(vernacular)のテキストをほとん
ど持っていません。宗教作品の多くは、断片でしか残っていませんし、実際、
すべて作曲者不詳です。「Sub Arturo」のトリプルムの中でイギリスの音楽
家たちを捜してみても、どの名前も確定することができません。「J. de
Corbe」「Ricardus Blich」「Blich G」(Richard また恐らく William
Blithe)「Episwich J」(John of Ipswich)その他の人々は、Anonymous IV
のMakeblites や Blacksmits 同様、影のような人物のままです。

━━[数学史] ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ◆翻訳者たちの世紀◆

 12世紀は、キリスト教ヨーロッパにとって、9世紀が東方イスラム教世
界においてそうであったのと同じ関係、翻訳の時代でした。バグダードの場
合は、これらの翻訳はギリシア語からアラビア語への翻訳でしたが、キリス
ト教ヨーロッパの場合は、アラビア語からラテン語への翻訳でした。東方の
学問を知ろうとするこの願望の理由を見いだすのは困難なことではないでし
ょう。

11世紀との関連ですでに述べた理由は、100年たった後には、さらに一
層強くなっていました。芸術や学問におけるムーア人の影響によるスペイン
の発展は、すでに、フランスやイタリア、イングランドの教会の学校の上流
階級の人々に知的な不安を引き起こしていました。

この不安の結果がスペインへの学生たちの流入であり、様々な学者たちの側
からは、アラビアの何らかの知識の獲得であり、東方の学問を知り知らしめ
たいという強い欲求であったのです。ちょうど、バグダードが決してギリシ
アの文学を翻訳せず、ギリシアの科学学問を熱心に知ろうとしたように、ヨ
ーロッパも、アラビアの文学にはほとんど注意を向けず、カリフの首都で名
声を得ていた天文学、算術、三角法、光学、占星術、幾何学、そして医学に
ついての著作に非常な関心が向けられました。

ユークリッド(エウクレイデス)の「幾何学原論」でさえ、オリジナルのギ
リシア語でなく、主としてアラビア語の翻訳を通してラテン教会の学者たち
には知られるようになったのです。

━━[随想]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 スラッシュドット・ジャパンにこんな記事がありました。

 数学は「発見」?それとも「発明」?
 http://slashdot.jp/science/article.pl?sid=08/05/01/0229243

 面白そうでしたので、mixiの数学史・数学者コミュにトピを立てて、そ
こで、紹介されている ScienceNewsの

 Still debating with Plato
 By Julie Rehmeyer
 April 25th, 2008
 Web edition
 http://www.sciencenews.org/view/generic/id/31392/title/Still_debating_with_Plato

 Where do mathematical objects live?

を訳していますが、ここでも取り上げてみようと思います。

 数学史・数学者コミュ - http://mixi.jp/view_community.pl?id=232325

 数学の対象はどこにあるのか?

 それについて突き詰めて考えると、数学は非常に奇妙な学問であるよう
に思い始める。例えば、新たな数学的真実は、発見されるのかそれとも発
明されるのか? 十分単純な問いのように思えるが、何千年もの間、数学
者や哲学者たちに議論のネタを提供してきた。

 発見だと主張する人々は、数学的な命題は個人的な信仰信念にかかわら
ず真か偽であり、それは外部世界になんらかのリアリティを持っているの
だと言う。しかし、これはある奇妙な概念に導かれる。これらの数学的真
実は、一体どこに存在するのか?数学の真実は、誰かがそれを思い付く以
前に本当に存在しえるのか?

 一方、数学は発明されるのなら、なぜ数学者は合法的に 2 + 2 = 5とい
うことを発明できないのか?

 多くの数学者たちは、このような煩わしい問題は無視して、定理の証明
といったより楽な仕事に戻っていく。しかし、それでも、その問いは幾度
となく繰り返し頭をもたげ続け、折を見ては人々の関心を引く。6月のヨ
ーロッパ数学学会会報では、数学は発明されるのか発見されるのかの問い
を数人の数学者がじっくり考えることになっている。

━━[催し物情報]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 大正ロマン昭和モダン展−竹久夢二・高畠華宵とその時代−

 大正から昭和初期は、挿絵画家たちが活躍した時代です。少年少女雑誌
 の挿絵を始め、絵葉書、装丁本などさまざまな大衆アートが、子どもか
 ら大人まで、幅広く人々の心をとらえました。大正と昭和という時代の
 色調を色濃く帯びたこれらの作品は、現在の私たちの心もとらえて離し
 ません。
 展覧会では、一世を風靡した竹久夢二と高畠華宵のふたりを中心に、こ
 の時代に活躍した作家たちの作品をご紹介します。

 【開催期間】2008年4月26日[土] - 2008年6月22日[日]
 【開催場所】徳島県立近代美術館 展示室3
 【主催】徳島県立近代美術館、徳島新聞社、四国放送
 【観覧料】一般600円 高・大生450円 小・中生300円
 【休館日】月曜日(ただし5月5日を除く)、5月7日[火]

 徳島県立博物館の催し物情報は、以下のサイトをご覧ください。
      http://www.museum.comet.go.jp/

━━[メルマガ紹介]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 知人が発行しているメルマガです。興味関心のある方はどうぞ。

  「知」とIT/ビジネスへのTIPS
 URL http://kinyuu-literacy.hp.infoseek.co.jp/

━━[Homepage Updated]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ホームページ update情報

 落書き帖第204号
 Plato "The Republic" を読もう
   http://www2m.biglobe.ne.jp/~m-souda/cgi-bin/plato/wforum.cgi
 各国語で聖書を読む
   http://www2m.biglobe.ne.jp/~m-souda/cgi-bin/bible/wforum.cgi
 ロシア語初級コースのテキストを読む
   http://www2m.biglobe.ne.jp/~m-souda/cgi-bin/russian/wforum.cgi

 MySouda--惣田正明のホームページ
        http://www2m.biglobe.ne.jp/~m-souda/mysouda/
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   http://www2m.biglobe.ne.jp/~m-souda/index.html
 Mixi - MySouda  http://mixi.jp/show_friend.pl?id=7326059

 [MUSICA MUNDANA]Doblog版 
        http://www.doblog.com/weblog/myblog/3403

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重くて仕方のない方は、[SIMPLE版]をご覧ください。

━━[あとがき]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 いつの間にか6月になってしまいました。5月30日発行の予定でした
が、数日遅れてしまいました。他のことで少々忙しかったもので、なんと
なく疲れ気味です。大目に見てください。

 ところで、5月は、サイクロン「ナルギス」がミャンマーを襲ったり、
中国四川省では大地震が発生するなど大きな自然災害が続いていますが、
また、自然が猛威を振るい始めたのかなと気になるところですね。

 四国では平年より7日、昨年より16日早く、5月28日に梅雨入りで
す。今年は雨が多いのかも知れません。

 それでは。

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