外伝8〜初めてのピアス〜


「・・・・・ふ・・・普通の人はしないのか・・・ピアスって・・」

 和博は内藤さんの言葉をふと思い出した。 そして自分の親友の耳とクラス を見渡した。 実は和博は密かに思っていた。 B’zの二人、確か開いてたよ な・・僕も空けてみようかな・・。 そーいやノリミチは何でピアスしてんだろ 。 やっぱあの二人がしているからかなぁ・・。

「ねえねえ、ノリミチはさ、どうやってあけたの?」
「お、俺か?お・・俺は・・」
「やっぱ安全ピンでブスッといったわけ?痛くないの?」
「そ、そそそっ、自分であけたっ、あったりまえだろーが、一匹狼穂積則道、 耳に穴あけたくらいで痛がると思ってんのかよっ、わはははははははははははは は」

 ノリミチは片手は机の上に、余った手を腰にあて、天上を仰いで高らかに笑 った。
 ・・・・・・・が、しかし・・・・壁に目有り障子に耳あり・・・・・・・

「”こらこら〜 そこの少年〜そこの金髪少年ノリミチ君〜友達に嘘偽りを申 してはいかんぞよ〜”」
「ななななんだ〜、」

ノリミチは突然聞こえた声に驚き、辺りを見渡した。 カズに変な声がすると 言っても、いいや聞こえないという。 どうやら聞こえたのはノリミチだけらし い。

「・・・・て・・・天の声か・・」

 その声は少し低めの女の声だった。 ほんの少しだけ? 煙草で枯れている ような気もする。 こんな声、自分の周りでは聞いたことが無い。 妙里の声で もないし、内藤さんの声でも無い。 たとえカズが裏声使ってもこんな声は出な い。 だけどどこかで聞いた覚えがあるような・・

「幻聴じゃないの〜〜、それより、開けるときどんなかんじだった? すぐに できた? 化膿しなかった?」
「おおう、一瞬だぜっ、こう、安全ピンを持ってさ、ブスッと一発! 血も少 しでたけどさ、なかなか快感だったぜぃ、なんか男になった、て感じだな、はは は〜」

 ノリミチは再び気分よく高らかに和博にピアスの話をした。 すると、

「”こーーらーーーー、お前また嘘ついたなーーーーー。 今度嘘ついたら容 赦しないぞ〜、真実をつげぃ、真実を〜〜”」
「ひぃぃぃっ、まただっ、幻聴じゃないっ、幽霊だ、おばけだ、呪われてるん だ〜」

 ”天の声”に狼狽えるノリミチをなだめつつ、和博はさらにピアス話の続き を要求した。 ノリミチも、和博の要求に応え、さらに己のピアス談を述べた。

「ねえねえ、一個しか開いてないけどさぁ、やっぱ二つか三つくらい開けたほ うが格好いいと思うよ。」
「ばぁっか、数あけりゃいいってもんじゃねーよぉーだっ、やっぱ、ワンポイ ントだよ、ほら、キラリと光る一粒のピアス、なんか俺の可能性を示しているみ たいじゃん! わはははははははははは」

「”のーーーりーーーみーーーちーーーー、おーーまーーえーーはーー、また 友達に嘘をついたなーーーーーーーーーーー、罰としてーーーーーーーーお前の ピアスの真実を語るのだーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!! !!”」

「うあーーーーーーーーーーーーー!! やめーーぃ、あぁっ口が勝手にっ」

天の声に操られてノリミチは和博に真実を語り始めた。 聞き終わったカズは お前のやりそうなこった、とため息をついた。

「ごごごめん、ほほほほんとうはっ今のは全部嘘だったんだっ」

 まあ、格好付けのノリミチのこと、あんなこと言うのも無理はないか・・。  実はこんな顛末でした、なんて死んでも言え無いだろうなぁ・・・ふぅ・・・ ・・。

 彼に言わせると、本当は、医者に行ってピアスホールを開けようとしたらし い。 最初は本当に安全ピンで開けようとしたが、その痛さに針が貫通せず、わ ずかに表皮に窪みを作った程度に終わってしまったからだという。 穴の数も一 つではなく、五個くらい一気に開けようとしたらしい。 ところが・・。

「おお俺の前にねっ、穴開けにいった大学生風のニーチャンがさっ、やっぱり たくさん開けるつもりで行ったららららら〜しいんだけどぉっ、うっこのやろっ 人の身体操りやがって、ううっ、いやぁ〜っ、口が勝ってにぃ〜〜、開けすぎて 貧血で待合室戻って俺の目の前で倒れたんだよっ、ででで、びびって、取りあえ ず診察室には言ったものの・・」

 全く、酷いどもりだ。 いつもの格好付けノリの姿はミル影も無い。 操ら れてるのは本当だろう。 こいつがどもるのは焦っている証拠、それもなにか心 霊関係で恐ろしい思いをしている時だ。

「そそそこの女医がさっ、ピストルみたいなの持ってくるんだよ、俺あせっち ゃってさ、何個開けるのて言われたんだけど、ちなみにその女医、眼鏡で肩くら いのワンレグなんだけどっ、VANの課金の明細見ながら頭抱えてたんだけど、 ピストルみたいなの持った時何故か眼鏡の奥の小さい目が光るんだよっ、俺あん まし不気味だからやっぱいいですって逃げてきたんだよっ」

 へぇ、それでもしっかり女医さんの姿をチェックしてるわけね。 ふんふん 、眼鏡かぁ、あ、いつかも眼鏡の女が・・とかいってなかったっけか。

「あ・・そう言えば・・そーだ、あの声・・。 いつかの夢のモニタの前の女 と似ている! というか・・げぇ、モニタの前でにやけて『君には働いてもらう 』てゆってる悪魔だ〜〜、ううっ、また天の声が・・よ・・余計なことは言わな いでよろしいだぁ〜??」

 ・・・・・・なるほど、天の声は夢に出てきた女だったのかぁ。 ふ〜ん。  お前何か怨まれるようなことした?

「そっそれで、結局街でピアッサー勝って自分で開けようとしたんだけどっ、 これまたなかなか踏み切れなくってぐずぐずしてたら・・・・姉貴が〜〜ずかず か入ってきて〜『なんだお前、男じゃねーな、ピアッサーで開けようなんざ、こ れは私があずかっとく。 ほれ、耳だしなっ、せーのっ、”ぶっすぅっ!!”』 けけけっきょく、姉貴に問答無用で心の準備もない内にミシン針で一気に貫通さ れて、血が出て〜 ・・・・・・・・・・・ふっ・・・・・・・・。」

 どうやら精神の限界を越えたらしい。 机に突っ伏してノリちゃん怖い夢の 中・・。
 結局、自分では開ける勇気がなくって、でもかっこつけに開けたくてぐずぐ ずしてる間にあの怖いお姉さんに力ずくで耳に穴を開けられたらしい。
 それにしても、あんなに喧嘩強くてクールなノリミチがどうして超常現象と お姉さんには弱いんだろう。 こと、お姉さんと流血の喧嘩になっても一度も勝 った試しないてゆうし、何故かお姉さん無傷でノリミチいつもボコボコらしいし ・・。 世の中てまだまだ謎に満ちてるな・・・・・・。


(SUM)


<PC−VANサークル「カフェテリア」#2374、2375より転載>


<筆者からのコメント>

 ねこかずさんの外伝を受けて・・

 そっか〜〜

 ノリミチは ピアスしてたのか〜〜

 てことで、早速のピアスネタです。

あらすじ 外伝紹介 相関図

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