外伝5〜妙里の章U〜


 何時の世にも、幽霊部員は多い。
 その頃、とある学校の空手部は一人の部活すっぽかしに悩まされていた。  そこで、当時の空手部部長、夏姫は学校一の機動部隊、生徒会執行部にこの人物 の捕獲を依頼した。 その人物こそ、後の世に語られるお気楽娘、妙里である。

 昼食後の自由時間、学校の北に位置する第一特殊棟の4Fに位置する生徒会 執務室は緊張に包まれていた。 先の妙里捕獲作戦に失敗した人物が3人、生徒 会執行部長 魯家緒須香、副部長 三田舞弥、第一執行部隊長 富律得人 それ ぞれ部屋の中央でとある人の来るのを待っている。
 暗闇に包まれている部屋が不意に明るくなる。 楽曲が鳴り、正面に背もた れが付いた黒い皮製の椅子が、ステ〜ジの上に置いてあるのが肉眼で確認出来る 様に成った頃には此処の部屋の特徴がはっきりしてくる。
 一寸した演劇の出来るような生徒会所属のリクリエ〜ション室だ。 窓には 黒いカ〜テンがかかっている。 例え外が明るくても此処は暗闇が安心して支配 できるだろう。
 「権力者のありきたりな演出だな」緒須香はそう思ったが、前の椅子に座っ た人物を見ては、片隅に思う事すら恐れ入った。

 黒い椅子に座った人物は、学校の制服を着た長い金髪が印象的な女性だった 。 虞流根 安世、生徒会の顧問を勤める生徒だった。

「貴方達は頑張りましたね。 でもそれだけですね。」

その虞流根の言葉は3人の震撼を寒からせるのに十分だった。

「油断した事は我らが不覚。 弁明のしようはございません。 ですが、いえ 、ですから、なにとぞ再戦の機会を! 虞流根様!」

虞流根の振る首に合わせて豪奢な金髪が空を舞った。

「いえ、此処に至るまで確たる方策を立てなかった私にも責任が有りますわ。  我らに盾つく方々は此れを抹殺します所存ですわよ! お〜〜 ほっほっほっ ほっほ〜〜〜」

お嬢様笑いに改めて、寒気を覚えた諮問される3人はこのとき初めて 虞流根 の膝元に乗っているのが我らが生徒会長である事に気がついた。 虞流根はその 膝元にいる、ペンギンを撫でながら言った。

「抹殺よね〜・・・ラインハルト。 私と、貴方で・・・ふふふ。」

此処の会長は皇帝ペンギンのラインハルトであった。

「作戦はすでに定まったわよ! 作戦名は・・・フラグルロック!」

 生徒会執行部員約320人。 半数以上は普段は普通の学校生活をしている が、有事の際には急遽動員可能な部隊である。 残りは普段の雑務に追われるの だが、今回は生徒会の面子の為、全員いつもの作業を中止して妙里捕獲作戦に参 加する。
 その分、残務処理を想像して胃を痛める者、又は補習の予定が有ったのに駆 り出されて先生の拳骨を覚悟して登校拒否を決断する者が続出という悲しい事実 が存在するのだが、ここまでするのも極論すれば妙里ただ一人を捕獲する為なの であった。

 320人を約35人づつ緒須香、三田、富律、三浦、流津、富荒、健府、目 久、輪礼、練念それぞれの部隊長に率いさせ、残りを本隊として約10人を虞流 根(ラインハルト)が率いて校門に陣取る。 恐らく妙里はこの守りの薄い校門 を渡りに船と此処を突破せんと企図することだろう。 そこで、各方面に散らば って妙里探索をしていると見せ掛けた各部隊が駆け付け、妙里を包囲し捉える。  この作戦の成功を虞流根は確信した。

「この事態は貴方が望んだ結果なのよ。 来てくれるわね。 おちゃらけ妙ち ゃん・・・。」
 虞流根は下校時間のチャイムに気持ちの高揚を隠し得なかった。

 だが、現実は非情だった。
 実は妙里は今日はお休みだった。


(ねこかず)


<PC−VANサークル「カフェテリア」#2347、2348より転載>


<筆者からのコメント>

 ちっ!
 こんなところでネタ使うとは思わなかったい(^^;)
 (大したネタでは無いのでかいたのですけど(笑))

 ところで、元ネタがお分かりの方は一体いかほどいらっしゃることでしょう (^^;)

 虞流根=グリュ〜ネワルト から取ったん。

 安世は”あんぜ”って読むん。

 いえ・・こう書きませんと多分分からないかと。。。(^^;)

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