外伝3〜穂積則道ある日の悲劇〜
ある夕方のことである。 ノリミチは愛読の音楽雑誌を小脇に抱え玄関のド
アをあけた。 今日も誰も居ない。 共働きの両親、OLの姉、会社員の兄二人
、四人家族の末っ子で唯一の学生であるノリミチ、帰宅してから家人が帰るまで
の数時間が彼にとっての至福の時であった。
テレビのある和室にどっかと座り、おもむろに雑誌を開く。 と、彼の目に
ビジュアル系アーチストが目に止まる。
GLAY、ラルク・アン・シェル、LUNA SEA、X-JAPAN、etc・・・・
「ビジュアル系・・・・化粧か・・・・・・」
彼はこの所、カズと約束した初ライブを一体どんな構成にしようかと頭を悩
ませていた。 また、バンドの全体のスタイルなんてことでも毎日頭を悩ませて
いたのだ。 その彼にこのビジュアル系のバンド諸々は大変な衝撃を与えた。
「・・・・化粧・・・・・か・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・
・・・・・・・・・・・・・誰も居ないよな・・・・・・。」
ノリミチは家人が誰も居ないということを改めて確認すると、雑誌を持って
姉の部屋に上がり込んだ。 そして、姉の鏡台の前に座り、自分の顔をまじまじ
と見た。
「・・・・眉毛・・・・・・・からかな・・・・・・・」
再び辺りを伺うと、彼はラルク・アン・シェルをお手本に、早速作業に取り
かかった。 眉が終わると、次に上瞼、下瞼のふちに黒い線を引いたり瞼にアイ
シャドウを入れたり・・最後に口紅まで引いてみた。
「・・・・・・・・・怖い・・・これじゃミスターレディだよ・・・以外と顔
描くの難しいな・・ネーチャンこんなこと毎日やってんのか、よくやるよ。早く
落とそう・・・・・・・・・・・・ん!?」
何かの気配を感じ、恐る恐る後ろを向くと、まるで幽霊でも見たように硬直
している姉と2番目の兄がいた。 数秒の沈黙の後、それは爆笑と怒号に変化し
た。
「バカノリっ!! あんたっ あたしのシャネルで何やってんのよっ!! あ
ぁ、何よそれ、あんた、そーゆう趣味があったわけ!? もしかしてカズ君とで
きてんのっ!!?? 」
「ち、違うっ違うぅ〜。 こっこれはっそのぉっ・・ライブのメークの練習し
てたんだよぉっ」
「くっくっく、そんなにお化粧が好きなら〜〜 あたしがしっかり遊んで上げ
るわよぉ・・・・くくくくくくくくくくくっわっはっはぁ」
そして穂積家に穂積4姉弟末っ子則道の悲鳴が響きわたった。
・・・・もしかしたらノリミチがグレたのは、このおねーちゃんの せいか
も知れない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
(SUM)
<PC−VANサークル「カフェテリア」#2258より転載>
<筆者からのコメント>
高校時代に軽音部の人が文化祭でライブをしていました。
その時に何故かその男の子達、化粧してたんですね(笑)。
それがまた下手くそな化粧でして・・バンドの話、というか音楽の話というと
、最近再びビジュアル系のバンドが熱いです。
(GLAYとか ラルク・アン・シエル とか 化粧の濃い人々(笑))
そんな彼ら、初めて顔書いた時は一体どんな気持ちになったんだろうと(笑)
(今やに化粧は不可欠ですし(笑)厚い人多いし・・(^^;;;)
そんなわけで、輝かしい未来の為に恐る恐る化粧にチャレンジしてみたノリミ
チ君を書いてみました。
(彼はその後姉の玩具=顔面キャンバスとなる)
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