天田愚庵
(あまだ ぐあん)
郷土の偉人
「ちちのみの父に似たりと人がいいし我眉の毛も白くなりにき」
あまだぐあん【天田愚庵】歌人。本名、甘田五郎。剃髪して鉄眼。磐城生れ。正岡子規と交わり、その歌風に影響を与えた。「愚庵全集」がある。(1854〜1904) 《広辞苑より》
【鉄眼禅師】鉄眼倍師天田五郎、平町の人にして父を平太夫といふ、母は林氏幼にして岐擬学を好み、神林惺斎に師事し夙に頭角を露はす、戊辰の乱起るに及び十五して
藩兵に従って出陣各所に転戦し、平定後家に帰れば父母兄弟離散して往く所を知らず、東索西索二十年の久しき殆ど海内に遍し、その間或は写真師となり、或は神官となり、
苟くも父母を索むるに使なるべき種々の苦心を積むと雖も蹤影なし、遂に現世に再会し能はさるを知り、悲哀自ら禁ずる能はず、京都修学院の林丘寺に入り滴水禅師の室に得度す、
明治二十六年、一は父母菩提のため、ニは修正結縁のため西國三十三所観世音を礼拝す、三十四年山城國伏見桃山に草庵を結び愚庵と号す、三十七年一月一日宿痾激発し十七日遂に永寂す、年五十一、辞世の詠あり
「大和田に島もあらなくに梶緒絶えただよふ船の行ヘ知らずも」
《福島県石城郡誌 大正十一年十二月五日発行より転載》
明治二十五年、京都の清水の愚庵=i天田愚庵:三十九歳)に、正岡子規(二十四歳)と高浜虚子(十七歳)が訪れる。
「紅葉散る和尚の留守のゐろりかな」正岡子規
同年、愚庵が、柿と松茸を人に託して、正岡子規に届けるが、当時の子規は、小説「曼朱沙華」を書いていて礼状を書くことを忘れていたようだ。
愚庵は「正岡はまさきくてあるか柿の実のあまきともいはずしぶきともいわず」と手紙をだした。
すると子規は「柿の実のあまきもありぬかきのみのしぶきもありぬしぶきもうまき」
「つり鐘の蔕のところがしぶき」と返事をしたそうだ。
「柿くへば鐘がなるなり法隆寺」
約二十年前に、新潟の親類の家に泊まった時、「ゴァーァン、ゴァーァン、ゴァーァン」という鐘の音を聞いた際、初めて本当の鐘を音を聞いたような気がした。
現今では、いわき地方で、鐘の音は殆ど聞かれない。
ただ、記憶をたどると、「ガァーン、ガァーン、」という鐘の音を聞いたようにも思った。
子供の頃、いわき市窪田町 の國魂神社に鐘楼があった。
大晦日の除夜の鐘として撞いたの音を、聞いたような気もするが、聞いていなかったような気もする。
新潟の鐘の音は、平野のために「ゴァーァン、ゴァーァン、ゴァーァン」と、音が四方の遠くまで響きわたる感じで、その音はそのまま遠くへ去っていくようだった。
当いわき地方では、東は海、南、西、北が山という地形のために、里と山が近く、鐘の音が山で直ぐ反射し、干渉した音であって、新潟平野で聞く鐘の音と全然ちがうと思った。
「ゆうやけ こやけで ひがくれて やぁまのおてらのかねがなる おててつないで みなかえろ からすといっしょにかえりましょう。」という童謡のように、いわき地方では、寺の鐘の音を聞くという、このシーンを体験したか人はいるのだろうか。
大晦日のテレビジョン放送「いく年、くる年」で、全国各地から中継放送によるスピーカーによる耳にする除夜の鐘の音になじんでしまっている。
だから、初めて本当のお寺の鐘の音を聞いたとおもったのである。
「柿くへば鐘がなるなり法隆寺」は、明治二十八年、正岡子規が松山から東京にの旅で、奈良まで足をのばし、法隆寺の茶店で、くつろいでいる際に出来た作品とも、東大寺の裏の宿で、東大寺の鐘の音とも言われている。
子供の頃から、俳句ともしらずにこのフレーズを知り、どんな柿をどういう風に食べているのだろう、鐘の音は、ゆうやけこやけの歌と夕景色の絵本でつくられた音で耳にしていない音であった。
俳句にうといが、柿には思い出が多い拙者は、柿と鐘については、そんなことを思っていた。
伴侶に、「子規がたべた柿は、どうして子規のところにあったのだろうね。」と聞いてみた。
「買ってきたからでない。」といとも簡単に答えられた。
柿の好きな子規に、天田愚庵が柿を贈って、子規庵でその柿を食べている際に、遠くの鐘の音を聞き、以前に行った、法隆寺と合わせてつくったのではなかろうか。
柿は、病気の子規には体が冷えるので差し障りがあるような気がするが、ビタミンCがあって良いとも思えるので、病気見舞いに、磐城生まれの天田愚庵が贈ったという手前味噌な話にしてしまおう。
近年、「柿くへば鐘がなるなり法隆寺、それにつけても金の欲しさよ」とよくやっているし・・・。
時系列も確認しない素人の憶測
磐城の人 広辞苑に収載の人
やつはしけんぎょう【八橋検校】近世筝曲の祖(1624〜1644)
ゆうてん【祐天】僧侶(1637〜1718)
あまだぐあん【天田愚庵】歌人(1854〜1904)
おおすがおつじ【大須賀乙字】俳人(1881〜1920)
くさのしんぺい【草野心平】詩人(1903〜1988)
2003年11月11日 記 桃太郎