デジタル著作物の著作権保護問題

A3JB1107 小桃

デジタル著作物において、コピー技術の進歩が、大きな違いだったオリジナルと複製物との境目をなくしつつある。たとえば画像の場合、写真やフォトコピーなどはコピーが原本と全く同じものでないことは誰が見ても分かるが、デジタル著作物の場合はコンピュータの画面上でマウスを使ってドラッグしたりセーブすれば簡単にコピーができてしまう。プログラムについても、コピーしたプログラムは、元のプログラムと全く同一の働きをする。しかもいくらコピーしてもデータの内容は少しも劣化せず、コピー元と完全に同一の内容になる。もちろん大量にコピーしても手間が掛からないだけでなく、費用も掛からない。そうした技術が広く普及したため、複製の作成が誰にでも可能になった。このままではインターネットのようなグローバルなオープンネットワーク中でこのような不正コピーが大量に加速される可能性は十分ある。著作物を改変する行為も容易にした。そして、そうした「パスティッシュ」や「パロディ」といった手法も社会的に認知されるようになってきた。 

最近では、インターネットを媒介とした著作権侵害事件が世界中で訴訟問題になっている。一国内の法制度では対処し得ないため、旧来のベルヌ条約だけでなく、WIPO(世界知的所有権機関)やその他の国際基準が次々と登場している。たとえば米国のようにベルヌ条約の流れに沿わず、他の基準によって国際化を図ろうとする国もあり、状況は複雑である。しかしいずれにしろ、個別の事態への対処は国内法で処理されるため、多国間の法制度が絡み合った複雑な状況が生まれつつある。

日本では1998年の11日から改正著作権法が施行になった。この改正は、インターネットをはじめとする電子ネットワークへの対応を目的とした改正である。

改正法は、「技術的保護手段」の定義規定をおき、その要件を定めている
  この定義によれば、「技術的保護手段」とは、以下の3つの要件を満たすものということになる。
@ 電磁的方法により、著作権等を侵害する行為の防止又は抑止をする手段であること。
A 著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものではないこと。
B 機器が特定の反応をする信号を著作物等とともに記録し、又は送信する方式によるものであること。

平成11年度著作権法改正の内容解説http://www.netlaw.co.jp/kaisei/991001.htmlより引用

しかし、いくら法律などで禁止しても、技術的に見れば、そのままでは簡単にコピーできることには変わりない。コピープロテクトを掛ける方法としては、「電子透かし技術」(Digital Watermark)がある。「電子透かし技術」は、人間の目や耳で知覚できない形で著作権情報をコンテンツに埋め込んで著作権管理を行なう。埋め込まれた情報は、コンテンツの加工や改竄に対しても耐性があり、後日、著作権侵害を追及する際の大切な証拠となる。使用例は下図を参照。

しかし、この方法にもまだ問題がある。これだけだと、誰が最初に著作権侵害を行なっているのかを追跡することは困難になってしまう。

インターネット上の情報を守る手段としては、ネット上に著作権監視用ロボットを自動巡回させてコンテンツのDigital Watermarkと照合し、著作権侵害サイトを割り出すというシステムがある(もともとサーチ・ロボットは、インターネット検索エンジンのために、コンテンツを収集する目的でサイバースペースを24時間駆け回っている)。

しかしこのような方法については、「知らないうちにネットに個人情報が流出しているのでは」「プライバシーの侵害では」という問題も提起されている。

またCDやゲームソフトなどは、プロテクトを解除するための様々な装置が市販されているため,通常技術的に外すことが困難なコピー・プロテクトを外し,簡単に複製物の作成等を行うことができることから,権利者に経済的損害を与えている。文部省は「コピー・プロテクション解除装置への対処については,デジタル化の進展の中で著作権等の保護,更には権利管理への技術の活用の重要性が増大することを考慮するとともに,国際的な検討の動向や技術の動向に配慮しつつ,早急に結論を得るよう,引き続き広い視点に立った検討を行う必要がある」としている。

参考サイト      http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/12/chosaku/toushin/981201.htm