wind


飛行機は 空気の中を 動きます 
ですから 飛行機は 風によって 様々な影響を受けます
そこで 今回は 風のお話です

飛行機で使う 風は 風向と風速で示されます
速度は ノット 向きは 度です
36022と示されて 360°22ktsと 読みとります
日本語にすると 北の風 毎秒11mとなります
北から吹いている風で 南に流れます
ちょっと 考えると 逆みたいですけど
北風が 吹くと 寒いので 北から吹いてくる風です
ぼくだけかな 感覚が違うのは・・・・
当然なのかも 北風と言ったら 北から吹いてくる風って・・・・・
まあ 風の分析は 後にして
飛行機と 風の お話です

先ずは 駐機から
屋外駐機する場合 風をもろに受けます
飛行機は 正面からの 風には それなりに 強いですが
横や 後ろからの風には めっぽう弱いです
ですから 長期間駐機するような場合は 出来るだけ ロープなどで 固定した方が 無難です
さもないと いざ乗ろうとしたときに 飛行機が 裏返しになっていることもあります
また 短期間の駐機でも できるだけ 風に正対させて 置いた方が 何かと有利です

エンジンスタート
この時も 風を考えます
背風で スタートすると エンジンを壊す場合もあります
これは 特にタービンエンジンの場合に 顕著です
排気がうまく出来なくて
エンジン温度が極端にあがって タービンが溶けてしまいます
ですから できるだけ 正面から 風を受けるように 駐機して おくのが良いでしょう

地上走行
離陸地点まで 移動する場合も 風は影響します
強い風が 吹いている場合は 各動翼が バタバタ動かされます
そこで 操縦桿を しっかり ささえておく必要があります
また 戦闘機のような 機体では
キャノピーの 風制限がありますので
いくら 暑いと言っても 制限以上の風が 吹いている場合は
キャノピーを閉めて タクシーしなくては いけません

これとは別に 地上走行で 注意が必要なのは
他の機体との 関係です
無風の場合 前方機の排気は 真後ろに流れます
大型旅客機の すぐ後ろに 何気なく 止まってしまうと
その排気ガスを もろに うけて 目がいたばかりか
下手をすると 巻き上げられた 小石で 飛行機を こわしてしまいます
この時ばかりは 横風は 歓迎すべき 現象です

もうひとつ 戦闘機のように 編隊で 行動する場合
タクシー時の 編隊長の 位置は 大事です
すぐ後ろに 僚機がいますので
できるだけ 僚機に 排気ガスが当たらないように
必ず 中央線よりも 風下を タクシーします

離陸
飛行機は 相対風速によって 飛べます
ですから 正面から 風を受けて 離陸するのが 一番効率的で 安全です
パワーの強い 戦闘機でも 後ろからの風は 離陸時10kts程度しか 許されません
一番 問題なのが 横風です
飛行機は 横から風を受けると
ロールと ヨー 2方向に 影響が出ます
滑走路の 中心線を 保持しようとすると
ある飛行機では 機首が 風上に向こうとするし
ある飛行機では その 逆であったり
また ある飛行機では 風上側の 翼が 上に あがろうとします
中には 下がろうとする 機体もあります
これが ミックスされて 横風離陸は それなりに 難しいのです

主脚が 滑走路から 離れてしまえば
もう こっちのもんです
どう流されようと 空は 広いので 問題ありません

しかし どうしても 滑走路に対して まっすぐあがりたいとか
滑走路の 方向を 守らなくては いけない場合は
それなりの テクニックが必要です

私のような いい加減な パイロットの場合は
浮かんでしまえば あとは 風のなすまま なされるままです

上昇
ぼくの場合は 風のなすまま なされるままですが
厳密な 燃料計算とか 進出距離を 求めるような場合は
風は 大事な要素です

巡航
最初に 言った様に 飛行機は 空気の中を飛びます
そこで 飛行機自体は 何も感じないのです
だって 進行方向に どんな横風を受けていても 飛行機は 常に正面から 風を受けますので

風は 地上と 空気の流れの 差です
そこで 空気に中を 無意識に飛んでいる 飛行機は 地上と差が出てきてしまうのです

ここで 問題です!
ある地点と ある地点を 往復する場合
風が ある場合と 無い場合に 所要時間に変化はあるでしょうか?
10人に 8人は 同じだよ〜 って 答えます
これって 正解?

誤解があるといけませんので
超具体的に 言うと
東京から 名古屋に 飛んでいく場合を考えましょう
飛行機は 150ktsで 飛ぶとします
東京−名古屋間の 距離は 約150nm(約280km)です
無風ならば きっかり 1時間で 到着します

しかし 名古屋方向から 50ktsの風が 吹いているとすると
飛行機の対地前進速度は 150−50=100ktsとなります
こうなると 所要時間は 150/100=1時間30分となります
逆に この風のまま 名古屋から東京へ飛ぶと
飛行機の対地速度は 150+50=200kts
所要時間は 150/200=45分になります

皆さんは ハワイに行くときに 感じておられると思いますが
行きは 6時間 帰りは 8時間 これも 同じ理由です

問題に戻ると
東京−名古屋間の 往復だと
上記の例では 風がなければ 2時間
風があると 2時間15分 かかることがわかります
要するに 風があると 飛行機は 損なんです
同じルートの 往復は 風のない時の方が 得なんです

さて 正面から 風を受ける場合は 速度変化だけで 良いのですが
予定飛行経路に対して 横から風を受けると さらに複雑になります
まあ 飛行の 98%は この状態です

今 同じ飛行機が 真東に 向かおうとしています
でも 今回は 北風が 50kts吹いています

そのまま 真東に 飛ぶと
1時間後には 東京ではなくて 東京の南 50nm(約90km)の 位置に来てしまいます
(名古屋−東京が 真東 真西 の 関係だとしますが・・ね)
そこで 飛行機は ちょっと 風の方向に 機首を向けて飛べば ちょうど東京の上に来るようになります

では どんだけ 向ければいいのでしょう
これには 三角関数 もしくは ベクトル演算をしなくては いけません
ね〜 パイロットって 賢くないと 出来ないでしょう?

このために パイロットは 航法用 計算板を 常に持っています
これによれば 上記のような 場合 左に19度 そして対地速度は 141ktsぐらいになります
細部理由の説明は 次回にして・・・
結局 最初から飛行機は 目的地の方向に飛ばないで ちょっt 北を目指して 飛ぶことになります
東京より 北に 96kmの所を 目指して 飛んでいかなければ なりません
(これは 厳密に言うと スタート地点での 話です)

賢い 読者の皆様は すでに お気づきとは 思いますが
上記 方法には 2つの欠点があります
  1 風を前もって知らなくては いけない
  2 パイロットが 賢くなくては いけない

1については 本当の風は 飛んでみるまでわかりません
事前にわかるのは 予想風ですから
2は どうしようもないです 訓練 練習の 繰り返しでカバーしなくては いけません

しかし どんなに 訓練を積んでも 地上目標や 電波航法装置が 無い場合は
この方法では 目的地に正確に 行くことは出来ません
完全な航法ではないのです

これとは別に ホームイングという 方法もあります
これは 目標地点を 常に 正面に持っていく方法です
そうすれば 針路は その都度変化しますが
いつかは 目的地に 着くことが出来ます
昔の ミサイルが 使っていた 方法です
単純 明解 確実ですが 時間が かかります

しかし 文明の進歩は ありがたいものです
今は 各種地上電波発信局 GPS INSなどの 発達と
自動操縦装置の 発達で
目的地の 記号を入れるだけで 確実 正確に 飛行機を飛ばしてくれます
便利な世の中です

なんとか 横風を 機械でクリアーして 目的地い到着して 今度は着陸です
アプローチは 同じように 機械がこなしてくれます
接地も 機械がやってくれる 飛行機もありますが
ここでは 在来の 着陸を ご紹介します

横風着陸 これは パイロットを一番 苦しめる物です
だから ぼくは 横風のある日には 飛びません(笑)

2つの アプローチ方法があります
上空での 航法と同じように ちょっと 機首を風上に向けて
飛行機は 滑走路延長線上を アプローチさせる方法です クラブといいます
これは 英語の カニです 横向きで 飛ぶからでしょうか?
多くの 旅客機は この方法で アプローチします

もうひとつは ウイングローと言われる方法です
風上側の 翼を下げて バンクを取って 
それによる 機首の流れを 反対側の ラダーを踏んで うち消して
滑走路延長線上を 飛行する物です
これは テクニック的に 難しいです
その上 大きなバンクを 取ると 揚力が減るし
極端な場合は 主翼が 最初に地面に 接地してしまいます

今度は 接地を考えます
クラブ方法は 機首方向と 飛行機の進行方向が 違ってきます
そこで 接地時には 主脚に 大きな 横応力が かかります
タイヤのグリップが 大きい場合には 主脚の破壊に つながります
ですから 極端に 横風が 大きい場合には クラブのままでの 接地は 避けた方が良いようです
ちなみに B−52は クラブで接地しても 脚だけは 滑走路方向を 向いているように 作られていようそうです
まあ この飛行機は 主翼が長いので ウイングローでの 接地が不可能なのでしょう

次に ウイングローでの 接地ですが
僅かな バンクを取っているので 風上側の 主脚から 片足接地になります
かなり 不安定な 状況になります
ぼくは ウイングロー苦手です 上手にできません 
理論もよくわかってないし・・・・・

通常は アプローチは クラブ 接地は ウイングローで やられるようです
これが 一番簡単な 方法となります

これで 無事接地まで こぎ着けました
今度は 停止までの 操作です
これは 離陸時と同じですが 問題は
離陸の時よりも 停止の時の方が 時間がかかるので
風との 戦いの時間が 長いことです
離陸時には えいいや〜で操舵しても なんとか 浮かべても
停止時には そうは いきません
細心の注意をはらって 風を読みながら 減速しなくてはいません

通常は 接地と 同時に 出来るだけはやく 脚に荷重をかけて 
タイヤの グリップ力に 期待します
こうなれば 車と同じになりますから

それと同時に 風上側の翼の 上がりを防ぐために 風上側に操縦桿を倒します
これも 飛行機の動きを見ながら やらないと 反対側の翼が上がってしまいます
この状態で 滑走路中心線上を 進むように ラダーを操舵します
前輪が 着いたなら ステアリングを使って 滑走路から 出ないように 操作します
たぶん パイロットが 一番緊張するときです

多くの 事故も このときに起こっています
滑走路からの 逸脱は 
脚の破壊 翼の接地 胴体の破れ 燃料流出 火災! へと 確実につながりますから・・・


今回は 風のお話でしたが
パイロットは 常に風と戦っています
いつでも 風の方向と 強さを 考えています
さもないと 目的地に行けないばかりか
離陸 着陸も できません

また 風は 一定ではありません
息継ぎをしたり 渦を巻いていたり 雲を発生させたりして
なんとか パイロットを困らせようと しています

やっぱ 風の無い日に 飛びたいな〜