All Weather


最近の飛行機はAll Weatherです
どんな天気でも飛べます
嘘ですが・・・・・

All Weatherとは
「雲の中でも飛べますよ」と言う程度の事です
台風の中や、雷雲の中や、竜巻の中でも飛べる訳ではありません
当たり前か・・・・・・

ここで大きな矛盾があります
試験飛行は昼間VMC
雲に入ってはいけないんです(日本の話)
ではどうやって雲の中の飛行の安全を保障するのでしょう

本来飛行機の安全や性能は飛行試験で
証明しなくてはいけません
しかし試験はVMC
IMCでは試験が許可になりません
どうするんでしょう

答えは
どうもしないんです
理論的に保証しちゃうんです
飛行試験はしないんです

雨漏り試験やワイパー試験は地上停止状態でします
計器類は、VMC状態で飛んでいるときに
外界の景色を遮断してやります

この程度で全天候を保証しちゃうんです
おかしいでしょう
まあいいや、そんなことは担当者にお任せして

お天気のお話です


お天気は、飛行機にとってとても大事な情報です
これは、飛行機がいかにお天気に左右されるかの証明です

飛行機の免許の試験でも
お天気に対する質問の量は、ばかげてます
飛行機の質問より、お天気の質問の方が多いくらいです

それぐらい、飛行機はお天気に弱いんです
車でドライブに行くときに
お天気が気になるのは
向こうで遊べるかどうかで気になるので
目的地が快晴なら
途中がどんなに土砂降りでも
みんな出発します

でも飛行機は行きません
天気に弱いからです

TVでは台風が来る度に
飛行場で止まっている大型航空機が並んでいるのを
放送して、何便欠航しました
とか言っていますが
みんなそれで納得してます
どうして怒らないのでしょうか

電車やバスがその度に止まっていたら
みんなかんかんです

飛行機は甘く見られてるのでしょう
これでは本当のメジャーな輸送機関にはなれません

ちょっと話がずれました

お天気の話です
みなさんセントエルモの火
見たことありますか

青白く光って
自分の回りを動き回るやつです

見たことの無い人のために
そのイメージを言うと
悪者の怪獣が
ウルトラマンのスペシューム光線を浴びたときに
怪獣が爆発する前に
体中に稲光みたいな物が
ジージー言って
走るやつをご存じですか

例がちょと古いか
では、悪者の怪獣が
ギンガマンにやられた時
怪獣が爆発する前に
体中に稲光みたいな物が
ジージー言って
走るやつです

ピカチューが
ニャースをやっつけるときに
出す光線
これなら分かるかな

でもピカチューの光線は
イメージが
ちょっと違うかな

そんな感じの光りです

これに遭遇するためには
先ず青白い雲を探します
夏の入道雲なんかいいですね
それも発達段階のやつで、元気があるやつ
中に入ると真っ暗になっちゃうぐらいがいいな

普通はこの手の雲は
墜落したくないので、避けて飛びます
しかし、層雲形の雲の中にあると
発見できずに、突入してしまいます
すると、セントエルモの火に会えるのです

先ずはキャノピーの前方が
何となく青白くなります
何だろうと思っていると
フレームの辺で、光る物が走ります
目を向けるともういません
すると別の場所で光る何かがまた走ります
徐々にその光る物の数が増えて
ガラス面にも走るようになります

だんだんそれが激しくなり
常時前方の窓に光りが走るようになります
そして、自分の手を見ると
青白く光っています

もうこれで飛行機全体が帯電して
大きな電荷を持っています
静電気の塊です
後は最後の瞬間を待つだけです

強烈な電界の中で鳥肌を立てていると
「ドカン」といって
電気が逃げていきます
運が良ければ、これだけですが

日頃の行いが悪いと
電気が逃げる瞬間に
飛行機の部品も飛んでいきます
通常はナビゲイションライトのカバーだとか
アンテナの一部だとかが飛んでいきますが
本当に行いが悪いと
レドームとか垂直尾翼だとか主翼だとかが飛んでいきます

だから、みんなパイロットは日頃の行いが良いんです

時には何の前触れもなく
雷が落ちることがあります
通常は、軽いショックと閃光だけの経験で済みますが
運が悪いと上と同じ状況になります

雲中飛行で怖いのはこればかりではありません
最も多く発生するのが
着氷です

これは過冷却水が飛行機に当たって
そこで固形化して、氷の塊になることです

氷が付着すると
飛行機の抵抗が増すばかりか
翼型を変えてしまいますので
設計者の意図通り飛行機は飛ばなくなります
ひどいときには、動翼に付着し
飛行機をアンコントロールにします

最も怖いのが
氷のために重量が重くなり
なた抵抗で性能低下して
所望の高度を飛べなくなって
徐々に高度が下がり
安全高度を切って
山にぶつかっちゃう事です

またエンジン空気取り入れ口に付いた氷が
はがれてエンジンに吸い込まれ
エンジンを壊したこともあります

このためIFR可能な飛行機には
数多くの防氷除氷装置が付いています

雨そのものも困りものです
余りにも多い雨は
エンジンの火を消します
また雨は視界を狭くし
また視程も落とします

もっとたちの悪いのが
雪です
雪は風防にくっつき
完全に視界を妨げます
また、雪は着陸灯などの光りを乱反射させ
パイロットに幻惑を生まれさせます

特にワイパーのない戦闘機にとって
雪は敵機と同等の驚異です

また風は見えない障害です
空には猫がいて
いつでも飛行機を落とそうとしています

特に日本上空はJET気流なる
100kts程の神風が毎日吹いていて
その回りにはたくさんの猫がいます

CATは、世界で多くの飛行機を落としています
最近はダウンバーストの方が有名になりましたが
猫の恐怖は、依然として存在します

また最も問題となるのは
着陸時の風です
正面風なら問題ありませんが
横に振られると、大変です

横風は着陸を何倍も難しくします
アプローチもクラブやウイングローを使わなくてはいけません
足の弱い飛行機では
これを併用しなくてはいけません
こうなると
自分で何の操作をしているのかが分からなくなって
運を天にまかせた着陸になってしまいます

機首は風上に向いて
風上側にバンクを取って
逆ラダーを踏んで
沈みを支えなくてはなりません
その上接地時には
機首を滑走路に平行にしなくてはいけません

私にとってこれは不可能なことです


やはり
飛ぶときは
快晴で風の穏やかな日に限ります
みなさんもお天気の悪いときには、飛行機に乗るの止めましょう
命が惜しければ・・・・・・