Spinは飛行機にとって
そんなに特別な飛行状況ではありません
水平直線飛行と同じように釣り合いのとれた安定した飛行です
ただし空力的には安定していても
パイロットにとっては過酷なものです
普通スピンはジェト機では禁止されています
等の理由が上げられます
今回はその中でも数少ないスピン可能なJET飛行機の
T−33によるSpinを紹介します
T−4やT−1もSpin可能ですが
今回は、古典的Spinモードが発生するT−33を取り上げました
だいたいの飛行機は失速直前もしくは失速中に
ラダーを思い切り蹴ることでSpinに入れることが出来ます
ラダーと言っても某女史ではありません
某女史を足蹴にしたらこの業界で生きていけなくなります
さて Spinの基本は片方の翼だけを失速させて
自転運動を発生させ
それを継続させることで楽しむ事ができます
これは背面でも可能で
このほうがより簡単にSpinに入りますが
背面Spinは直ぐに回復可能ですし
マイナスGがかかるのであまりおすすめ出来ません
やるんだったら 正立のSpinです
T−33の場合は、いろんな方法で入れることが出来ます
そして、エントリーの方法でSpinモードも違います
先ず1G失速からのSpinです
30000feetぐらいまで上昇します
これはかなり大変な作業です
上昇に30分ぐらいかかります
またその間に130マイルぐらい出ていきます
30000feetで適当な速度にトリムします
これを間違えると、ひどい目に遭いますので注意が必要です
トリムしたら徐々に速度を減らします
できればTIPの燃料は無い方がいいです
失速に近づくと心地よいバフェットが発生します
そうしたら
スティックを手前いっぱいまで引いて
どちらかのラダーをいっぱい踏み込みます
ここで注意しなくてはいけないのが
エルロンです
エルロンが入っているとカップリングを起こし
オーバーGや機体破壊や背面Spinになります
だから真っ直ぐ引きます
真っ直ぐ手前に引くことを教える時には
ある方向に引けと言うんですが
女性の場合はどう教えるんでしょう・・・・・
さて真っ直ぐ引いて ラダーを蹴ると
「ガッガッッガ」という音がして
旋転を始めます
なんで音がするのかは分かりませんが
これぞSpinの音だよと言う音がします
旋転の周期は1旋転3〜5秒程度でしょうか
そんなにすごい旋転ではありません
充分楽しめる運動です
横Gもたいしたことなく、緊張していると感じない程度です
1旋転目はゆっくり横転します
機首もそれほど下を向かずに
機首の水平線上の上下が観測されます
高度ロスは300feet程度で
小さなバレルロールかなと思います
2旋転目はややロール速度が高まり
機首がやや下を向きます
高度ロスは600feet程度です
3旋転目はほぼ真下を向きます
それで失速状態です
旋転速度は早まり
下を向いたエルロンロールの様です
高度低下は1000feet程度です
この頃になると
下手をするとカップリングが起こりそうな感じが発生します
それは体にかかるGが不規則に変化する事です
体が左右に振られ 時にはシートから体が浮きそうになります
この間スティックとラダーは入れっぱなしです
うっかり手や足を離してしまうと
T−33は基本的にはすべてケーブルで直接各舵につながっているので
空気の反作用で各舵があばれて
変なモーションが発生する危険があります
3旋転を確認したら
そろそろ回復操作したほうが無難です
それ以上はMIL−83691Aでも保証していません
回復は簡単です
旋転と反対側のラダーを踏みます
多分ラダーだけは失速していないので
旋転を止めてくれます
ただし踏みすぎると
逆のSpinに入りますので
ほどほどの操作が必要です
旋転が止まったら
スティックを中立位置まで戻します
中立位置とは だいたい真ん中へんです
この際ちょっとでもスティックを前に出しすぎると
突然背面失速に入り
大きな−Gがかかって
飛行機が壊れて
パイロットはレッドアウトしてしまいます
きーつけましょう
うまく旋転が止まって
下を向いて加速していけば
回復操作成功です
時によれば、意図しないロールが発生する場合がありますが
これは無視します
これを止めようとするとまたSpinに入る可能性があるので
無視するほかありません
このロールがSpinからの回復によるロールなのか
それともSpinなのかを判断するには
たくさんの計器を参考にして
現在はどのロールなのかを判断しなくてはなりません
一番確かなのは迎え角計ですが
普通のT−33には付いていないので
長年の経験で判断します
リカバリー中に発生するロールは
1〜2旋転で自動的に消滅して
真下を向いた姿勢で止まります
そしたら急降下リカバリーです
多分速度は1.3Vs程度はあるでしょう
しかしここで急激に引くと
2次失速に入りますので
ちょっと待って増速を確認しましょう
1.5Vs以上になったら
ゆっくり引き起こしを開始します
ただしオーバーバンクしてるかも知れないので
水平線に近い方にロールして
引き上げた方が地上に到達するまでの高度を稼げます
この操作をうまくやれば
合計10000feet程度の高度損失で
リカバリーすることが可能です
リカバリーしたら
もうあなたは33のSpinが面白くなります
今度はHighGでのSpinです
上昇速度まで加速して
また30000feetまで上ります
20000から30000までは10分程度で上がれます
その間に飛行機の調子を確認すればGoodです
たまにはプレートがとんでたり
操縦系統がおかしかったり
よけいなものがコックピット内に飛び散ってたりしますので
入念な点検を推奨します
30000まで上がったら
覚悟を決めます
HIigh G Spinは1Gとは全く異なります
その激しさは、マッドマウスの様です
(ちいちゃいけど目茶怖いジェットコースター)
充分加速します
加速中にトリムOFFします
そしてて70度バンク程度に入れて
好きなGをかけます
初心者は2Gぐらいがいいでしょう
エントリーGが大きければ大きいほど
Spinは激しくなります
だから最初は少ないGでしましょう
どちらのラダーを踏むかでもモードが異なります
易しいのは旋回側のラダーです
逆ラダーでSpinに入れると
飛行機は大丈夫ですが
なれてないパイロットは飛行姿勢の判断が付かなくなります
どちらにしても想像以上のSpinを体験できます
これも3旋転で終了させます
ただし旋転数を数えられればですが・・・・・・
あまりにも想像と異なる運動なので
いつ1旋転したかはよく分かりません
ロールとヨーがひっちゃかめっちゃかですから
だから旋転開始して15秒ぐらいたったら
逆ラダーを踏んで
リカバリーするようにしましょう
これだけやるともうSpinは怖くはありません
どんな飛行機でもやってみたくなります
でも
JET戦闘機の多くは機体の安定性が低いので
Spinに入れられても
リカバリーが出来ない機種がおおいので
あんまり安易にSpinに入れない方がいいでしょう
特にF−4では確実にリカバリー出来無いことが
実機試験により証明されています
日頃F−4に乗られてる方はお気をつけ下さい
最後に蛇足ながら
T−33の様に古典的飛行機は
ジャイロも古典的です
Spinの後は姿勢指示器や進路指示器は
あっちむいてほい!です
これを信じると飛行場まで帰れません
ですからお天気の良い日にするようにして
太陽の方向や雲の位置を覚えておいて
帰りの方向や自分の姿勢を失わないようにすることが
最も重要です
残念な事にT−33はもう無くなります
T−4でのSpinは、面白いんですが
気分が悪くなります
酔っちゃいます
今後は気楽に楽しめるT−4のスピンモードを見つけて
楽しみたい物です