Flight Performance


性能
簡単な言葉ですが、飛行機、特に戦闘機にとっては
とても大事な要件です
極端に言えば特性よりも性能です
言い換えれば、扱い易さよりも物理的能力を求めるのです

車で言えば
乗り心地よりもスピードでしょうか
一部のマニアはあえてこちらを選びますが
常識的な一般人は、乗り心地を選ぶでしょう
(私が年取ったせいで、こう思うのかな)
(そう言えば、昔はガチガチのサスペンションのスポーツタイプの車でしたが
今は、普通のセダンです。私の話)

では戦闘機の性能で重要なのは何でしょう

先ず思いつくのが速度です
最高速度と思われがちですが
そうではないのです

最高速度は、超音速飛行でも述べたように
機体の材質とエンジンインテイクの制限で決められていますので
通常の戦闘機ではどれもMach2.2〜2.5程度で同じです
昔はフラッター限界が速度限界でしたが
今は、空力設計と構造設計がしっかりしているために
動圧での制限よりもMachでの制限が先に来ます

そこで
本当に重要なのは、加速性能だ」と思います
(個人的かな?)
加速性能とは、ある速度からある速度まで
いかに早く加速できるかです
300ktsから450ktsまで早く行ける方が
戦闘では重要になります

最高速度がMach2.5の飛行機でも
.9から1.5まで30秒かかる機体なら
最高速度がMach2.0でも
同じ加速が
25秒なら戦闘では後者が生きて帰れます

戦闘ではたくさんの運動エネルギーを使います
そのため戦闘時間の二乗に比例して速度が減ります
これを敵の隙を見ていかに早く運動エネルギーを
回復するかで
戦闘の勝敗が決定します

戦闘中は
戦闘機の速度は、想像以上に
急激に減ります

F−1などは450ktsで急旋回すると
180度回ったところでは250ktsぐらいになっています

F−15でも同じ速度で最大Gで旋回すると
高度にもよりますが
20000feet程度だと
後ろを向いた時には350kts程度になっています

F−4では300kts程度でしょうか

当然各機最大推力です

この違いは何から生じるのでしょう
それはPsとCdiです
Psは余剰推力
Cdiは誘導抵抗です

Psはその速度での余っている力
エンジンとインテイクの性能です
同じエンジンでもインテイクの設計いかんによって推力が変わります
戦闘機の様にエンジンが機体の内部後方にある飛行機は
インテイクが長くなり時には曲線を描きます
これによって空気取り入れ効率が低下し推力に影響します

最近の例ではF−2の設計で起こったお話です
F−2はどう見てもF−16です
しかし垂直尾翼を除いて全て外形はF−16と異なります
主翼、尾翼、胴体、インテイク全て日本で線を引き直しました
だから相似形ではないのです
しかし似ていますが
パジェロとプラドぐらいの差はあります
いやパジェロミニとパジェロjrぐらいかな
(そんなら同じじゃん・・・・・天の声)

さて、それはともかくインテイクのお話です
F−2では当然インテイクもいろいろな理由で変更しました
変更理由は、長くなるので割愛します

この作業は、GDを怒らせました
「インテイクは戦闘機の命」
「最良のインテイクがF−16に付いているのに
なぜ日本はいじっちゃうのか」
と、英語で言いました

そう言えば昔F−104は発表当時インテイクに
カバーを架けて隠してあった写真が残っています
それは画期的なコーンを持った戦闘機であったので
その技術と性能を隠すためにそうしたそうです
その当時はいかに実用機で音速を越えるかを
米国内のメーカばかりではなくソ連とも競争していたからです

それほどまでにインテイクは重要なのです
それは戦闘機の戦闘能力を決定するからです

ところでF−2のインテイクは
実物試験でF−16よりも良い性能が出てしまい
それ以来GDは特にコメントを述べなくなったそうです
日本のエンジニアの能力の一部を米国に披露しましたとさ
又聞きの話ですが・・・・・・・

さて次はCdi誘導抵抗です
翼は揚力を発生しします
揚力を発生させればさせるほど抵抗が増えます
失速までですが

それ故、空中戦闘のような大きなGを発生させる運動は
大きな迎え角を生み、誘導抵抗の増加を引き起こします
言い換えれば 運動すれば抵抗が増え減速してしまいます

Cdiは、あくまでも空力の問題です
設計で決まります
しかし戦闘機はいろいろの理由で翼面荷重が大きくできてます
こような翼でいかにCdiを減らすかは
各国、極秘でデーターは公表されません
できあがった飛行機は実物があるので
分かってしまいますが
重要なのは設計時に検討した
別の翼の形やアスペクト比や翼厚のデータです
この積み上げがノウハウになるのですが
我が国では、全ての機種を合わせても
航空機開発は20年に1度では
そのデータは次の設計では古典理論になっています

このPsとCdiを合わせた物が
戦闘機で最も重要な速度の性能です

いわゆるサステインGです

加速ばかりですが
戦闘機は減速性能も重要です
400ktsからいかに200ktsまで急激に減速するか
これも戦闘を左右します
格闘戦で絡んだ場合
いかに早く敵よりも低速にして
敵の後ろに回り込むかで生死が分かれます

また最近ではポストスールマヌーバーとかで
いあかに低速で飛行するかが重要になって
低速性能も重視されています

速度の話はこのくらいにして
運動性能の一つの
横転率性能です
これはロールレートです
いかに早く横転するかです

普通の戦闘機は
360度フルエルロンロールの所要時間は2秒強です
約2秒で360度、機軸に対して回ります
C−172でやったら10秒ぐらいでしょうか
(多分禁止されている、オーナーの方はやらないように!)
T−4の試作試験機では360度を1.7秒でした
(参考:量産期は性能落としてあります)

どちらにしても
背面まで約1秒です
これはすざましい横転率です
スティックをちょっと倒せばすぐ背面です
初めて乗った人は、度肝を抜かれます
多分F−1スポーツカーの比ではありません
(F−1乗ったこと無いので・・・・)

この横転率を発生させるのは
エルロンです
しかしこれにも限界があります
そこで現代の戦闘機はスタビレータも
ロールモーメントを発生させるために
左右非対称に切ります
これでも足り無いので
ラダーもロールモーメントが発生するように傾けます
(各舵の動きは別のHPページで)
やや内容が食い違いますが・・・・・・・

さて何故、横転率が重要なんでしょうか
戦闘はいかに飛行機の運動方向を変えるかです
運動方向の変更の基本は水平方向への変更です
真っ直ぐの飛行から左右への変針です
それは横転でします
バンクを取って飛行して進路を変えるのです
これを速くするためには
早くバンクを確立する事です
そのために速い横転率が必要なのです

横転中は、旋回が期待できませんので
もし90度バンク取るのに3秒かかると
180度旋回にはロールアウトも含め6秒の
無駄時間が発生します
これはちょっと極端ですが

現在の戦闘機は180度変針するのに
18秒程度です
後ろに向くのに18秒
1秒で10度
かなり速いレートです

バンク確立に1秒以上かかっていては
変針に20秒以上かかってしまいます
この3秒がFOX2を自分の背中に刺します

まだまだ性能の話はありますが
ちょっと眠くなったのでこの辺で

次は性能の2でも作ります