High Altitude Mission


高高度飛行
これは、多くの危険性を持った飛行です
ただ単に高い高度を飛ぶだけですが
命がけです

通常高高度とは50000feet以上を言います
現在はこのような高高度を飛ぶことはあまりありません
なぜなら、飛ぶ意味が無いからです

かつては、高い高度を飛行すれば
ミサイルの射程圏外となり
撃墜される可能性はなく
有効な戦術の1つでした

しかし現在は、80000feet程度の高さであれば
簡単に地上からのミサイルで撃ち落とせます
だからだれも飛ばないのです
それ以上に飛行自体の危険性が高いからです

今はより低く飛んで
レーダーからいかに逃れるかが
戦術になりました
そのため世界で活躍中の戦闘機のほとんどは
高高度飛行には適さないような設計になってます

ちなみに我が国の戦闘機では
F−4EJのみが
高高度飛行が可能になっています
それは、敵の攻撃を避けるためではなく
高高度を飛行してくる敵の爆撃機を落とすためです

それでは高高度飛行方法です
高く上がることは、超音速飛行よりも
高度なテクニックが必要です

通常飛行機は各種上昇限度があります
絶対上昇限度
実用上昇限度
戦闘上昇限度 等
考え方によって色々あります

しかし簡単に考えれば
最大パワーで水平飛行可能な最高高度が上昇限界高度です
戦闘機でもその限界は50000feet程度で
それ以上にはいくら時間をかけても定常状態では
上昇できません

ではどうやってそれ以上に上昇するのでしょう
それはズーム上昇方です
適当な高度で、適当な速度に加速します
これは飛行機によって異なりますが
F−4の場合は
40000feet Mach1.5程度が良いようです
15なら
45000feet Mach1.6程度が妥当でしょうか
F−1だと
36000feet Mach1.2程度でしょうか
F−2はまだやったことがありませんが
性能的には15と同じ程度でいいでしょう

何しろ
そこまで、なんとか加速します
加速が終わったなら
2〜3Gで30度〜50度程度に機首を引き起こします
引き起こし角度は目標高度によって異なります
物理的には、どんな機首上げでも
同じ高度ですが
実際は、空気抵抗のために
やや上向きの方が有利のようです
ただしあまり引き起こし角が大きいと
リカバリー出来なくなってしまいますので
ほどほどにします

この際に急激に引き起こすと
予想外の減速が発生しますので
注意が必要です

引き起こしが終わったなら
プッシュオーバーして
AOAを最小抵抗位置にします
これは飛行機によって異なりますが
一般的には自分にかかるGを0.1〜0.3G程度が良い感じです
0Gがいいんですが、エンジンが焼け切れる可能性がありますので
適当な+Gが必要です

すると減速と共に
高度がぐんぐん上がります

高度の上昇と共に空の色が変わり
どんどん暗黒の世界に引き込まれます
80000feet付近では
もう宇宙空間の様です
空は深い紺色
地球は丸く見え
その表面に、薄く水色に輝く空気の層が見えます
まるで、スペースシャトルから撮った写真の様です

そして飛行の頂点へ
弾道飛行のTOPです

飛行機はふらふら
外は静寂
エンジンは消える寸前
スティックはスカスカです
エアコンもあえぎ始めます
飛行機はただの物体です
かろうじて姿勢制御が出来る程度です
しかし、機首上げに失敗していると
この時点でアンコントロールに陥り
デパーチャーしてしまいます

本来はここでFOX−1
現在米国ではF−15が、敵の爆撃機をねらうのではなく
比較的低高度軌道を回っている
スパイ衛生を打ち落とすのにこの戦法を
研究中とのことです

最高の出来であればTOPで
150kts IAS
姿勢は水平
エンジン全開が理想的です

ここで高高度の環境につて
少し説明させていただきます

コックピットの中は出来るだけ良い環境に
しようと設計されています
しかしその限界は存在します

大気は極めて薄い物です
エレベータに乗っても
気圧の変化は分かります
18000feetで気圧は1/2
27000feetで1/3
38000feetで1/5
50000feetで1/10と
加速度的に気圧は低くなります

コックピット内は与圧され
常に外気圧+5psiの圧力がかかりように
設計されていますが
1気圧が14.7psiなので
だいたい外気圧+1/3気圧が
操縦席内の気圧になります
民間機の場合は、もっと高い圧力が
かかっており、快適な空間を作っています

戦闘機の場合は
弾が当たることを前提に設計されているので
あまり高い与圧をかけておくと
被弾した場合に
風船が爆発するような現象を引き起こし
一瞬で分解してしまいますので
圧力は低めに設定してあります

通常40000feet飛行中のコックピット内の環境は
16000feet程度
富士山の1.5倍ぐらいの高度です
酸素量は地上の半分
気温は真夏でも氷点下
おなかの中身は2倍に膨れ上がります

山登りでは数時間
もしくは数日を使って
徐々に高度を上げて
体を慣らすとが出来ますが
戦闘機の場合は
数分でこの環境に飛び込むのです

この環境で何もしなければ
簡単に高山病にかかり
そのまま意識を失い帰らぬ人に
なってしまいます

そこで戦闘機のパイロットは
常に酸素マスクをして
外圧に反比例した
濃度の高い酸素を吸っているのです
これは通常の飛行の場合です

高高度を飛行する場合は
これでは足りないため
服装は大きく異なります

通常の装備では簡単に死んじゃいます
だから、宇宙服の様なプレシャースーツなる
飛行服を着用します
これは全身を完全に包み込む服装です
特に首から上は
重要で、首の部分は個人専用の特注品です
ヘルメットも球形の金魚鉢
ジェミニ計画時代の宇宙服です

このスーツは、全身から指先まで圧力がかかり
ほとんど動きのとれない状態となります
風船の中にいるようなものです

また高高度では体内の窒素が
関節等で気泡化し、激痛を発生させますので
飛行前に、十分な酸素を体内に入れ
窒素分を追い出しておかなければなりません
そのため飛行前
プレシャースーツを着用し
約1時間程度純酸素を吸い続けてからの
飛行になります

ちょっと前の宇宙飛行士も同じようにして飛行してるようです
ロケットに乗り込むときに
大きなトランクのような箱を手にさげていますが
あれが純酸素を供給する物です

高高度飛行で最も危険なのが
急減圧です
たとえば60000feet越して
上昇中に
何らかの原因で与圧が抜けたとします

プレッシャースーツを着てない場合には
パイロットは瞬時に外の環境にさらされます
60000feet以上はどう考えても
ほ乳類が存在し得る環境ではありません

ー56度Cの寒さで震える程度では済みません
先ず酸素がないので、数秒で意識はなくなります
また気圧が極端に低いので
37度Cの血液が沸騰します
こんな中でがんばれるのは
宇宙人だけです

怖い話は別の機会に回すとして

降下が始まります

降下には上昇以上の時間が必要です
飛行機は上昇するのも大変ですが
降下も想像以上に大変なのです

飛行TOP高度では
飛行機はただの物体です
降下もたた落ちるだけの
無重力弾道飛行の後半です

そとは濃紺の空にギラギラ輝く太陽だけ
下には、水色の地球
その中を引力に引かれて落下していきます
50000feetを通過する付近から
飛行機らしくなり
エンジンも反応し
コントロールも利き始めます

40000feet通過
ここまで降りてくれば
立派な飛行機
あとは通常操縦で
RTBするだけです