筆者が最近お疲れ気味なので代打ちじゃなかった代書きします。

Cajun 


FUEL

 

FUELと書いてもちっとも「ふえる」ものではなくて

ただひたすら「減る」ものです。

 

昔の飛行機乗り(といっても今の飛行機乗りのおっさん臭い奴も)は

何かというとすぐこのFUELを「血の一滴」というふうに表現します。

 

ほとんどの飛行機は羽根と胴体の中にこのFUELを積んでます。

なかには羽根を包丁の化け物にして中に燃料を積むことを

忘れてしまったF−104というのもありました。

 

量としてはF−15イーグルでドラム缶約40本(1本が200リットル)、

落下タンクを3つ付けると約75本。

ジャンボジェットで何と約1000本ぐらい積むことができます。

JET−1AとかJET−1B(軍用ではJP−4とかJP−8)

とか呼ばれていますが、

中身はケロシンという重油の上澄みみたいなもんです。

簡単にいえば灯油の元気のいい奴と理解していいと思います。

(ストーブに入れても大丈夫ですが、

 ストーブが元気良すぎて真っ赤になって燃えます。

 消防署の人ごめんなさい。)

 

F15の場合、1リットルで350メートルぐらいの

燃費です。(大人しく飛んで)

これはみんなの車に比べると悪い燃費ですが、

戦車と大体同じです。

よって満タンで5000kmぐらい行けます。(千歳から台湾ぐらい)

でもコンバットでアフターバーナー炊きっぱなしにすると

20分ぐらいで帰らないといけません。

 

ジャンボは成田からニューヨークまで余裕で行けますが、

図体がでかいので燃費としては何と1リットルで100メートルも行けません。

 

私が若かった頃

F−4で百里基地から硫黄島へ行きました。

天気はとってもいいという予報でした。

新人の後輩を2番機の前席にして

私はその後席に納まりました。

それまでに3度ほど行ったことがあったので

ほぼピクニック気分でした。

 

百里を離陸して間もなく銚子の上あたりで

TACANが受信できなくなりました。

前席の後輩が「先輩・・TACANが・・」

と心配し出しました。

「大丈夫だア、1番機についていけば。」

 

父島のあたりでINSの具合もおかしくなりました。

「天気もいいし!そのうち島が見えるベ」

 

レーダーを200マイルスケールにして

硫黄島を映し出して前席を安心させてやろうと

しました。が・・、

硫黄島がいっぱいうつってます。あれっ!?

その時20分ほど先行して移動していた第1編隊の

編隊長が「・・ガリッ・・ガ・・」と何か言いだしましたが

聞き取れません。

しばらくしてやっと聞き取れました。

「もう、降りれないからな!!俺は先に降りるぞ!」

「はあ???・・」

 

状況がわかりました。

天気がいいという予報は大はずれ!

レーダーにいっぱい映っていた硫黄島は

積乱雲の群れでした。

 

でもまだ燃料は1時間分残ってました。(百里までは戻れないけど・・)

「そのうち抜けるべ」

1番機にとりあえずPARで進入させました。(いつの間にか

私が編隊長のような指示を出していました。:反省。)

5分後1番機は誘導限界まで進入したものの

なあんにも見えずに進入復行してきました。

この間、私の機はTACANもINSも壊れているため

航空自衛隊の硫黄島レーダーサイトの監視を受けて島の西、

高度30000フィートで待機していました。

と、その時そのレーダーサイトに落雷してウンともスンとも

言わなくなりました。

つまり、自分がどこにいるのかわからなくなりました。

 

トップが50000フィートもあろうかという入道雲を基準にして

1番機を導いて何とか空中集合しました。

「おい、ここはどこだ?」

 

その頃島では先に降りた4機のF−4のパイロットたちが

指揮所の中で1時間あたり100ミリという本土では経験できないような

ど・ど・どしゃぶりの雷雨を目の当たりにしてボーゼンとしていました。

 

「予報官が後15分ほどで抜けると言ってるゾ!」という

指揮所の無線機の声を聞いて「そりゃそーだよなあ。お願いしますヨ」

と前席を慰めていた。

約15分後、「もう15分ぐらいだそうだ」「あ、そ」

このやりとりを3回

ということは、かれこれ45分

「あの・・燃料無いんですけど・・」

「おう!ベイルアウトするかもしれんからシートベルトを確認しておけ!」

(1時間前と言うことが完全に違ってる。)

 

日頃無信心だけどこの時ばかりは

「もう2度と飛ばないから、今日だけは許してくれ、降ろさせて・・」

と真剣に神様にお願いしてしまった。

 

冗談抜きに燃料がない!

身軽になるために3つも付けていた増漕タンクを投棄

「空中給油機があればな〜」

「燃料ほしいな〜」

 

1番機に「おい、降りるぞ!ファイナルへ連れてけ!」といって

2機で積乱雲へ突入!むちゃくちゃなタービュランス!真っ暗!!「びぇ〜・・」

「ここが20マイルファイナルで〜す。」という1番機を

1サークルさせて10マイル後ろにいれさせて

ファイナルコントローラーを呼び出す

帝国海軍の管制官、状況がわかってない。心もとない反応

「15マイル付近に何か映ってるだろ!!」

何とか誘導を始めたがとにかくすごい雨!

 

誘導限界点・・

見えない!!

滑走路が見えない!!

対地200フィートなのに更に下にシーリング層がある。

残念料500ポンド!あと5〜6分しか飛べない!

「だめだ!!」後席からパワーを入れる。 ベイルアウトか・・

「あった!あった!!」前席がわめきだした。

「降りますよ〜!!」・・滑走路を見つけたらしいけど豪雨でなんだかわからない!

「おう!降りろ降りろ!(なんだかわからないけど・・)」

 

60°以上のバンクを取ってつっこんでいく先に・・見えた・・

とても降りられないような角度で滑走路が見えた。

無理矢理ひねり込んだためにかなりのアングルができた滑走路に

アラインするために今度は逆のバンクで切り返す!「ギョエ〜!!」

 

墜ちた。滑走路の上に

ドチャ〜ん。「+6G、−4GハードランディングのオーバーGだ」

と思ったのは冷静になった約5分後のこと

接地が2000フィートぐらいホットになったのと

ウェットランウェイなのでヒットバリヤーしか止まる手だてはない。

はずだった。いま性能書を調べてもやっぱり止まれない。

アレスティングワイヤーに引っかけるしかない。

でも奇跡が起こった。

 

ヒットバリヤーすると飛行機を滑走路から出して復帰させるまでに

15分ぐらい要する。

つまり後ろから来ている1番機は降りられない。燃料切れ

 

前席はハナからヒットするつもりでフックを下げていた。

でもドチャ〜ンと墜ちて減速したためか残りの距離からすると

「と・止まれるんじゃないか?」「おいフックあげろ!」

 

「フックをあげたファントムは水しぶきを上げながら

全力のブレーキでオーバーランまで突っ込んで

と・ま・っ・た。

 

「バリヤーは生きてるゾ!デパーチャーのもセンターのも全部使えるゾ!」

オーバーランでUターンして滑走路を解放し、

1番機の周波数に換えて絶叫!

 

滝のような雨のカーテンの中から

ぼーっと見えてきたランディングライトが

ものすごい水しぶきを上げた1番機であることが

わかったのはその1分後。

100ノット以上の速度でオーバーランへ

引っかかった!!止まった!!

残燃料400ポンド

そして1番機も+7G、−4Gでハードランディング・・

 

飛行機2機共ちょっと壊したけどなんとか降りました。

燃料って大切です。

トラブルが発生したときに任務を中止するのも大切です。

 

上空では「2度と飛ぶまい」と真剣に思いました。

でも次の日晴れ上がった空に飛んでました。

神様嘘ついてごめんなさい。

でもあのとき止まれたのは、神様の力だったと思ってます。 ども


やはり日頃の行いでFLTは左右されます
毎日良い子にしましょう

Mach