Evacuation


Emergency Evacuation
Ground Egress
地上での機外脱出です
最近民間機での、これによる負傷等が多く発生しています
戦闘機でも、それほど簡単ではありません
今回は、地上での機外脱出です

でも
基本的には車と一緒です
車を止めて
シートベルトはずして
ドアを開けて出ればいいのです


民間機では、オーバーランやハイジャック、エンジン火災等で
備え付け滑り台で脱出して、多くのけが人を発生させています
これを聞くと、民間機からの脱出も簡単ではないと痛感します

さて、戦闘機ではどうでしょうか
私は、1度経験があります
F−4の後席に搭乗していた頃
搭乗機がオフランをして、緊急停止
自力で機外に緊急脱出したことがあります
火災になるのではないかと、必死で出た記憶があります

戦闘機の場合、民間機に比べて搭乗者は厳重に座席に縛り付けられています
F−4では、ショルダーハーネス2本
シートベルト1本
サーバイバルキットに2本
足にレッグガード4本
酸素マスク
インターホンコード
Gホース
これらをみんな外さなければなりません
逆に乗り込むときには全部付けます

いちいちこれらをはずしていたのでは
間に合いませんので
ハンドルを引くと、ショルダーハーネス以外の物が
火薬の力で
パイロットから自動的に離れるようになってます
ただし火薬は怖いので
みなさん、いざという時も自分で一つづつはずしてるようです

では実際の地上脱出です
意識があり、ある程度元気が有り
飛行機が停止していれば

自分で機外へ脱出します
救助を待っていると
飛行場でも15分程度かかり
毎合わない場合があります

先ず自力脱出を決心したら
シートの射出機能を、殺します
不意にEjectionしないようにです
もし、パラシュートをはずしているのに
射出されると確実に死んでしまいます

それから、ショルダーハーネス2本をはずします
最近の戦闘機は、パラシュートが座席に備え付けで
パイロットが昔のように飛行機まで担いで行かなくても良いように
出来ています
だからパイロットはハーネスとGスーツだけを付けていけばいいのです

パイロットは、座席に取り付けられているパラシュートと
自分のハーネスでしっかり止められています
またこの取り付け部は手動のみで解放可能になってます
それは、火薬等の不時作動で
意図しないパラシュートのリリースを禁止するためです
ただし、最近は溺死防止のために
海水に浸かると、自動的にリリースされる機構がとりついている機体も
出始めています

先ずは、このショルダーハーネスを指ではずします
両肩をはずすのには両手が必要です
ここをはずすと、体が前にも動くようになります
それまでは前屈みにはなれません

次に火薬での解放をするかどうかです
火薬で一撃でやっつける場合は
しましまハンドルを引きます
すると、「バン」と言って、残りの部分がすべて解放されます
ただしコックピット内は、煙が充満します
酸素100%を忘れずに

火薬が嫌いな場合(私)は
残りを手動ではずします
最初にシートベルト
はずし方は、機種によって異なりますので
若干の慣れが必要です
ちなみにF−15、F−4はショルダーハーネスと同型のコネクターです
これも両手があると便利です

次にサーバーバルキットのコネクターをはずします
これは自分のハーネスの腰の部分の左右に1つづつついています
これも当然両手が必要です
またこれをはずすのを忘れると
立ち上がったときに、ばらばらと救命装備品がシートから
出てしまい、機外への脱出を妨げます

F−4の場合は、足を固定するためのレッグレストラントを
4本さらにはずします
これはEjectionした場合に、足が風圧でちぎれないように
するための物ですが、それ以外では必要有りません
高速でEjectionした場合は、これがとても役に立ち
座席の安定飛行と
パイロットの足の保護に不可欠です
昔のF−104はスパーといってもっとごつい物が付いていました

これでほぼ自由の身ですが
まだ残っています
それは、マスク関係と
Gホースです

マスクは触らなくても、脱出するときに勝手にコネクターから
外れる設計ですが
特に必要ないので
マスクそのものをヘルメットからはずします
そうすればインターホンコネクターや
緊急用酸素ホース
通常の酸素ホース等
すべて離れます
ただし、ハーネスに取り付けてある部分は
自分ではずす必要があります
これがめんどくさいなら
ハーネスごと脱げば、考えることはありません

ハーネスも脚帯2カ所胸帯1ヶ所で脱げますので
この方が早いかも知れません
ちなみにわたしは、ハーネスごと脱ぎます
この方が後の自分の運動の自由度が高くなります

最後にGホースです
案外これを忘れます
忘れて運が良ければ全く問題有りませんが
運が悪いとこれが命取りになります
ホースは、手でちょっとねじるようにすれば
簡単にはずれます
だから、立ち上がった方向がねじる方向ならば
何もなかった様に抜けます
ただし、方向違いだと、絶対に抜けません
このため、忘れずに手ではずした方が
良い結果が得られるでしょう

これで完全に飛行機と自分が離れます
出来れば10秒以内にやれば
飛行機と一緒に燃えなくて済むでしょう

さてこれからが大変です
脱出経路の確保です

先ずはキャノピーを開けます
うまく降りていれば
変形もなく、通常操作で
キャノピーは開くでしょうが
日頃の行いが悪ければ
開きません
開かなければ火薬で飛ばします
その辺にハンドルがあるので
それを引けば飛んでいきますが・・・・
確実に火傷するでしょう

ある機体の地上試験で
火薬によるキャノピー離脱を見学したことがありますが
コックピット内は煙で充満し
離脱後のコックピットは、部分的に完全に焦げて
ひどいところはアルミが溶けていました

またいキャノピーをいつ開けるかは
状況によります
火災等が機外で発生している場合は
やはり逃げ出す準備が出来てから
キャノピーを開けた方が良いでしょうし
コックピット内が煙で充満してる時には
最初にキャノピーを開けてから
ハーネス等をはずした方が
いいでしょう
これは趣味と状況によります

キャノピーが無事に開いたら
これからは体力勝負です

コックピットは地上から3m近くあります
運良く脚が折れて、脚無しでも2m程度はあります
飛び降りるには、勇気と体力がいります

そのままダイレクトにコックピットから
地上へ飛び降りるには
火災等で時間的余裕が全くない場合です
この場合、足の2〜3本の犠牲は覚悟です

あまり痛いのが好きでない場合は
頭が必要です

全く急ぐ必要がないのなら
機外のコックピット横の黒い線にそって足を下ろします
すると、階段が機体から出て
らくちんに、下りることが出来ます

この黒い線は、F−4や15の様に
自分で昇降用ラダーを持っている機体には必ず書いてあります
実際のパイロットでも、この線の意味を
知らない人がいるのも事実です
ためしに、だれか戦闘機乗りをつかまえて聞いてみて下さい

某HPのF−4カルトクイズ7連発にも出てません

さて、前席はそれで降りれます
F−4の場合は後席から
インテイクに上がり
それから前席に回って
ラダーを使用して降りれますが
F−15DJの場合は後席から前席に行く
経路がありません
計器板の上を通れば通れますが
その際にはキャノピーを飛ばしておかなくてはなりません

また時間的余裕が無い場合は
前席が下りるのを待っているわけにもいきません
そこで、後席の人間は、それなりに経路を確保しておかなくてはならないのです

F−4の場合は比較的簡単です
前席は正規ルートで機外へ
後席は、インテイクに登り
機体後方へ移動し
主翼上面に下りる
通常はTANKがあるので
そこに下りてから
地上へ降りれば、特に問題は発生しません
この間急げば10秒程度
足を滑らせないようにすれば
前席より早いくらいです
ただし、火災が無い場合です
さすがに燃えてる上は歩けません

しかし15やクリーンのF−4、F−1、F−2はそうはいきません

足場が全く無いのです
機体の上どこへ言っても
地上から2m程度あります
これらの機体は、仕方がないので適当なところから
ぶら下がって、地上に降ります
最も適当なのは、翼端です
この部分は上半角で、他の部分よりやや高いですが
そこへの移動は、翼上面からいけるし
他の部分は、指がかからないからです
翼端は薄いし、NAVライトやランチャーあって
比較的指を掛けやすくなってます
T−4はだめよ!翼が厚いから

指の力に自信のない方は
特別の、とっておきの方法があります

ショルダーハーネスをはずさずに
ハーネスごと脱いでおきます
他の部分をはずして、キャノピーを開いたら
ハーネスを外に捨てます
すると、縄ばしごではないですが
それに似た、状況が出現して
簡単ではないですが
足の骨を折らずに、地上に降りられます

ちなみにT−2/F−1はこの方法が使えません
なぜなら、パラシュートを背負って飛行機に行くので
しっかり機体と、パラシュートハーネスが繋がってないからです

またF−2はこの方法以外には多分無いでしょう
操縦マニュアルには、機外への降り方は明記されてないので
自由裁量の範囲なのでしょう
でも、緊急ばしごが、どこかに搭載されているので
それを見つけて利用しなさいと書いてあります
「設計したやつは、一度ぐらい自分でためしたんだろうな」
と言いたくなります

なにはともあれ
機外に出たら、速やかに機体遠方に逃げることです
いつ爆発するか分からないし
有毒ガスが発生するかも知れないし
たぶん側いて良いことはないでしょう

これだけマスターしておけば、無事に機外脱出出来るでしょう
あとは、日頃の行いと、運だけです



ちなみに、我が国では地上脱出に
Ejectionシートを故意に使用したケースはありません

ただし
不意に作動し停止している機体から、飛び出た例があります
しかし、残念ながら、2人とも失敗に終わってます
カタログ上は0−0座席でした