Drag Chute


今回は タイムリーな? ドラッグ シュートのお話です
何故 タイムリーなのかは 秘密です

F−1の シュート
F−4の シュート
F−2のシュート

戦闘機には 主に着陸滑走距離を 短縮させるために
ドラッグシュートと 呼ばれるブレーキが 装備されている場合があります
F−4やF−1やF−2に 装備されています

直径 5mぐらいの 落下傘です
今回は この ドラッグシュートの お話です            


飛行機の 運用上最も クリティカルな問題の 1つに 着陸滑走距離があります
もし 何らかの方法で 着陸滑走距離が ちょっとでも短くなれば 
飛行機の運用可能な 飛行場は 飛躍的に 増大します

離陸と着陸では その距離は
通常 着陸の方が 30%ほど 長いのが 通常です
空中に浮かぶために加速よりも
停止するための 減速の方が 距離が必要という 事です

戦闘機では 軽い状態ならば
離陸に 1500feet
着陸に 2000feetぐらい 必要です

民間機などでは エンジンの排気を 前方に出したり
プロペラピッチを 逆にして ブレーキをかけます

しかし 戦闘機は 1gでも 軽く作らなくてはいけないので
スラストリバーサーのような 重い装置は 通常装備しません
そこで 考え出されたのが ドラッグシュートです

単に 着陸時に 後方に パラシュートを出して
減速をさせる装置ですが 
その機構は それなりに考えられています
今回は そのお話です

先ずは ドラッグシュートの開傘手順を 追いながら 考えてみましょう
F−2の 手順を見てみます
  1. nose−down
  2. drag shute−deploy(as desire)
  3. brakes−as required
簡単な 記載です
要約すれば
接地後 機首を降ろして 使いたいなら シュートを広げなさい その後必要に応じて ブレーキを
使いなさい と 書いてあります
いとも 簡単な 表記ですが この3項目には 多くの意味が含まれています

基本的に 飛行機の手順書は その順番も 重要な意味があります
順番を入れ替えても 問題無い場合も ありますが
多くの手順は 順番もとても大事なのです

先ず
1の nose−down です
機首を 降ろしなさいと書かれています 
これは 命令 指示です
降ろさなくては いけないのです
F−15のように 機首をあげていてはいけないのです
予想できる理由は
  1. 空力抵抗は 期待できない
  2. 機首上げ姿勢は 不安定である
  3. 機首上げで シュートを開くと 何らかの 影響が出る
  4. その他
でも 本当に これらは正解のでしょうか

何故機首を下げてから ドラッグシュートを使うのでしょうか
F−1も ほぼ同じ様に 記載されていますが
F−4には 特に記されていません
と 言うことは F−1/F−2には 何らかの 重要な理由があるはずです

ドラッグシュート使用時の 最大の注意点は
着陸滑走時の方法保持です
風が 無いときや 正面からの 風の場合は 方向保持には 問題は出ませんが
横風が 吹いて いると
ドラッグシュートは 予想外の影響を 飛行機に発生させます 
たとえば 左から風が吹いていると
シュートは右に流されます
すると 飛行機に機首は 風上の方向 左に向きます
強い風見効果が 発生するのです

シュートを開く前は 飛行機の本来持っている風見効果だけですが
シュートを開くことによって 膨大な量の風見効果が発生するのです
風上に向いた 機首は 飛行機を 風上側に進めます
滑走路は通常 50mほどの幅ですので
中央に接地した場合 風上側に 25mしか 余裕がありません
仮に 5度機首が風上側に 振れていて
そのまま進めば 時速約300kmで滑走している飛行機は
10秒で 滑走路から出てしまいます

ここで 先ず 機首を下げて
ステアリングを 作動状況にしてから ドラッグシュートを開くのです
さもないと 方向保持ができません

F−1の手順書には
明確に ステアリングをエンゲイジしてから
シュートを開きなさい と 記されています
まあ 本来練習機の T−2から 発展しているので
記載要領がが 学生さんにも 分かるように 書かれているのだと 思います
また F−1の場合には 意識的にステアリングを 入れないと 入らないという 問題もありますから
F−2は 接地と同時に 自動的にステアリングが 入りますから
この辺の 記載が無いのかも 知れません

また 多くの機体は ドラッグシュート開傘で 
機首上げもしくは機首下げ モーメントが発生します
もし 機首をあげた中途半端な姿勢で このモーメントが出ると
飛行機は勝手に 機首を下げたり 上げたりしてしまいます
これの防止にも 地面に機首を着けておくことも 重要です

次に
2のdrag shute−deploy(as desire)です
F−4は巨大なレバー
F−1はT型の大きなハンドル
F−2は普通のスイッチ
これを 作動させます

問題は (as desire)です
願う 望む 欲する 求める ならば・・・
と 読みとれます
F−4 F−1には この注記は 無いので
他の飛行機は 通常は 使用しなさいと 読みとれます

F−2だけ
パイロットが望むなら 使いなさいと 言うことです
これは 多分F−2は F−16の 発展型なので
本来シュートの無い飛行機ですから このような記載になっているのだと 思います
実際 F−2がシュートを開くと 瞬時に止まってしまいますから
通常の滑走路長が あれば シュートは必要無いようですし

最後の3の
brakes−as required
ブレーキを必要に応じて 使いなさいです
ドラッグシュートは 空気抵抗を利用していますので
飛行機の速度が 落ちてくると その効果は減少します
ですから 機速が 速いうちに 使うべきだと ここから理解できます
そして 機速が落ちたならば タイヤのブレーキで 十分減速して 滑走路を解放します

このほかに シュート使用時の 注意事項は
どの飛行機にも 沢山書かれています
その一番 多いのは やはり横風に対する注意です
例えば
ある強さの横風が ある時には 使うなとか
シュートを開いて 機首が極端に振られる場合は すぐに捨てなさいとか
滑走路を解放するときに シュートで タクシーライトを壊すなとか
まだまだ 多くの注意事項が 記載されています
パイロットはこれら全てを知っていなければ シュートも使えないのです

着陸時のシュートの使い方を 総括すると
  1. アプローチ中に 横風を判断して 使うかどうか 決断する
    • 機種によって 明記されているので 覚えておく
    • 突風も考慮に入れる
  2. 接地したら 早急に機首を 降ろす
    • ステアリングの確認をする
    • あまり強く機首を降ろすと 前足が壊れる
  3. できるだけ早めに シュートを開く
    • シュートレバーの操作は確実にする 中途半端だと 落ちる
    • 開いた時の 加重や モーメントの変化の 準備をしておく
  4. 機首が振られたときの 準備をしておく
    • レバーやスイッチから 手を離さない
    • 自分の操舵の限界を認識しておく
  5. 危険を感じたら シュートを捨てる
    • 後続機があるので その飛行機や管制塔に 意志を伝える
    • 投棄には 躊躇しない
    • 捨てると 加速するので ブレーキを十分使う
    • 捨てたときの 姿勢変化に 備える
  6. タクシー中も シュートに注意する
    • 飛行機は風上に向かって 降りるので 滑走路解放時は必ず横風になる
    • 真横にシュートが流されると 1機長ぐらい 自機が 大きくなる
こんな気持ちで 使えば多分 問題ありません

次に ドラッグシュートの 機構についてです
一般的に 飛行機のいろいろな装置は 確実に作動するように 作られています
また 何らかの不具合がその機構に あった場合には
少なくとも 飛行機にダメージを与えないようになっています

ドラッグシュートも 同じ考え方で 設計されています
先ず どんな時にも使えるように F−2以外は 操作ハンドルやレバーは 直結しています
これならば エンジンが止まっていても 全電気OUTでも 作動します
また瞬時に投棄できるように 同じレバーやスイッチで 投棄も可能になっています

これとは 全く別に 空中で何らかの原因で 作動してしまったばあいは
さらに 複雑な機構になっています

先ず 通常シュートは 機体内に 仮止めされた状態で 格納されています
これならば 仮に何らかの影響で シュートが飛び出しても
そのまま 開傘せずに 落下して 機体への損傷はありません
これが つながったままだと かなりの加重が 機体にかかりますので
機体を 壊します
戦闘機は 敵に 撃墜されることを考えていますので
弾や ミサイルが当たって
シュートが開傘して 飛行機が落ちては 問題ですから

次に 何らかの影響や パイロットの操作によって
空中で 開傘した 場合は
確実に開きます
この場合は 仮止め状態のフックが 確実にロックしてから
シュートは 外に出されて 開傘します
しかし 高速で 開傘すると 機体にダメージを与えるので
ある程度の 加重がかかると
シュートは シアーポイントから 切り離されて 機体から離れます

F−4などは 250kts以上になると シュートは 空力的に 閉じる様に なっています
そのほかの機体は だいたい 機体の付け根から 200ktsぐらいで 切り離されます

また 飛行機が失速したり デパーチャー スピンに 入ってしまった場合には
状況に応じて シュートを使えば その状態から 離脱できる可能性もあります
使える物は なんでも 使わなくては 損ですから

ちなみに スピン試験などでは
機体の後方に スピンシュートなる パラシュートをつけて 試験します
これは 火薬で 強制的に パラシュートを 機体後方に打ち出して
飛行機に 機首下げモーメントを発生させる物です
このために 通常のドラッグシュートよりも 遠方で開傘するように なっています

それでは ドラッグシュート使用時の コツについてです
なんでも いいから 着陸したら 開くのでは おしゃれでは ありません
そこで おしゃれな 使い方です

先ず F−4では
オーバーランで 操作してしまうことです
すると 接地と同時に 開傘します
これは かなり かっこ良いです
でも タイミングが早すぎると 失速して 落着します
ですから 絶妙のタイミングを 修得しなくては いけません
F−4操縦時間 1000時間以下の 方はおやめ下さい

次に F−1/T−2です
この飛行機のドラッグシュートは ある理由で 必要以上に でかいです
ですから 開傘と同時に 急減速します
何も考えずに 最初からシュートを使うと 滑走路真ん中辺で 停止してしまいます
こうなると 後続機に迷惑をかけるばかりではなく
先輩や後輩の 笑い物です
そこで 滑走路中央付近までは シュート開きません
そうすれば ちょうどいい感じで 減速します
しかし この飛行機は ブレーキが ぼろいです
ですから 通常着陸で ブレーキだけで 止まろうとすると 
必ず エンジン停止15分後に タイヤはパンクしますので
注意が必要です

次に F−2です
3機種の中で いちばん シュートの癖が 悪い物です
大きな風見効果が出ます
ですから 横風が ちょっとでもあれば 使用は止めましょう
そうすれば ターンアラウンドも早いし シュートも痛みも少なくなります
しかし F−16との違いを見せつけるためには 使った方が 良いでしょう
かっこ良く使うためには
やはり 機首上げ姿勢の ままで 開傘しましょう
この際 重重量形態では 機首上げモーメントが出るので 十分注意して下さい
心の準備がないと お尻を 削ります

ちなみに ここに書かれた 事項は 全て現在は まだ違反事項です
また 技術的にも 安全性が 証明された物でも ありません

ご注意下さい


ドラッグシュートの 利点 欠点

利点

  • つるつるの滑走路でも 減速できる
  • 電力や油圧は必要ない
  • 戦闘機らしく見える

欠点

  • 横風に弱い
  • 1飛行あたり 1回限りの 使用しかできない
  • 代替え飛行場に着陸した時に 交換品が無い
  • 使用後 たたみ直す必要がある
  • 低速では 役に立たない
久々の 更新だったけど
あまり おもしろく無かったね〜
ごめんなさい
次回は おもしろい話題を提供いたしま〜す