CCV

(Control Configured Vehicle)


CCVは 空気の流れによる 安定性を無視した 設計思想です
飛行機は 空気の流れを利用して 自然に安定しようとしています
そのために 多くの条件を満足しなくては いけません

だから 飛行機は みんな 同じ様な格好になってしまいます
ここで その安定性を 自然の力ではなくて 人工的に作り出そうとしたのが CCVです

これによって 設計者は 安定性と機動性のジレンマから 解放され
機動性を目標とした飛行機を設計出来るようになったのです


我が国で CCVといえば
T−2の3号機の T−2CCVです
これの飛行機は T−2を改造して CCV技術の 研究と試験のために作られました
現在は ADTWで テストパイロット学生の教育用に 使用されています

T−2は本来 通常機体です
特に練習機ですので 縦の静安定は強い飛行機です
そこで 縦静を弱めるために(RSS)
カナードを 採用しました

カナードを主翼前方に 取り付けて 揚力中心を 前方移動させて
RSSを実現しました
ですから T−2CCVは コンピュータが故障すると
そのままでは 飛べません
パイロットの操縦では 飛べないのです

その場合は 前方カナードを フリーにすれば
原型のT−2と同じ様な 特性になります

その上 おなかの下に 大きな垂直カナードも採用して
横方向の 試験にも 対応しました

ちなみに 前方カナードは 固定式で
おなかのカナードは 可動式です


戦闘機の命は 速度と機動性です
これは 安定性と相反するものです

安定性を 高めるためには 
大きな 尾翼と 長い胴体が必要です
これらは 重さを増やすだけでなく 抵抗も増します
戦闘機には 不利な 要素ばかりです

ここで CCV技術を 利用して 作られた実用機が F−16です
F−2はさらに この技術を 発展させた 飛行機になります
それでは F−2のCCV機能について ご説明いたします


F−2は 正真正銘の CCV機です
コンピューターが 故障すると 絶対に飛べません
仮に 動翼に リンケイジがつながっていても
パイロットには 操縦できないのです
それほどまでに 安定性は 負なのです

さて F−2の最大の特徴は
常に 入力に対応して 同じ動きをすることです
入力=運動なのです

今までの飛行機は 入力=舵角−−−−運動となります
それ故 運動量は 飛行機の速度や高度に左右されていました

F−2の場合は これを自動的に 計算機が修正して 飛行機を動かすのです
ですから どんな高度 速度でも 全く同じ運動をします
正確には 同じ運動をしようとします 努力はします・・・・
それは 空力的に 飛行機を運動させるだけのエネルギーが 無い場合には 動かないことを 意味しています・・・
極端な低速状態や 高々度の場合などです

しかし 通常の状態で飛んでいれば これは 関係ありません

先ずは CAモードです
通常の飛行状態では このモードが働いています
これには さらに2モードあって
巡航状態と 着陸状態で 制御方法が異なります

巡航状態では
計算機は常に 床方向に1Gを 保持しようとしています
これは 飛行機の速度や 高度や 重量に関係ありません
ですから 操縦桿に 力を加えない限り
飛行機は 水平直線飛行を 続けます

操縦桿に 加えられた 縦の力は Gコマンドとなって 飛行機に伝えられます
手前に 操縦桿を引けば Gを増加させます

水平直線飛行の状態で 操縦桿を引くと Gを増やしなさい という命令が 飛行機に出されますので
機首が上がって 上昇姿勢になります

今までの飛行機は 操縦桿を引くと
水平尾翼の 前縁が 下がる方向に 動くので
結果として 飛行機の機首が上がって 上昇姿勢になります

結果は 同じですが 飛行機の考えていることは 全く違うのです

着陸状態では 縦の入力は qコマンドになります
これは 機首の動きを 制御します

入力が無ければ 機首を 動かさない様にします
ですから これでも 水平直線飛行を します 
この場合 厳密に言うと 飛行機の姿勢が変わりませんので
速度や 重量が変わると 飛行経路は変化してしまいますが
着陸のように 細かい修正が必要な場合には この方が 操縦しやすくなります

この状態で 手前に操縦桿を引くと
機首を あるレートで あげなさい という命令が入ります
すると そのレートに合った 機首上昇が始まります
ここで 力を抜くと 機首の動きを 0 にしなさい という 命令が出ますので
機首は ぴたりと その状態で 止まります
今までの 飛行機で 姿勢保持モードの オーパイが入っているのと 同じ様です

次に MEモードです
これは 戦闘時などに 機体の動きを 増加させる モードです
急激な 縦の命令が入ると
計算機は 出来るだけ早く 機首を動かそうと 考えて
スタビレーターを 切るのと 同時に FLAPを下ろして 
揚力増加による 機首上げ モーメントを稼ぎます

この方法は 僅かな モーメントの増加ですが
対戦闘機戦闘では 生死を分けるでしょう

これとは 別に
飛行機の機首上げは 通常 飛行機の沈下を引き起こします
飛行機は 上昇しようとすると 普通は スタビレーター前縁を 下げます
すると スタビレーターは 下向きの揚力を発生させて
飛行機の機首を上げます
機首が上がると 主翼の迎え角が上がって 揚力が増加して
上昇するのです

この 最初の部分で 飛行機の沈下が発生します
MEモードは これも防止します

次に DYモードです
これは T−2CCVがやった カニ飛びに似た 運動です
F−2の場合は 垂直カナードが ありませんので
厳密に言うと T−2CCVとは 異なる動きですが
結果的には ほとんど区別が付きません

この モードは ラダーを踏んだときに
ロールが発生しないモードです

飛行機は 通常ラダーを 踏むと
横滑りを 発生させます
横滑りは 上反角効果で ロール運動を発生させます

F−2では このロール運動に対して 自動的にエルロンを当てて
ロールを止めてしまいます
ですから DYモード中に ラダーを踏むと 機首の変更だけで ロールが発生しないのです

完全に 横と方向が独立している イメージです
このモードは 空対地攻撃に 有利であると言われています

このほかにも 多くのCCVモードがありますが 今回はその一部分の紹介です


さて CCV技術ですが
今は 飛行機だけの 技術です
しかし そのうち 車にも本格的に応用されるかもしれません

そうすれば 一般道路も 高速道路も 同じように走れるようになれます
高速道路での 急ハンドル 急ブレーキも 危険ではなくなります
そればかりか 真横に動くのも可能になるかもしれません

また 車は 直進性を 高めるために
タイヤを 傾けて 取り付けたり
前後輪の 向きを変えたりしています
これらは 明らかに 走るためには 抵抗になり
かつ 重量増加も 発生しています

もし CCV技術のように 抵抗や重量を軽減できて
かつ 直進性が 確保できれば
環境にもやさしい 車が出来るかもしれませんね


私は 技術者ではありません
運用者です

ですから 思うように飛行機が 動いてくれれば
技術屋さんと 計算機が 何をやっていても 関係ありません
RSSであろうとNSSであろうと
G制御でも q制御でも 良いのです

思いどおりに 動いてくれれば 文句は無いのです

しかし 機械は 必ず壊れます
この時に 飛べなくなるのは 死活問題です
ですから 設計する人は 技術に溺れることなく
使用者の事を考えて 物を作って 欲しいと 心からお願いします

最先端技術よりも システムの安定性が重要なのです
相手よりも どんなに 運動性が良くても
ちょっとしたことで システムがダウンするような 飛行機は困ります

使いやすくて 便利だけど 時々 スタックする WIN よりも 
不便で 見にくいけれども 安定している MS−DOS です