今回は ブレーキのお話ですが
飛行機には 上空で使うブレーキと
地上で使う ブレーキがありますが
ここでは 地上で使うブレーキについてです
飛行機のブレーキも 車と同じです
足で踏みます
通常は ラダーペダルの上を踏み込むと
左右のブレークが 別々に 作動します
右ブレーキは 右ラダー
左ブレーキは 左ラダー という具合です
蛇足ながら 前車輪には ブレーキはついていません
飛行機の場合 一番ブレーキが重要なのは
離陸を断念するときです
戦闘機の場合 離陸速度が 約300km/h程度ですので
残りの滑走路で 停止しなくてはいけません
その上 機体重量は 離陸前が一番重いので
ブレーキにかかる負担は 車の比ではありません
時速300kmで約30tの機体を 滑走路残り1000mぐらいで止めるのです
それも 車輪2つで・・・
時速300kmで 1000m 行くのは 12秒
減速を考えても 30秒程度で 機速を0にしなくては 滑走路を出てしまいます
また タイヤがロックしては 摩擦係数が極端に減少しますので
これでは 止まれません
その上高速なので タイヤがロックした瞬間に バーストしてしまいます
バーストすると 飛行機のコントロールが利かなくなって
滑走路から はみ出てしまいます
このため 飛行機には通常 アンチスキッド ブレーキがついています
最近は車にもついていますが
それよりもちょっと 高級品がついています
ちなみに アメちゃんは エンタイスキッド って 言ってました
アンチスキッドブレーキは タイヤの回転が止まりそうになると
ブレーキ圧を 下げて タイヤのバーストを保護します
そして また タイヤが回転し始めると ブレーキ圧をかけます
この連続で 飛行機の運動エネルギーを吸収します
これを 単に機械的に実施すると
パルス状のブレーキになってしまいますので
もうちょっと 賢いのが 飛行機には ついています
ちなみに この パルス状のブレーキは 正式なアンチスキッドシステムが 故障すると
自動的に 作動します
アンチスキッドは どんな状況でも 一番効率良く 且つ安全に 飛行機を止めるように 設計されています
ですから パイロットは 何も考えることなく 無造作に ブレーキペダルを 踏めばいいのです
また 滑走路は 常に DRY−GOODではありません
このため どんな気象状況でも 止まれるように 作ってあります
それでは 実際の 使用例です
着陸前に アンチスキッド警報灯が点灯していないことを 確認します
飛行機によっては 脚を下ろさないと この警報灯が 作動しない物も 有りますので
必ず 脚を 下ろしてから 確認しましょう
また この警報灯は 電気的な不具合の 検出だけなので
タイヤが すでに バーストしていたり
ハイドロが 漏れていたり
ブレーキアッシーが 脱落しているの等の故障まで 感知していません
要するに 機械的故障まで モニターしていませんので
あとは 神頼みです
警報灯が 点灯していなければ
接地前に ブレーキを 一杯 踏み込みます
高級な ブレーキが搭載されていれば
接地前には ペダルをいくら踏んでも ブレーキには圧力が加わりません
この感知には 通常 主脚の WOWスイッチを 使用しています
WOWスイッチは 主脚の延び方を 検知する物で
通常は 飛行機が 上空か地上かを 飛行機に教えています
この機構を Touchdown−Protectionと 呼びます
接地に やや遅れて ブレーキは 作動始めます
接地の瞬間には 止まっているタイヤが 着陸速度まで 加速している フェーズなので
この間は どちらにしても タイヤは スキッドしている 状態です
ですから 滑走路の両端の接地帯付近は タイヤの痕で 真っ黒なのです
ブレーキは 先ず WOWを 見に行きます
そして 地上にいることが 確認できたら
今度は タイヤを 見に行きます
タイヤが 回っていることを 確認したら
おもむろに ブレーキ圧を 増やしていきます
タイヤの回転を見に行く システムが
Spin−up Protectionです
この時 かける ブレーキ圧は タイヤの回転数に 比例した物です
これを Proportional−skid−controlと言います
これでやっと ブレーキによる 減速開始です
滑走路が Dry−Good ならば このまま無事に減速出来ますが
濡れている場合も 多々あります
もし 片方のタイヤだけが水たまりに 入ったとします
すると そのタイヤは スキッドしたと 飛行機は思います
そこで ブレーキ圧を 下げます
しかし 逆側の ブレーキは 滑っていないので ブレーキ圧は そのままです
こうなると 飛行機は ブレーキのかかってる方向に 大きく偏向して 滑走路から出てしまいます
そこで 片足が 大きく滑った場合には 両方のブレーキ圧を ゆるめるようになっています
要するに 通常は 左右別々に アンチスキッドは 作動していますが
この場合だけ 両方に 命令を出すのです
さて 無事に減速が 進みます
飛行機が 止まろうとします
純粋に考えると アンチスキッドブレーキは タイヤの停止を 防止する物です
よって 飛行機が 減速してきて 止まろうとすると
アンチスキッドは タイヤが滑り始めたと 思って
ブレーキ圧を 下げてしまいます
これの 繰り返しで 永遠に 飛行機は止まれなくなります
実際に 昔の飛行機には アンチスキッドをオフにしない限り 止まれない飛行機も有りました
現在では タイヤの速度が 20〜30kts付近になると
自動的に アンチスキッドシステムを OFFにして 無意識のうちに停止するようになっています
しかし たまには このスイッチが壊れることもあります
そうすると 永遠に飛行機は止まれません
ですから 運用上 できれば 十分減速して 停止直前には
マニュアルで アンチスキッドを 切って おく方が 無難です
ちなみに パルサーブレーキには この装置が有りませんので
永遠に止まれません
アンチスキッドを OFFにしようと 思って
間違って パルサーブレーキに 入れると 大事ですので
十分な注意が必要です
これで 無事に停止出来るでしょう
追伸
普通の戦闘機には サイドブレーキありません
ですから エンジンを回してしまったら
常に ブレーキを踏んでいないと 前に出てしまいます
それも かなりの速度で・・・
オートマで ドライブに入ってる状況と同じです
アクセル踏まなくても 前進するのと 同じです
ちょっと 止まっているには 特に問題は無いのですが
離陸待ちとかで 20分も 待っていると
足は ふるえてきて もう飛ぶ元気もありません
複座機なら 交代でブレーキ踏めますが
単座機では 精神力との戦いになります
この苦労を やっと分かってくれて
パーキングブレーキを 搭載してくれたのは F−2だけです