ぼくのお話


ぼくは、WANです
これでもちゃんと、血統証も付いているんです
でもパパは、近所の人に「訳分かんないMIXなんですよ」と言っています
ぼくの住んでるところはかなり田舎なので、ぼくの仲間はいないいんです
みんな、黒くて茶色くて白いWANなんて見たこと無いんです
近所のにゃんこには、同じ毛色がたくさんいるみたいです
そうですぼくは三毛WANなんです

ぼくの名前は「マック」です
かあかが付けてくれました
昔テレビでマクガイバーと言うかっこいい番組があったそうです
その主人公がマクガイバーで、かあかがあこがれてたみたいです
でも本当は、くまみたいだからその逆で「マック」
色が真っ黒だから「マック」
すごいスピードで飛んでくるから「マック」と
諸説入り乱れていますが
確かなことはハンバーガーの「マック」や
リンゴの「マック」とは関係ないことです

でも
パパは「うんころ虫」と呼ぶんです

ぼくは多分豊橋付近で生まれました
6名兄弟でした
1ヶ月位たって気が付くと
ぼくひとりでペット屋さんのかごの中でした
でもいろんなWANがいっぱい居て楽しい毎日でした

毎日、例によってかごの中でへらへらしていると
たくさんの人たちがきて
ぼくを見ると
「まー、ぬいぐるみみたい」
「かっわっいいーっ」
「おててがおーきー」

そうです、この「おててがおーきー」がくせ者です
お客様:「このWAN、おてて大きいけど、大きくなるの?」
お店の人:「そうだねセントバーナードよりちょっと小さいかな」
お客様:両手を広げて「ガイーイン」
せめて「ラブよりちょっと大きいかな」ぐらいにしておいてくれればいいのに
そんなおちゃらけた毎日でした

でも、だっくす君や、びーぐる君や、しばちゃんは
どんどん新しいおうちへ引っ越していきました
いつまでも残っていたのが
ぼくと隣にいた真っ白なぼくより大きなWANでした
時代は短小軽薄なのかなー
隣の白デカWANも同感してました

生まれてから2ヶ月ほどたったある日
ばたばたとカモが群で来ました
今のおうちのパパと、かあかと、わるがき2匹です
おおきなねぎをしょってきました
カモネギ家一族の登場です

かあかは、ぼくを一目見て直ぐに気に入ってしまいました
悪ガキ1号は、ダックス君
悪ガキ2号は、しばちゃん
パパは、今流行の101君
でしたが・・・

当然、ぼくに決定と思いきや
これからが長いんです

それから約1ヶ月間この家族は毎週来ました
もしかしてこいつらは単にここにWANを見に来ているだけじゃないの?
家で飼えないから、ここでストレス解消してるんじゃないの?
と、WAN仲間で噂をしてました

そんなこんなでまた1ヶ月
ぼくのこれからのWAN生に希望をなくしていた頃
突然朝早くから
ねぎパパだけが来たんです

なんとぼくの前で1時間も動かないんです
考え込んじゃっているんです
ぼくは状況がつかめないんで、得意のへらへらで相手をしてあげました

1時間後、パパが突然お店の人を呼んで
「この子譲って下さい」
「やったね!!!!」思わず親指でガッツポーズ
そーなんです、ぼく親指がまだあるんです

おててにも、あんよにも

ひとしきり、お店の人とパパがお話をして
パパは「子犬の飼い方」みたいな本に書いてあるとおりに
いままで食べていたご飯10kgとともに
ぼくを受け取りました
合計23.7kgです
キロあたり1万数千円になっちゃいました
ご飯とぼくをおなじにするな・・・・・
つうの

車の助手席に乗せられ出発です
土曜日の昼前でした
車の窓から見る景色は初めての物ばかりでウキウキ気分
のどかな田園風景
空から聞こえる鳥の声
窓から入ってくる空気のさわやかなこと
目の前には、バラ色のぼくのWAN生
またまた、パパには見えないようにガッツポーズ

と、浮かれているとパパのお話が始まってしまったのです

おうちに入れてくれるかなー
かあかは、飼っちゃだめと言ってたしなー
おまえのためにお小遣いとへそくりみんな使っちゃたし
おまえの入れ物も無いし
でっかくなるって言うし
等々、ぐちばかり
目の中に光っていたお星様が消えかかっていました

そんなこんなで約30分、今のおうちにつきました

すると、かあかは既に家の前に出てぼくを迎える準備をしてました
直ぐにぼくを抱きしめて「そー、来ちゃったの、いいこねー」 etc
完全に対赤ちゃん言葉

パパは車の中でこれが本当に同一人物かと疑いました
何しろパパが今朝「わんこ屋さんに行って来る」と言ったら
「今飼うのは無理ヨー、もう少し考えてみたら、来年にしよう、見てくるだけよ」
と言っていたのに
全く行動が違うんです

完全に、かあかの勝ちです
「そんならあんなにわんこ屋さんで悩むんじゃなかった」と
パパは自分の思慮の浅さにあきれました
それにしてもパパの行動はかあかにはばればれです
そしてだめ押しの一言
「隣にいたピレネーは?」
お財布が空っぽのパパはもう答える元気はありませんでした
もしかしてあいつも飼うとなると・・・・
パパの思考は完全に停止しました

とりあえず無事にかもねぎ家に受け入れられたぼくは
ウッドデッキの上に置かれました
なにしろ、WAN小屋も無いんです
でも、木の床の感触は初めてだったので
ベタッと敷物状態で、はいずる様に動きました

それを見てパパは
「こりゃー黒い毛虫じゃん」
名前が「毛虫君」ではかっこわるいんで
愛想笑いをしたら
「なんだ顔は白鼻心じゃん」
「白鼻心に中国の黒い豚の耳を付けた様だな」
このままでは
「豚の耳付き白鼻心型黒毛虫」と言う名前になっちゃう
するとパパはぼくに顔を近づけて、くんくん
「なんだにおいは、ゆでたそら豆じゃん」
「そら豆君」にしよう
「えー!!!!!」と思った瞬間
うんちゃんが出ちゃったんです

この事件でパパはぼくを
「うんころ虫」と呼ぶようになりました

でもかあかは「マックなの」と言い張り
その晩の家族会議で
正式名称は
「98年式マクガイバー1型」となりました
通称「マック」です

よろしくお願いします