Bird Strike


鳥との 衝突です
これって 想像以上に 危険なんです


道を走ると
必ず 犬や猫が 引かれています
時には 狸やイタチも 転がっています

同じように 飛行機も 空中の 生き物に当たります
それも かなりの高速で HITしますので 
その危険性は 車の比では ありません


10年ほど前
私の友人が 海面上500feetを 400ktsで飛んでいました
機体は F−1

すると 突然 顔右半分に 激痛
何がなんだか分かりません
とりあえず 緩上昇

上昇しながら 状況を左目で見ると
前方風防の 右側が ありません
自分の身体の 右側は血だらけ
右目は 開きません

運良く 手は動きます
状況を 僚機に伝えて
外部を点検させました

機体は 風防の損傷だけのようです
そして 僚機の チェイスを受けながら
なんとか 着陸

着陸後 すぐに 病院へ!
それから 1ヶ月半 彼は 病院に 缶詰でした

上のお話は
後の調査で 中型の カモメ君の 破片が コックピット内で 発見されたので
多分 当該機は 低高度を飛行中
不注意なカモメ君に 運悪く HITしてしまった との 事でした
カモメ君の ご冥福をお祈りします
さて では 具体的に BirdStrikeについて 考えて見ましょう

普通 鳥さんは そんなに 重くはありません
数十グラム〜数キログラムぐらいです
セキセイインコ 35g
カラス 800g
トビ 1500g
アホウドリ 7kg

この程度の 重さです
しかし 困ったことに 戦闘機が低空で飛ぶ可能性のある場所の多くが 海上です
そして 海にいる鳥ほど 大型なのです

E=1/2*V^2*M
衝突エネルギーは 速度の二乗に質量を掛けて 半分にした物です
同じエネルギーを発生させるには 速度を二倍にすれば 質量は1/4で 良いのです

時速100kmで走る車に 7kgのアホウドリがぶつかるエネルギーは
400ktsで 飛行する飛行機ならば 1/60程度の質量の鳥で良いのです
これは 115gですので セキセイインコ 三匹半
まあ オカメインコぐらいかな〜

逆に 400ktsで飛んでいる飛行機に アホウドリがぶつかると
100km/hの 車には 小錦が二人ぶつかるエネルギーです
小錦柔らかそうだから 別の物にたとえると
ガソリンの入ったドラム缶2つかな?

まあ いずれにせよ 高速で飛行する 飛行機にとって
どんな 小さな物でも 大きな 障害なのです

最も 飛行機と鳥とが ぶつかる可能性が多いのが
離着陸時です

飛行場は 広くて のどかで 昆虫も多いし 害敵もいません
上昇気流も発生しやすくなっています
鳥にとっては まさに天国です

特に着陸時は 正面から見ると 飛行機の断面積は 大きなフラップのおかげで
巡航時の二倍ぐらい あります
その上 パワーをしぼっているので 音もしません
シューーーという 風邪切り音だけです

そのため 多くの鳥君たちが 着陸する飛行機の 犠牲になっています
飛行機側からすると
幸いな事に 着陸時 時速300kmぐらいですので
よっぽど当たり所が 悪くない限り 致命傷には なりませんが
機体が 壊れることは 確実です

では いかにして 鳥との衝突を避ければ良いのでしょう
はたして 飛行機側から よけることは可能なのでしょうか?
また 鳥側から よけてもらうことは 可能なのでしょうか?

先ず 人間側からの 考察です
あなたは 着陸態勢に 入っています
接地まで あと 1マイル(1600m)高度300feet(100m)速度160kts(300km/h)
突然目の前に 大きな とんび君
あなたは どうしますか?
  1. いったん避けて 再着陸を試みる
  2. そのまま無視して 着陸する (神に祈る必要はある)
  3. その他
先ず1番です
どのように避けましょうか?
下は 地上が近いので だめ
上は 速度が無いので 上昇不可能
左右は これも速度が無いので 不可能
無理矢理上昇すると ジェットエンジンはレスポンスが悪いので すぐに失速
旋回も 速度が 1.3vs程度なので 20度バンクもとれば 失速して 落ちます
ほんじゃ どうづるの?

鳥を避ける動作は 飛行機をさらに危険な 環境へと 追い込むのです

もう少し高度があって 速度もあれば 避けるのも可能でしょう
でも 鳥は 飛行機よりも遙かに小さいです
パイロットが目視で 発見できる距離は 多分すでに 衝突するべき位置にいます

パイロットが 前方に 鳥を発見します
パイロットの脳味噌が どうすべきか 判断します
「避けなさい!」って 結論を出します
パイロットは 自分の飛行機が 現在どの程度の エネルギーを持っているか 判断します
「運動可能」と 判断された 場合
パイロットの脳味噌は 手に対して 操縦舵輪を 指示した方向に 動かすように命令します
命令を受けた 手は そのように動きます
ここまで 多分2秒
飛行機の 舵が 切れ始めます
これを受けて 飛行機が 動き始めます
これに 多分 3秒

合計 5秒
160ktsで飛ぶ飛行機は 5秒で 400m進みます
ということは 400m先の鳥を見つけて
避け始めて ちょうど避けられる 計算です

パイロットは 通常 目だけは 良いです
特に 年寄りは 遠くだけは 良く見えます
それでも 400m先の 50cmぐらいの 鳥は 発見できないでしょう

だから 結論は

鳥を見ても 見ない振りをするのが 一番なのです


この際 重要なのは 鳥がエンジンや 風防に当たらないことを 祈ることです
まあ 複数エンジンを持っている 機体なら 1つぐらいエンジンが止まっても いいけどね〜

では 今度は 鳥さんから 考察です

鳥は 飛行機に 意志を持って ぶつかって来るのでしょうか?
多分違います
彼らは 無意識です
責任能力が無い状態で ぶつかって来ます
裁判ならば 確実に 無罪です

彼らは
飛行機が すごく危険な事を知らないのです
一度飛行機に ぶつかった経験のある 鳥君は 
他の鳥に 教えたくても 多分 ブリーフィングする 機会が無いでしょうから
誰にも 飛行機の 危険性は 伝わりません
だから 鳥君のDNAは 飛行機の危険性を知らないのです
これは 本能的には 飛行機は危険な物だとの 認識が無いと言うことです
もし 本能的に知っていれば 飛行場には 近づかないはずですから

だから 鳥君の方から 避けてもらうのには かなりの教育時間が必要でしょう

ほんだば どうしましょう?

鳥と飛行機の 生活空域を 分割する
これは 鳥から言わせれば すごく自分勝手な考えでしょうけど
鳥君が 安全教育に参加してくれないので しょうがありません

鳥類は 地上を歩く ヤンバルクイナから アルプスを越える 渡り鳥まで
あらゆる所にいます
これを全て排除するには 膨大な時間と労力が必要です
そこで 飛行機にとって 一番 被害が多い 飛行場周辺 特に飛行場の鳥たちの
生活領域の 明け渡しを 実施します

昔は 散弾銃で 直接 撃っていました
しかし 昨今の 社会情勢は これを許してくれません
ですから 今では 脅すだけです
音だけ攻撃」です

これは 最初の2〜3回は 効果があります
ば〜ん」で みんな飛び立ちます
でも すぐにまた 集まって来ます
そのうち 無視し始めます
だって 実害が無くて 音だけなら おいしい餌を食べた方が いいですからね〜

次は 大きな目玉の風船を 接地します
これも 最初は効果があります
でも 1週間で 意味無くなります

鳥の恐怖の声を 録音して
それを 流します
その種類の鳥には ちょっとは 効果があります
でも 時間の問題です

実際は これらの方法を毎日 手を換え品を換え時間を変えて 実施します
でも 結局 それなりの 効果だけです

では 究極の 鳥対策は?


その1
 鳥のいそうな場所には 行かない
  • 渡り鳥などの 生態を解明して 移動ルートなどには 近づかない
  • 海面すれすれを飛ぶときは 漁船などに近づかない
  • 鳥の多い 飛行場には 行かない
  • ファイナルに監視員を置いて 飛行機に事前に知らせる 着陸をやり直させる
その2
 鳥を追い払う
  • 飛行場周辺の緑地や湿地を撤去する
  • こまめに 鳥追いをする
その3
 飛行機の改造
  • 鳥がどこに当たっても 大丈夫なようにする
  • 鳥撃退システムを搭載する
    • 鳥の 5感にうったえる装置を搭載して 飛行機が近づいているのを 知らせる
    • 前方にいる 鳥を 自動撃墜する装置を 搭載する
・・・・っと まあ くだらない お話ですが
実際の飛行機は 着陸灯を 離着陸時に点灯して
     鳥に 飛行機が近づいているのを 知らせるとか
エンジンやプロペラに 模様を書いて 
     鳥に 飛行機が近づくのを 知らせたりして 努力はしています

でも 一向に 鳥との衝突は 減らないのが現状です


残るは やはり 神頼みでしょうか