番号 99H-001  送信日 99/10/01  差出人 加藤 聡也
件名 今回の核燃事故の授業でのあつかいは

 昨日の東海村の事故は、日本史上最高の事故ですね。衝撃度からいえば、チェルノブイリ以上かもしれません。私も、燃料工場の事故というのは予想していませんでした。
 つねづね授業で、核問題の最低限の理解をもとめて、用語の解説などをしてきましたが、これからますます必要となってきますね。
 今後、日本の原発開発はどうすすんでいくのでしょう?



番号 99H-002  送信日 99/10/02  差出人 林 正幸
件名 放射能漏れ事故に対して

 こんばんは、林です。
 昨日9月30日から今日に掛けて、信じられない臨界事故が起きました。学校に着くと生徒が「先生、どうなっている?」「キャスターは分ってしゃべってるの!」と訴えてきました。そこで「今日はまだ進行中だから、明日の授業までに整理して説明して上げよう。」と約束しました。
 こうして急拠作成したのが以下のプリントです。1年生の化学では同位体をとばしているので、そこから書き始めました。勉強させるチャンスです。
 ではまた。
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ウラン加工施設の臨界事故に係わって

1.同位体

 水素、炭素、酸素などすべての原子は、より厳密には数種の混合物であり、それぞれは同位体と呼ばれる。原子の種類は原子番号つまり陽子数で分類されるが、陽子数が同じで中性子数が異なる、つまり質量数(陽子数+中性子数)が異なるのが同位体である。
    水素               炭素
  1H 水素1(軽水素)       12C 炭素12
  2H 水素2(重水素)       13C 炭素13
  3H 水素3(三重水素)     14C 炭素14

2.核反応

 同位体の化学的性質は似ており、化学では1種の原子として扱うが、同位体の原子核の性質は、同種の原子でも大きく異なる。
 原子核はいろいろな反応を起こすが、その中で2つの核反応を紹介する。この他に話題になるのは、核融合である。
(1)崩壊
 かなり多くの同位体の原子核は不安定で、アルファ線、ベータ線、ガンマ線といった放射線を放出して違う原子核に変化する。このような同位体は放射性同位体と呼ばれる。崩壊は温度や圧力の影響を受けず、ある確率でもって時間と共に進行していく。そしてこのような同位体の半分が崩壊する時間は決まっていて、半減期と呼ばれる。崩壊による放射線は天然にもあるレベルで存在するが、放射能漏れ事故で住民が受ける被害も、まき散らされた放射性同位体による。
(2)核分裂
 広島型原子爆弾や、現在の原子炉(熱中性子炉という)では次の核分裂が起きている。
 ウランの同位体のひとつであるウラン235(235U)の原子核にスピードが遅い中性子を衝突させると、原子核が分裂して2つの同位体(核分裂生成物)になる、と同時に1〜3個の中性子を発生する。このとき通常の燃焼反応とはけた違い(300万倍)のエネルギーを与える。そして生成するいろいろな同位体には放射性のものが含まれる。今回の事故でも半減期が長いセシウム137(137Cs)という放射性同位体が工場周辺で検出された。

3.臨界を越える核分裂

 さてウラン235の濃度が高くなると、発生した中性子が外に抜ける前に別のウラン235の原子核に衝突して再び核分裂を起こすようになる。ひとつの核分裂で発生した中性子のうち1個が次の核分裂を起こして(連鎖反応)、核分裂が継続するようになった状態が「臨界」と呼ばれる。
 ウランが臨界を越える濃度(量)になると、核分裂はねずみ算式に拡大して一気に膨大なエネルギーを与える。これが原子爆弾の原理である。
 原子炉ではウラン235を臨界状態に制御してエネルギーを取り出している。しかし制御を誤ると、原子炉は臨界を越えて高温になり、破壊されて放射性同位体が噴出したり、ときには核爆発まで起こしたりする。1986年の旧ソ連のチェルノブイリや1979年の米国スリーマイル島の原子力発電所事故は有名である。

4.核燃料

 天然に産出するウランに含まれる同位体のほとんどは、核分裂しないウラン238であり、ウラン235はわずか(0.7%)である。そこでウランを原子炉の燃料などにするためには、ウラン235の濃度を大きくする必要がある。これが「ウランの濃縮」と呼ばれる。化学的に似たウランの同位体の一方を濃縮するのは高度な技術であり、六フッ化ウラン(UF6)という化合物にして実現される。このあと燃料として扱いやすい二酸化ウラン(UO2)に変化させる。
 今回の事故(1999年9月)はこの過程で起こった。ずさんな管理、フェイルセーフ(fail-safe ミスしても安全な)でない設備、信じられない操作で、大量のウラン235が「沈でん槽」に集積して、臨界を越えてしまい、国内最悪の事故となった。
 加えて、放射能汚染が広がり一刻を争う状況で、県への報告が50分も遅れた。

5.今回の事故処理

 今回は臨界以下に抑え込むために2つの処理が行われた。
 ひとつは沈でん槽を冷やしている冷却水を抜く。水は発生した中性子を反射しやすくて、中性子を沈でん槽に閉じ込めるからである。
 もうひとつはホウ酸水(H3BO3)を注入する。ホウ素の原子核は中性子を吸収する(衝突した中性子を受け入れて2つの同位体になる)からで、これは原子炉の制御にも利用されている。
 臨界を越える事故ではまわりは中性子という放射線によっても汚染される。中性子は建物などは貫通してその中の人間に被害をもたらす。中性子爆弾はそれを応用したものである。いずれにしても放射能事故は二次災害の危険が高い。
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番号 99H-003  送信日 99/10/03  差出人 戸田 亜昭
件名 臨界事故について

 加藤さん、林正幸さんからメールをいただきました。私は10月2日(土)に行われた日本化学会東海支部主催の化学教育研究協議会に参加してきました。そのときの生徒の課題として,「原子力読本 partU チェルノブィリは警告する」よりの文を読ませ,東海村の臨界事故についての意見を書かせることにしました。また、原子核,放射能,原子力発電や核燃料サイクルなどとその事故対策について生徒の知りたいことを書かせることにしました。その課題についてはまた改めてまとめたいと思います。私もこの事故について考えたことを書いてみました。私の考えたことの間違いを指摘し,疑問に答えていただきたいと思います。

 1.中性子線は他の放射線と異なり,他の物質に照射したとき中性子が他の原子に吸収され,その物質を放射化してしまう。原子炉の中では,原子炉材料に含まれていた不純物のコバルトやマンガンが冷却水に溶け出してきて炉心を通過するとき中性子放射化によってコバルト60やマンガン54などの放射性核種を生じるのです。今回のように中性子線を浴びた場合,体内のナトリウム原子などが24Naのような放射性原子に変わる反応が起こるのです。体の中から放射線が出るようになるのです。この24Naは半減期15時間でベータ線とガンマ線を出して安定なマグネシウムに変わっていきます。
参考文献:「原子力発電知る考える調べる」日本科学者会議編 合同出版
「放射能そこが知りたい」安斎育郎 かもがわ出版
「Nuclear Physics」Enrico Fermi The University of Chicago Press

 10月2日朝日夕刊に1日夜に施設周辺の土壌などを調べたところ、24Naが1.7Bq/kgの割合で検出と出ていた。半径350メートル内外としか書いてない。汚染源からどれだけの距離はなれたところで事故からどれだけの時間(半減期から考えると時間もきちんと正確なものを書く必要がある)が経過しているか何も分からない。また土壌ではなく動植物など,生物の中にある24Naを知りたい。生のデータが分かれば事故当時24Naがどれだけ出来たかも推定できるはずです。作業員の体の中で生じた24Naもある程度推定できると考える。またどれだけの中性子が発生したかも計算できる。データをすべて生で公開すべきである。

2.住民への屋内退避の指示も誤りである。パニックを恐れ,このような指示がされたと思われるが,事故がわかった時点で事故の詳細はすぐ分からなくとも、直ちに気象条件を公表し,風下の住民は避難させなければならない。中性子線は透過力もあり、瞬間的に広がっているであろうが,風速が分かれば自分のところまで飛散した放射性物質が到達する時間も計算できる。この場合には中性子爆弾と同じで放射性物質の発生は少ないのでしょうか。臨界状態の継続が確認されているのに,住民には何も知らされないのでよいのだろうか。

3.モニタリングスポットが周辺に21ヶ所あるとのことだが,一部のものでどこの観測点か分からないような観測データしか公表されていない。気象条件により各地点のデータは変化していくものである。チェルノブィリの事故のときにもホットスポットといって放射能汚染のひどいところが点在していたが,そのような心配はないのか。分かり次第、やはり刻々と変化するデータをすべて公表すべきである。原子力の研究では自主、民主、公開が原則ではなかったのか。

4.施設の設計上のミスと国の監督責任は重大である。
 (1) たとえ故意であっても人為的なミスであっても臨界質量に達するような燃料が沈殿槽に入らないような容器の大きさ形状などの設計にしておかなければならない。また、たとえ,何らかの原因で臨界量に達しそうなときセンサーでチェックできるはずではないか。故障もあるだろうが。
 (2) テレビの中でも指摘されていたが,通常扱っている軽水炉用燃料の加工工程で常陽という高速増殖炉用の燃料を加工していたのではないか。このことについて臨界質量のチェックを国は行ったのか。同じ施設工場で臨界量のチェックも行わず,操業させていたのではないか。
 (3) その上に会社は裏マニュアルを作り,さらに手抜き作業を重ねた責任は重い。経済的な利益追求のため、危険性を無視して行われたのではないか。どんな会社も会社というものは必然的にこのようなことをやるものである。利潤追求を目的としている会社にこのようなことを行わせていること自体がいけないように思う。

5.疑問
 沈殿槽での臨界状態を止めるため,冷却水を抜くといっていたのは何故か。普通中性子は同じ質量の水素を含む物質中ではエネルギー損失が多いのではないか。このことはJoliot-Curie夫妻が発見し、J.Chadwickがこの放射線が電気的に中性で質量が水素の質量にほぼ等しいと考えてすべての事実を説明し、はじめてはじめて中性子の存在を明らかにした。このことと冷却水を抜くこととは矛盾しているのではないか。冷却水を抜けば発熱のため,沈殿槽の爆発の危険性もあると思うが,心配はないのか。ホウ素が中性子の吸収性に優れているのも質量が小さいからではないか。
参考文献:「岩波理化学辞典」
「ノーベル賞講演物理学」 講談社

水野さんへ
 きのうは日本化学学会東海支部の化学教育研究協議会ご苦労様でした。私も静岡の中村先生や岐阜の井戸先生の実験など授業に生かしていきたいと思います。
 林正幸先生から聞いておられると思いますが,愛知科学教育ネットに参加しませんか。気楽に思ったことを書けばいいし,皆の意見を読んでいるだけでも楽しいです。もし,参加されるときには**高校の船橋さんに連絡して下さい。船橋 隆久さんの連絡先は以下の通りです。メーリングリストは彼のホームページにも紹介してあります。のぞいてみて下さい。
電子メール アドレス : tfuna@mtb.biglobe.ne.jp
Web ページ : http://www2m.biglobe.ne.jp/~tfuna/index.html



番号 99H-004  送信日 99/10/05  差出人 船橋 隆久
件名 RE:弾性球・非弾性球、痛いのは?

 船橋です。
 「非弾性球で頭をたたいたほうが3倍も4倍も痛いと感じる」にこだわっています。[akkn 88]でも指摘しましたが、「運動量の変化」「力積」ともに納得できる説明ができません。そこで思い切ってこんなことを考えてみました。間違っているかもしれませんが、みなさんのご意見を聞かせていただければ幸いです。
 それは「体の感じる痛みは、力の集積度に比例して大きくなる」ということです。「いきいき物理わくわく実験第1集」に「超人!?ガラスの上のレンガ割り」という有名な実験があります。その中で解説されている2番目の原理に「圧力。大量のガラスを敷くので、体との接触箇所が多く、一カ所ごとにかかる力はずいぶん小さくなります。」とあります。もし、弾性球が頭と衝突したときの接触面積が、非弾性球の場合と比較してはるかに大きいと仮定すれば、「ガラスの上のレンガ割り」と同様に痛みは小さくなるのではないでしょうか。もちろん接触面積の大小を測定したわけではないので確信はありませんが・・・・・・。
ではまた。

林先生
「表面エネルギーについて」の返信ありがとうございました。だいぶ分かってきたような気がしますが、私にとってはなかなか難しい問題であることに気づきました。勉強してみたいと思います。ありがとうございました。



番号 99H-005  送信日 99/10/10  差出人 船橋 隆久
件名 生徒もあ然!手力ティッシュ

 船橋です。
 今年は2年生4クラスで化学を教えています。2学期になって授業がますますやりにくくなってきました。それもそのはず、2学期早々の9月中旬は文化祭(準備日をいれて3日間)、下旬になると修学旅行(4泊5日)、10月上旬は体育祭(予選日をいれて2日間)と遊びの間(?)に授業があるようなものです。当然のことながら生徒の集中力は空中分解。そこで一瞬ですが生徒の目をこちらに向けさせる恒例の「手力実験」を紹介しました。その手力実験とは・・・・。
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*** まずコップに水を半分ほど入れます.
先生:「このコップをひっくり返すとどうなるかな?」
生徒:「水が全部こぼれるにきまってるじゃん」
先生:「じゃあ、やってみよう」
*** 当然のことながら、水は全部こぼれました.次にズボンからポケットティッシュの袋を取り出し、そのうちの1枚のティッシュで水の入ったコップの口をおおいます.
先生:「今度はどうなるかな?」
*** 生徒は一瞬いつものようにへんな実験だと疑うが、しばらくして常識的になって水はこぼれると判断する.しかし、いつも反対のことばかり言う2〜3名の生徒はこぼれないと主張する.
先生:「少し意見が分かれたようだね。じゃあひっくり返すから」
*** 結果はティッシュが破れて水はこぼれる.
生徒:「こんな当たり前なことやってたんじゃシラケルよ。ちっともおもしろくない!」
先生:「まあそうだね。では今から念力を唱えるから」
*** と言って、同じポケットティッシュの袋から次の1枚を取り出し、なにやらブツブツ言っているふりをする.
先生:「いまこのティッシュに”水に負けるな!”とパワーを送りました。本当に水に強いティッシュに変身したでしょうか?」
*** と言って、このティッシュを生徒に見せる.見た目には何の変化もしていないティッシュを見て
生徒:「さっきと一緒で、ジャーとこぼれるに決まってるじゃん!」
先生:「君たちは、先生の超能力を信じないようだね.ではやってみるからよく見てるんだよ」
*** と言って、先程と同様水の入ったコップの口をこのティッシュでおおい、ひっくり返します.するとどうでしょうか!コップはまるでふたをしたように一滴の水も漏れません.もちろん揺すってもだいじょうぶ!!
生徒:「・・・・・????」
*** 「秘密はティッシュにあり!」と生徒は前にやってきて、ティッシュにさわったり、光ですかしたりします.新しいティッシュを取り出して試す生徒もいますが、結果はジャーとこぼれます.さかんに種明かしを求めますが今回は「ノーコメント」で通しました.数分間でしたが、生徒と先生が一体となった時間を体験しました.
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 この種明かしは、次回のメールでお知らせします。
 ではまた。



番号 99H-006  送信日 99/10/10  差出人 田中 英二
件名 EHCご苦労様でした

 10月9日のEHCご苦労様でした。
 もうすぐ、アナログマルチメーターが完成しますね。いろいろなものに応用できると思います。あれは一種のオシロですのでそのつもりで使えるものを探してください。
 ところで、EHCに飯田先生や林ひろさんが見えると思ったので、手作りバンデグラフを持っていったのですが見えなくて残念でした。今度県教研に持っていこうと思います。その時見てください。
 船橋さんへ、
手力実験ぼくもやってみたいと思います。夏休みにやったとき、ティッシュペーパーだけでも水がこぼれなかったのでダメかなとおもって、やめてしまいましたが、コップに水を半分入れるのがコツみたいですね。一度やってみます。
 杉本さんのネオジム磁石モーターをEHCで奥谷さんに見せてもらいました。磁石のところに線を付けるとものすごい勢いでまわりました。
 それから、山本先生に9Vで4000V出る装置を分けてもらいました。あれはいろいろ使えそうです。
それでは。



番号 99H-007  送信日 99/10/10  差出人 林 正幸
件名 授業プリント「酸と塩基」が完成

 こんばんは、林です。
 今朝は久しぶりに家内と散歩をしました。木曽三川公園まで歩いて10分ほどという恵まれた環境にあり、ツインアーチや木曽川の河原の風景が楽しめます。今日は遠出も代わりと1時間半ほど歩きました。公園内はコスモスが満開です。そしてススキやセイタカアワダチソウの群落、保護された森には野鳥のさえずり、そしてさわやかな風。
 家にもどると、今を盛りと「酔ふよう」が何10と咲いています。この花は10センチほどで、名前のとおり、朝咲いたときは白色ですが、夕方には紅色に変わります。この木は毎年数100の花を咲かせるのですが、その生命力に驚かされます。これは家を建てる前の今から10年ほど前に矢合(やわせ 稲沢市)で1メートルほどの苗木を買って植えたものです。毎年花が終わると50センチくらいに切ってしまいます。、それが今では根元の部分が50センチほどに固まりになって、毎年数メートルの枝をたくさん伸ばすのです。
 ここ3週間ほどかけて作っていた授業プリント「酸と塩基」が完成し、今日ホームページに掲載しました。
  1   酸とは、塩基とは
  2   酸・塩基の強弱と酸性の強さ
  3   水素イオン指数
  実験1 酸化物から酸と塩基をつくる
  4   酸性酸化物と塩基性酸化物
  5   中和反応
  実験2 塩から酸と塩基をつくる
  6   塩の反応
という構成になっています。実験はこの他にデモ実験を4つ含んでいます。 
 MOLの会でも話したのですが、わたしは「酸化と還元」に比べて、この章の意義付けに悩んでいました。それがすこしクリアできたという印象です。
 これで今年度の教材は完成しました。万歳! 続いて年度内に2年生の部分も作成するつもりです。要するに、それで化学TBの範囲は網羅されます。またまた指導要領の改訂ですが、そんなものには振りまわされることなく、高校で教えたい化学の内容を提示していきたいと考えています。そしてそんな提示がたくさんになれば、豊かな化学教育の礎になると確信しています。
 ではまた。


番号 99H-008  送信日 99/10/10  差出人 船橋 隆久
件名 手力ティッシュの秘密

 船橋です。
 「手力ティッシュ」は8月に行われた科教協山梨大会の帰り、諏訪サービスエリアでの休憩中に話題になった「超能力実験授業」のなかのひとつです。「手力ティッシュ」のからくりは次の通りです。
 事前にポケットティッシュの袋から2枚のティッシュを取り出し、そのうちの一枚に手袋やズボンの防水などに使う「撥水効果」のあるスプレー(私は住友スリーエム製「スコッチガード」800円を使用)を吹きかけます。10分程乾燥させた後、再び「加工済みティッシュ」「普通のティッシュ」の順に袋に戻し、「手力ティッシュ」の完成です。この撥水スプレーは無色透明で無臭ですから、ちょっと見ただけではこの加工に誰も気づきません。しかし、ティッシュを袋に戻す順番を間違えると台無しですから、この点だけは気を付けましょう。こんなちょっとしたアイデアで、おもしろい超能力実験が楽しめますね。
 ではまた。



番号 99H-009  送信日 99/10/10  差出人 林 熙崇
件名 東海村原子力関連施設の事故を考える

【東海村原子力関連施設の事故を考える】(99年9月30日夜12時書く)

(1)マスコミの対応が悪いことが気になりました。扱いが今までの放射線漏れと同じように考えている気配が強く、今回の事故は「今までと全く違うのだ」という空気が伝わってきません。
(2)今回の事故は現在(99年9月30日23:30)でも核分裂反応が止まっていないのではないか?これは、1986年におきた史上最悪の原子力施設の事故であるチェルノブイリ原発の事故と本質的に変わらない部分を含んでいます。
(3)ウラン原子核(235U)はどのような化合物の形であろうと臨界量を超えると核分裂反応を連続的に激しく続けます。
(4)ウラン原子核の核分裂反応は、中性子がウラン原子に当たることで連鎖反応が始まります。
(連鎖反応の図は略)
(5)中性子が235Uに当たると、235U原子は2つの質量(約ウラン原子の1/2)を持つm1,m2の原子に分裂します。このとき質量あたりに換算すると、石炭・石油の約100万倍のエネルギーが放出されます。このとき2〜3個の中性子が同時に飛び出し、この中性子が隣のウラン原子を分裂させる。そしてその分裂によって生じたより多くの中性子が隣の235U原子を分裂させる。というふうにネズミ算的増え方で原子核分裂が進みます。
(6)10Kgほどのウラン原子が1/100万秒という短い時間で連鎖反応をおこしてエネルギーを一気に放出したのが、広島に落とされた原子爆弾でした。
(7)途中にホウ素B等の中性子を吸収する物質で作られた制御棒を入れて、反応が急速におこらないようにしてエネルギーを取り出す形にしたものが、原子力発電所の原子炉です。
◎原爆を作るためのウランは、純度が99%と高品質のものが必要です。
◎原子炉の場合は反応がゆっくりおこればよいので235Uの純度は3〜5%で、残りの97〜95%は238Uといって核分裂反応を直接おこさない同位体と混合になった核燃料を用います。
(天然のウラン鉱石の中に含まれる235Uの割合は約0.7%で、残りの99.7%は238Uになっています。これを約6倍に235Uの濃度を高めたものが、核燃料として用いる濃縮ウラン(3〜5%)です。)
(8)核分裂物質である235Uの量が少ないと、分裂で飛び出した中性子がウラン塊の外に簡単に飛び出してしまって、次の235U原子に効率よく当たることができなくなり、核分裂反応はストップします。しかし、235Uの量がある値を超すと、中性子1個は次のウラン原子にぶつかり、核反応が止まることなく自動的にどんどん進行していきます。この値が「臨界量」です。
(9)アメリカ・ロシア・フランス等で実験がなされて、世界的に非難の声が高まっている「臨界前実験」というものがあります。これは何でしょうか?原爆のしくみと関係があります。原子爆弾は最初235Uの塊を1個、1個では臨界量に達しない小ブロックにしておきます(最初の原爆は18個の小ブロックに分けられていることが最近分かりました)。分けられた小ブロックを「セーノ」・「ドン」でブロック後部の火薬を爆発させて同時(1/1000万秒以下の誤差で)中心に集め、すきまのない「臨界量を超えた塊」にします。とたんに連鎖反応が1/100万秒間にネズミ算的に進行して、10Kgの235U原子すべてが核分裂します(実際には半数ぐらいが飛び散ってしまう)。そして、一瞬に1000,000KgものTNT火薬を爆発させたエネルギーが放出(広島・長崎の場合)されます。
 しかし、235Uの量を完全な核爆発がおこる臨界量より少し減らしておくと、核分裂反応は途中で止まって、ものすごい爆発には達しません。ですが、この実験で起爆装置の性能はよいか?核分裂反応は予想したように進んでいるか?等々はきちんとわかり、大型コンピューターでシュミレーションすれば、臨界前を越える235Uだとどうなったかが直ちに分かります。これが「臨界前核実験」です。
注:現在の原爆は235Uのかわりに239Puを用いています。239Puは臨界量がウランより少なくてすむ(量は軍事機密)。純度の高いPuを作りやすい(Puは原子炉の中でつくる)。
(10)今回の東海村の原子力関連会社でおこった事故というものは、1カ所に多くの235Uが集まり、臨界量を超えて核分裂反応が連続的に進行したようです。→《臨界に達した》
◎ようするに町の真ん中で「核実験」をやったのと同じことなのです。
(11)◎作業員が「青い光を見た!」と言っていました。これが事実なら間違いなく核分裂反応が連続しておこる「臨界」に達しています。
 この青い光は「チェレンコフ光」といって液体や気体中を(その中を伝わる)光速度以上で荷電粒子が通過するときに発生する光なのです。
 これは大量の中性子が発生し、その中性子が空気中の窒素・酸素原子にぶつかって電子を発生させ、その電子の運動で発生した光だと思われます。
(原子炉内部で見える光です。)
(肉眼で見た人はまだいません。見た人は生きていないでしょう。)
(12)病院に運ばれた作業員は「ヤケドのような外傷はないが、意識はもうろうとして、口がきけない状態だ。」と報道されています。この状態は「中性子爆弾」を兵士があびたときにおこる状態と説明がよく似ています。私の推測では、「多量の中性子をあびたためではないか?」と心配しています。



番号 99H-010  送信日 99/10/11  差出人 林 熙崇
件名 続・東海村原子力関連施設の事故を考える

【続・東海村原子力関連施設の事故を考える】  99年10月3日

◎事故を起こした会社が、ウランを核燃料に成形する工場だったと報道されています。この会社が何をしていたか、発電所で使われる核燃料がどのように作られるかを調べてみましょう。
(1)天然に産するウラン鉱石を精製して純粋なウランを取り出します。しかし、核分裂をおこす235Uは純粋なウランの中に約0.7%しか含まれていません。残りの99.3%は核分裂を邪魔する238Uというウランの同位体なのです。
(2)このまま原子炉の中に入れても核分裂反応の臨界に達しないので、235Uの比率を0.7%から3〜5%まで濃縮する必要があります。しかし、235Uと238Uは化学的性質はほぼ同じなので、化学的に分けることはできません。濃縮するには高度な技術が必要です。
(3)詳しいところは企業秘密になっていてよく分かりませんが、ウラン原料を六フッ化ウラン(UF6)にして高温ガスでガス拡散方式や遠心分離方式でほんのわずかな質量の違いによる分離を行っているようです。この方式を繰り返して3〜5%まで235Uの濃度をあげたものを濃縮ウランとよんでいます。
 そして(1)〜(3)までの工程はアメリカ・フランス等でやられて、日本はできあがった濃縮ウランを買っています。
 濃縮ウランを作る技術はウラン型原子爆弾を作るには絶対に必要な技術です。太平洋戦争中、日本も原爆を作ろうとしましたが、この点でいきづまりました。
(4)六フッ化ウランのままでは原子炉の燃料として扱いにくいので、扱いやすい二酸化ウラン(UO2)に変え、それを成形してペレットにして薄いパイプ(ジルコニウム製)の中に入れ、核燃料として用います。
 この事故を起こした工場は、六フッ化ウランを二酸化ウランに変える工程を扱う工場のようです。
(5)報道によると、バケツに溶液を入れてタンクに人力で注ぎこんでいた、といいますから目が点になってしまいました。バケツで操作していたという硝酸ウランは核物質のウランそのものですから、臨界量に達すると自動的に核反応が進行します。それをセメントをこねるみたいに扱っていた、ということはどういう管理なのか?とほとんど信じられませんでした。
(6)人為的ミスがあると日本のマスコミはいっせいにそちらに向いてしまって、客観的に遠方から見ることを忘れてしまいます。
 「なれで気がゆるんだ」等で片づけると大変です。多くのウラン化合物が一カ所に集まってくれば、人がどのように操作しようが「臨界」に達し、やがてそれを越えます。すると自動的に核分裂反応が起こり、むきだしの原子炉が眼前に出現することになります。
 危険なものを扱うシステムは、たとえ扱う人間が気が狂って「爆発させてやろう」とメチャクチャな操作をしても、そうならないようにフェイルセーフになっているのが当たり前です。
(7)臨界に達したら中性子が大量に出ますから、それを検出して溶液を自動的に分散させることはあたりまえのことだし、そもそも臨界は量で決まるのだから、一カ所にウラン化合物が集中できないように、大きさの制限をつけておけば起きるはずがない、と素人は考えます。
(8)放射性物質を扱う工場は、政府から「安全」という「お墨付き」をもらわねば操業できないはずです。フェイルセーフになっていない工場がなぜ「安全」基準を通っていたのか?今回の事故の一端は科学技術庁にあると思われます。
(9)総理大臣が事故を知ったのは2時間後です。内閣の対策本部がたてられたのは10時間後です。放射線という時間との勝負の時間で、空白の8時間は何なのでしょうか?「マニュアルが無かったから」という報道がなされていましたが、それこそ目が点になりました。1986年に起こった旧ソ連のチェルノブイル原発の事故の時、政府関係者は「日本では絶対に起こらない事故です.知識不足と設備不足と安全教育の不足が大事故につながったのです.」と言い切っていました。
 科学技術庁長官を兼ねている有馬文部大臣は核物理学者のはずです。
(10)もう一つわからないことがあります。普通の核燃料の4〜5倍に高濃縮(約20%)された燃料棒を作っていることです。この燃料棒は高速増殖炉「常陽」でプルトリウムと混ぜてMOX燃料として使う予定であった、と新聞記事に小さく書かれていました、そのような実験がなぜ必要なのかは全く書かれていません。プルトリウムとウランを混合した燃料のプルサーマル計画とは条件が異なっています。
(11)原子力行政は「情報公開」が絶対条件です。原子力基本法で、自主・民主・公開の原則がうたわれています。法律で決まっていることが歴代の内閣には無視されてきました。情報公開が人々を安心させる絶対条件なのに、日本のそれは秘密だらけです。今回の事故をおこした会社の設備は、見る人が見れば安全基準を満足させる設備でなかったはずです。原子力行政は「知らしむべからず」という思想が支配しているのでしょうか?今回の事故の根底には、近代化されていない原子力行政がとぐろを巻いているような気がしてなりません。
                                    文責: 林 熙崇



番号 99H-011  送信日 99/10/11  差出人 杉本 憲広
件名 弾性・非弾性肩たたきひょっとしたら

 こんばんは。杉本です。
 弾性・非弾性の問題面白いですね。物理サークルを休んだので知らなかったのですが、戸田さんのところで体験してビックリ!ホントにすごい違いなんですね。いろいろ考えましたが次の考えはいかがですか?
  ひょっとしたら「非弾性ボールの衝突の場合の方が接触時間が短く、力が大きい」
 非弾性ボールの方がネチッと衝突するので接触時間が長いと思いがちですが、それはくっついている時間が長いんであって、弾性がない分、力を及ぼしている時間が短いのではないかということです。逆に、弾性衝突は、ばねを思い浮かべればいいですが、力を吸収するごとくじわっと力を増やし、またじわっと力を減少させます。いきいき1に弾性ボールと非弾性ボールが及ぼす力を測定するページがあり、弾性の方が力が大きいとなっていますが、はかりで測定していますから、さらの質量もあり、瞬間の力を測定してはいないのではないでしょうか。と思ったのですがみなさんいかが思われますか?
 瞬間の力を測定するのには、加速度を測定するしかないと思って、明日(10月12日)に田中さんのところでヒロさんも一緒に実験する予定です。さあどうなりますか?!じゃまた。



番号 99H-012  送信日 99/10/12  差出人 林 正幸
件名 チョークから水酸化カルシウムをつくる

 こんばんは、林です。
 すでに書いた「酸と塩基」には、表題の実験を取り入れています。実は昨年もやったのですが、炭酸カルシウム製のチョークはそのまま水に投入してもフェノールフタレインが赤色になってしまうのです。それは弱酸と強塩基の塩ですから当然です。仕方なく、バーナーで加熱して投入する方の実験のみをやったのです。しかし気持が悪いです。この実験の目的は金属の酸化物(の多く)が塩基性酸化物であることを例示 することです。
 そこでマグネシウムを燃焼させて、できた酸化マグネシウムを水に溶かす実験を試してみました。ところが全然溶けない様子で、フェノールフタレインを加えても水溶液はなかなか赤色にならず、酸化マグネシウムの表面が着色するのみでした。調べてみると「水に溶けるのは低温で生成した酸化マグネシウムのみ」とありました。これが化学なんですよね。
 考えてみるとマグネシウムはアルカリ土類金属ではないし、あまり良い例ではないわけです。そしてアルカリ金属は金属自身が水と反応して塩基になるから、使いたくないのです。金属カルシウムも同様ですし、第一カルシウムの粒はバーナーで燃焼させることができませんでした。
 こうしてまたチョークから酸化カルシウムをつくって水に投入する実験に戻ってきました。そこでユニバーサル指示薬を使うことを思いつきました。すると、チョークをそのまま水に入れてかき混ぜると深緑色(pHが8ないし8.5)ですが、焼成したものでは紫色(pHが12ないしそれ以上)と、はっきり区別ができました。こんな簡単なことでも、小さいブレイクスルーがありますね。
 なおもうひとつに例として、割りばしを燃やした灰を水に落とす実験をしています。これは酸化カリウムが水酸化カリウムになります。そしてこれは、割りばしを燃やしたときに発生する二酸化炭素が水に溶けて炭酸になり、BTBを黄色にする実験とペアです。
 ではまた。



番号 99H-013  送信日 99/10/13  差出人 林 正幸
件名 自由エネルギーの導入について(その1)

 こんばんは、林です。
 私はずっと自由エネルギーを高校化学に導入したいと悩んできています。ご存じのように、私たちの環境は近似的に等温等圧系です。ここではすべての化学的変化は自由エネルギーが小さくなる向きに進行します。平衡状態はこの関数の極小位置に当たります。
 自由エネルギーは
    F=H−TS
ので、エンタルピー(H=E+PV)とエントロピーで説明する立場があります。
 しかし私は次の関係式を基礎にしたいのです。
    F=F0+RTlnγc
このFは正確には1molあたりの自由エネルギーで、化学ポテンシャルと呼ばれる量です。ここでcは濃度で何を使ってもよいのですが、通常はモル濃度がよく利用されています。そしてγは活量係数で、濃度が薄くなると1になるようにF0を決めます。したがって大ざっぱな話では自然対数の中はモル濃度でよいわけです。
 私は高校生には自由エネルギーは物質が化学的変化をする「勢い」と教えると、直観的に理解できるのではと期待しています。もちろん反応速度論的立場からの勢いもあるわけですが、高校ではやさしい方の平衡論的立場を重視したいと考えます。そして
    「変化の勢いはその物質のモル濃度に比例する」
という原理を導入するのです。正比例ではありませんが、対数は単調増加関数ですので許される表現であると思います。もうひとつ変化の勢いに影響するのは温度(絶対温度)ですが、これはすこし触れる程度で深入りしないようにします。
 この上に立って、私は凝固点降下や浸透を次のように説明しました。
<授業プリントより>
[b]凝固点降下の理由
 十分ではないが、ここで凝固点降下の理由を説明しておこう。
 純粋な水が0℃で凝固するというのは、その温度では水と氷が(共存できる)こと を意
 味する。0℃では、水が(凝固)する変化の「勢い」と、氷が(融解)する変化の「 勢い」
 が(バランス)している。そして前者は水のモル濃度に、後者は氷のモル濃度に比例
 している。
    凝固の勢い=Kf×(水のモル濃度)
    融解の勢い=Km×(氷のモル濃度)
      Kf,Km:比例定数
 ここに食塩を加えると、食塩はもっぱら(水)に溶解し、(氷)は元のままである。 つま
 り水のモル濃度だけが(小さく)なる。すると凝固の勢いが(劣る)ようになり、0 ℃で
 は氷が融解してしまうことになる。この条件ではもっと低い温度で両方の変化の勢い
 がバランスする。ここでは(溶媒)である水のモル濃度の方に注目するのがポイントで
 あ る。
 ちなみに、変化の「勢い」に影響するもうひとつに要因は(温度)である。つまり 上の
 比例定数は温度によって変化する。
 注意:上の説明では簡単のために「比例定数」を使っているが、正確にはこの代わり
 に対数を含む関数が書かれるべきである。

問 浸透が起こる理由を説明してみよ。
    半透膜をはさんで、次の2つの変化がせめぎ合う。
      真水の水分子が透過する変化A
      ショ糖水溶液の水分子が透過する変化B
    真水の水のモル濃度の方が大きいので、変化Aの勢いが優って、
    真水の水分子がショ糖水溶液に移動する。
<以上>
 また水素イオン指数(pH)に係わって次の説明を入れました。
<授業プリントより>
[2]このように酸性の強さはたいてい(pH)で表示される。それなら水素イオンのモ
 ル濃度ではなく、その指数部分を使う意味は何だろうか。
 すこし難しくなるが、6章で物質が化学的変化をする「勢い」はモル濃度に比例す る
 ことを学んだ。しかしより正確にはモル濃度の指数部分に比例しているのだ。こんな
 わけで溶液を2倍、3倍と希釈しても顕著な違いが現れないことが多い。その場合は
 溶液を (10)倍、(100)倍と希釈するとよい。そんな例として紫キャベツ色素がpHの
 違いで変色する実験をみてみよう。
<以上>
 皆さんはどのように考えますか。次は化学平衡での扱いについて書いてみたいと思います。
 ではまた。



番号 99H-014  送信日 99/10/13  差出人 加藤 聡也
件名 文化祭、外部招請に知恵を貸して下さい

 こんにちは。加藤聡也です。
 ティッシュの実験はおもしろそうですね。 「指に火をつける」実験はやったことがありますが、私も試みてみたいと思います。
 さて、私は現在、仕事で生徒会を担当しており、来年の文化祭の企画を練っています。 本校は来年で創立30周年となり文化祭で300万〜400万円の予算がつきました。生徒に感動を与えられるような、演劇・ミュージカルあるいは音楽コンサート(ジャンル問わず)を探っています。皆さんの勤務校での経験で、いいんじゃないかと思う、演目を紹介してもらえないでしょうか?企画名、あるいはプロダクションなどをメールで紹介いただけると幸いです。
 ちなみに、今年は「はぐるま太鼓」福井県武生市
        昨年は「サウンドオブミュージック」
でした。



番号 99H-015  送信日 99/10/14  差出人 林 正幸
件名 自由エネルギーの導入について(その2)

 こんばんは、林です。
 いま改めて昨年の夏休みに改訂した作文「化学平衡」を読み返して、そのときからも自分の考えがさらに進展していることに気付きました。つまりその引用でこのメールを完成させることはできないようです。
 さて平衡状態は、左辺の物質が変化する勢いと右辺の物質が変化する勢いがぶつかり合い、バランスしている状態です。例によってアンモニア合成を引き合いに出しましょう。
    N2 + 3H2 ―→ 2NH3
物質が2種以上で、反応式の係数が1でないときの自由エネルギーは
    F=F(N2)+3F(H2)=F0(N2)+RTln[N2}+3F0(H2)+ 3RTln[H2]
                =F0+ln([N2}×[H2]^3)
となります。ここでは活量の代わりにモル濃度を使いました。
 生徒には2種以上の物質が反応するときの勢いは、
    それぞれのモル濃度を掛け合わせ、かつ「係数」乗して重みを付けたものに比例する
      合成の勢い=Ks×([N2}×[H2]^3)
と天下り的に教えたいと思います。
 すると逆反応については
      分解の勢い=Kd×([NH3]^2)
そして平衡状態では両方の変化の勢いが等しいので
      ([NH3]^2)/([N2}×[H2]^3)
の数値は一定になり、これは平衡定数と呼ばれる、と展開します。
 ひとたびこの「質量作用の法則」が導入できれば、濃度変化の影響は、ルシャトリエの原理より明確かつ精密に推論できるようになります。圧力の影響は濃度に置き換えて理解できます。
 より詳しい展開は先に紹介した作文「化学平衡」(私のホームページ「私の教材と主張など」に掲載)を参考にしてください。
 そして次に温度変化が化学平衡に及ぼす影響についてです。これは自由エネルギーから導入するのは難しいと考えています。そこで私は次のように法則化します。これは作文「化学平衡」からの引用です。
<引用>
    2NO2 = N2O4 + 47.8kJ
(中略)
 ところで私たちは、温度を高くしたときの結果を予測できる法則を知りたいわけである。
幸いそれは可能である。温度を高くするとは、加熱して熱エネルギーを与えることである。
であればより大きいエネルギーを持つ二酸化窒素が増えるしかない。続いてアンプルを冷
水に浸けて温度を低くすると、それは熱エネルギーを奪うことだから、より小さいエネルギ
ーを持つ四酸化二窒素が増えて、赤茶色はうすくなる。
 したがって平衡移動に対する温度の影響をまとめると
  「濃度を変化させないなら、温度を高くするとより大きいエネルギーを持つ物質
   が増える向きに、温度を低くするとより小さいエネルギーを持つ物質が増える
   向きに、平衡移動する。」
となる。
<以上>
 もうひとつ頭にあるのは、電池の電圧と勢い(自由エネルギー)をすこしばかり結び付けて、理論的興奮を味わうことです。
 以上、自由エネルギーを高校化学のひとつの道筋として導入することの提案です。
皆さんの批判と感想を期待しています。
 ではまた。



番号 99H-016  送信日 99/10/15  差出人 杉本 憲広
件名 弾性・非弾性実験結果

 杉本です。先日、ひろさんと**高校へ田中さんを訪ねて実験をしてきました。田中さんお世話になりました。また、加速度計を貸していただきありがとうございました。今日**高校で再実験をしました。
 さて、け・っか・はっ・ぴょーーーー
と華々しくいきたいところですが、まだ発表段階ではありません。正直に申しますと、予想に反して(?!)思わしい結果(非弾性ボールの方のが力大きい)はでていません。とりあえず、途中経過です。
[12日の実験]
 田中さんの加速度計を用いてボールが衝突したときの当てられた側の物体の加速度を測定しました。ma=Fですから、直接力が測定できるはずです。最初計りの皿に加速度計をつけ、ボールを皿に落下させて、皿の加速度を測定しました。振動が気になるので、その後、1つの力学台車に加速度計をつけ、もう一方の台車の前面にボールつけて、水平面で衝突させるという方式をとりました。そして、ひろさんがメモリーできるデジタルオシロを持ってきたので、それで加速度の変化を見ました。
 結果は、若干の違いはあれ、衝突時間は、20ms程度、弾性ボールの方が長い、力の大きさは弾性の方が若干大きいけどほとんど同じでした。
 今日は、田中さんの指摘もあり、もっと派手にぶつけることにしました。振り子方式で台車にぶつけて台車の加速度を測定しました。今度は、ビデオでオシロの画面を録画したため先日より楽に行うことができました。
 その結果、加速度の変化は両ボールともほとんど同じ。力の大きさは、弾性ボールの方が若干大きいですが、あまり変わらない。
 オシロに映し出される変化の形がほとんど変わらないため、加速度計の特性を測っているような気もしますので、他の方法で加速度を測定しようと思っています。
 痛いって何でしょうね?船橋さんこれは難しいですね。ではまた。



番号 99H-017  送信日 99/10/16  差出人 林 正幸
件名 化学におけるエネルギー概念

 こんにちは、林です。
 昨日から中間試験、一息入れることができます。
 試験の直前に1時間だけ、次の章の「物質とエネルギー」に踏み込み、エネルギーでは次の4つが基本になると教えました。この内容は夏休み中にもメールに書きましたが、かなり手直ししたのでもう一度プリントを紹介します。
<引用>
[a]エネルギーとは何か
  (中略)
[2]エネルギーとは、
  「物体がある(状態)で存在していることに対応して必然的に持つもの」である。ここで物体とは物質を含んでいる。
 実はこのようなものは他にも温度、圧力などいろいろある。エネルギーはこのようなもののひとつである。
[3]そしてエネルギーにはさまざまな(形)があり、その状態にふさわしい名称で呼ばれる。エネルギーの基本的な形は運動エネルギーと位置エネルギーである。
 (運動エネルギー)は物体がある(速度)で運動していることに対応して持つエネルギーである。そして物体の速度が大きいほど、その運動エネルギーの量は(大きい)。
参考:運動エネルギーの量は、速度の二乗に正比例する。

                   図1

 (位置エネルギー)についてはすこしくわしく説明する。位置エネルギーは初歩的には「高い位置にある物体ほど大きい位置エネルギーを持つ」と言う。しかしこの背景には地球の存在がある。つまり物体と地球が(万有引力)で引き合っている。だから図のようにそれを宇宙的な視野で見れば、引き合う物体どうしが(大きい)距離で位置しているほど位置エネルギーの量が大きい」と修正される。
 つまり位置エネルギーは、(引き合う)物体どうしがある(距離)で位置していることに対応して持つエネルギーである。なお引力の種類は万有引力だけでなく、電気的引力でも磁気的引力でも構わない。
参考:たがいに反発し合う物体どうしにも位置エネルギーは存在するが、ここでは踏み込まない。
[b]エネルギー保存の法則
(1)物体がその状態を(変化させる)と、それに対応してその物体が持つエネルギーの形や(量)が変化する。ボールを屋上から落下させるとき、始めの状態では位置エネルギーだけを持つが、1階の高さまで来た状態では、位置エネルギーと運動エネルギーを持つようになる。しかしエネルギーの全体の量は一定に保たれる。つまり始めの位置エネルギーの量と、後の位置エネルギーと運動エネルギーの合計は等しい。言い換えると、(位置エネルギー)が減った分だけ(運動エネルギー)が増える。
 次になめらかな平面上を滑っているブロックAに、より質量が大きいブロックBが追突する例を考える。衝突は完全に弾性的であるとする。ブロックAは加速され、ブロックBは減速される。ブロックAは前より大きい運動エネルギーを持つ状態に変化し、ブロックBは前より小さい運動エネルギーを持つ状態に変化する。つまり2つのブロックの間でエネルギーの(やり取り)が起こる。このときブロックAが得たエネルギーと、ブロックBが失ったエネルギーは等しい。言い換えると、エネルギーの(全体の量)は一定に保たれる。
 以上のことはエネルギーの最大の特徴で、
    (物体が状態を変化させてそのエネルギーの形や量が変化しても、
         エネルギーの全体の量は一定に保たれる。)
これは(エネルギー保存の法則)と呼ばれる。
(2)もうひとつ付け加えると、上の例からうかがえるように、
    物体がエネルギーを持つというのは、自分ないし相手の状態を
        変化させる(能力)を持つことである。
私たちが住んでいる世界において変化・進歩を産み出すことは、エネルギーなしでは実現しないのである。
<以上>
 これに対して、生徒から「とくに位置エネルギーはよく分った」という反応が返ってきました。
 そのほかに「授業ノート」から拾ってみます。
「位置エネルギーについて納得した。
今までは、位置が低くなっていくと位置エネルギーが小さくなっていく理由が分から
なかった。でも物体と地球が万有引力で引き合っているからということが分かった。」
「力は一方通行にならず、互いにおよぼし合っていることを知った。エネルギーは勝手
に生み出せないことを知った。」
「位置・運動エネルギーは聞いたことがあったが、エネルギーが状態を変化させると
いうのはビックリ。
エネルギーはたくさんの種類があった。
ボールが落ちる時は両方が引っぱられるが、上に投げたときはどうなるのか?
エネルギー保存の法則から、空気中にエネルギーは逃げないのか。
エネルギーはとても大切であり、なくてはならないものだと思う。」
「運動エネルギーの速度が大きいほどエネルギーの量が大きいのは理解できたけど、
位置エネルギーはいまいちよく分からなかった。
エネルギー保存の法則は、中学の時もやったけど、より詳しく書いてあり、良く分か
った。あと、世界の為にエネルギーは大切なんだと思った。
他にどのようなエネルギーがあるかを知りたい。
エネルギー保存の法則はどのような条件でも成り立つのは驚いた。」
 ではまた。



番号 99H-018  送信日 99/10/17  差出人 船橋 隆久
件名 生理学からみた痛み

 船橋です。
 「弾性・非弾性球、痛いのは?」についてはその後もこだわっています。杉本先生の実験に期待していましたが、まだ結論らしき結果はでていないようですね。加速度計を使った実験結果、楽しみにしています。出口の見つからない私は、「痛み」について医学部の学生に質問しましたところ、次のような返信が届きましたので紹介します。
−−(引用開始)−−
 昨日、ご質問くださった「頭の痛覚」についてですが、調べてみましたが、よくわかりませんでした。ご存じのように人間の感覚というのは、受容器(センサー)があって、それを信号に変換、その信号が電気的に神経を伝わり、さらに脊髄から中枢(脳)へ伝わるという仕組みです。
 これは、基本的に、痛覚であっても、触覚でも冷覚でも、はたまた、味覚や嗅覚、聴覚でも同じです。また、受容器で感じなければ、信号は脳へは伝わらないわけで、受容器が検知しうる刺激の強さを閾値(いきち)と呼んでいます。
 さて、痛覚についてですが、「痛みは、機械的、熱、電気的、または化学的刺激が組織を損傷することによって起こる」そうです。とりたてて、特別な感覚でもないと思われます。
 今回問題となっている、ものでたたかれたときの痛みは、機械的な刺激と考えてよいので、言い換えれば物理的なもの、すなわち、僕の考えるところでは、物理の法則にのっとってしかるべきものと思いますが・・・ どうしてなんでしょうね。
 なんだか、ご質問の要旨と違った方向のことを書いているような気がしますが、すみません、実は僕もますます不思議に思って、よくわかりません。
−−(引用終了)−−
 以上のように、生理学的にみてもよく分からないと言うのが結論のようです。引用の中にはでてきませんが、「運動エネルギーの立場から考えてはどうでしょうか?」というのが彼の考えでした。つまり、「弾性球は衝突時とほぼ同じ速さではねかえるため、エネルギーの損失は少ない。一方、非弾性球の場合は急速に停止するため、一部は熱や音としてエネルギーが放出されるものの、多くの運動エネルギーが組織を損傷するのに使用され、それがより大きな痛みとして感じるのでは」というものです。
 みなさんはどのようにお考えですか。ではまた。



番号 99H-019  送信日 99/10/19  差出人 林 正幸
件名 2組の「授業ノート」から

 こんにちは、林です。
 今日が試験の最終日、幸い採点は終了しています。
 昨日は、家内と「霧ヶ峰」に出かけました。近場にしようかとも迷っていたのですが、天気が良かったので遠出を決意しました。8時に出発して高速にのり、途中20分ほど渋滞がありましたが、諏訪インターを下りて11時半には現地に着きました。
 軽い昼食のあと、お目当ての「八島湿原」を歩いて一周しました。1時間ほどのコースですが、日差しがあってすこしばかりの風も苦にならず、清々しい気分でした。湿原やまわりの高原は枯草色ですっかり秋の気配、緑の牧草や紅葉も混じって別世界です。そして休憩して湿原の水面に映る空を眺め、鈴のような虫の声を聞きました。
 このあとビーナスラインを走って白樺湖。帰りの高速は家内が運転してくれたので、今が盛りのススキやセイタカアワダッチソウが過ぎ去る向こうに、午後の太陽を浴びた山並みをゆったりと楽しめました。そして夕食の買物を済ませて帰宅したのが6時でした。
 今年の私たち夫婦はすこし「まとも」です。お互いに仕事人間ですが、春には2泊3日で有馬温泉・神戸に出かけたし・・・。

 2組みの最近の「授業ノート」を紹介してみます。
「科学者はどうやって正確な分子量をつきとめるのか不思議に思った。分子の大きさの事がどうして分かったのか知りたい。1000倍も大きい分子があって、それが自分たちの周りにたくさんあるというのはおどろいた。
 RNAのことを”巨大分子”と呼んでいるのを聞いたことがあるけど、そのことと関係あるのか? そしてなぜ増殖するのか? 分子といえばSFとかでナノマシンというのがあるけどそれは可能なのか。
 いろいろ式や数が出てきてわけが分からない。計算によって圧力や分子量がわかってしまうのはおもしろい。
 テストの点を短期間で上げる方法(ちなみにこの生徒の中間は99点でトップでした。)」
「(前略)
溶解度をもとめる計算はなかなか難しい! 頭の中がごちゃごちゃになってしまう。先生が解説してくれると、”なるほど”って、わかるんだけど。だから、まだ理解しきれてないということだと思うから、テストまでには自分でしっかりとけるようにしたいです。」
「(前略)
変な質問だと思いますが、ヒドロキシル基のヒドロキシルとはどういう意味をもっているのでしょうか。
(中略)
計算問題って思うだけでパニクッてしまい、問題がぜんぜん分からなくなってしまう。どうしょう。
”似たものどうしは溶け合う”っていうのは、今までは当たりまえみたいに思っていたけれど、よく考えるとすごいことでは!?と思った。何で水と油では”電気的引力”が働かないのですか。」
「(前略)
溶解度の計算なんて授業を聞いていてもさっぱり分からなかった。理解できるように頭をしぼりたいと思います。気体の溶解度は圧力に影響を受けるなんでとてもびっくりした。溶解度の計算は誰がつくったのか知りたいと思った。」
「(前略)
自由エネルギーとは何の事かと疑問に思う。測られたフラスコだからメスフラスコならば、測られたシリンダーだからメスシリンダーという名前があるのかと思った。小学校の時から使っていたものだったので何となくびっくりした。でもビーカーは何故”メスビーカー”ではないのでしょうか。」
「ウランの扱いをまちがえると、たいへんなことになるということしか、難しすぎて理解できなかった。
有害物質(註:ぶよという虫のこと)をどうにかしようとDDDをまいたのは良かったけれど、食物連鎖で他の動物・人間にも影響があるということは、予想外だったのだろうか。
”母親の母乳がダイオキシンで汚染されている”とプリントに書いてあったけど、母乳だけが汚染されているの? 母親から産まれた子供は、母乳を飲まなかったらだいじょうぶなの?
”放射能をあびた”と、自分でちゃんと分かることができるのか。それで、その放射能をあびた人から他の人にうつるのか知りたい。
分子・原子の世界はすごい複雑だ。水素1、水素2・・・、そんな水素にかわりないのに、使い方をまちがえると大変なことになってしまう。でも、人間も、人間の中の自分。同じか。」
「医学の発達について、透析でなおせるよういなったことを納得した。浸透で、実験の結果からみてほんとにあんなことが起こるんだなあと感心した。
(後略)」
「(納得したこと)
放射線は感染しない。
浸透がどういうものか分かった。
腎臓の治療に半透膜をつかうなんて、半透膜はいろんな使いかたがあるんだな。
(中略)
なんで半透明の溶液だと、レーザー光の道すじが見えるのか。透明と半透明の色に関係があるんじゃないのか。」
「なぜ硫黄をエタノールに溶かしてから大量の水でうすめた溶液には、横からレーザー光を当てると光路が見えるのか。またほかにどんな物に光路が見えるのか。
(中略)
何げなく寒天を使っていたけど寒天が長い分子や、それが枝分かれしたり網目状になったりした分子からできているなんて思わなかった。身近なコロイド溶液は他にどのようなものがあるのか知りたい。
”凝”という字を使うものが多くて区別が大変だと思った。」
「(前略)
合成せんたくのりもコロイド溶液とは思わなかった。他にも身近な物でコロイド溶液はあるのかな。
ゲル化という言葉も難しそうだったけれどコロイド粒子が溶媒を包み込み流動性を失ったという案外簡単なものだった。
先生の授業は身近な物を使って説明してくれるから想像しやすいし、気づかないうちに私達は化学に接しているんだなあ、と思うことができる。
電気泳動はコロイド溶液に電気を入れるとコロイド粒子が泳ぐように動く、と覚えるとわかりやすいかな、とか、自分で工夫して覚えるようにすると、楽しいし、意外と覚えれるな、と思った。」
 「授業ノート」を読んでいると、生徒から学ぶものが多いなと感じます。
 ではまた。



番号 99H-020  送信日 99/10/24  差出人 船橋 隆久
件名 インテク研と逆立ちゴマ

 船橋です。
 今回のインテク研の参加者は、伊藤,戸田,近藤,浅井,船橋の5名でした(敬称略)。レポートされた内容は、今までは伊藤先生が「インテク研開催の案内」をかねて報告してもらっていました。「インテク研の活動内容も、充実してきたakknを活用してはどうだろうか」という提案があり、今回は自分で報告した内容をネットを通して個人的にまとめてみることにしました。
1.逆立ちゴマ
 半年ほど前、生徒から「逆立ちゴマ」なるものをもらいました。「どんぐり」を押しつぶしたような形をしたこのコマを回転させると、途中から上下がひっくり返り、はじめつまみを持って手で回した心棒が下になって回転するするのです。その理由を質問されたのですが全く分からないままになっていました。
 先週の火曜日、中京テレビ19時から放送される「伊東家の食卓」なる番組を見ていたら、偶然この「逆立ちゴマ」が登場しました。放送では「偶力と摩擦力の関係でひっくり返る」とのことでしたが、どうもすっきりしません。10円玉の下の方に粘土を貼り付け回転させると、「逆立ちゴマ」と同様途中でひっくり返り、重心を上にして回転をはじめます。ゆで卵を横にして回転するとこれも途中から縦になって回転をはじめます。
 この3つの実験に共通している現象として、「重心が上になった回転をはじめたときの速度は、最初の速度に比較してはるかに遅くなっている」ということです。手元にあった「話題源・物理(とうほう出版)」という本には、次のような解説が載っていました。
(−引用開始−)
 回転するものの重心が低いところにあると、回転する力と摩擦の力とで重心を上に持ち上げる力が働いて、重心が一番高いところまでいくと、そこで安定する。しかし、事実として分かっているが、なぜ重心が一番高いところへいったときに安定するのかは、理論的に完全に解明されていない。
(−引用終了−)
 インテク研では「おもり2個でつくったコマは回転しないが、3個になると回転する」「摩擦力で回転エネルギーを減らしても、エネルギーの等分割が優先されるからではないだろうか」という意見がでました。
みなさんからの意見を楽しみにしています。
2.ハガキのバーコード
 これも「伊東家の食卓」で紹介していた内容ですが、「ハガキにブラックライトをあてるとオレンジ色に輝く蛍光のバーコードが浮かび上がる」というもにです。今年の年賀状で試したところ、約半分にこのバーコードがみられました。手書きの住所を読みとり、それをバーコードに変換して機械に読みとらせ、配達員の配布経路順にハガキを並び替えているとのことです。こうなってくると郵便番号は全く必要ないように思いますが・・・・・。また、同じ住所でも微妙にバーコードが違っていました。これはなぜでしょう?
3.弾性・非弾性,痛いのは?その後
 インテク研でも話題になりました。その中で次のような指摘がありました。「弾性球でも硬い床の上と、柔らかい砂の上では全然違った弾みかたをする。頭に当たったときの痛みについても、衝突球とその対象(この場合は非弾性体としての頭)の両方から考えなくてはいけないのでは?」「満員電車が急ブレーキをかけたとき、慣性の法則に従って次々と人が前に倒れかかってきて一番前の人は押しつぶされて痛いはず。非弾性球でも同じことが分子レベルで起こっていると考えたらどうだろうか」など、再びおもしろい意見がでてきました。この議論はいったいどこまで続くのでしょうか。



番号 99H-021  送信日 99/10/27  差出人 戸田 亜昭
件名 指南車講習会のお礼、他

 戸田亞昭です。
 先ず,指南車は作りたい。この機会を逃がしては手に入れることは出来ないだろう。送れ気味の中間試験の問題もまだできていない状況で参加させてもらっていいのだろうか。また急に何も知らない連中が押しかけていって迷惑にならないだろうか。いろいろと不安はありました。はじめての旋盤のスイッチを入れる瞬間は緊張もしたし,どっと音を立てて回り出したときにはびっくりもしました。しかし、皆さんに親切に教えていただいて楽しく勉強できました。
 その一言の中に沢山の新鮮なもの,私たち物理の教員の発想にないものをいただけたのは貴重な財産となりました。石田先生の言葉「ものを正確にいい働きをするものを作るにはどのように発想をするのか。大量生産を意識するばかりでなく、一つ造るのにも精密な冶具を作るのが大切だ」唯の物作りのみに終わらない。物作りの精神を教えていただいたのは今後の大きな財産にしたいです。
 掃除をするのにも床を掃く箒と旋盤の上を掃く刷毛のような箒ときちんと区別しなければならないことも教えてもらいました。注意を受けたときは「それくらい頭を働かせなさい。下を掃く箒には砂がついている。砂が機械の可動部に入って傷がついてしまうではないか。機械を大事にしなさい。物理をやる連中はそんなことも分からないのか。」といわれたようで恥ずかしくなりました。しかし実際はやさしく注意されたのです。物理を教えていても旋盤の回転する材料の前に立ったりしました。材料が回転してくれば旋盤の歯(バイトと呼ぶのでしたっけ?)に当たり,歯をうっかりと折ってしまいそうなこともやりそうになり,本当に危険なことも分かっていないことを教えられました。こんな危険な連中の相手をして親切に教えてもらい感謝しています。これに懲りずに物作りを中心にして物を作る精神を教えていただきたいと思います。これからももっと教えていただけたら私たちにとってはすばらしい飛躍が出来ると思います。それぞれ発想の違う者が協力すれば新しいものが生まれてくるように思います。これからも協力して生徒の目の輝く教材を求めていっしょにやっていきましょう。私たち 理科の教員が教えてもらう側になることばかりになりそうですがよろしくお願いします。
 実物の指南車を見ると理科の先生には欲しくなる人がきっと出てきます。さらに参加すると物を作る発想の仕方が変わってくることでしょう。旋盤が1台各学校の理科にあったらいいなと思いました。でも旋盤の歯を自分で加工するところまで出来ないと一人立ちは無理ですね。この年では無理かな?
 次回を楽しみにしています。石田先生はまだ材料はあるからもっと連れてきてもいいとおっしゃっておられたけれど、本当に仲間を増やしてもよければ呼びかけることにします。
 なお,もう一つお願いがあります。デジカメならばこんなことはないのでしょうが,先日撮った写真は失敗してしまいました。児島先生の撮ったビデオのダビングしていただけるとありがたいです。たいへん素人の私たちも急遽参加させていただきありがとうございました。しかし残念ながら写真には失敗をしてしまいました。 
 なお,愛知の科学教育に関心を持つ人ならば誰でも入ってもらえるので、私たちの教育ネットに入って工業や技術の間を埋めべく協力していきませんか。もし参加していただけるのならば次の方が事務局をしていただいていますので,加入の旨連絡して下さい。今までのメーリングリストは船橋さんのホームページでご覧頂けます。気楽にご参加ください。
船橋 隆久
電子メール アドレス : tfuna@mtb.biglobe.ne.jp
Web ページ : http://www2m.biglobe.ne.jp/~tfuna/index.html

以下に愛知科学教育ネット用のメールもついでに載せます。
AKKN
インテク研サークル報告
日時 : 1999年10月23日
場所 : 愛知**高校4階近藤先生の準備室
1 私は愛知技術研究会の指南車の工作教室に参加することを紹介しました。蒲郡で石田先生からいただいた資料を配布し宣伝しました。新聞紹介,指南車の原理,設計図,ホームページ紹介など資料の欲しい方は連絡して下されば,県教研のときお持ちします。
2 Maryland大学の資料の翻訳にいいソフトがありましたら教えて下さい。
3 デジカメとスキャナーが欲しい。
4 Windows3.1対応ソフト「オデッセイ」をWindows98でも動くように伊藤さんにしてもらいました。QuickTimeというソフトの古い物を使えばいいそうです。



番号 99H-022  送信日 99/10/30  差出人 林 正幸
件名 「物質とエネルギー」の授業

 こんにちは、林です。
 昨夜、林ひろさんと電話で話したら、「非弾性球の方が痛い」秘密が解けたということでした。加速度計では成功しなかった衝突時の力の測定が、スピーカーに170g(だったかな?)の金属板を固定して、それに弾性球と非弾性球を衝突させたとき の起電力をデジタルオッシロでくり返し観察したら、非弾性球の立ち上がりは事実上の方形波だったということです。つまり、スピーカーの起電力はコーンの速度に比例するので、加速度つまり力はその勾配に当たるわけです。弾性球の波形は山形だったそうで、こうして非弾性球の衝撃力が圧倒的に大きいことが実証されたのです。
 エネルギー説や圧力説があるなかで、私もいったいどう展開するのかと見通しがつかない中で、加速度センサーの失敗に懲りない信念の持ち主が問題を解き明かしたのです。その根拠になったのが、非弾性衝突の方が高い音がする、あるいはモデル実験において非弾性衝突の方が強いバネで実現するといったことがあったそうです。いやいや、そのこだわりには脱帽です。
 そして電話では、微分回路を加えてピークホールドすれば、衝撃力計測器になるではないか、という話になりました。さっそく林ひろさんは東レ受賞を目指して取り組むと宣言してくれました。新しい装置がまたまた誕生しそうです。この情報は杉本さんからより詳しく報告されるかも知れません。
 さて、前にも「物質とエネルギー」の授業の紹介をしましたが、ほぼ終わりに近づ いて次のような「授業ノート」が登場しました。
「物質どうしが状態を変化させるには、常にエネルギーの流れがかかわっていること がわかった。
酸素呼吸は光合成と全く逆向きの反応という関係を知った。
太陽がなくなる前に、どうくらい地球に人が存在できるのか、興味をもった。
熱化学方程式から、前後のエネルギー量の差が簡単に読み取れる。
物質どうしが、奪ったり与えたりするエネルギー量の値はどうやって求めるのか。( これは燃焼熱の計測を授業でやったのですけど、この生徒には意識されなかったよう です。)
太陽エネルギーが与える量はどのくらいなのか。
地球上で人が暮らせるのも太陽と植物によるエネルギーの流れが深くかかわっている。私たちが豊かに暮らしていくには、自然の力がとても重大であることを改めて感じ た。人が住める地球を作り上げた自然は本当に自分が考えていた以上のパワーをもっているんだなと感心した。技術が発展していく中、自然を破壊している自分たち人間 がはずかしく思えた。自然を守る方にも力を注ぎたいものだと思った。」
 このエネルギーの授業では、複数の生徒が「分かりやすい」と話してくれています。他のクラスの授業ノートにも期待しているところです。
 明日の合同県教研では、私はシランという気体を紹介する予定です。お楽しみに。
ではまた。



番号 99H-023  送信日 99/10/31  差出人 杉本 憲広
件名 続弾性・非弾性

 教研お疲れさまでした。今年も盛りだくさんで楽しい1日でした。弾性・非弾性実験結果を発表しましたが、ネットにも記録を残しておきます。
 以前にやった加速度計では限界だと思いまして、ヒロさんの考案でスピーカーの起電力を測る方法で実験を行いました。スピーカーのコーンにおもりを取り付け、そのおもりをボールでたたいたと
きにスピーカーの端子に発生する起電力をオシロスコープを利用して測定します。起電力は速さに比例しますから、オシロに現れる信号の形は速さに比例した量ですから、そのグラフの傾きをとれば加速度がわかり、すなわちおもりが受ける力の時間変化がわかるというものです。
 どうですスゴイでしょう。さすがヒロさんです。
 さて、結果ですが。いい結果がでたんですね。
 弾性球のグラフは徐々に速さが増すのに対し、非弾性球は急にグワァンと増加します。傾きを考えると、弾性球は富士山のようになめらかに大きくなるのに対し、非弾性球はパルスのように急激に大きくなること、力の最大値も非弾性球の方が大きいことがわかりました。
 やりました。予想どうりです。
 さらに、微分回路を用いて直接力のグラフを出すことをたくらんでいます。
 じゃまた。