番号 11A-001  送信日 11/01/08  差出人 岡田 高明
件名 名古屋EHC最終連絡

新年おめでとうございます。みなさんお元気ですか?
   次回の名古屋EHCの企画は静電気発生装置(1)「リニア
   バンデ発電機」と(2)「ケルビン発電機」です。
  
  (1)「リニアバンデ発電機」は市販の「バンデグラフ発電機」の
     手動版です。直径20cm長さ45cmの大きさです。
     費用は約3000円です。講師は林ひろ崇先生です。

    (2)「ケルビン発電機」はペットボトルやビール缶など、
     身近にある材料を使って静電誘導によって発電します。
    制作費は1000円を予定しています。

   日時   2011年1月22日(土)9:30〜17:00

     テーマ  (1)「リニアバンデ発電機」 林ひろ崇先生
     &講師   (2)「ケルビン静電発電機」      船橋隆久先生

     会場   名古屋市立菊里高校物理実験室(2F)

     費用   (1)約3000円
               (2)約1000円

     準備する (1)「リニアバンデ発電機」
     もの             空き缶(350mlor500mlビール缶等)1個
               (2)「ケルビン静電発電機」
                  a キャップ付きポカリスエット(500ml)ペットボトル2本 

         (以前は角柱タイプでしたが、最近は円柱タイプのペットボトルに 

          変わりました。必ず円柱タイプを持ってきてください)
                  b 350mlビール缶 2本
                  c 500mlビール缶 2本(乾いていることが望ましい)
            なお水滴を受ける350mlビール缶2個の上ふた(プルトップ 

          がついている)を切り取るため「缶切り」持ってきて下さい。
                  d さしみや魚の入っていた発泡スチロールのトレイ(横25cm× 

          縦15cm程度)を1個(ビール缶2本を立てます)

     工具   (1)「リニアバンデ発電機」
                      万能バサミ、塩ビパイプが切断できる鋸、ワイヤストリッパー 
           ラジペン、ニッパ

                (2)「ケルビン静電発電機」
                     電動ドリル、ラジオペンチ、半田・半田ごて・工作道具一式


番号 11A-002  送信日 11/01/17  差出人 川田 秀雄
件名 2011年大学入試センター物理問題に異議あり
川田です。大雪で大変です。しかし身も心も「凛」となります。軟弱な私に喝が入ります。
今朝、新聞で大学入試センター試験の物理問題を見て、ビックリ。音波の干渉を山谷線で考えています。
水波との関連から解り易いが、これでよいのか。
 早速、入試センターに「採点から除外するよう」申し入れました。(17日午前9時半 、添付資料参照)
以前、物理サークルで遅くまで議論した問題です。音波の干渉は「疎密線」で考えるきっかけなれば、
との思いで、これから「入試センター」と議論します。
皆さんの忌憚のないご意見をいただければ幸いです。 



番号 11A-003  送信日 11/01/18  差出人 杉本 憲広
件名 Re:2011年大学入試センター物理問題に異議あり

 川田さん今年も頑張っていますね。
 さて、この件は以前にさんざん議論をしたような気がしますので、思い出しながらコ
メントします。
 私は、ちょっと川田さんとは違い、「山谷派」です。その一番の理由は、1波源の場
合はいいですが、2波源の干渉を考える場合に、密度などは、周りの媒質との関係の結
果ですから、重ね合わせの原理が不正確になることです。高校で学習するのは、変位の
重ね合わせです。それを密度や圧力の重ね合わせと考えるのはちょっと無理ではないで
しょうか。

 2波源で横の変位を縦に変換する方向があわない問題は、約束の問題で、それぞれの
波源からの波ごとに、波の進む向きに正の方向と向きを約束すればすむ問題ではないで
しょうか。この座標の取り方は、極座標に相当し、変位の和はベクトル和となります。

 などと述べましたが、センター試験のこの問題は私もよくないと思います。縦波とし
て、問いがありますが、変位の表し方の約束はどこにもありません。川田さんが以前に
指摘したスピーカーの近傍の波面まではっきりと書いてあります。

 センターがどう回答をするのかは大変に興味深いですね。結果を楽しみにしています
。川田さん頑張ってください。



番号 11A-004  送信日 11/01/19  差出人 川田 秀雄
件名 大学入試センター試験問題2

杉本様
皆様
杉本さん、奥村さん、コメント有難うございます。このような議論を待っていました。入試センターとの論戦を控えていますから。
私も、2年前まで山谷で教えていました。科学館の講座準備のための勉強や2年前のサークルでの議論を経て、今では音波は「疎密派(波)」になりました。しかし、授業ではあまり「自説」を強調しません。受験に不利になると困るから。

 さて、杉本さんのコメントを読んで、2年前の議論を思い出しました。杉本さんの意見に対する私の見解:

@先ず、縦波の横波表示ですが、任意にx軸を決めます。「媒質がxの正方向に変位した時y軸の正にとります。負の変位をy軸の負にとります」これは波の進行方向と関係ありません。たとえば、波の密が固定端に入射し、反射すると密が反射します。作図すると波形が同じになります。進行方向に関係なくy軸の正はx軸の右です。(添付資料A)
 本来、山谷は1次元の話。杉本さんのように「極座標方式で、進行方向に変位した時をy軸の正にとる」と決めれば
山谷線は疎密線と同じになります。センター試験の問題もokです。が、本来山谷はその様に定義されていませんから、話が混乱します。特に断わりが無ければ、通常の定義と考えるべきです。

A2つのスピーカーs1、s2から出る音の干渉を扱う場合、スピーカーから十分離れた所を問題にします。この場合s1とs2からの位置ベクトルがほぼ同じ向きと考えてよく、山谷であろうが疎密であろうが同じです。ところがセンター問題はs1s2の間までキチンと半円を描いてあり、オマケに(疎密ではなく)山谷であることを問題文にうたっています。

教科書の例
 
 ○第一学習社 物理T(P191) の音波の干渉図はs1s2の離れた点での干渉を問題にしています。図もs1s2 の近傍を避けています。また山谷や疎密の表現はありません。あえて避けています。これはこれで一つの見識かと。 


 ○東京書籍物理T(p214) の音波の干渉図はセンターと同じでキチンと半円を描き、オマケに山線谷線と描いています。センターはこの本を見て問題を作ったのかと思うくらいです。

 2009年2月に東書に問題点を指摘しました。2009年3月18日に回答が来ました。
 「編集委員に確認をとりました。御指摘いただいた音の干渉における山谷の表現でございますが、縦波の横波表示と言う趣旨でこのように表現いたしました。表現が正確でなく、先生方や生徒に誤解を与えてしまうため、さらに検討して、修正させていただきます。」

B話がそれていきました。杉本さんのもし極座標方式なら変位の和はベクトル和となります。これは同感です。
このように山谷を考えれば問題はありません。(添付資料@)
s1s2の中点は変位が打ち消し、定常波の節になります。しかし、センターの問題では「腹」になってしまいます。

C杉本さんの指摘どうり、重ね合わせが成り立つのは一般には「変位」「速度」などのベクトル量。密度や圧力はスカラー量です。が、しかし我々が音を大きく感じたりするのは「音圧」のスカラー量です。マイクロホーンなどで波形を見るときマイクは変位を感じていません。音圧を拾っています。
 2点波源で作られる密度変化の位相は変位に比べπ/2進むが、密度変化についても重ね合わせの原理が成り立つ(啓林館、教授資料)。(この部分の証明は、正直まだできていません。結果論として理解します)
 ちなみに、「水波の干渉のように扱えるのは圧力変化や密度変化といったスカラー量を用いた場合である」とも。

Dここまでの議論は読者の方も「どっちでもいいや」とお思いだと思います。問題はs1s2の間は互いに逆方向に進む波が出合って「定常波」(定在波)になります。s1s2の中点に振動は?
 ○センターの図では変位の山々、谷谷で「腹」。すなわち密度変化(圧力変化)なし。音は小さい。
 ○音波を疎密線で表すと密度変化最大(圧力変化最大)。音は大きい。

 真実は音が大きい。そこで山谷表記を「極座標方式」に変えてみたり、いろいろ言い訳をしなければなりません。言い訳をしなければならない表現の仕方は、物理法則の名に値するだろうか?と言うのが私のこだわりです。
教科書で、その他いろいろ気になる部分があります。そのつど指摘をしています。が、事もあろうに「大学入試センター」が誤った記述に「お墨付き」を与えてはいけません。これが私の怒りの源です。

 杉本さん有難うございました。本質的に考える材料を提供していただきました。また専門書で調べたり考えます。



番号 11A-005  送信日 11/01/21  差出人 川田 秀雄
件名 大学入試センター試験問題4

皆様
川田です。大学入試センターからまだ返事が来ません。どうしたのでしょう。来たらakknで皆さんにお知らせします。
 ところで、あまり独り善がりになってもと思い、今日時間をかけて、図書館で調べました。音を変位(山谷)で記述してあるのはありません。密度か圧力です。(密度変化と圧力変化は同位相で比例します)。
 センター試験のように音波の干渉を山谷で記述してある本は皆無でした。(もしあれば教えてください。ただし東京書籍など高校の物理の教科書を除く)
 
 高校で波の重ね合わせの原理を説明する時、ウエーブマシンかつるまきバネを用いて、両方からの波が重なる様子をストロボ写真等で示しています。これらは横波ですから「変位ベクトルの和」を考えています。光や電波も横波ですから山谷論で何の問題もありません。ところが、音波は疎密波です。空気などを完全流体と見なせば、ずれの応力はなく、体積変化に伴う圧力変化があるだけです。音は音圧(疎密)だけが一定の速さで伝播していくのです。
 
 比較的良心的でわかり易くか書かれた本に「音と音波」(小橋 豊 掌華房)がありました。添付資料参照

@先ず、主役である音圧Pを時間の関数であらわします(変位ではない)。我々が感じるのは音圧だからでしょうか。サインになるのは純音と見なしたからです。距離に反比例して減衰していきます。
A音の重ね合わせ
 音圧の重ねあわせを考えています。瞬時音圧を個々の音圧の和であらわしています。音圧をあたかも横波の変位のように扱っています。
B閉管の定常波は音圧分布で。見慣れた図とは逆になります。また粒子速度分布は山谷グラフと同じです。

 高校で音をどう教えるかは検討すべき課題です。私は高校生に理解できない数式を用いて、厳密に教えるべきだと、言っているのではありません。近似も大まかに捉えるセンスも大事です。
 しかしセンター試験の問題は「間違い」です。山谷で考えると、s1とs2の中点の振動が事実と「真逆」の結論になってしまうからです。本来、論理の誤りを指摘するのに、その論理から導かれる間違いを1個指摘すれば十分です。
 私は音波の干渉を「山谷」から「疎密」にするだけで問題は解決すると考えています。疎と密の逆位相の音が干渉して小さく、同位相の密と密、疎と疎が干渉して音が大きい。条件式は同じです。生徒にとって理解不能な概念でしょうか?

 センターとのバトルを控えています。退職した身の気安さもあり、楽しみです。ご意見等お寄せください。
 個人メールでお教え下さった方もおられます。有難いことです。個人メールはakknなどオープンにしません。資料の紹介も歓迎です。



番号 11A-006  送信日 11/01/24  差出人 井階 正治
件名 12/4物理サークル例会内容の精査

みなさんこんにちは。井階正治@愛工です。
2/5(土)の次回例会に向けてサークル通信作成中です。
12月の例会内容で気になることがありました。ご検討、ご意見ください。

川田さん「潮汐力(起潮力)についての考察」
1ページ目 左側中ほどに共通重心の周りを公転する天体の遠心力が
”地上どこでも同じ速さで回る“=遠心力が同じ と記されていますが、どうでしょう
か。
例会時に川田さんは「並進運動だから」と言っておられたように記憶していますが、ど
うも分からなくなってきました。
試みに、万有引力と同様、遠心力についても共通重心からの距離の違いを考慮し、
P点はm*(D+R)*ω^2、Q点はm*(D-R)*ω^2
ω=GM/(a2*D)、共通重心の位置についてD=(M/(M0+M))*aとして計算してみました。
潮汐力=Mからの万有引力と共通重心に対する公転運動の遠心力の合力 は、a>>Dの場合
P点もQ点も変わらず (GMmR/a2)*(1/D+2/a)=(GmR/a3)*(M0+3M)となり、向きはM0を引
き裂く方向となりました。
地球-月系のようにM0>>Mの場合は、潮汐力の大きさはmg*(R/a)3となり、月までの距離
a=60.27*Rなので、地表の物体が受ける重力の大きさの20万分の一(4.57*10-6)であ
るとの結果が出ました。

林さん「350ガウスヘルムホルツコイルと460ガウスソレノイド型コイル」
5ページ目(最終頁)の(3)β線の飛跡の曲率半径の考察
「非相対論で求めると1MeVのβ線の速度は約6.0*108(m/s)」
光速の2倍となり、これはあり得ません。ということは相対論的に計算せねばならない
のではないか?
E=m0c2/√(1-β^2) β=v/c より、β=√(1-(m0c2/E)2)となります。
静止エネルギーm0c2に電子について0.511MeV、全エネルギーに1MeVを入れて計算する
とv=0.87*c=2.6*10^8m/sとなりました。
電子の質量も増加するためローレンツ力による向心力が変わります。質量はm0*1.96と
なり、最終的な曲率半径は1MeVのβ線の場合5.80cmとでました。

計算の詳細はみなさんのご検討と次回例会での紹介に譲りますが、サークル例会のホー
ムページにも「非相対論」との断り書きがあるとはいえ「速度は約6.0*108(m/s)」の
記述があるのはちょっとまずいのではないかと思います。

以上2点についてご検討、ご意見をいただければうれしいです。
どうぞよろしくお願いいたします。



番号 11A-007  送信日 11/01/24  差出人 山岡 世司郎
件名 Re:12/4物理サークル例会内容の精査

 ご指摘のとおり、β線の速度が光速を超えているのは
おかしいですね。

 ただ、それではどう初速を見積もるかというと・・・

  eV=1/2・mv2 に定数を当てはめての計算結果です。

 エネルギーが500keVを超えた電子を非相対論で考える、という
前提がおかしいということになるわけですが、相対論を知っている
という前提での判断であるようにおもいます。

 相対論を前提にしなければ、光速度の制限はないわけですから、
「速度は約6.0*108(m/s)」は不当と言い切れないようにも思います。
(もっとも、電子が光速以上で運動したらどうなるかということの
考察はしていませんし、どうなるかを記述した文も見た記憶があり
ません・・・・。)

 さて、ホームページの記述をどうするかという点で思案中です。
 林さん、井階さん、いい案をください!



番号 11A-008  送信日 11/01/25  差出人 林 熙崇
件名 Re:12/4物理サークル例会内容の精査

理学部1年生実験の「電子のe/mの測定」では相対論は用いませんが、200eV程度の
電子ですから問題は出てきません。この300ガウスの磁場を使った霧箱実験では、
500keV以上のβ線を扱いますからエネルギーは相対論的に扱わなければ破綻が出てき
ますが、それがこの霧箱実験のねらいの1つです。学生は非相対論で計算しています。ロ
ーレンツ力と向心力で高校で習った方法で計算すると、電子は光速度を超えてしまいま
す。それがねらいです。大学1年生は相対性理論をほとんど知りません。昔は興味を持っ
て書物等を読んだ学生もいたように思いますが、昨年の経験では、相対性理論という名前は
聞いたことがある。という程度です。ばくぜんと「光速度は超えれない。」という知識は
あるので、計算しておかしい!計算が違ったか?と自分の計算を疑います。それから
色々話す中で、相対論の「光速度に近づくと質量が増える」という実験書の記述に気がつ
き、それで最終的に計算をし直してレポートを出します。実験の次の週は実験結果をみな
の前でプレゼンテーションする形になっているので、色々調べてきます。「β線はアインシ
ュタインの相対性理論の宇宙旅行をしているのだよ。」と話すと納得するもの、目を輝かす
ものと、いろいろ反応があります。矛盾に気がついて調べ始める、という学生のアクション
を期待するのも磁場中の霧箱実験のねらいです。ホームページの記述は相対論を考慮
した計算でいいと思いますが、非相対論のねらいも語れると面白いと思います。



番号 11A-009  送信日 11/01/25  差出人 川田 秀雄
件名 Re:12/4物理サークル例会内容の精査

井階様、皆様
 川田です。精査ご苦労様です。サークル通信、いつも素晴らしい内容にしていただき、敬服しています。
ところで、潮汐力を見直しました。結論として、前のレポートの通りでいいのではないかと思います。
 わかりにくいレポートで申し訳けありません。また当日、私が黒板の前で説明している時、飯田さん、山本さんら数人の人が同時に大声で発言され、さながら学級崩壊のような状況でした。気の弱い私の声が小さくなり、私の真意が伝わらなかったかもしれません。申し訳けありませんでした。
今日改めて、より詳しく書いたメモを「添付」しましたので、ご検討ください。

(若干のコメント)
○地球は地球と月の共通重心の回りで振り回されます。このとき地球の全の点の遠心力は同じなります。
 共通重心は地球の内部に入りますが、この点は太陽から見た定点です。地球から見ると、回転に伴い地球内部を円を描いて、動き回ります。この事が言いたくて、溝の入った地球模型を作り、紹介しました。
○このとき、私は確かに地球は「並進運動」すると言いました。あの騒音の中で、よく覚えておられましたね。それば地球各点の変位ベクトルが同じだからです。また変位ベクトルの微分が速度ですから、速度もその時々で同じという事になります。また円の半径は同じ大きさです。中心はそれぞれ場所によって異なります。その結果遠心力が何処でも同じというわけ。中心であろうと、月の反対側であろうと、近くであろうと全て同じです。
○この原理に基づき潮汐力を計算しました。添付資料の結果になります(以前のレポートと同じ)。
 この結論は地学の本と一致しました。
また、私の計算では、潮汐力は重力の一千万分の一くらいになります。

 ついでに、大学入試センターから連絡がなく、昨日、センターへ電話で確認したら「検討中」との事。異例の遅さです。そこで、2度目の「主張」を送りました。たかがセンター入試の問題(?)で、何日もかけて、何を検討しているのでしょう。専門家が何日もかかって検討しなければならない問題を出してはいけません。



番号 11A-010  送信日 11/01/26  差出人 林 正幸
件名 MOLの会の通信案

こんにちは、林まさです。
 先日のMOLの会の通信案ができました。訂正、追加などありましたら知らせてください。船橋さん、フラーレンと自由の女神でよかったですかね。
 ちなみに次回のMOLの会は次のようです。
  5月8日(日) 13:00〜 名古屋市立北高校化学室
 ではまた。

<通信案>
                                   11.1
                               事務局 林 正幸

   MOLの会通信11−1号

 今回は岡田、加藤、林まさ、福島、藤井、船橋、堀の7名が参加しました。新しい仲間
1名を含みます。
 下の項目の他に、岡田さんの提案で、センター試験の化学の問題の検討もしました。最
近は化学の平均点が物理や生物より数点低く、化学が敬遠される傾向にあるとのことです。
そのとき私(林)が話題にした異性体探しの分子式は C2H4O2 で、生徒たちは幾何異性
体、光学異性体を含む12種の異性体をすべて見つけました。
 なお酢酸エチルの合成法も検討する予定でしたが、時間が無くなり次回にまわすことに
なりました。

針金を使った振動反応(林まさ)
 安房科学塾で岩田さんが見せてくれた不思議な反応を、やってみたところ簡単に再現で
きた。100mLビーカーに1mol/Lリン酸約45mLと35%過酸化水素水5mLを
入れ、鉄の針金(形は自由)を、6mol/L塩酸で表面の亜鉛を取り除き、水洗いして投
入すると、周期的に水素が発生した。加温すると周期が短くなるが、針金のどの部分でも
同時に水素が発生する。
 岩田さんは「厳密な反応機構はまだわからないが」としながら、不動態形成を含む次の
4連の反応式を提案している。
    Fe + 2H^+ ―→ Fe2+ + H2
    Fe^2+ + H2O2 + H2O ―→ Fe2O3 + 4H^+
    Fe2O3 + 6H^+ ―→ Fe^3+ + 3H2O
    2Fe^3+ + H2 ―→ 2Fe^2+ + 2H^+
 私はよく理解できず、自分流に次の反応機構を仮定してみました。
    2Fe ―→ 2Fe^2+ + 4e^-              (1)
    2Fe^2+ + H2O2 + 2H^+ ―→ 2Fe^3+ + 2H2O  (2)
    2e^- + 2Fe^3+ ―→ 2Fe^2+             (3)
    2e^- + 2H^+ ―→ H2                 (4)
反応(1)により、針金付近に鉄(U)イオンができ、針金中に電子が貯まる。鉄(U)イオ
ンは過酸化水素と水素イオンによって反応(2)のように鉄(V)イオンになる。鉄(V)イ
オンと水素イオンでは、前者の方が電子を奪いやすく反応(3)が起こり、鉄(U)イオン
にもどる。針金付近の過酸化水素が不足してくると、反応(4)が起こって、水素が発生
する。そのとき水素の泡の上昇で過酸化水素が針金付近に補給されて反応(2)が再開さ
れ、水素の発生は停止する。ちなみに水素イオンは移動速度が格段に大きい。そして電子
は針金の中を移動できるので、針金付近に過酸化水素が残っている部分があれば、反応
(3)が起こって水素イオンは電子を奪えない。こうして水素の発生は同時に起こる。
    Fe ←→ Fe^2+ + 2e^-      0.440V(酸化還元電位)
    H2 ←→ 2H^+ + 2e^-       0.000
    Fe^2+ ←→ Fe^3+ + e^-     −0.771
 そしてスズも2価と4価のイオンが似た関係にあるので試してみましたが、これはうま
く行きませんでした(ただし大して工夫はしていません)。

酸化還元反応(林まさ)
 講座プラン「酸化剤と還元剤」をつくったので、その中の面白そうな実験を紹介した。
(a)かんしゃく玉
 これまでマッチの刷り面を利用していたが、マッチがあまり使われなくなったので方法
を変更した。両面テープを1cmほどに切り、片側のカバーを外し、赤リンを少量貼り付
ける。もう1枚に塩素酸カリウムを貼り付ける。両者を向かい合わせて重ね、木板で挟ん
で金づちでたたくと爆発した。赤リンが多いと、火の着いた赤リンが飛び出すので注意。
なお残骸はまとめて燃焼させて処理する。
 これは「酸素原子のやり取り」の実験の1つと位置づけており、次の反応が起こる。
    KClO3 ―→ KCl + 3O
    5O + 2P ―→ P2O5
全体の反応式は次のようになる。
    5KClO3 + 6P ―→ 5KCl + 3P2O5
     酸化剤    還元剤
(b)ヨウ素の生成と消滅
 2%ヨウ化カリウム水溶液5mLに1%デンプン水溶液1,2滴を加える。これに35
%過酸化水素水1mLを加えると、青色に変化する。それに5%チオ硫酸ナトリウム水溶
液2,3滴を加えると色が消える。しばらくすると再び青色になるので、同じようにチオ
硫酸ナトリウム水溶液を加えると色が消える。これをくり返すことができた。
 これも半分は「酸素原子のやり取り」の実験の1つと位置づけており、次の反応が起こ
る。
    H2O2 ―→ H2O + O
    O + 2KI ―→ K2O + I2
    K2O + H2O ―→ 2KOH(付随して起こる)
全体の反応式は次のようになる。
    H2O2 + 2KI ―→ 2KOH + I2         (5)
    酸化剤  還元剤
 残りはすこし難しいが、チオ硫酸ナトリウムを加えると、次の反応が起こりヨウ素が還
元される。
    I2 + 2Na2S2O3 ―→ 2NaI + Na2S4O6  (6)
                      四チオン酸ナトリウム
 ちなみに反応(5)に比べて反応(6)の速度がはるかに大きいので、チオ硫酸ナトリ
ウムが存在する限り実質的にヨウ素は生成しない。このことは「時計反応」に利用されて
いる。
(c)ナトリウムと塩素
 少量の塩素を使い試験管中で実験できるようにした。銅線を密に渦巻きにし、折り曲げ
て燃焼さじにする。試験管にさらし粉小さじ1杯を入れ、濃塩酸1mLを加えてゴムせん
を乗せる。ナトリウムを2mm角に切って燃焼さじに乗せ、バーナーの炎に入れて液体の
玉にし、これを塩素中に差し入れると、発火してオレンジ色の炎を上げ白煙を生じる。反
応後は、燃焼さじは水に浸け、試験管はチオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて残った塩素を
処理する。
 これは「酸化数の増減」の実験の1つと位置づけており、次のようである。
      0    0      +1 -1
    2Na + Cl2 ―→ 2NaCl
    還元剤  酸化剤
(d)硫酸酸性の過マンガン酸カリウムと銅
 木板に銅板を置き、クッキングペーパー1枚を載せて2%塩化ナトリウム水溶液6mL
を浸み込ます。試験管に0.005mol/L過マンガン酸カリウム水溶液4mLと(1+
2)硫酸2mLを入れる。セロハンを被せ、クッキングペーパー1枚を載せて試験管の水
溶液を浸み込ます。炭素板を被せて、デジタル電圧計で調べると、銅板が負極になってい
た。
 数分ショートしてから、炭素板を取り除いて上側のペーパーの色を観察すると、赤紫色
が消えて過マンガン酸イオンが変化したことが分かった。またセロハンから上を取り除き、
下側のペーパーを白紙に載せ、濃アンモニア水2mLをかけると、青色になり銅イオンの
生成が確認された。
参考:実験では過マンガン酸カリウム側のろ紙が褐色になりましたが、確認実験では無色
   になり、使った炭素板が汚れていたためと考えられます。
 これは「電子のやり取り」の実験の1つと位置づけており、銅板が負極になることから、
銅が電子を与え(還元剤)、硫酸酸性の過マンガン酸カリウムが電子を奪う(酸化剤)こ
とが分かる。
  負極  Cu ―→ Cu^2+ + 2e^-
  正極  5e^- + MnO4^- + 8H^+ ―→ Mn^2+ + 4H2O
 ちなみに福島さんから、酸化剤の酸素が水になる反応が多いのはどうしてだろうかとい
う疑問が出ました。これはどう考えたらよいのでしょうか。酸性にしているので水素イオ
ンがあるから、とも言えるでしょうか・・・。

(e)亜硫酸と硫化水素
 試験管に2%亜硫酸水素ナトリウム水溶液3mLと1mol/L塩酸3mLを入れると、
塩酸酸性の亜硫酸の水溶液ができる。木板に炭素板を置き、クッキングペーパー1枚を載
せて試験管の水溶液を浸み込ます。別の試験管に10%硫化ナトリウム水溶液1mLと水
4mLを入れる。セロハンを被せ、クッキングペーパー1枚を載せて試験管の水溶液を浸
み込ます。これに1mol/L塩酸2mLをかけると、硫化水素の水溶液になる。もう1枚
の炭素板を被せて、デジタル電圧計で調べると、硫化水素の側の炭素板が負極になってい
た。
 数分ショートしておいてから、ピンセットで上側のペーパーを50mLビーカーに移し
て絞ると、水溶液が白濁しており硫黄の生成がうかがわれた。また下側のペーパーを別の
50mLビーカーに移して絞ると、これも水溶液が白濁しており硫黄の生成がうかがわれ
た。
 これも「電子のやり取り」の実験の1つと位置づけており、硫化水素の側の炭素板が負
極になることから、硫化水素が電子を与え(還元剤)、塩酸酸性の亜硫酸が電子を奪う
(酸化剤)ことが分かる。
  負極  H2S ―→ S + 2H^+ + 2e^-
  正極  4e^- + H2SO3 + 4H^+ ―→ S + 3H2O

3D−影絵(船橋)
 1cmほど離した2つの高輝度LEDに偏光板を直交するように被せる。これでフラー
レン模型(モル・タロウ)を照明し、表面に紙ヤスリをかけたアルミ板に影を映す。そし
て偏光眼鏡をかけると影が立体的に見えた。模型をゆっくり回転させると立体構造がいろ
いろな角度から眺められる。白紙に映しても立体的に見えないのは、反射光が偏光ではな
くなるためである。
 氷は水分子がダイヤモンド構造に配列しており、その模型を回転させると、角度によっ
て空洞があることが分かった。
 模型そのものを眺めてもよいわけだが、その影を見るのも面白い。

ポスカ3D(船橋)
 黒色の紙に、ポスカ(ポスターカラー)で絵などを描く。専用の3D眼鏡をかけると、
赤、黄、緑、青の順に浮き上がって見えた(赤が一番浮き上がる)。
 意見交換するうちに、眼鏡は回折格子レプリカが縦縞になるように貼ってあると推定さ
れた。1mmに100本程度の粗いもののようである。光の波長 λ と回折角 θ には次
の関係がある。
    dsinθ = nλ(d:格子幅、n:整数)
波長が長いほど、回折角が大きい。つまり赤色は手前に浮き上がって見えるわけである。
なお、混色はよく見えないし、背景が白色でもよく見えない。
 この商品は三菱鉛筆から売り出されたが、すでにナリカ(中村理科)から同様のものが
販売されている。
 そしてこれを今年の科学の祭典の出し物にしてはどうかということになった。黒色の紙
に絵などを描き、眼鏡も自作したら、子どもは喜ぶだろう。

 他に4D−サプライズというマジック(株式会社テンヨー)も見せてもらいました。こ
れは半透明のプラ板の箱を通してみると、壁の横縞しか見えないが、箱を取り除くとその
前に自由の女神が現れるという趣向である(くわしくは実物に接してください)。半透明
のプラ板は、ある方向には光が散乱されやすく、その直角方向には散乱されにくくなって
いる。

錯 視(船橋)
 湾曲したプラレール(トミカ)2つを取り出した船橋さん。「同じ長さですね。でも1
つをこうして押し縮めて短くします。」 そして並べて比較すると短くなっていた(よう
に見えた)。「今度は引っ張って長くします。」 並べて比較すると長くなっていた(よ
うに見えた)。
 生徒たちにやって見せると、思わず「すごい!」と叫ぶ。そして自分たちでやってみる
うちに秘密に気付く。
 昔からある錯視ですが、身近なおもちゃを使い、話術とそれらしい仕草が加わると、不
思議が拡大します。

糖類の学習(岡田)
 糖類の学習は、構造式が複雑でポイントを捉えにくい。教師の側からは黒板に書くのも
大変である。そこで構造式を拡大コピーしてゴム磁石を着け、黒板に貼れるようにした。
脱水反応する部分を囲む赤丸や、それで形成されるエーテル結合や、生成する水分子も貼
り付ける。これで3種のグルコースやフルクトース、そしてマルトース、スクロース、デ
ンプン(アミロース)、セルロースなどの説明がしやすくなった。後2者については、分
子模型でらせん型や直線型も示した。またビスコースレーヨン、アセチルセルロース、ニ
トロセルロースなどにも応用した。
 まったくのアナログであるが、生徒の受けはよかった。
 私(林)も現役のときは、かなり沢山の黒板に貼り付けるプレートをつくって活用して
いました。それは反応の説明だけでなく、重要事項のプレートもくり返し使っていました。
生徒には印象に残りやすかったと思います。

米粉パンなど(加藤)
 小麦アレルギーの子どもたちに、おいしい米粉パンをつくりたいと研究を始めた。市販
の米粉パンないしその材料のほとんどは、ねばり(二酸化炭素の泡を逃さない)を持たせ
るためにグルテンが追加されていて駄目である。
 ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を使うという情報を得て、試してみ
たところおいしい米粉パンができた。
 HPMCは、セルロース [C6H7O2(OH)3]n の単位あたり3つあるヒドロキシ基の一
部が、メトキシ基 −OCH3(これだけだとメチルセルロース 接着剤)や2−ヒドロキ
シプロポキシ基 −OCH2CH(OH)CH3 に置き換わった高分子であり、増粘多糖類の
仲間である。
 なお米粉には添加物が含まれるものが多く、今回はアレルギー専門店(御器所)で入手
した。これから米粉の選別もしていきたい。
 関連して藤井さんから、セルロースは分子がシート状になっていると聞いたという話が
出ました。生物学辞典によると、2本の分子がシート状のペアをつくり、それがさらに束
になってミクロフィブリルを形成しているとのことでした。

 わらを原料にして紙をつくる研究も始めた。わらを煮る(蒸煮)アルカリには木灰(炭
酸カリウムを含む)を使った。ほぐし(叩解 こうかい)も臼を使ってやるつもりである。
 私(林)も授業でわらを原料にした紙づくりをしてきました。蒸煮には水酸化ナトリウ
ムを使い、叩解はミキサーを利用した。そして全員にはがき大の紙を抄かせた(抄紙)。
(ここまで一時間) 一日自然乾燥すると、うすい緑黄色のわらの香りがする紙ができ上
がりました。

 トレハロースについて知りたい。保水性が高いようである。クマムシは乾燥状態になる
と、グルコースをトレハロースに変えて乾眠する。そして水を得ると、復活して活動を始
める。近年林原(糖化メーカー)がデンプンから安価大量に生産できる技術を開発した。
 トレハロースは、2つのグルコースが1位のヒドロキシどうしで脱水縮合した2糖類
C12H22O11 である(岡田さんの教材が役に立った!)。
 ウィキペディアによると、保湿成分として化粧品に使われるほか、加えて上品な甘味の
ため食品添加物にも多用されています。

 また干し柿の白い粉は何だろうかという疑問も出された。
 総合食品事典(同文書院)によると、白粉はグルコース(ブドウ糖)やフルクトース
(果糖)の結晶で、乾燥により濃縮された糖液が表面に浸み出したものです。ちなみに渋
柿の渋味はポリフェノールの1種のタンニン酸で、乾燥により酸化重合して黒変し、不溶
性になって渋味がとれます。

雲の発生(福島)
 「炭酸抜けま栓」という器具がある。炭酸が抜けないというのには疑問があるが、びん
に取り付けて(合わせて約800円)簡単に加圧できる。そこで内部が濡れた状態で線香
の煙を入れ、加圧してから一気に大気圧まで減圧すると雲が発生する。圧力の変化を実感
するために風船も入れておく。また短冊状の温度計(しくみはよく分からない)で温度変
化も観察する。この温度計は熱容量が小さいので、この実験では断熱の圧縮と膨張で数℃
の変化があった。
参考:断熱変化では空気では次の関係があります。
     T2/T1 =(P2/P1)0.286
   断熱膨張で、T1= 298[K](25℃)、P2/P1=0.8とすると
   T1=280[K](7℃)となります。
混乱を避けるため、生徒には断熱膨張の方のみを見せた。
 関連して、中学の気象分野では水蒸気が水滴になることを凝結と教えられる。そのため
高校の化学で気体が液体になることを凝縮と教えようとすると、定着しにくいという問題
が出されました。凝結とは凝縮と凝固を合わせた表現ではないかという意見も出ました。
 しかし理化学辞典などを調べると、凝結は凝固のこととあります。(加えてコロイドの
凝集ないし凝析のことでもある。) 新地学教育講座(東海大学出版会)によると、凝固
は凍結と表現されています。したがって用語の不統一というのが現実のようです。これは
教育にとってはマイナス要因です。
<以上>



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