番号 00F-001  送信日 00/06/07  差出人 井階 正治
件名 物理サークルのみなさんへ

 みなさん、こんばんは。井階正治です。
 ところでこの夏、8/5に名古屋で開かれる日本理化学協会愛知大会の原稿締め切りが近づきました。先日、僕を含む4名が桜台高校に集まり一応の見通しをたてましたが、その後ずいぶん動きがありました。互いに知っておいた方がいい情報もありますので、川田先生のメールと井階・杉本グループの原稿下書きを送ります。
 川田先生、杉本先生、事前の了解なしに引用してすみません。残る時間が限られていますのでどうか御容赦ください。
 別件ですが、4月のサークル例会で紹介した今年の「青少年のための科学の祭典名古屋大会」(10/7,8)の応募が始まっているようです。科学館の山田吉孝さんから連絡がありましたら、みなさん快く引き受けて下さいね。(笑)
 山田さん、後のフォローよろしく!
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川田先生のメール、以下引用
 少し手違いもありまして、全国大会は「いきいき物理わくわく実験」−愛知物理サークルーとして、3部構成で行くことになりました。第一部は「井階、杉本」(高度?な発表)第2部「山岡、臼井」(意外性の探求)第3部「飯田、川田、近沢、林、戸田、山本」(物理サークルの活動とシンプル実験)。第3部は付け足しみたいものです。残りの参加者を付け加えました。時間は3部については一人1個で結構です。3部とも一つの分科会に入らないときは、2つの分科会に分けるかもしれません。事務局に任せてあります。
 3部で一つの発表ですから、形式を統一したほうが良いかと思います。井階さんにあわせるとすれば、
 いきいき物理わくわく実験(第一部)
 愛知物理サークル
  井階 正治という具合に。どうでしょうか。
 ポスターですが8ブース追加しました。4ブース(うち1ブースは販売用)では10人の発表は出来ません。発表者が少なくOKでした。うち電源は3ブースということに。良いですか?販売用のブース代はサークルで出します。全部で12ブースになります。割り振りは適当にやりましょう。
 山岡さんにもお伝えください。大体の話はしてありますが、タイトルのつけ方については統一していませんから。
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以下、井階・杉本グループ原稿下書き
いきいき物理わくわく実験(第1部)
The Investigation of "lively" Physics & "cheerful" Experiments.(Part 1)
;Masahru IKAI,Norihiro SUGIMOTO
愛知物理サークル          愛知物理サークル
      井 階 正 治           杉 本 憲 広
(要旨)愛知物理サークルでは2カ月に1回の割合で例会を開き、日頃の授業でうまくいったことや新しく開発した実験を紹介したり、困ったこと・分からないことを提起しあい、互いを触発・啓蒙しあっている。本発表では、最近の例会で話題になり好評を博した実験の数々を紹介する。

(キーワード)光の分散・合成、共振・共鳴、振動反応、モーター、非弾性衝突、
       音の干渉

1.レインボーマシン1号(光の合成実験機)
 1994年の日本科学史学会(立命館大学)で旧三高の物理実験機具の展示が行われたが、その展示品の中に数枚の鏡でプリズムからの光を受け、反射光を合わせると再び白色光に戻ることを演示する道具があった。白色光とは太陽光のように様々な波長の光を含むものでありプリズムを用いると各色に分散して連続スペクトルが得られるが、それを再び合成すると白色光に戻るという現象は、当たり前ではあるが本質的であり納得できる。この実験がすでに百年前に日本の教育現場で行われていたことを確認したい。
(1999年科学の祭典名古屋大会展示品)

2.光の回折にはLEDを
 ヤングの干渉や回折格子の実験にはレーザー光を用いることが多いが、最近は純緑・純青のLEDが簡単に入手できるようになった。赤外から青までのLEDを揃え、ヤングのスリットや回折格子ごしにCCDビデオカメラで見ると赤外線を含む光の波長の違いが一目瞭然となる。ハートや雪の結晶が見えるホロスペックスシートで見ても面白い。また、白色LEDは回折光が連続スペクトルとなり発光機構は非常に興味深い。21世紀の照明の主役の座につく可能性を秘め、その将来性に注目したい。

3.共振・共鳴実験用具のいろいろ
 それぞれの固有振動数に近い振動数の摂動が与えられると、ものは大きく動き、パイプは大きな音を発し、回路は大きな電流を流す。その仕組みは複雑であるが、共振・共鳴現象は見ていて非常に面白い。ばね振り子の共振、ブランコおもちゃ、卓上起震台「なまずくん」、熱パイプ、縦波定常波実験機、磁石ルーレットなどを紹介する。
(1996,1998年科学の祭典名古屋大会展示品)

4.30分でできる簡単赤外線センサー
 弦の定常波など揺れているもの・回っているものの振動数を正確に測りたいと思ったことはありませんか? わずかな部品をハンダ付けし、電池とオシロにつなげばOK。工業高校で教えてもらった簡単赤外線センサーを紹介する。

5.Briggs-Raucher反応(振動反応)
 1994年科学の祭典大阪大会(大阪市立科学館)にて初めて知った化学実験。周期的な振動は物理独特のものという既成概念を覆される。A・B・Cの3つの溶液を混合すると酸化・還元など複雑な反応が進行し、無色−オレンジ−紫の色の変化がリズミカルに繰り返される。しかし世の中すべての反応は不可逆的で、この場合も最終的には紫色のヨウ素が発生して反応は終わる。力学的な振り子の振動が減衰していく様子が類推されて興味深い。化学の世界では有名でも物理担当者にはあまり知られていない振動反応を紹介する。
(1996,1998,1999年科学の祭典名古屋大会演示実験)

以上、担当 井階正治

1. 快速!単極モーター
 サークルの利点は、魅力的な題材や未解決の問題に出会えることである。出席者は無限の可能性を秘めた発展的な題材や突きつけられる難問に知的な刺激を受けてわくわくすることになる。ここに登場する単極モーターもその一つ。最初にサークルに登場したモーターは、ネオジム磁石に釘を付けて電池の片側の極から磁力でぶら下げ、もう一方の極からリード線を引っ張り、釘にふれて釘の外から中心へ電流を流し、磁場から回転力を得るというものであった。(単極モーターのオリジナル形は北海道の斉藤孝先生)オリジナルはすぐさま発展。ネオジム磁石はそれ自体導体なので図1のように磁石に電流を流すとネオジム磁石の側面にリード線を接触させるとビュンビュンと感動的によく回ることが判明。釘ではなく、図2のようにクリップを用いても回るので演示実験でも回っている様子を見せることができる。
その後、知的好奇心は2つの広がりを見た。一つはモーターの発展形。「回転するのですから進むのでは」という発想。アルミ板の上にネオジム磁石を置き、一端をアルミ板に、一端からリード線を伸ばして磁石の上にふれると接点
で火花を散らせながら進むのがわかった。こうなるとブラシがじゃまである。「何とかレールから電流がとれないだろうか」との考えからついにリニアモーターカーが出現した。図 がその全容である。両輪を磁石とし、それぞれNSが逆になるようにセットするのがポイントである。電流を流すと瞬く間に間に加速する。
もう一つの広がりははなぜこのモーターは回るかという疑問。「荷電粒子が磁場と垂直方向に移動すればローレンツ力を受けるので磁石は回るのだ。」と簡単に考えられそうだが、磁石を回転させる反作用はどこへ行ったか?ということになる。このモーターは、磁石が外部の回路全体から力を受けて回転するというべきかもしれない。
参考
1)斉藤孝,伊藤四郎「クギがまわる単極回転」
'99青少年のための科学の祭典全国大会実験解
説集(1999)126

2.弾性ボール・非弾性ボール
 よく弾む弾性ボールとほとんど弾まない非弾性ボールが市販されている。これらは非弾性衝突とは何かを考えさせてくれる興味深い材料である。
(1) エネルギーの流れ
 弾性ボールと非弾性ボールを木づちの両面につけてそれぞれ同じ回数だけ机の面をたたき、直後の温度をデジタル温度計で測定する。30回程度で違いは顕著に現れ、弾性ボールの温度上昇はみられないが、非弾性ボールは2,3度温度が上昇していることが
わかる。こうして非弾性衝突で力学的エネルギーが熱エネルギーに変換しているのを示すことができる。
(2) 力積と運動量とパラドックス
 次のような問題を考えよう。
「弾性ボールと非弾性ボールとで衝突時の衝撃が大きいのはどちらか?」
 振り子にした弾性ボールと非弾性ボールを同じ高さから放して板にぶつけると弾性ボールが当たった板の方が先に倒れる。一般に、弾性衝突の方が非弾性衝突より力積が大きくなるためである。この理論は正しいが、実際に体の一部をたたいてみると正反対に非弾性ボールの方が格段に痛いのに驚く。力積と力とはちがうが、運動量変化が力積であることから非弾性衝突の方が力積が小さいことは確かである。そして接触時間でいえば、非弾性ボールは粘土に近く、衝突の際にグニュッと変形して弾性ボールより衝突時間が長くなると思える。したがって、どう考えても非弾性衝突での力は弾性衝突より小さくなるはずなのに、なぜ非弾性ボールの方が痛いと感じるのであろうか。 
 実際に力を測定することを考えた。ただし、力そのものを直接測定するのは難しいので、速度を測定し、その変化から加速度を求める方法を考た。その装置が図4である。スピーカーのボイスコイルに球を衝突させる。ボイスコイルには電磁誘導により速さvに比例した誘導起電力が発生するので、この信号を適当な時定数を持った微分回路を通してオシログラフで表示すると加速度の時間変化を直接写し出すことがでる。図6が測定結果であるが、オシロスコープの画面の横軸は1目盛りが1ms、縦軸は、2mVである。非弾性ボールでの力の最大値が弾性ボー弾性ボール非弾性ボール   図6(白黒反転)での力の最大値より大きいこと、弾性ボールでの力がなだらかに大きくなるのに対し、非弾性ボールでの力は急激に大きくなっていることが注目される。衝撃を受る第一の要因はピークの高さであろうが、大きな痛さの違いは、因はF-tグラフの形にもあると考える。弾性ボールの場合は緩やかに立ち上がるが、非弾性ボールのグラフは立ち上がりが鋭い。力が徐々に大きくなるより、急激に大きくなる方が痛く感じると考えれば、力の最大値のちがい以上の痛さを感じる理由が理解される。両者のち がいをあらわすモデルとして、今のところ、弾性ボールはバネのような弾性体のつまったバネモデル、非弾性ボールは粘性の大きな液体が入ったダンパーモデルを考えている。
 非弾性ボールの変形の様子は液体に近いというのがこの考えである。飛行機が水面に衝突すると、水面がコンクリートの面と同様になり、飛行機は激しく破壊されるという現象があるが、同様のことが非弾性ボールでおきているのではないかと推測している。

3.音の干渉
 拡声器のラッパは音を効率よく空気中に送り出すことができるが、逆に、音を集めることにも適している。2つのラッパを音源から異なる距離に置く。オシロスコープで2つのラッパからの音をミックスしてマイクロフォンで検知することにより音を干渉させることができる。球面波として伝わってくる波に対し、2つのラッパの距離が波長の整数倍であれば強めあい、それより半波長ずれた位置では弱め合うことが視覚的に演示できる。
 以上、担当 杉本先生



番号 00F-002  送信日 00/06/11  差出人 林 正幸
件名 科教協大会についての連絡

 こんにちは、林まさです。
 昨日の実験お楽しみ広場、名簿に記録された参加者は54名でした。いつもどおりに充実していましたが、時間通りに終了したのが画期的でした。司会進行を担当した船橋さん、岡田はるさん、ご苦労さまでした。
 そのあと場所を喫茶店に変えての愛科教事務局でも、サイエンス・フェスティバル、愛知理科大会、科協教千葉大会、サマー・フェスティバルなどについて話し合いました。 科教協では、ナイターの担当は鈴木ひさしさん、講師は戸田、鈴木ひさしおよびあと1名となりました。
 残りが私の担当です。まず参加が確認できたのは、
    鈴木ひさし
    戸田
    高田
    林まさ
    深谷
    堀田
の6名です。こちらからも機会をみて声を掛けますが、お互い連絡が取りやすいように、できれば早めに林まさまで連絡をください。そして問題は「お楽しみ広場」です。取り組めるかどうか、私の方でも当たってみますが、出展してもよいという人はぜひ知らせてください。やれそうなら、担当者を確認して進めていきたい思います。
 ではまた。


番号 00F-003  送信日 00/06/12  差出人 林 正幸
件名 Molの会報告

 こんばんは、林です。
 6月4日に開いたMOlの会の通信をお届けしておきます。

                                 00.6.5
                               事務局 林 正幸
   MOLの会通信 00−6号

 今回は、岡田はる、河合、鈴木とし、林まさ、船橋、山本の6名の参加でした。さわやかな風が吹く日曜日、終わってみればやはり6時、得るものが多くて有意義なサークルになりました。なおEHCで製作している斜方硫黄の結晶モデルは、その最後の組み立てが難しいが、参加者の間では解明できず、残念ながら残された課題となりました。 なおあとで県教研の日程が重なることが分かり、次回は予定より1週間延ばして10月28日(土)にしたので、注意をしてくだい。

1.「じしゃく忍法帳」(鈴木)
 TDKの次のホームページ
    www.tdk.co.jp
に「じしゃく忍法帳」という磁気のはなしがいろいろと掲載されている。たとえはその第53回「冷却技術と磁石」では、ペルチエ効果を利用した電子冷蔵庫や、常磁性体を断熱消磁して0.001Kの超低温をつくる話などが登場する。
 また次のFAX番号
    03ー5201ー7243
に申し込むと、「磁気と生体」という冊子を送付してくれる。
 金属元素の各論では磁性材料も扱いたいですね。

2.「ベンハムのこま」など(河合)
 ご存じ、白黒なのにまわすと色が見えるベンハムのこまや、そのパターンがまわるのを眺めてから手のひらなどを目をやると伸び縮みして見えるこまや、まわるとパターンが立体的に盛り上がったりめりこんだりするこまが紹介された。パターンを画用紙に印刷して、マッチを軸に、短く切ったストローを軸受けにして、簡単に教材になる。
 揚力の分子運動レベルでの説明を求めている河合さんが、ある本で「飛行機の翼の上を行く分子は円運動になって遠心力がはたらき、その結果翼の上の分子が希薄になってその圧力が低下する」という記述を見つけた。しかしこれはアスピレータや、紙の間を吹く実験を説明できない。ピトー管のように、動圧が静圧に比べて小さくなるのはベルヌーイの法則から説明される。そのもとはエネルギー保存の法則である・・・。
 また彼から半径方向に伸び縮みする組み立てられたボール(名前がわからない!)を譲ってもらった。

3.白金触媒(河合)
 コイル状にした白金線をすこし火であぶって表面を清浄にし、これを蒸発皿に入れたメタノールの表面に近づけると、やがて赤熱状態になる。これは白金がメタノールと空気中の酸素の化合を促進しているためだ。エタノールでもうまくいく。また白金の箔でもできる。これは白金かいろと同じ原理である。たいへん分かりやすく、またやってみると感動するので、触媒を扱う中でぜひ取り入れたい。
 ところで本の解説に「水素分子などが白金表面に原子状になって吸着されて反応が促進される」とあるが、果たして吸着エネルギーが共有結合を切断するほど大きいのだろうか。
 また水素吸蔵合金の話も出た。水素原子は電子を失えば陽子そのものだから、結晶格子間にいくらでも侵入できそうである。そして水素自身が条件によって金属性を示す。また金属は水素と馴染みやすく、金属の強度を落とす水素脆弱性という現象もある。

4.デジカメ顕微鏡撮影(船橋)
 何でもやってみる船橋さん、顕微鏡にデジカメをセットするアダプターを工夫して自作し、細胞分裂などを撮影した。材料は塩ビパイプの切れ端と紙管、フィルムケースと輪ゴムなどきわめて廉価。なおデジカメはズームのときに筒長が変化しないものがよい。デジカメ自身にも拡大能力があり、またその画像はテレビにつないで生徒に見せることもできる。
 プレパラート製作技術も大したもので、タマネギの細胞分裂が鮮やかにとらえられている。中には中期と後期の分裂細胞が3つ隣り合わせた画像もあり、それらはフロッピーに入れて分けてもらうことにした。

5.マグネシウムと水の反応(岡田、山本)
 盛口さんにならって、豆炭を購入して穴を空け、マグネシウム粉末を入れてリボンを立て、バーナーで点火した後、ゆっくり燃えているマグネシウムの山にピペットで水をかけるとまばゆい光を放って激しく燃え上がる。
 ところでこの反応は次のどちらだろうか。
    Mg + 2H2O −→ Mg(OH)2 + H2
    Mg + H2O −→ MgO + H2
 続いて太い試験管に少量の水を入れて沸とうさせておき、発生する水蒸気中に点火したマグネシウムリボンを差し入れると、激しく燃焼する。これにフェノールフタレインを滴下すると赤桃色になる。これに対してリボンを空気中で燃焼して、できた酸化マグネシウムを水に投入した場合は灰の表面が赤色になるだけである。微妙なところは分からないが、酸化マグネシウムは水と反応して水酸化マグネシウムになることがほとんどないので、それからすると前者の反応式を採用するのが良さそうだ。ただしはっきりしない点もある。
 続いて山本さんから、「水にマグネシウムリボンを入れてフェノールフタレインを加えるとやがて赤色になっていく」という話がでた。やってみると確かにそうで、リボンの表面には水素らしい泡も観察できる。そこでアルミ粉末、亜鉛粉末、鉄粉で試してみると、そのようなことは観察できなかった。
 マグネシウムは常温の水とも反応する! 速度は遅いがそれは簡単に確認できる。としたら、マグネシウムは沸とう水でしか反応しないという認識は修正すべきではないか。

6.硫化銀の生成と分解(岡田)
 四ケ浦さんにならって、銀板を六一〇ハップの湯につけると、表面が黒色の硫化銀になる。しかしこれはバーナーであぶると簡単に元の銀にもどる。ただし表面の光沢がやや鈍くなる。銀板はくり返し使用できるので、酸化還元教材にしてはどうか。
 ここでひとつ面白いのは、銀は酸素とは化合しない点である。とくに高温では、金属と酸素の相性はよくないことが多い。それは銑鉄に酸素を吹き込んで鋼鉄にする場合や、銅の製錬にも見られる。

7.授業プリント−化学の導入部(岡田、林)
 岡田はるさんが授業プリントをつくることにした。ひとつの消極的メリットは教科書やノートを忘れて授業に参加できないことはなくなる。もうすこし積極的には、板書より時間が確保できて、内容を充実させたり生徒に考えさせたりできる。
 ところで化学の導入部は実験が少なくて困る。林まさの場合は次のようなものを投入している。
    「水素爆弾」とバイルシュタイン反応
    ワインの蒸留と原子スペクトルの観察
    結晶モデルと分子モデル
    塩化亜鉛の化学式
 その中でワインの蒸留で得られたエタノールで炎色反応する方法が注目された。蒸発皿にスチールウールを置き、その上に塩化リチウムを載せてエタノールを注ぎ、これに点火すると始めからきれいな赤色の炎色反応が見られる。

8.写真の漂白(林)
 写真の漂白に硫酸銅と臭化カリウムを使う方法について、メールでどんな反応が起こるか質問が届いた。銅(U)イオンで銀を酸化できるとは思えなかったが、試してみると見事に漂白される。
 そこで酸化還元電位を調べてみると次の反応式が見つかった。
  @ Ag + Br- −→ AgBr + e-    −0.071V
    Cu+ −→ Cu2+ + e-         −0.153
    Cu −→ Cu2+ + 2e-         −0.337
    Cu −→ Cu+ + e-          −0.521
  @ CuBr −→ Cu2+ + Br- + e-   −0.640
    Ag −→ Ag+ + e-          −0.799V
これなら反応が起こる。まとめると
    Ag + 2Br- + Cu2+ −→ AgBr + CuBr
となる。
 実際にやって紹介したが、硫化ナトリウム水溶液でセピア写真にする段階で印画紙表面が崩れてしまった。これは多分硫化ナトリウムが濃すぎたと思われる。

9.ヨウ素電池(林)
 前に工夫したヨウ素電池を改良した。亜鉛板にろ紙4枚を載せて約20%の塩化アンモニウム水溶液を染み込ませ、その上にヨウ素を散布する。これに黒鉛板を被せてすき間に水溶液を補うと、豆電球が明々と点灯する。1.5V 0.4Aで、かなりのパワーである。
  負極: Zn −→ Zn2+ + 2e-
      Zn2+ + 4NH4 + −→ [Zn(NH3)4]2+ + 4H+
  正極: 2e- + I2 −→ 2I-
      2I- + 2I2 −→ 2I3 -
 ついでに試したかった水溶液を塩化亜鉛にした場合は、ソーラーモーターがまわるに留まり、改良前の塩化ナトリウム水溶液の場合と似たものだった。昔の乾電池の主役の塩化アンモニウムがうまくいく。
 もうひとつはヨウ化物イオン電池である。黒鉛板にろ紙2枚を載せ、これに(1:1)硝酸を染み込ませる。別にろ紙2枚に約10%のヨウ化カリウム水溶液を染み込ませておいて上に重ねる。これにもう1枚の黒鉛板を被せるとソーラーモーターがまわる。
  負極: 2I- −→ I2 + 2e-
  正極: 2e- + 2H+ −→ H2
      H2 + HNO3 −→ H2O + HNO2(?)
この電池ではろ紙の間でもヨウ素が生成して黒褐色になっていくが、セロハンを挟んでもあまり改善できず、むしろパワーが落ちてしまう。
 他には、菅野著の「科学は自然をどう語ってきたか」(ミネルヴァ書房)を紹介した。これは科学の発展につれてどのような自然観が誕生してきたかを書いた本で、理科教育の基盤のひとつになると考える。
    次回は
  10月28日(土) 13時〜

      市工芸 化学室



番号 00F-004  送信日 00/06/13  差出人 鈴木 久
件名 愛知科教協実験広場報告その1

以下は、理科の会で参加できなかった人のために書いたものです。
1つ1つに質問なり、補足をしてくだされば実りあるものになるのでは?
そのたたき台です。写真をつければ報告集にならないかな?

2000年科教協愛知実験お楽しみ広場報告

 ベル新登場!これまでどうしても報告が伸びがちでおとなし目の人が我慢していたことの多かったのですが、今回は大きなベルが置かれて時間がくると部屋中に響き渡りました。そのおかげで、ほぼ予定通りの時間でピタリと終りました。以下、発表順に報告します。
 それぞれの発表の時間は、7分間。

1 テーブルクロス抜きのサイエンス(林 煕)
 先週のテレビ博物館に出演したとか。そのときの内容を実験してくれた。題名そのままの内容。テーブルクロスを机に敷き、その上に皿やフォークなどを並べて一気にクロスを引く。すると、ほぼそのままの位置で、もちろん倒れもせず机の上に並んでいた。ダルマ落としの原理と思ったが、それ以上に大切な要素として摩擦力のことがあるとのこと。ひろさんらしくプリント1枚には加速度のデータなどが書かれていた。昼休みに、実際にやらせてもらったが、2回目にはグラスにワインを入れたものも並べて成功。ただし、初心者はナイフ・フォーク系は避けた方がよさそうだ。
 布は、綿(化繊は意外とダメ)とのこと。

2 水琴窟(前田)
 60万円も出せるかと、科教協大会で岐阜のメンバーが出店していたことを思い出しファイト。大きな素焼きのかめや底の深いプラスチックたらいなど見た目は大きいが、音を出すために繊細な工夫の跡が見られる作品だった。私も水琴窟には以前から興味があるが、もっと小さなものができないか挑戦したい。

3 マグネシウムの燃焼(岡田)
 練炭に穴をあけ、粉末マグネシウムを入れ、そこへマグネシウムリボンを点火線にする。明るく燃えた所に、水をかけるとまぶしく目をそらさざる得ない。単に温度等の関係とは思えない変化だ。かけられた水でマグネシウムで酸化されたのでは?
 次に、加熱した水に点火したマグネシウムリボンを近づけ入れる。すると、水蒸気中でさらに明るくなり、水中に入れてもしばらく燃えていた。これは、以前教科書にも載っていた実験だ。岡田さんは、この2つの実験で作られた物質にこだわり調べたという発表。

4 ヨウ素電池(林 正)
 以前もやったと思うが、今回は多くの人が興味を持った。亜鉛が電子を出し、ヨウ素が電子を奪う。ソーラーモーターを回すだけでなく、1.5V豆電球をかなり長い間点灯していた。こうした電池は、電圧は上げても電流を高くするのはなかなか大変だと言われているが。その点このヨウ素電池はすごい。なお、今回は濃硝酸も利用してヨウ化カリウムとでも電池を作って発表した。

5 モーターいろいろ(川田) 6 生徒の疑問から2題(山岡)
7 スパークチェンバー(?)

以上で午前の部は終了。



番号 00F-005  送信日 00/06/16  差出人 林 正幸
件名 「オゾン層はまもれるか」を読んで

こんばんは、林です。
 盛口 襄さんの最新作「オゾン層はまもれるか」(アリス館 4月15日発行)を読みました。この本は中学生以上を対象にする編集になっています。その構成は次のようです。
  序章 南極の春
  1章 大気には歴史がある
  2章 オゾン層はかたる
  3章 フロンって何?
  4章 オゾン層の健康診断
  5章 オゾン層保護の道のり
  終章 オゾンの冒険物語の主人公はだれか
 物語は地球の歴史から始まり、生物が酸素をつくり、それがオゾン層を形成し、生物が陸上に進出したことが描かれる。2章では、オゾン層とその異常の発見、そしてそのメカニズムの解明が、3章では原因物質であるフロンの特性と栄光が解説される。4章ではオゾン層を見守っている科学者が現場から紹介される。5章では国際的なオゾン層保護活動の動向とその評価が示される。そして終章で著者の思いを21世紀を担う若者たちに語りかける・・・。
 まず感じるのは、ゆたかで生き生きした内容です。これは盛口さんの蓄積の大きさに加えて、彼がこのために沢山の文献に当たり、色々な人や現地を訪れたことで裏づけられています。
 そして語りのたくみさ。盛口さんが詩人であることは知る人は知るであるが、彼自身がまえがきに
「学校で学ぶ<理科>をはるかにこえた高度な内容だが、<知識として>ではなく<物語として>君たちの心にうったえたい。」
と書いているように、そこにはひとつの「割り切り」と、「思いを伝える」というスタンスがあります。もちろんアジテーションになってはならないが、
「そのことが、君たちに絶望の時代をこえる力を、学ぶことの意味を悟らせることになるかもしれない。」
というのは真実であると思います。
 さてこの本の中で、盛口さんは「科学」をどのようなものとして語っているのでしょうか。
 p143の終わりには、アメリカ議会の公聴会の会話で「・・・ただいまのローランド先生のお話には私自身は大いなる感銘を受けました。皆さんは科学的に決定的な証拠を、とおっしゃるが、科学にそのような下駄をあずけることはまちがっています。ここは政治の場で科学の場ではありません。・・・」と書いています。これは科学を相対化する視点で、「奪われし未来」(コルボーン著、翔泳社)にも出てきます。
私はこの視点を重視しています。
 p174から、近代科学論を展開しています。科学者は神に代わって絶対的真理を突き止める。しかし「試験管の中ではくりかえし証明される<事実>も、自然全体の中では通用しないことだっていくらでもある。」 「今までなら遅れたこと、未開なことと考えられてきたことにも、それなりに存在理由はある。森と山の神と人との共生といった考え方にも、自然全体と一体となって生きる知恵があったのじゃないか。唯一絶対真理の支配する世界にはない何かがね。」 私は、自然の連関を重視し複眼的にものをとらえる科学こそが求められる、と受け取りました。
 p177では、科学が産業革命を引き起こし、戦争へ、大量生産・大量消費へと結び付いたと書いています。そして「共貧共栄」こそが次の時代が目指すべき社会であると提起しています。確かに科学は利潤の奴隷になっています。しかし彼は、オゾン層保護は曲がりなりにも科学にそうでない地位を与えたと言いたいのだと思います。消費者運動やエコファンド(環境投資)の発展もあります・・・。そう考えながら、私は共貧共栄の中身に悩みます。
 皆さんはどう考えますか。ではまた。



番号 00F-006  送信日 00/06/21  差出人 井階 正治
件名 科学の祭典名古屋大会に向けてミーティング

 みなさん、こんばんは。井階正治です。
 6/10の科教協実験広場は盛況だったようですね。僕はあいにく札幌へ出張で、参加できず残念でした。閉会後には喫茶店で有志の会合がもたれ、今年の科学の祭典名古屋大会にはみんなで参加しようとの気運が盛り上がったと林ヒロ先生や飯田先生、科学館の山田さんから聞きました。とてもうれしかったです。
 これまで名古屋の祭典に出展者として関わってきた関係で、あれこれの連絡・調整役はお前がやれと仰せつかりました。力不足ですがどうかよろしくお願いいたします。
 6/10の会合で打ち合わせられたそうですが、以下の日程で名古屋市科学館にてミーティングが行われます。今年の祭典に出てやろうという方はよろしく御参集、もしくは連絡ください。
とき:2000/06/23(金) 19:00集合
           (科学館の玄関・駐車場などはもう閉まっています)
ところ:名古屋市科学館理工館北側 飛行機(屋外展示物)付近集合
    その後、生命館8階学習室へ移動しミーティング(山田吉孝さんの誘導)
    *もしも遅刻しちゃったら・・・
     飛行機付近から館の建物を見ると非常口(守衛室)が見えます。守衛さんに
     訳を話してください。山田さんに連絡がいきます。
    *緊急連絡先:名古屋市科学館学芸員室直通 (052)201-4488
 今年度は予算的な枠が厳しく、演示講師の講師料もあれこれ制約があるそうです。そ
の辺りもフランクに話し合えればいいと思っております。
 僕が現在知る限りの高校関係ブースのテーマは以下の通りです。

 「物理の振り子と化学の振り子」  (井階正治+**高校理科部)
 「プリズムで身近な光を調べよう」 (大内富夫+**高校理科部)
 「テスラコイル」         (**工業高校電気科)
 「岩石・鉱物・化石の不思議(仮)」(横井大作+**工業高校)
 「虹ビーズで人工虹を作ろう(仮)」(川口一郎+**高校理科部)

 山田さん、何かフォローがあればよろしくお願いいたします。
 では、これで失礼します。



番号 00F-007  送信日 00/06/27  差出人 山岡 世司郎
件名 物理サークルHP

 山岡です。
 以下のURL(公開までしばらくお待ち下さい)で物理サークルのHPが見られます。ご覧の上ご意見を!
まだ,外部には公開しませんので,(公開用は名前等変更されます)サークル内での批評用扱いとしてください。
 メールは私のアドレスになっていますが,公開のときは別の名前になります。
(サークル宛てのメールは希望者全員に転送するのが安全上良いということですが,皆さんどう思いますか。)



番号 00F-008  送信日 00/06/29  差出人 山田 吉孝
件名 磁石の安い購入先

 ***市科学館の山田吉孝です。
 はじめて投稿いたします。
 先日、安くネオジム磁石が買える購入先が話題になりましたのでご存知の方もあるかと思いますが、投稿します。
 様々な大きさがあるのですが、径20mm 厚3mm で390円とかなり格安です。フェライト並の磁力しかないのでは?と疑いつつ一度、購入してみましたが、モノはしっかりとしていました。郵送料は別途600円かかりますが、1万円以上購入すればサービス
とのことです。

(株)二六製作所

http://www.26magnet.co.jp/



番号 00F-009  送信日 00/06/30  差出人 船橋 隆久
件名 ケミホタル

 船橋です。
 化学実験で「濃度の大小と変化速度の関係」を調べるのに、ヨウ素デンプン反応を利用して発色時間差をみるいわゆる「時計反応」がよく知られています。今回はこれとは別に「温度の影響」を視覚的にとらえることができる簡単な実験を紹介します。
 それは、日本化学発光(株)が夜釣り用に市販しているウキトップライト(商品名:ケミホタル)を利用したものです。私が釣具店で入手した「ケミカルホタル50」(1本90円)の包装紙には「視認距離50m,5時間発光」と書いてありました。アルミ包装紙の中にはやや黄緑色がかった液体がφ6.0m/m,長さ50m/mの小さな透明プラスチック製の筒の中に入っており、この筒を軽く折り曲げるとパチン音がして黄緑色のきれいな蛍光色で光り始めます。その後一定の明るさで光り続けますが、その筒を0℃の氷水の中に入れると、見る見るうちに発光しなくなり、折り曲げる前と同じ状態になります。次に100℃のお湯の中に入れると、今度は室温よりはるかに明るい蛍光を出して光り始めます。このように、室温・冷水・お湯の中における発光の強さから、化学反応の「温度の影響」を視覚的にとらえることができます。
 メーカーによると、「エステル化合物が過酸化水素水によって分解し、得られた中間物質が二酸化炭素になるときに蛍光体にエネルギーを与えて発光する」と解説してありましたがよく分かりません。ブラックボックスですが化学変化による発光であることは確かで、新しい教材として利用できるのではと思っています。
 ではまた。