「ダ・ヴィンチ・コード」の映画公開も近づいてきた。これでまた原作を読もうという人も出てくることだろう。その「ダ・ヴィンチ・コード」に先立って書かれた本作をこれまた遅ればせながら読んだ。感想を書くのはあまりにも久しぶりだ。週末のみの、ちびりちびりの読書とはいいながらずいぶんと時間をかけたことになる。
CERN(ヨーロッパ素粒子物理学研究所)の所長コウラーから、ハーヴァード大学教授で宗教象徴学を専門とするロバート・ラングドンの元に殺人事件の調査の依頼が舞い込む。送られたFAXの写真には、科学者ヴェトラの惨殺死体が写っていた。しかもその裸の死体の胸にはアンビグラム化した「イルミナティ」の文字が焼き付けられていた。「イルミナティ」とは既に崩壊したと考えられていたキリスト教カトリック教会に反発していた秘密結社で、かのガリレオもその一員だったことで知られている。殺されたヴェトラ博士は、その娘ヴィットリアとともに、「反物質(antimatter)」という核爆弾よりも破壊力のある物質を作り出す研究を秘密裏に行っており、ちょうどその生成に成功したばかりだった。そして恐ろしいことに、殺人犯は「反物質」を持ち去ったのだ。ラングドンは自分の専門的な知識が犯人の割り出しに役立つと考えヴァチカンへと向かう。おりしもヴァチカンでは亡くなった法王の後任を選出するコンクラーヴェが行われようとしていた。ところが、4人の候補者全員を拉致したと犯人から知らせが入る。1時間毎に1人ずつ殺すというのだ。そして4人の枢機卿を殺した後に、「反物質」を爆発させ、ヴァチカンは崩壊すると声明は伝えた。
一体犯人は4人の枢機卿をどこにつれていったのか。ラングドンは、ヴィットリアとともに、亡くなった法王の侍従長の許可を得て、ヴァチカン内の書物からイルミナティの目的やその理念から謎解きを開始する。しかし、ついに1人目の枢機卿が殺害される。後手に回るラングドンの謎解き。次の殺害場所はどこなのか。果たして犯人に先回りして次の凶行を食い止めることはできるのだろうか。そしてすべての事件の黒幕は一体だれなのか?
オープニングは設定が「ダ・ヴィンチ・コード」と酷似していてどうなのかと思ったのだが、謎解きはより明快でスリリングでとにかく読みすすめてしまうこと請け合いである。「ダ・ヴィンチ・コード」よりテンポよく進行するので読みやすいかもしれない。全体がほぼ24時間での出来事で、時間との戦いを迫れらるラングドンがその知識を総動員して謎解きをするというもので大変興味深い。「ダ・ヴィンチ・コード」に負けないくらい薀蓄も豊富に用意され、またアクションも満載で飽きさせない。宗教と科学との対立という難しい問題を、緻密なリサーチにもとづいて一級のエンターテインメントに仕上げる腕は、さすがダン・ブラウンとうなずかされる。これもまた映画化が期待される作品である。
(2006年4月9日記)
 |
|