| 隅の老人さんからのおすすめの作品 |
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| Only Time Will Tell
ジェフリー・アーチャーの最新作が早くもPBになった(Pan Books)。興味深いのはこの新作、これ一巻で完結でなく、来年3月に続編のハードカバーが出るとのこと。先日、この欄に読後感をポストしたケン・フォレットの大作「Fall of Giants」と時期を同じくして、ストーリー・テラーの一方の雄ともいうべきアーチャーが何冊かにわたる長編を発表するのは偶然だろうか。さらに興趣をそそられるのは、両著ともほぼ同じ時代の英国を背景としている。 舞台は1920年代の英国の港町ブリストル。貧しい家庭に育つ少年ハリー・クリフトンを中心に物語が展開する。彼は公立の小学校に在学中、聖歌隊で飛びぬけた歌唱の才能を認められ、私立の名門校セントビーズの奨学金を与えられる。母親のメイジーは私立校に必要な費用を賄うべくティー・ルームやホテルのウエイトレスとして懸命に働く。ハリーの父親は第一次大戦で命を落としたと伝えられるが、成長するにつれてハリーは生まれた年からして、それはありえぬことと覚る。彼は何とか父親の死の真相を知ろうと、関係者を探るが、満足のいく答えは見つからない。名門校入学後、ハリーをめぐる人の輪は広がっていく。上流階級出身のジャイルズ、学校一の秀才ディーキンズとは親友となり、そのほかにも港の隅でひっそりと暮らすオールド・ジャック、学校や聖歌隊の先生たち、皆がハリーの成長を物心両面から支える。期待にこたえる成績をあげて、ハリーはブリストル・グラマー・スクールからオックスフォードへ進む。やがて彼はジャイルズの父ヒューゴ・バリントンこそが自分の父親の仇であることを知る。更に、ジャイルズの妹エマと恋におちたハリーは二人の結婚式の席で、自らの出生の秘密を教えられる。時恰も英国はナチス・ドイツとの和平交渉が決裂し、第二次大戦に突入。結婚を諦めたハリーは海軍を志願する前のトレーニングとして乗り組んだ商船がUボートに撃沈される。かろうじて命を取り留めたハリーは、救助された船でニューヨークへ着く。そこには思いもかけぬ運命が彼を待ち受けていた。 アーチャーの作品としては構成がなかなか手が込んでいる。序章のメイジー・クリフトンの手記に始まり、主要な人物が代わる代わる各章のタイトルとなり、本人の短い手記に続いて三人称のナレーションが入る。同じ出来事を異なる人物の視点で語るこの技法がストーリーに厚みを持たせている。その反面、時にくどさを免れないこともある。いずれにせよ、アーチャーの得意とするひねりの利いたストーリーテリングを堪能できる。アーチャリズムともいうべきいつもの滑らかな筆遣いは依然、健在で、平易なボキャブラリーと所謂Four-letter-wordを一切使わない折り目正しい文章は読んで気持ちが良い。主要人物のキャラクターが勤勉、献身、信義など、よき時代の英国国民の持つ美徳を体現していて、爽やかな読後感を与える。同時に、アーチャーは上流階級の持つスノビズムを皮肉ることも忘れない。 第一巻はまことに意表を突くエンディングで幕を閉じた。この後のプロットがどう展開するか、アーチャーの腕の見せ所であり、来年、出版される第二巻に大いに期待したい。 ■歴史・時代小説 ■著者のオフィシャルサイト ツイート 2011/10/2
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