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  Paths of Glory

by Jeffrey Archer
Paths of Glory



ジェフリー・アーチャーは語り口といい、スタイルといい、いかにもイギリスの匂いがプンプンとする作家である。ちなみに、フレデリック・フォーサイスも同様に典型的なイギリスの作家と言えるだろう。アーチャーがこれまで世に問うた数多くの作品の中で、2009年発表のこれは、なかなかユニークなもので、実在のイギリスの登山家ジョージ・マロリーの伝記に近いフィクションである。

19世紀末、決して裕福ではないが、中流階級の上に属するの牧師の家に生まれたジョージ・マロリーは少年の頃から登山家として頭角を表した。英国内の主要な山を殆ど制覇したジョージはヨーロッパに足を伸ばし、アルプスの名山に挑み、難なく踏破してしまう。ケンブリッジで学んだジョージは一流とは言えないが私立の学校に教職を得て歴史を教える。その間、彼は豊かな建築家の娘ルースと結婚し幸福な家庭を築く。

1914年、第一次大戦勃発と共に彼の先輩、友人の多くが志願し、前線へ赴く。家庭を思って逡巡したジョージも意を決して志願、出動し幸い無事帰還する。平和の訪れと共に、生来の登山への情熱やみがたく、ジョージは未踏の世界最高峰チョモランマ(エベレスト)に挑む。

1922年、二度目の遠征で当時の人類が到達した最高地点まで辿りついたが、頂上を極めることはかなわなかった。

1924年、マロリーは満を持して三度目の挑戦を行うが、山頂付近で悪天候に遭遇、終に帰らぬ人となった。頂上を極めたか否かも確認されなかった。75年後の1999年、彼の遺体が山頂近くで発見された。常々、山頂に置いてくると言っていた愛妻ルースの写真を遺体が身に着けていなかったので、あるいは山頂を極めて後、下山途中に遭難したかと推測される。

著者アーチャーは優れた登山家マロリーの一生を、19世紀末から20世紀初頭の大英帝国の余光が残る時代を背景として、鮮やかに切り取ってみせる。ルースとの濃やかな愛情溢れる生活(二人が戦地やヒマラヤから交わす手紙が読むものを感動させる)、エベレスト遠征隊の主導権を巡る王立地理協会とアルパイン・クラブの首脳の確執、登山家としてマロリーに劣らぬ才能を持ちながらオーストラリア人で、且つケンブリッジ出身でないため差別されるジョージ・フィンチ、最後までマロリーを公私に亙って支えた親友ガイ・ブロックなどなど、個性的であると共に世紀末の時代の空気を体現する人々がいきいきと描かれている。伝記の形を借りたフィクションの面白さと言える。巻末につけられた関係者の1924年以後の経歴は短いが深い余韻をたたえている。

一読してジェフリー・アーチャーのエンタテイメント作家としての技量にあらためて瞠目した。同時に日本では余り知られていないジョージ・マロリーという登山家の短いが輝かしい生涯をたどる実録としての興味を満たしてくれる。大英帝国の威信をかけて三度にわたり登山隊を指揮したマロリーの大きな夢が、第二次大戦後、ニュージーランド人エドマンド・ヒラリーによって達成されたのは歴史の皮肉とも言うべきだろうか。

■歴史・時代小説
著者のオフィシャルサイト

2011/6/13

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