Roadrunnerさんからのおすすめの作品           

    
  Roseanna
 (The Martin Beck Series 1)
by Maj Sjöwall & Per Wahlöö

Roseanna



≪この書評は、Roadrunnerさんからの『今これ読んでますBBS』へのご投稿をそのまま転載したものです≫


現代北欧ミステリーの元祖と言われ、ヘニング・マンケル等が大きく影響を受けたというMartin Beckシリーズです。作者はスウェーデンの夫婦チームSjöwall & Wahlööで、Wahlööが1975年に亡くなるまでに10作書かれました。このシリーズでは「The Laughing Policeman」が一番有名ですが、それは4作目なので、まずこの1作目(1965年)から読むことにしました。性的に虐待され殺された女性の死体が見つかり、それをMartin Beckたちが捜査するストーリーです。

謎解き捜査は長い間ほとんど進みません。だいたい被害者の身元がわかるまでにかなりの時間がかかる。その後も容疑者が見つかるまで、気が遠くなるくらいの労力が費やされる。さらに、やっと犯人が誰かわかった後も、逮捕できるだけの証拠を見つけるまで長い間行き詰まり状態が続く。結局、犯行から解決まで半年以上かかるのです。でも考えてみれば、実際の刑事捜査というのはこのように膨大な時間と忍耐を要する事が多いのかもしれません。

しかも、この小説が出たのは携帯電話やインターネットはもちろんなく、ファックスも普及していない時代です。捜査中、Martin Beckはアメリカの警察と協力することになるのですが、それが大変。国際電話をかけるには事前に交換台に連絡して予約しなきゃならない。そして長く待たされた後やっと電話が繋がったと思ったら、お互いの声がよく聞こえなくて誤解をまねいたりする。主人公とアメリカの刑事が連絡をとるのは殆ど電報にした気持ちもわかります。主人公がアメリカの地理を調べるためには、わざわざ図書館に行って地図を見ることになる。45年前だから当前のことかもしれませんが、そんな時代の犯罪捜査は大変だっただろうなと思いました。

主人公のMartin Beck(発音はマーティン・ベックでいいのだろうか)は優れた刑事ではありますが、よくあるヒロイックな刑事タイプとは全然違います。読みながら私の頭に何度か浮かんだのは、日本の通勤電車で見かける疲れ切った顔をしたサラリーマンのイメージでした。決して格好良いキャラクターではないけど、Beckも彼の同僚の刑事達もとことん人間らしいところが良い。私はBeckの親友で彼が最も信頼する同僚のLennert Kollbergが特に気に入りました。

文章はかなり硬くるしくて流れが悪いです。翻訳のせいなのか、元の原文からしてこうなのか、それとも昔に書かれたものだからか…と考えましたが、インターネットで見つけたある書評によると(スウェーデン語と英語の両方を読んだ人の意見)、「英語版はまるで機械翻訳みたいだ」ということですので、おそらく翻訳が良くないのでしょう。

一つ変なの、と思ったのは、主人公だけ常にフルネームで書かれることです。「Martin Beckはこうした。Martin Beckはああした。Martin Beckは…」てな感じ。

スリリングな展開というわけではないし、クレバーな謎解きがあるわけでもないけど、惹かれるものがある本でした。もっとキャラクター達のことが知りたくなり、シリーズを読み進んでいくことに決めました。

2010/2/18

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