長谷川さん、久々の登場です。長谷川さんにもRobert Harrisの作品を紹介していただきました。
新刊 "Archangel"(アルハンゲリスク) Hutchinson
舞台は現代ロシア。スターリン時代を専門とする英国人の歴史学者ケルソが、モスクワへシンポジウムに訪れる。そこで、当時の秘密警察長官ベリヤの護衛官だったという男の訪問を受け、スターリン死亡時の出来事について情報を得る。特にスターリンが終始メモを残していた黒いノートについてである。そしてベリヤの処刑後も、ついに行方不明のままであるこの歴史的ノートをめぐって、4日間のドラマが、スタートする。
近年、公開され始めた共産党統治下のソビエトロシアの秘密文書群<アルヒーフ>を縦糸に、また当時は中枢にいて現在は極右派の活動家ママントフを横糸にして、学者ケルソの追求が始まる。
モスクワのホテルから情報提供者に逃げられたケルソは、その真偽を探るべく情報通のママントフに接触する。この過程は、ロシアの秘密情報部の知るところとなり、監視のもとにおかれる。
ホテルに戻ったケルソは、学会のパーティーに出るように請われるが、気乗りがしない。会場を抜け出し、情報をもたらした男ラパーバの一言から思い出したバーで、偶然彼の娘に出会う。彼女の案内で、モスクワ郊外のスラムにあるアパートを訪れる。部屋で発見したのは、何者かに拷問を受けたラパーバの無惨な死体。この発見に係わって、彼らは、ロシア民警に拘留される。秘密情報部の思惑もあって、開放されたケルソ達は、現場のアパートの戻る。そして、娘の案内で秘密の隠し場所から見つけたのは、スターリン自身のメモではなく、単にそのメイドのノートだった。
しかし、このノートに隠された秘密を探るため、メイドの出身地アルハンゲリスクに出かけることにした。モスクワから北方の同地に出かけるため、テレビレポーターのオブライエンの同行を許し、二人はいよいよアルハンゲリスクへ向かう…。
Robert Harrisらしいタッチは、EnigmaやFatherlandで見られるように、歴史背景に対する徹底的なこだわりです。歴史学者の目で、スターリン時代やソビエト崩壊後の現在の様子について、緻密な描写を見せる。そして、ハードウェアに関するものとしては、オブライエンの車に積まれたテレビ機材、映像編集用パソコン、衛星通信装置等。追跡する情報部の武器のデティール等である。
Robert Harrisの前作"Enigma"(エニグマ)
ナチスドイツの有した暗号作成装置、エニグマ。とりわけ、4枚のローターで解読不能をうたわれたUボート専用の暗号シャーク。大西洋の戦争で護送船団の壊滅的打撃を前に、シャークの解読に心身を削って取り組むブレッチレー・パーク(英軍暗号解読施設)のスタッフ達。若き天才的数学者トム=ジェリコを軸として、シャーク解読への苦闘が続けられる。…
あまりにおもしろかったので、ISOS Audio Books の朗読カセットを買ってしまった。カーステレオで2・3回通して聞くと、後はあまり集中しなくても、細かい表現がどんどん理解できます。
なお、エニグマに興味を持ち、ノンフィクションの1冊を挙げる。
David Kahn 著 "Seizing the Enigma" (エニグマ暗号装置の奪取) Arrow Amazon.comへ
ドイツ全軍の暗号装置エニグマの開発から、その活用、そして解読に至るまでの様々な出来事。とりわけ、現代数学的な観点から、解析と復元モデルに到達したポーランド軍情報部の活躍とその成果が英国に伝えられた経緯が興味深い。また、エニグマ自体の機構や操作等、極めて具体的で分かりやすい。
分析手法としてのスイッチとリレーによる機械的シミュレーション、さらには電子的な(まだ真空管)シミュレーション、すなわち汎用コンピュータの元祖、チューリング=マシンの登場をみる。
事実は、小説よりもおもしろかった。
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