N.S.さんからの第5信です
Angela's Ashes

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N.S.さんからおすすめの本の書評第5信をいただきました。

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Frank McCourt の Angela’s Ashes A:\my documents\tri-red.gif

アイルランドという国は日本人から見ると馴染みが薄いように感じますが、このピューリッツァー受賞作を読んで少し理解を深めることができたのではと思います。ニューヨーク周辺にはアイルランド系住民が多いとよく言われますが、3月17日の聖パトリック祭になると緑のセーターや緑のネクタイなど緑の物を身にまとって出勤する人が目立ち、これが皆アイルランド系だということですからなるほどと思います。

また、アメリカ人同士であいつはアイルランド系移民の子孫だから品行が悪いなんて良く冷やかし半分にからかうのを見かけます。これはどういうことかなあとかねがね疑問を持っておりました。 この自伝の背景となっている1930年代当時、アイルランドには貧しい人が多く、家族を養うため職を求めてアメリカ移民を決意する人が多かったわけですが、著者のフランク・マコート氏もカトリック系移民の父親マラチーと母親アンジェラの子としてニューヨークに生まれました。4歳の時には1才違いの弟、その下に双子の兄弟、さらにその下に妹がいましたが、この妹は残念ながら病死します。大酒飲みの父親は失業手当てが出た日は酒場に行って金を残らず使い果たしてしまうため家族は食べていけません。

一家はアメリカでの生活を諦めてアイルランドの故郷の田舎町リメリック(Limerick)に帰郷します。 リメリックはアイルランドのどの辺かなと地図を調べてみると、首都のダブリンは東海岸ですが、リメリックは反対側の西海岸にありました。父親は北部の出身で訛りが強く就職に不利だったようで、なかなか職が見つからず、失業手当てが頼りなのですが、すべて飲み代に消えてしまいます。深夜、アイルランドの歌を歌いながら酔っ払って帰宅すると就寝中の子供をたたき起こして「アイルランドのために死ね!」などとわめく始末です。

母親はしかたなく社会福祉団体からもらう僅かなお金で何とか家族の飢えを癒しておりました。お金が入った時には卵とトーストと紅茶が一番のご馳走だったそうです。 顔なじみの店ではツケで何とか食べ物を手に入れるのですが、クリスマスにはせめてアヒルの肉を食べたいと思うものの、ツケで手に入るのは豚の頭ぐらいしかなく、家に持ち帰る途中で包んであった新聞紙が濡れて豚の頭が露出し、皆に笑われ非常に恥ずかしい思いをしたと書かれています。また、家に帰ってこれを煮ようとしたら、丁度石炭を切らしていたため寒い中を石炭拾いに行くという哀れな生活です。

父親はイギリスに出稼ぎに行くのですが、固く約束したにもかかわらずいつまでたっても送金してくれません。結局、働いた金を全部酒につぎ込むという酒癖の悪さは直りませんでした。その間、母親は肺炎にかかるし、フランクは腸チフスで入院するやのてんてこ舞いです。食べ物も満足に与えられず、不衛生な環境で病気になるのは当たり前な状況です。貧しい家庭ではトイレなどは屋外の共同便所と室内便器(chamber pot)を使用しているところが多かったようです。冬は寒く雨ばかり降るので一階は水浸しで使用できず皆二階に逃げ込み、暖をとるにも石炭がなくなると遂には壁板をはがして燃やす始末です。

結局、フランクは石炭運搬の手伝いや電報配達などでお金を貯金し、19才の時にかねてから夢に描いていたアメリカに単身で舞い戻ったところで話が終わっています。 カトリック系の宗教儀式の記述が多く、罪の意識を常に持ち続け懺悔を繰り返すという宗教の重みと同時に優しさみたいなものを強く感じさせられました。

著者のフランク・マコート氏は長年ニューヨークでEnglish writingを教える高校教師を勤めたそうですが、彼の書く文章スタイルは誠に個性的です。会話部分の引用符を全て省略するスタイルは読みづらいこと甚だしい。アイルランドのアクセントも殆どは類推できるのですが、中には何の単語が訛ったのかしばらく考え込むこともしばしばでした。

(ペンネーム:N.S.)
nr-seki@tka.att.ne.jp


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