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  Quicksilver
by Neal Stephenson
Quicksilver



<あらすじ>

 17世紀後半、王政復古のロンドン。

 ダニエル・ウォーターハウスはかつてクロムウェルの熱心な支持者だった父ドレイクによりピューリタンの思想を吹き込まれたが、父の同志ウィルキンズにより「自然哲学者」として教育される。ケンブリッジ、ついでロイヤル・ソサエティでのニュートンやフックといった「自然哲学者」たちとの交流、そして自らもロイヤル・ソサエティの一員となったダニエルはしかし、自らの能力と「自然哲学」に限界を感じ、次第に研究から離れ政治の世界へと巻き込まれていく。

 一方、ロンドンのドックランドで育ったボブとジャックのシャフトー兄弟は、ひょんなことからジョン・チャーチルの下で軍人となる。しかしジャックはそこから逃げ出し、放浪者(ヴァガボンド)となった。だが梅毒に冒され、死ぬ前に子供たちに遺産を残したいという思いからジャックは一攫千金を狙って第二次ウィーン包囲の最中のウィーンへやってくる。そこでさらわれてトルコの奴隷とされていたエリザと出会う。

 ジャックに救われたエリザは、ふたりでひと財産を築こうとライプチヒ、アムステルダムへとやってくる。その途上でのジャックの冒険譚は各地に広まり、いつしか「キング・オブ・ヴァガボンド」と呼ばれるようになっていた。しかし二人の道は次第に分かれ始めていた。

 ジャックと別れたエリザはフランス大使の手によってスパイとしてヴェルサイユに送り込まれる。しかしルイ14世と敵対するオランダのオラニエ公ウィレムもまた彼女をスパイとし、またルイ14世とファルツをめぐって対立しているハノーヴァー選定候も、ライプニッツを通じて彼女をスパイとしていた。

 またジャックの兄ボブもエリザ、そしてダニエルの前に現れ、そしてそれらは1688年の「革命」へと収束する。


<感想>

 『バロック・サイクル』三巻本の一巻目です。前作『クリプトノミコン』の登場人物の先祖たちが登場。かついつもの科学から哲学から暗号からもろもろの薀蓄(笑)も炸裂、加えて上に述べた以外にもサミュエル・ピープスやらジョン・ロックやら何やら、あげくにダルタニアンまでと有名人のオンパレードでなかなか壮観(笑)です。

 タイトルの「Quicksilver」は水銀のこと。水銀は当時、鉱山でのアマルガムとして使われる一方で、梅毒や気鬱・頭痛などの薬として使われていました。かつ、水銀=マーキュリーは錬金術においては哲学者の水銀とも呼ばれる重要なもので、かつ商業の神でもあり、かつ嘘つきと泥棒の神でもあるという。この小説と17世紀後半というこの時代をあらわすのに実にうまいタイトルのつけ方だと思います。

 この時代、まだ科学は「サイエンス」として確立しておらず、「自然哲学」あるいはまだ錬金術の範疇にありました。その中で世界の秘密、「世界のシステム」を解き明かそうとしているのがニュートンやライプニッツその他のそうそうたる連中で、ダニエルはしかしそれは混乱を引き起こすことにもなりえないか、と躊躇してしまうのですが。

 またこの時代は前世紀からのいわゆる価格革命その他の影響で商業と金融の中心が次第にオランダやイングランドに移っていった時代です。それをめぐっての国際的対立、特にフランスのルイ14世を中心とする対立が起こってくる。といったこれだけのものを並べておきながら歴史的事項を並べただけ、というのに終わっておらず、独自の物語が構築されているというあたりがすごい。

 ただ、三巻本の一巻目ということでやや顔見せ的な部分もあり、主人公たちのうち、一体どうなったんだという人もいるところが続きが気になるところ(笑)。既に主人公のひとりダニエルの述べている「混乱」と「世界のシステム」が次巻以降のタイトルらしいので、この先話がどう展開していくのかが、主人公たちの行く末(笑)も含めて楽しみなところです。

ジャンル:歴史・時代小説

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2004/2/1

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