オリーブさんのおすすめ作品 
                              
    
  Mystic River
by Dennis Lehane

Mystic River


Morrow  ISBN0688163165  2001  320pp

■あらすじ

 3人は幼なじみだった――しっかりものの父をもち、つねに自分の居場所を確保しているショーン。少年特有の軽率な行動をとりながらも、如才のないジミー。母親ひとりに育てられ、ショーンとジミーについてまわっているデイブ。だが、ある日3人が路上で遊んでいると、警官の振りをした男二人組にデイヴだけが連れさられてしまう。4日後デイヴは家に戻るが、この事件はデイヴを、そして彼らの友情をすっかり変えてしまった。

 それから25年。ショーンは殺人課刑事になり、ジミーは前科者だが雑貨店を経営する妻子あるまじめな男、デイヴも妻と息子との穏やかな日々を送っていた。そんななか、ジミーの娘が殺害されるという事件が起きる。捜査担当になったショーン、自分なりのやり方で娘の無念を晴らそうと誓うジミー、ジミーの娘が殺された日になぜか血まみれになって帰宅したデイヴ――運命の糸によって今は疎遠になっていた3人の人生がふたたび交叉するとき、衝撃のクライマックスが待っていた……。

■感想

 事件が起きる以上、本書には当然謎があり犯人捜しがある。だからジャンル的にはミステリだし、ある種サイコ・スリラーとも呼べるだろう。だがレヘインは今回の作品で、もっと人生を大局的にとらえた物語を書きたかったのだと思う。読みながら、先日観たシェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』を思い出した。『シーザー』のなかでは、暗殺者ブルータスですら悪者ではない。ブルータス側からの視点で何故にシーザーを暗殺しなければならないのかがしっかり語られ、それが説得力をもっているためだ。本書でも主要人物3人はもちろんのこと、サブキャラクターについても実に深く掘りさげられており、それぞれの人物がそのときなぜそういう行動にでたのかが丁寧に語られている。だからその人物がしたことはその瞬間には正しいことと思えるし、だからこそ無知や嘘、誤解によってここまでの悲劇が起きてしまったことにやりきれなさを覚える。3人の「あのとき、もしああしていたら……」という言葉が胸に迫る。

 また本書では、暴力に反対するレヘインのクライム作家としてのメッセージがこれまで以上にストレートに現れている。誤解を避けるために書き加えるならば、暴力行為を直接的に描いているシーンは皆無である。だが、犯行現場の状況や遺族の心情をぎりぎりまで削ぎ落とした研ぎ澄まされた言葉で綴っているので、読み手には真の“痛み”が伝わってくる。予定調和ではいかない、衝動的な暴力が日常に溢れている現代の社会。この“痛み”を伝えることこそが、レヘインの暴力反対へのメッセージなのだ。
(2001年8月 オリーブ)

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