宮尾 賢さんからのおすすめ作品
                              
    
  The Run
by Stuart Woods

The Run


アメリカのミステリーには大統領が良く登場する。時には主役として、時には脇役として。殆どの場合架空の人物として出てくるが、Jeffrey Archerの"Shall we tell the President"のようにEdward Kennedyという実在の政治家を大統領という架空のポストにつけて登場させることもある。日本の総理が登場するミステリーはどの位あるか知らないが、アメリカに比べるとはるかに少ないのではないか。

両国の政治システムで大統領と総理の持つ権力、社会に与えるインパクトの違いかもしれない。
さて本編の主人公、Will Leeは民主党の上院議員で大統領の椅子を狙う野心家である。彼は色々な事情で必ずしも本意でない状況のもとに立候補を余儀なくされる。

現職の大統領は事故で瀕死の床にあり、代行を務める副大統領はアルツハイマー病患者である。その他何とか主人公の足を引っ張ろうとする共和党の政敵、彼の命を狙う狂信的テロリスト、議員になる前に関係して現在はハリウッドの有名女優になっている女性等、Will Leeを取り巻く人物が絡み合ながらプロットは展開するが、

必ずしも全てが効果をあげているとは言い難い。テロリストが如何に暗殺を計画し、主人公が如何に危機を脱するかという軸になる部分にもっと焦点を絞って話を進めれば、もっと締まった作品になったのではなかろうか。残念ながら少々散漫になった憾みがある。

とは言うものの、エンタテイメントとして一定の水準に達していることは事実であり、文章も平易でスムーズに読める。Leeと対立する同じ党内の対抗馬が裏で取引を持ちかけたり、党大会での指名獲得のための駆け引き等、所詮政治の世界はどろどろした人間臭いものだと納得させるリアリテイーもある(政界の裏事情についてはEdward Kennedyの広報担当者からアドバイスを得たと著者が後書きに書いている)
2001.5.3

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