Timeline by Michael Crichton



Timeline

    作品について

    アリゾナの砂漠をドライブする夫婦が、倒れている老人を発見する。しかし、病院に運ばれた老人は意味不明なことを口走り変死してしまう。その老人の所持品から、ハイテク企業のITCとの関わりが判明する。さらに老人は奇妙な設計図のようなものを持っていた。一方、フランスの14世紀の遺跡発掘調査チームが中世の都市復元作業を行っていた。スポンサーはあのITC。遺跡発掘チームは、リーダーのエドワード・ジョンストン博士とその学生たちで構成されていた。ある日、ジョンストン博士はITCに呼び出されたまま姿を消す。そして遺跡調査を続ける学生たちが、驚くべきものを発見する。ここは、長谷川さんの書評のページをご覧ください。

    ジョンストン博士を救出せよとのITCからの指令で14世紀に瞬間移動させられた者のうち最終的に生き残ったのは、ケイト、クリス、マレックの3人だけ。果たして3人は博士とともに無事現在へ帰還できるのだろうか?彼らに与えられた時間は37時間。各章のタイトルが残された時間のカウントダウンで表示され、緊迫感を盛り上げる。

    一方、ITCでは過去からの移送のためのコントロール室で爆発事故が起きたりトラブル続き。どうやら無事に帰還したものはこれまでなかったらしい。動物実験による惨い失敗例が示されたりする。しかし、ITCを率いるロバート・ドニガーは自信満々。天才的な科学者の彼は、並々ならぬビジネスへの手腕も発揮している。ドニガー曰く、「過去こそリアルで真正なるもの。ディズニー、マードック、日産、ソニー、IBM、これらが生まれる以前の過去こそ本物の世界。だからこそ人はそれに惹きつけられる。」どうやら、過去への瞬間移動も一大観光産業として発展させる目論見らしい。う〜ん、これはまぎれもなくジュラシック・パークと同様のアイディアでは?

    前作Airframeはあっという間に読める作品だったが、この作品はちょっとそういうわけにはいかなかった。オープニングは私の大好きな展開なのでぐいぐい引き寄せられたが、量子力学や量子コンピュータなどは、私にはまったく理解できない部分だった。さらに学生たちが送られた14世紀の場面の描写はフランス百年戦争当時の設定で、戦いの連続。しかし、流血場面も妙にリアルさがなく映画というよりはテレビゲームのよう。いくつものダンジョンを戦闘で次々にクリアしていくRPGゲームさながらの世界。私にはちょっと退屈で読みのペースが上がらなかったが、ゲーム好きにはたまらないのかもしれない。

    そういえば、マイケル・クライトンがゲームソフト会社を設立したという記事を読んだ記憶がある。もしかするとこの作品からゲームソフトが開発されるのでは?

    ところで、14世紀のフランスに時間と空間を超え瞬時に移動することが可能になるはずがない。なんと荒唐無稽なストーリーなんだ!といってしまえなくもないが、量子コンピュータが開発されればそれももしかしたら…などど思わせる記述があったので、下記に。
    (2000年9月15日記)

    ●テレポーテーションと量子コンピューター
    Lindsey Arent

    1999年5月7日 3:00am PDT 『スタートレック』に出てくるのと全く同じというわけにはいかないが、テレポーテーション(瞬間移動)の実用化が、30年も待たずに実現するかもしれない。
     『テクニカル・インサイツ』が6日(米国時間)発表した報告書によると、テレポーテーションの最初の実用化は、人間の移動ではなく、量子コンピューターと量子暗号技術の分野で行なわれるだろうと言う。
     物理学者たちは、量子レベルの微小なもののテレポートは行なうことができるが、テレポーテーションの研究はまだ発展の初期段階であると警告している。(中略)

     しかしラフラム氏によると、テレポーテーションは20年以内に、量子コンピューターや暗号技術、そして1ビットで2つの量子ビットを転送する「超高密度コーディング」などの、新技術を作り出す、基礎的なステップとなる可能性があるという。
     「われわれはついに、このSF的なものが現実に登場するのはいつなのか、人々が賭けをできるような段階にまで漕ぎ着けた」と、『テクニカル・インサイツ』の報告書を書いたアレックス・タロ氏は述べている。
     量子テレポーテーションの不可思議な点は、情報が、A地点とB地点の間の空間を動くことなく、A地点からB地点に移動するところにある。科学者は最近まで、このような現象は量子の不確定性原理に反するので、起こり得ないと考えていた。

     今や、量子テレポーテーション技術は量子暗号技術に応用されつつある。量子暗号技術は非常に安全な通信手順で、盗聴者が暗号化されたコードを傍受しようとすると、メッセージが即座に壊れてしまうようになっている。
     このように侵入不可能な通信システムは、国家安全保障や国際諜報などの将来に大きな影響を持つ可能性がある、とラフラム氏は言う。「量子暗号技術があれば、暗号化された情報は100%安全だと確信できる」

     ロス・アラモス研究所にはすでに、量子コンピューターの試作品が存在する。これは、48キロメートル離れたところまで情報を送ることが出来るものだ。
     「これは本当に驚きだ」とラフラム氏は言う。「たった5年前には、人々はこれを馬鹿げたアイディアだと思っていた。今やわれわれは、情報を1個の原子レベルにまで落として、それを操作しているのだ」(後略)

    [日本語版:中嶋瑞穂/岩坂 彰]
    WIRED NEWS原文(English)

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