勾玉三部作

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作者・荻原規子

この作品は,女性でファンタジー好きを自認している方の多くが読んでいると

思われます。ですからあまり紹介することもないかもしれませんが,

わたしのお勧めなので,書かずにはいられませんでした!

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第一作目・空色勾玉

水の乙女の青の勾玉,手にしたのは十五の村娘・・・(徳間書店版帯より)

舞台は神話時代,神が地上を歩む古代の日本「豊葦原」。

狭也は暗い過去を夢に見る,輝(かぐ)の神に憧れる十五の娘。

しかし祭りの日,夢に現れる「鬼」は告げる。

「お前は闇(くら)の女神の巫女姫,水の乙女」と。

それを否定し,月代王によばれ輝の宮にいく狭也。

切り離せぬ闇の女神の,輝く空色の勾玉。

しかし彼女は,「剣」を振るう「風の若子」稚羽矢を見出し・・・・

空色勾玉をはじめて読んだときには,猛烈に感動しました。

こういう良質なファンタジーにめぐり合ったのは,たぶんミヒャエルエンデ以来でしょう。

またとにかく自然の描写,心情描写が素晴らしい。目の前に見えるようです。

狭也の心の葛藤,そして成長の様が,素敵な設定が,そして感動のストーリーが,

とにかくわたしをとりこにしました。

わたしはあの松虫草のシーンと,狭也が稚羽矢を探しに行くシーン,

そして「土の器」の話が特に好きです。

(日本児童文学者協会新人賞受賞作)

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第二作目・白鳥異伝

勾玉を連ねた「力」の御統,手にして追うのは「白鳥」の行方・・・(徳間書店版帯より)

時代は下り,水の乙女と風の若子の子孫が大王として豊葦原を治める。

勾玉を守る闇の氏族の里,三野で,氏族のおてんば姫・遠子と,拾われ子・小倶那は,

双子のごとく仲良く育つ。

しかし,日継皇子と明姫の悲恋が,不死を求める大王が,

小倶那の「母」が・・・・・

運命に翻弄され,小倶那は「大蛇の剣」の主となり,里を滅ぼしてしまう。

小倶那に会って,彼を倒し,解き放つため,死をもたらす「玉の御統」

を求め,少女は旅に出るが・・・・・?

三部作中もっともお気に入りの作品!!前作よりも一気に世界が

広がり,勾玉も六つと言うことが判明。しかも前作の下敷きは〈古事記〉,

今回はヤマトタケル伝説。悲劇の英雄,大好き(←日本人)。

何よりこの作品でいいのは,主人公の遠子。素直で気が強くて,

かわいくてかっこいい。遠子は,ヒロインの理想形ではないでしょうか。

小倶那のことが好き。でも憎い。そんな遠子の複雑でいながら

まっすぐな思いが,心を打ちます。遠子の他にも,小倶那,菅流,象子,

その他すべてのキャラクターの心情が細かにかかれています。

ついに遠子が彼の元に行くときのセリフ,

「あなたに会いに行く。今こそ望みを果たしにいく・・・・・」

が,今までストーリーを追ってきた者にとっては,とても悲しいセリフです。

傷つきながらも,大事な人のことを想い,守ろうとする・・・

そんな姿勢にも泣けます。意表をつくラストも感動。

言葉では語り尽くせない,といく言葉でしか表現できないほど,

大好き。読まないとこれはわかりません!!

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第三作目・薄紅天女

滅びの都に天女が降りる,手に伝説の〈明玉〉・・・・・・(本帯より)

時代はそして,長岡京に。坂東の地に住む少年阿高は,同い年の伯父

藤太とそだつが,阿高の母は,蝦夷の巫女で,彼はその生まれ変わりだった。

災厄の起こる都では,皇女苑上が,大いなる災厄に立ち向かおうと,

少年の姿で旅だった。

そしてついに二人は出会う・・・・。

最後の勾玉の物語。完結編。

う〜ん・・・「空」と「白」のほうがわたしは好きです。でもこれだって

その辺のよりはずっと面白いですが。

阿高の,クールだけどやさしい性格や,おっとりしてかわいい

苑上は好きですけれど。でも輝側の人間の視点が入っているから,

・・・まあいいか。幸運にもわたしは,「空」→「薄」→「白」の

順に読んだので,つらくなかったのでした・・・。

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これは王国のかぎ

三部作ではありません。アラビアンナイトがモチーフで,これも

とてもお気に入り。唯一の一人称物語ですし。

中三の少女「上田ひろみ」は,最悪の十五歳の誕生日を迎える。

元好きな人と親友が付き合い出して,デートのお土産がプレゼント。

でもいちばんいやんなるのは,いい子面してた,この「あたし」!

泣いて泣いて眠りこけたら,アラビアンナイトの世界へ行っちゃって,

そこでのあたしは「魔人族(ジン)」のジャニ!!

あたしは訳あり家出人のハールーンと共に出かけ・・・

読んだとき,ジャニと年齢がいっしょで,この年頃の女の子がよく書けてる,

と思いました。やっぱりヒロインが素敵。他のと違って軽く読める作品です。

思ったことをずけずけ言うジャニ(ひろみ)に,

ついつい自分を重ねてしまいます。

彼女の思ってることと。わたしの思ってることって,そっくりなんですもん。

ああわたしも異世界で,自由に冒険したい!

「涙で水を体から搾り出し,ジンになった」と言う設定がいいです。




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