若葉ちゃんの一番長い一日
 

私、紅若葉と申します。
異世界からおいでになったパパさんを、元の世界にお帰しするために仲間の皆さんと旅を続けています。

でも、今朝になってパパさんの行方がわからなくなってしまったのです。
どこに行ってしまわれたのでしょうか、私、心配です。

フィリーさんも、カレンさんも、キャラットさんも心配してあちこち探しに行っていただいてます。
私も行きたいのですけれど、パパさんがひょっこり帰ってくるかもしれないから残っているように言われて…
本当にどこに行ってしまわれたのでしょう。

「ダメ、バイト親父のところにも顔出してなかったそうよ。」

「雑貨屋とか、武器屋とか買い物に行きそうなところにも行ってなかったみたいね。」

「あのね、街の門番さんがね、朝早くパパさんみたいな人が出ていったって言ってたよ。」

「街の外に行ったってこと?よりによって今日いなくなるなんて、何考えてんのよ、パパのやつ!」

「あの、今日なにかありましたでしょうか?」

「あんたねぇ、いいかげん自分のた‥ムギュ」

カレンさんがいきなりフィリーさんの口をふさいでしまわれましたが、フィリーさん、苦しそうです。

「はぁはぁっ、いきなり何すんのよ!」

「まだそれは言わない約束でしょ?」

「もう、フィリーさんたら、口が軽いんだから。」

「あっそうだったっけ、でもね、やり方ってモンがあるでしょ!息止まるかと思ったわよ!」

「いいから、また探しに行くわよ。若葉ちゃんはまた留守番しててね、お願い。」

「あっ、今度は私も…」

「あんたが探しに行ったら、あんたもさ‥グッ」

今度はキャラットさんがフィリーさんの口をふさいでしまいました。フィリーさん、大丈夫でしょうか?
結局ぐったりしたフィリーさんを連れて二人とも出ていってしまわれました。

「あの、どなたかいらっしゃいますか?」

レミットさんとアイリスさんがいらっしゃいました。どうしてここへいらしたのでしょうか。

「パパがいなくなったって聞いたからね、別に心配とかしてるわけじゃないんだけど、どんな様子かなって見てみようかと
思っただけなんだからね。」

「姫さま、顔が赤いですよ。」

「レミットさんたちも心配してくださってるのですね。」

「そんなんじゃないもん!それにしてもよりによって今日いなくなるなんて。」

「あの、フィリーさんも言われていたのですが、今日はなにかあるのでしょうか。」

「えっ、あんた自分のた」

「姫さま、まだそれは!」

「あっ、そうだった。アイリス、私達も探しに行くわよ。」

「はい、姫さま。」

なんだか、気になりますけれど、それよりパパさんはどうされているのか心配です。

夜もふけました。パパさんはまだお帰りになりません。
レミットさんたちだけでなく、カイルさんたちにも探していただいていたようですけれど。
みんなが心配しているのに、パパさん…

「だからよいではないか!パパなぞいなくてもわれわれだけで始めればよかろう!」

バカイルは黙ってて!パパがいないんじゃ話にならないでしょ!」

「このガキ、言わせておけば。」

「なんですってぇ〜」

「2人ともじゃれてないで!それにしてもどこに行ったか知らないケド、帰ってきたらおしおきね。」

「ボクだって、おうまさん呼んでやるんだから!」

その時、パパさんがやっと帰ってこられました。なんだかとてもお疲れのようです。

パァパァッ!あんた今までどこほっつき歩いてたの!

「大声出さないでくれよ、俺はくたくたなんだ。」

「とりあえず、どこに行ってたのか説明してもらいたいわね。」

「すまない、水一杯もらえないか。ふぅ…」
「実は隣街で、新素材の軽くて丈夫なリボンが売られているって聞いたんで、若葉にと思って買いに行ったんだ。
  ところが、帰る途中でがけ崩れがあって、道がふさがってしまっていたんだよ。回り道を取るとしたら、どうしたって
  今日中に帰れそうになかったから、岩をどかしたりしながら無理矢理通ろうとしたんだ。何回も滑り落ちそうになるし
  死にそうなめにあいながらなんとか帰り着いた……」

パシィ〜ン!
私、思わずパパさんのこと、たたいてしまいました。

「パパさん!どうしてそんな物のために危ないことしたんですか!みんな心配したんですから!私だって、私だって
 すごく心配だったんですから!」

「若葉、ごめん。でもな、今日は若葉の誕生日だから…何かしようにもこんな物しか思い付かなかったんだ。」

「えっ。」

「あ〜あっ、ばれちゃったね。」

「まあね、パパクンからばれたんじゃしかたないわね。それじゃ誕生パーティー始めるわよ。」

「まったく、ようやく始まるのか。待ちくたびれたぞ。」

バカイル、その料理、私ねらってたんだから、私によこしなさい!」

「うるさい、このクソガキ、早いもの勝ちだ!」

「食事中になんてこと言うのよ、このバカイル!」

「えぇ〜い、貴様まで言うか、チビ妖精め!」

「いい加減にしないと、みんなまとめておしおきよ!」

みんな楽しそうにしています。でも私…

「あのぉ、パパさん、私、パパさんのこと、たたいてしまって、あの、申し訳ありません!」

「いや、若葉だけじゃなく、みんなに心配かけた俺が悪かった。ともかくこれ、受け取ってくれるかな?」

「はい、ずっと大切にします。」

「それにしてもまた自分の誕生日を忘れていたなんて、若葉らしいと言えば若葉らしいかな。」

「キャラットさんのお誕生日は覚えていましたのに、私ったら。」

「パパクン、お邪魔するけど、今日の罰としてこのパーティーの後でお皿洗いやっといてね。」

「えぇっ、頼むから今日だけは勘弁してくれ〜。本当にくたくたなんだよぉ〜」

「皿洗いですんだだけましだと思ってね。」

「とほほ…」

「あの、パパさん、私もお手伝いしますから。」

「ダメだよ、若葉さんは今日の主役なんだから。」

「いいんです。私がパパさんのお手伝いをしたいのですから。」

今日は大変でしたけれど、うれしい1日でした。
紅若葉、明日もがんばります。


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