人知れずたたずむ小さなため池に設置された、余水吐兼取水施設です。底樋はφ1000のヒューム管を鉄筋コンクリートで巻立てているのですが、この構造計算は、管の強度を無視してボックスカルバートとして計算する、便宜的で非現実的な方法が未だに使われています。管と一体化させた応力解析の手法は、もう20年も前から提案されており、これによれば今の計算方法より随分経済的な設計が出来ると思うのに、これが採用されないのは何故なんでしょう。

 

 

 

 

 

町役場発注の余水吐改修工事の縦断図です。工事は地元業者に発注されることが予想されたので、平面的な曲がりは曲線をさけ、スパンのごとに屈曲させるよう計画したのですが、縦断的には水理的な必要性から一部放物線形状としました。タダでさえ急勾配なところに、水路底を放物線に仕上げるのは、かなりの技術が必要と思われ、うまくできるか心配だったのですが、完成後見に行ったら見事な仕上がりでした。しかし、この池はあまり人の近づかない山の奥の方にあるので、先日見に行ったら草木に埋もれてしまっていました。人の目にふれることは少ないでしょうが、設計者の配慮と施工者の技術は今後長い年月にわたり洪水流を滑らかに導き、この池を守り続けて行くでしょう。

 

 

 

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