ファームポンドとは、パイプラインから送水される水を貯留し畑地灌漑用水とする池のことで、この池の水をポンプアップして圧力を加えることにより再度パイプラインで送水され、灌漑用のスプリンクラーによって畑に散水されます。 豊川用水では280のファームポンドがすでに造られていますが、最近、水田を畑に変更する事業が多く、写真の様な比較的小規模なファームポンドの新設の設計が時々あります。

 

 

 

 

 

 

既設のファームポンドを容量アップのため改修しました。改修工事中も畑灌ポンプを止めることが出来ないので、敷地内に鋼矢板を打ち込み、ポンプの3分間容量を確保した仮設の吸水槽を設けたのですが、ポンプの揚水量に用水管からの流入量が追いつかず、十分な水の供給は出来なかったそうです。設計上では、工事期間の水需要は施設設計を考えているピーク使用時の約半分であることから、この程度の施設で十分だと考えていたのですが、現実的にはこの地区の受益地は施設園芸が多く、灌漑時期が午前中に集中するため、ポンプはこの間フル運転でピーク流量を揚水していたのです。「机上の空論」を実感した仕事でした。

もっとも、いまは地元の水管理をする団体の役員をさせられており、ファームポンドの清掃などの維持管理もしています。実際使う側になってみると、設計上の不具合を感じることが多いのですが、これを仕事上に生かそうとすると、会計検査の壁に突き当たることが良くあります。現在の農業土木事業に携わる技術者は、自分たちの仕事の目的を見失っているのではないかと思う時があります。