建設副産物のリサイクル T 始めに 公共事業では、工事において発生する建設副産物を、適正かつ効率的に活用する事によって環境への負荷の軽減と工事コスト縮減を図るなど、「循環型社会」の構築に向けた取り組みが本格化している。 農業農村整備事業においても、建設副産物リサイクルを推進しており、特に国の直轄事業においては、コンクリート塊、アスファルトコンクリート塊、建設発生木材について、平成17年までに廃棄物をなくし、全て再利用する事を目指している。1) ここでは、実務に当たっての参考資料となるよう、農業土木学会誌03/04に掲載されている報文の要約版としてまとめてみた。 U 建設リサイクル法 2) 「建設工事に係わる資材の再資源化等に関する法律」のことで、次の2つの義務を課している (1) 建築物等に関する分別解体等実施義務 特定建設資材を用いた建設物に係わる解体工事、またはその施工に特定資材を使用する建築工事等であって、工事の規模が一定以上のものは分別解体が義務付けられている。 ○特定建設資材とは 廃棄物となった場合に再資源化が可能なもので、次の4資材がこれに当たる @コンクリート Aコンクリート及び鉄から成る建設資材 B木材 Cアスファルト・コクリート ○対象建設工事とは 下記の工事が対象となる @建築物に係わる解体工事で床面積の合計が80m2以上 A建築物に係わる新築または増築の工事で床面積の合計が500m2以上 B建築物に係わる新築・増築・解体以外の工事で請負代金の額が1億円以上 C建築物以外の工作物に係わる解体工事または新築工事等で請負代金の額が500万円以上 (2) 再資源化等実施義務 分別解体等に伴って生じた特定建設資材の廃棄物については、再資源化が義務付けられている。ただし建設発生木材については、所定の条件を満たせば、縮減に代えることが出来る。 V 農業農村整備事業における取り組み 2) 建設リサイクル法の基本方針の趣旨を踏まえ、次に示すように、経済性に係わらず、再生資源の利用及び再資源化施設の活用を図る事としている。 (1)特定建設資材等の当該工事現場からの搬出 @ 工事にともない発生したコンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊が廃棄物となる場合は、再資源化施設に搬出する。 A 工事に伴い発生した木材が廃棄物となる場合は、原則として再資源化施設に搬出する。ただし、当該工事現場から50kmの範囲内に再資源化施設がない場合などは、再資源化に代えて縮減(焼却)する事が出来る。 B 工事現場から建設発生土が発生する場合は、原則として50kmの範囲にある他の工事現場等に搬出する。 (2)再生資源等の利用 @ 当該工事現場から40kmの範囲内にコンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊を再資源化する施設がある場合、工事目的物に要求される品質等を考慮のうえ、原則として再生骨材等を利用する。 A 当該工事現場から40kmおよび運搬時間1.5時間の範囲にアスファルト・コンクリート塊を再資源化する施設がある場合、工事目的物に要求される品質等を考慮のうえ、原則として再生加熱アスファルト混合物を利用する。 B 当該工事現場から50kmの範囲内に建設発生土を搬出する他の工事がある場合、受入時期及び土質等を考慮のうえ、原則として建設発生土を利用する。 W 建設副産物の利用の現状 3) (1) 建設発生土 @ほ場整備事業での客土や農地の嵩上げ用に利用 Aため池の浚渫土を固化処理して堤体盛土として利用 B同浚渫土を脱水処理後に加工工場でレンガに加工して舗装材として利用 (2) アスファルト塊 @再生現場で、路上表層再生工法や路上再生路盤工法により、表層や路盤材として利用 A同じく再生現場で自走式破砕機で再生砕石にして利用 B再資源化施設に搬出して再生アスファルト混合物や再生砕石として利用 (3)コンクリート塊 @発生現場で必要な大きさに切断して根固めブロック等として利用 A自走式破砕機で再生砕石として利用 B再資源化施設に搬出して再生骨材や再生砕石として利用 (4)建設発生木材 @現場で破砕機によりチップ状にし、法面緑化材、堆肥、暗渠疎水材等として利用 A再資源化施設へ搬出し、製紙原料や燃料チップとして利用 (5)建設汚泥 (建設汚泥とは、泥水状シールド工法や連続地中壁工法などにより発生するコーン指数200KN/m2未満のものをいう。) @脱水処理等で脱水ケーキとしたものを、盛土材や脱水ケーキとして利用 X 建設副産物利用の課題及び問題点 (1) 建設発生土の利用 4) 耕作用土として適しているかの調査が必要であり、次のような化学特性調査が必要である @PH(水稲栽培基準 5.5〜6.5) A可給態窒素(水稲栽培基準 10〜20mg/100g 乾土) B有効態リン酸(水稲栽培基準 10mg/100g乾土以上) C交換性 K2O (水稲栽培基準 15mg/100g乾土以上) D交換性MgO (水稲栽培基準 25mg/100g乾土以上) E交換性CaO (水稲栽培基準 110mg/100g乾土以上) (2) コンクリート塊の利用 5) 再生骨材は品質上の問題から、大部分は路盤材として用いられているが、コンクリート廃材の発生量に対し、路盤材としての利用だけでは処理能力に限界があり、コンクリート用骨材としての利用が期待されている。 平成12年に制定された標準化情報(TR A 006)では、再生骨材をコンクリート用骨材として使用する条件として、骨材最大寸法が25mm以下、設計基準強度が12N/mm2以下の構造物、かつ耐久性が要求されないもの、とされている。 (3)建設発生木材の利用 6) リサイクル緑化工法を採用した場合 @在来工法と比べ、準備工に時間、経費を要し、ある程度の施工量を確保する必要がある A山岳地域などにおいては、緑化材製造プラント設備の確保に問題がある (4)建設汚泥の利用 7) 改良汚泥の土質材料としての品質区分と品質基準が「建設廃棄物処理指針(厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室)」により定められているので、この条件を満たすよう、改良する必要がある。 地盤改良材としてセメント及びセメント系固化材を使用する場合、六価クロム溶出試験を行い、土壌環境基準以下であることを確認する必要がある。 Y おわりに もともと農業土木は自然の材料を利用しながら土地を拓き、水を治めてきた。しかしながら、効率と経済性を重んじる社会風潮の中、その材料が変化し、粗朶の変わりにナイロンネットを使用して伐採枝を捨て、転石を破砕してコンクリート護岸を作ってきた。今、環境問題への関心の高まりの中「大量生産、大量消費、大量廃棄」型社会が反省され、リサイクルの思想が普及してきていることは、地球の未来のため望ましい事であると考える。こんな中、自然との物質循環のもとに自然と共存する農業に係わる農業土木は、建設リサイクルの先導者となり、さらに自然の生み出す天然 資源の利用によって、農業の発展と地域の社会資本整備に貢献していくよう努力しなければならない。 引用報文 1)報文紹介 特集の趣旨 2) 「建設廃棄物ゼロミッションに向けた法令整備等の概要」 3) 「農業農村整備における建設リサイクルの取り組み」 4) 「県営ほ場整備(山北第3地区)の建設発生土の利用事例」 5) 「プレパクド工法による低品質再生骨材の利用」 6) 「建設発生木材の法面緑化への再利用」 7) 「ダム建設における建設汚泥のリサイクル」 |