目次
T はじめに
U 地盤改良工法の分類
V 改良材の種類
W 改良強度・透水係数
X 工法の選定
Y 経済比較
Z おわりに
T はじめに
近年、建設廃土の処分、周辺に対する騒音及び振動の制限等、建設環境の変化に伴い、軟弱地盤を地盤改良して基礎地盤としたり、土留工事において周辺への影響を低減するために地盤改良が行われることが多くなっている。
このため設計では、地盤支持については杭基礎等の他の工法と比較、土留工については矢板長を考慮した比較、さらには、地盤改良工法そのものの比較、等の比較検討を行うが、地盤改良の種類と工法は種々あり、その選定にとまどうことが多い。これは、地盤改良の改良材や施工方法に関する技術が現場のニーズに応じて常に進化しており、設計基準及び積算基準がこれに対応しきれていない事も一因と思われる。
ここでは、現行の一般的な地盤改良工法の種類と、その選定の条件を整理する。
U地盤改良工法の分類
1.水路工の分類と他の文献の関係
地盤改良工法の分類は各専門書、積算関係図書、業者のホームページ等で、それぞれ若干の異なりがある。農業土木では「水路工」の他に「ポンプ場」でも地盤改良に関する記述があるが、ここでは「水路工」と他の文献における分類及び呼称を比較する。
水路工 |
セメント系固化材による
地盤改良マニュアル |
土地改良工事
積算マニュアル |
土木工事積算
標準単価 |
置換工法 |
- |
- |
- |
表層混合処理工法
・オーガーによる攪拌式
・スタビライザー系の攪拌式
・路上混合式 |
浅層改良
・粉体方式
・スラリー方式 |
- |
- |
- |
深層改良 |
機械攪拌工法 |
粉体噴射攪拌工
(DJM工法)
軟弱地盤処理工
(スラリー攪拌工) |
粉体噴射攪拌工
(DJM工法) |
高圧噴射攪拌工法 |
軟弱地盤処理工
(高圧噴射攪拌工) |
高圧噴射攪拌工 |
プレロード工法 |
- |
- |
- |
バーチカルドレーン工法 |
- |
サンドドレーン工
(市場単価) |
サンドドレーン工
(市場単価) |
サンドコンパクションパイル工法 |
- |
サンドコンパクションパイル工法
(市場単価) |
サンドコンパクションパイル工法
(市場単価) |
石灰石パイル工法 |
- |
- |
- |
- |
- |
薬液注入工 |
薬液注入工 |
水路工では深層改良や薬液注入工を取り上げていない。これは、通常の水路構造物の支持力に対しては置換工法または表層混合処理工法を、深層のせん断強度増加及び沈下対策については、地盤の間隙比減少や排水を行う工法によるとしているものと思われる。しかし、セメント系固化材等による深層改良も、地盤のせん断強度増加及び沈下対策に有効であり、ドレーン工法にくらべ、短期間で改良目的が達成できることから、これとの比較が必要になる。
表層改良については「水路工」で取り上げているものの、土地改良の積算マニュアルに歩掛かりが無い。これは固化材の攪拌工法について各社独自の技術を持っており、特許等もあるため統一し難いところがあるものと思われるが、構造物の支持力不足に対しての工法比較では、地盤改良として表層改良を扱うことが多く、この施工費のデータが必要になる。この場合の単価は業者見積もりか、物価版によることになるが、この種類が多く、適否の判断が難しい。これについては、Y経済比較にまとめている。
2.改良深さによる分類
地盤改良工法を改良深さで分類すると下表のようになる。一般には浅層改良と深層改良に区分されるが、深層改良の工法でより深いところまで改良する場合に中層改良と表現している事もある。
区分 |
改良深さ |
改良目的 |
浅層改良 |
2〜3mまで |
・擁壁、カルバート、パイプ等の基礎地盤の支持力改良
・法面浸食防止 |
深層改良 |
3m〜 |
・ケーソン、高盛土などの基礎地盤改良
・掘削の山留強化と掘削底面のヒービング、ボイリングの防止
・斜面のすべり、崩壊の防止 |
中層改良 |
3〜10m |
|
3.工法の細分
深層改良を行う工法は、改良材の種類及び土層への注入・攪拌の方法により下表のように区分される。
工法名 |
固化材 |
適用土質・土性 |
備考 |
薬液注入工法 |
二重管ストレーナー工法(単相式) |
瞬結性の溶液型または懸濁型薬液 |
すべての地盤に施工可能
長尺の削孔や礫質地盤では施工不可能な場合がある。 |
|
二重管ストレーナー工法(復相式) |
1次注入:瞬結性注入材
2次注入:緩結・長結性注入材 |
すべての地盤に施工可能
長尺の削孔や礫質地盤では施工不可能な場合がある。 |
現在ではほとんどがこのタイプ |
二重管ダブルパッカー工法 |
1次注入:セメント・ベントナイト液
2次注入:緩結・長結性注入材 |
すべての地盤に施工可能
長尺の削孔や礫質地盤でも施工が可能。 |
削孔深度が25m以上
重要構造物の近接施工
高い遮水性が要求される場合 |
機械攪拌工法 |
スラリー攪拌工法 |
セメント、石灰系スラリー、水ガラス系 |
砂質土: N<30
粘性土: N<15
砂礫 : φ<50mm |
CDM工法 |
粉体攪拌工法 |
セメント、生石灰、セメント+砂 |
砂質土: N<10
粘性土: N<5 |
DJM工法 |
高圧噴射工法 |
高圧噴射注入工法 |
セメント系スラリー・水ガラス系硬化材 |
砂質土: N<15
粘性土: N<5 |
- |
高圧噴射攪拌工法 |
セメント系スラリー |
砂質土: N<200
粘性土: N<9
砂礫 : N<50 |
単管
二重管
三重管 |
薬液注入工法と他の工法の主な違いは、他の工法がセメンと系や石灰系の固化材を使用するのに対し、水ガラス系の固化材を使用することであるが、薬液注入工法でもセメント系固化材を使用することもある。
機械攪拌工法は攪拌翼の大きさ以上の改良は出来ないため、改良体のラップが必要な場合には適さない。薬性注入工法及び高圧噴射工法は地盤の間隙に改良材を充填して改良体を形成する工法で、削孔径以上の改良体が形成され、改良体のラップが容易であるため、止水目的の改良等に適している。
薬液注入工法と高圧噴射工法の違いは、薬液注入工法が地盤の骨組みを壊さずに土粒子間に接着剤(薬液)を充填するのに対し、高圧噴射工法は地盤を切削して固化材を置換、混合攪拌する強度の高い改良工法である。砂礫・玉石・硬質シルト等は、一般に高圧噴射工法では切削不可能となり適用出来ない。また、高圧噴射工法で排出土がある場合は、排泥の処理施設や建設副産物の処理が必要になるが、排土を一切出さない工法もある。
V 改良材の種類
1.攪拌系固化材
土と攪拌して改良を行う改良材は下表にように分類される
工法 |
方式 |
材料 |
表層改良
機械攪拌工法 |
粉体方式 |
セメント系 |
石灰系 |
スラリー方式 |
セメント系 |
石灰系 |
高圧噴射攪拌工法 |
スラリー方式 |
セメント系 |
粉体方式は飛散による公害が問題になる事があり、このような場合はスラリー方式が使用されるが、スラリー方式とする場合はスラリープラントの用地(最小限20m×10m=200m2)が必要になるため、防塵処理をした粉体の固化材を使用したほうが有利な場合もある。セメント系固化材の防塵処理したものは、一般のものと比べ約2倍の単価となる。
一般用 12,000円/t テフロン処理・防塵固化材 25,000円/t
セメント系と石灰系の特徴は下表の通りである。
区分 |
特徴 |
セメント系 |
・軟弱地盤や河川ヘドロの再生から建設発生土の固化処理に至るまで幅広い用途に用いられる。
・石灰の使用では、目的が果たし得ない対象についても固化を要求する需要が強くなった背景により開発が進んだ経緯がある。
|
石灰系 |
・含水比や塑性指数(PI)を低下させ、施工性の早期改善が可能。混合土の密度の増大、圧密効果が期待できる
・環境庁告示46号溶出試験(六価クロム)が不要
|
選択の目安
改良材 |
セメント系
固化材 |
石灰系
固化材 |
土質分類・性状 |
砂質土 |
○ |
△ |
粘性土 |
◎ |
◎ |
火山灰質粘土 |
◎ |
◎ |
有機質土 |
◎ |
○ |
含水比が液性限界以下 |
○ |
○ |
含水比が液性限界以上 |
○ |
△ |
混合 |
スラリー状で使用 |
○ |
× |
粉体状での粘性土との混合性 |
△ |
○ |
効果 |
早期改質 |
△ |
○ |
初期強度 |
○ |
○ |
長期強度 |
○ |
○ |
2.薬液注入材
薬液注入工法に使用される注入材は使用目的と工法により区分される。
(1)使用目的別
使用目的 |
注入材 |
備考 |
仮 設 |
水ガラス系注入材 |
数年の耐用年数 |
恒 久 |
セメント系注入材 |
|
薬液注入は、通常、補助工法として使用されることが多く、注入材はほとんどが水ガラス系の注入材が使用される。水ガラス系の注入材は、耐用年数が短いが、安全性が高く、かつ、種々の注入目的に応じた注入材を選定できるため、最も多く使用される。恒久的な注入目的を必要とする場合は、セメント系の注入材を選定することが一般的である。
(2)工法別
工法名 |
注入材 |
二重管ストレーナー工法(単相式) |
瞬結性の溶液型または懸濁型薬液 |
二重管ストレーナー工法(復相式) |
1次注入:瞬結性注入材
2次注入:緩結・長結性注入材 |
二重管ダブルパッカー工法 |
1次注入:セメント・ベントナイト液
2次注入:緩結・長結性注入材 |
溶液型と懸濁型の使い分けは対象土層の土質による。二十管ストレーナ工法(復相式)における瞬結、緩結の注入比率も土質により決定される。
W改良強度・透水係数
地盤改良の目的は地盤の強化と透水性の低減であるため、薬液注入工法とセメント系固化材を使った改良について、強度と透水性の指標となる、粘着力と透水係数を比較する。
項目 |
区分 |
薬液注入工法 |
セメント系固化材 |
粘着力C |
砂質土 |
50〜100kN/m2 |
粉体 |
500〜1500kN/m2 |
スラリー |
300〜900kN/m2 |
粘性土 |
現地盤の粘着力+10kN/m2 ただし 最大40kN/m2
N値5を超える地盤では、改良効果が期待出来ない |
粉体 |
400〜1250kN/m2 |
スラリー |
250〜850kN/m2 |
透水係数k |
|
砂質系 1×10^-4〜5×10^-5 cm/sec
10^-4cm/secオーダーより小さい地盤では、改良効果が期待出来ない。 |
砂質土 |
8×10^-5cm/sec |
シルト質土 |
1×10^-6cm/sec |
粘性土 |
7×10^-6cm/sec |
(添加量 100kg/m3 ) |
上表に見るように、改良体の強度はセメント系固化材による改良のほうが明らかに大きく、この中でも、粉体方式のほうがスラリー方式にくらべ強度が大きくなる。このため、地盤の強化を目的とする場合は粉体系のセメント系固化材による改良が最も有利となる。
透水性については実務上は大差無い値となるため、これにより工法の優劣は付けがたいが、補助工法として使用される場合、施工性および環境配慮により薬液注入法が採用されることが多いようである。
X 工法の選定
1.改良深さ
地盤改良工法を改良深さによって区分すると下表のようになる。
改良深さ |
区分 |
工法 |
備考 |
〜3m |
浅層改良 |
置換工法 |
|
オーガーによる攪拌式 |
|
スタビライザー系の攪拌式 |
|
路上混合式(バックホウ等による) |
|
3m〜 |
深層改良 |
機械攪拌工法 |
|
高圧噴射攪拌工法 |
|
薬液注入工法 |
|
サンドドレーン工 |
|
サンドコンパクションパイル工 |
|
薬液注入工法 |
二重管ストレーナー工法(単相式) |
10〜20m |
二重管ストレーナー工法(復相式) |
20m程度 |
二重管ダブルパッカー工法 |
40〜50m |
〜10m |
中層改良 |
パワーブレンダー工法 |
|
2.改良目的
地盤改良工法を改良目的によって区分すると下表のようになる。
改良目的 |
工 法 |
備 考 |
止 水 |
高圧噴射攪拌工法 |
改良体をラップさせることが必要 |
薬液注入工法 |
地盤の支持力強化 |
浅層改良 |
|
高圧噴射攪拌工法 |
改良部体と非改良部の複合地盤と考え見かけの粘着力で設計する |
機械攪拌工法 |
薬液注入工法 |
|
液状化防止 |
機械攪拌工法 |
地盤の強化、格子構造による剪断変形の抑止 |
高圧噴射攪拌工 |
構造物に接する場所に使用 |
サンドドレーン工 |
間隙水圧の消散 |
サンドコンパクションパイル工 |
沈下対策 |
機械攪拌工法 |
改良柱体を形成し、圧密土層への応力負担を減少して圧密を低減する |
高圧噴射攪拌工 |
サンドドレーン工 |
地中水排除により圧密沈下を発生させる |
サンドコンパクションパイル工 |
3.道路土工 仮設構造物工指針 による使い分け
仮設構造物工指針では、土留の補助工法として下表のように地盤改良工法を割り当てている。
改良目的 |
改良工法 |
改良効果 |
ボイリング |
薬液注入 |
不透水層の形成 |
ヒービング |
深層混合処理 |
粘着力の増加 |
盤ふくれ |
薬液注入 深層混合処理 |
難透水層の形成 |
壁欠陥部止水 |
薬液注入 |
不透水層の形成 |
受動抵抗の増強 |
深層混合処理 |
粘着力の増加 |
ここで言う深層混合処理とは、セメント系または石灰系固化材による深層改良に相当すると考えられる。仮設構造物工指針では、透水係数の低減には薬液注入工法、粘着力の増加には深層混合処理工法が選定されている。この理由は「W改良強度・透水係数」に示した改良体の特性によるものと思われる。
Y 経済比較
1.浅層改良
浅層改良の歩掛りは積算マニュアル等に載っていないが、「建設物価 」に標準量の固化材を含んだ施工単価が掲載されている。
工法名 |
固化材 |
規格 |
施工規模
(m3) |
単価
(円/m3) |
適用範囲 |
パウダーミキサー工法 |
固化材含まず |
|
3,000 |
3,020 |
粉体攪拌
H=2.0〜3.5m程度 |
エスミック工法 |
100kg/m3 |
|
3,000 |
4,404 |
粉体・スラリー混合
H=1.0m程度 |
マッドミキサーM-U型工法 |
100kg/m3 |
H=3.0m |
3,000 |
3,464 |
粉体攪拌
H=2.0〜4.0m程度 |
LIMミキサー工法 |
100kg/m3 |
|
3,000 |
3,010 |
粉体攪拌
H=0.2〜3.3(0.2〜6.0) |
パウダーブレンダー工法 |
100kg/m3 |
|
3,000 |
3,300 |
粉体・スラリー混合
H=3.0m程度 |
STB工法 |
100kg/m3 |
|
5,000 |
2,010 |
スタビライザー
H=1.2m程度 |
マッドスタビ工法 |
100kg/m3 |
t=1.5m |
5,000 |
3,820 |
粉体・スラリー混合
H=4.0m程度まで可 |
スタビミキサー工法 |
100kg/m3 |
H=5m未満 |
5,000 |
5,340 |
|
100kg/m3 |
H=5〜7m |
5,000 |
6,570 |
|
ソイルライマー工法 |
100kg/m3 |
t=1m |
10,000 |
3,130 |
|
100kg/m3 |
t=2m |
10,000 |
3,010 |
|
(建設物価 2010.9 より)
上表のとおり表層3.0m程度の改良であれば、改良単価は3,000〜4,000円程度であるため、置替工法と比較した場合、残土処分等を考慮すると一般には地盤改良の方が経済的になる。
2.深層改良
(1)単価の構成
「土地改良工事積算マニュアル」と「土木工事積算標準単価」では単価表の構成が異なっているが、ここでは単価に与える条件が明確な、「土木工事積算標準単価」の単価構成を各工法毎に整理した。
@粉体噴射攪拌工(DJM工法)
作業種別 |
区分 |
単価単位 |
2軸施工
φ1000 |
杭打長 |
円/本 |
現場内移動 |
|
円/回 |
軸間変更 |
|
円/回 |
施工費は土質の影響を受けないが。固化材の量は土質によって異なる
適用できる土質は 砂質土: N<10 粘性土: N<5
A高圧噴射攪拌工
単管工法
標準有効径 |
作業区分 |
区分 |
単価単位 |
700〜800
800〜1000 |
準備 |
|
円/本 |
削孔 |
土質・N値 |
円/m |
注入 |
土質・N値 |
円/m |
引抜 |
|
円/m |
二重管工法
作業区分 |
区分 |
単価単位 |
準備 |
|
円/本 |
削孔 |
土質・N値 |
円/m |
注入 |
土質・N値(標準有効径) |
円/m |
引抜 |
|
円/m |
三重管工法
作業区分 |
作業細別 |
区分 |
単価単位 |
削孔 |
準備 |
|
円/本 |
削孔 |
土質・N値 |
円/m |
注入 |
準備 |
|
円/本 |
注入準備 |
|
円/m |
注入 |
土質・N値(標準有効径) |
円/m |
引抜 |
|
|
注入設備の据付・解体
単管工法 |
据付・解体 |
移設 |
二重管工法 |
据付・解体 |
移設 |
三重管工法 |
据付・解体 |
移設 |
単管工法の有効径は土質によらず決定されており、削孔及び注入費は土質とN値の影響を受ける。
二重管、三重管工法の場合、土質とN値によって有効径が変わる。
B薬液注入工
二重管ストレーナ工法
作業種別 |
セット数 |
作業区分 |
区分 |
単価単位 |
単相
復相 |
2セット
4セット |
準備 |
|
円/本 |
削孔 |
土質 |
円/m |
注入 |
|
円/l |
引抜 |
|
円/m |
(施工本数100本未満の場合2セット、100本以上は4セット) |
二重管ダブルパッカー工法
作業種別 |
セット数 |
作業区分 |
区分 |
単価単位 |
削孔 |
1セット
2セット |
準備 |
|
円/本 |
削孔 |
土質 |
円/m |
薬注準備 |
|
円/m |
一次注入 |
4セット |
準備 |
|
円/本 |
注入 |
|
円/l |
引抜き |
|
円/m |
二次注入 |
4セット |
準備 |
|
円/本 |
注入 |
|
円/l |
引抜き |
|
円/m |
(削孔は施工本数200本未満の場合1セット、200本以上は2セット) |
注入設備の据付・解体
二重管ストレーナ工法 |
据付・解体 |
移設 |
二重管ダブルパッカー工法(削孔) |
据付・解体 |
移設 |
二重管ダブルパッカー工法(注入) |
据付・解体 |
移設 |
削孔費は土質によって決まる。注入費は材料費のみであるが、注入量は土質によって決まるため、結果的に土質の影響を受ける。
(2)単価の比較
工法選定は単に施工費の比較のみでなく、施工速度や周辺への影響を考慮して行うべきであるが、ここでは、おおよその目安を得るため、任意のモデルケースについて施工費を比較してみた。
@止水目的の改良
土留底面改良 B=4.0m L=100m 砂質土 (L1=3.0m L2=5.0m)
工法 |
工法細分 |
本数 |
一本当り
(円) |
全本数
(千円) |
据付・解体
(千円) |
合計
(千円) |
比率 |
高圧噴射攪拌工 |
単管工法 φ800 |
1,000 |
23,756 |
23,756 |
716 |
24,472 |
0.7 |
単管工法 φ1000 |
560 |
36,411 |
20,390 |
716 |
21,106 |
0.6 |
二重管工法 φ2000(N≦10) |
170 |
266,658 |
45,332 |
416 |
45,748 |
1.3 |
三重管工法 φ2000(N≦30) |
170 |
226,414 |
38,490 |
617 |
39,107 |
1.1 |
薬液注入工法 |
二重管ストレーナー工法(単相式) |
500 |
63,787 |
31,894 |
448 |
32,342 |
0.9 |
二重管ストレーナー工法(復相式) |
500 |
68,550 |
34,275 |
448 |
34,723 |
1.0 |
二重管ダブルパッカー工法 |
500 |
107,825 |
53,913 |
612 |
54,525 |
1.6 |
止水目的の改良の場合、改良範囲内に密に改良体を配置するため、改良体の有効径と配置の仕方により改良範囲内に配置される本数が異なってくる。このため、工事費の比較は一本当り施工費でなく施工範囲内の総工事費で行う必要がる。
上表中の比率は、土留めの止水対策として通常使用される薬液注入工法・二重管ストレーナー工法(復層式)を1.0とした場合を示しているが、この場合、薬液注入工法より高圧噴射攪拌工・単管工法の方が工事費としては安くなる。工事費としては最も安価でないにも係わらず薬液注入工法が採用されるのは、施工性の良さと、高圧噴射攪拌工の場合、排泥の処理施設や建設副産物の処理が必要になるためと思われる。
A支持力改良
構造物基礎 砂質土 L1=10m L2=5m
工法 |
工法細分 |
一本当り改良体体積(m2) |
一本当り工事費(円) |
体積当り(円/m3) |
比率 |
粉体噴射攪拌工 |
(DJM工法) |
7.85 |
48,640 |
6,196 |
1.0 |
高圧噴射攪拌工 |
単管工法 φ800 |
5.03 |
53,254 |
10,587 |
1.7 |
単管工法 φ1000 |
7.85 |
78,313 |
9,976 |
1.6 |
二重管工法 φ2000(N≦10) |
31.41 |
751,030 |
23,911 |
3.9 |
二重管工法 φ1000(40<N≦50) |
7.85 |
493,940 |
62,922 |
10.2 |
三重管工法 φ2000(N≦30) |
31.41 |
418,985 |
16,523 |
2.7 |
三重管工法 φ1800(50<N≦100) |
25.44 |
634,575 |
24,944 |
4.0 |
薬液注入工法 |
二重管ストレーナー工法(単相式) |
7.85 |
186,855 |
23,803 |
3.8 |
二重管ストレーナー工法(復相式) |
7.85 |
199,556 |
25,421 |
4.1 |
二重管ダブルパッカー工法 |
7.85 |
272,481 |
34,711 |
5.6 |
構造物基礎 粘性土 L1=10m L2=5m
工法 |
工法細分 |
一本当り改良体体積(m2) |
一本当り工事費(円) |
体積当り(円/m3) |
比率 |
粉体噴射攪拌工 |
(DJM工法) |
7.85 |
48,640 |
6,196 |
1.0 |
高圧噴射攪拌工 |
単管工法 φ800 |
5.03 |
56,479 |
11,228 |
1.8 |
単管工法 φ1000 |
7.85 |
83,138 |
10,591 |
1.7 |
二重管工法 φ2000(N=1) |
31.41 |
579,365 |
18,445 |
3.0 |
二重管工法 φ1200(N=4) |
11.31 |
374,365 |
33,100 |
5.3 |
三重管工法 φ2000(N≦3) |
31.41 |
601,311 |
19,144 |
3.1 |
三重管工法 φ1800(3<N≦5) |
25.44 |
601,311 |
23,636 |
3.8 |
薬液注入工法 |
二重管ストレーナー工法(単相式) |
7.85 |
171,192 |
21,808 |
3.5 |
二重管ストレーナー工法(復相式) |
7.85 |
181,940 |
23,177 |
3.7 |
二重管ダブルパッカー工法 |
7.85 |
206,391 |
26,292 |
4.2 |
支持力の評価は改良体部と非改良部を一体化した見かけの粘着力で行われるため、目標とする支持力に対し改良体の強度が工法によらず一定であれば、改良対象範囲内の改良体の体積は一定になる。所定の強度を発揮するための固化材の量は工法によって異なるが、その差が工事費に与える影響は少ないと思われるため、ここでは、固化材量を標準値としたm3当り単価を比較した。
比較は砂質土と粘性土について行った。どちらの場合も粉体噴射攪拌工法が他の工法に比べ安価になったが、実際には適用できる土質の制限や施工規模などを考慮して工法を選定することになる。
Zおわりに
地盤改良は地盤の支持力増強、不透水層の形成のみでなく、排土の再利用、液状化対策、仮設土留の代用等、その利用は多岐にわたっている。一方、改良材や施工方法も常に進化して種類が増加しており、改良目的に最適の改良材や工法を決定するのが難しい状況となっている。このように、日々進化する技術に対しては、強度や透水性のみ指定する性能規定の発注方式が望ましいと思われるが、設計段階での検討には、標準的工法での積算が必要になる。ここでのとりまとめは、文献に記された内容の羅列程度であるが、実務で工種及び工法の検討を行う際に、何らかの参考になればと思っている。
参考文献
土地改良事業計画設計基準 設計「水路工」農林水産省農村振興局
セメント固化材による地盤改良マニュアル 財団法人 セメント協会
薬液注入工法の設計・施工ノウハウ 下水道技術協会
土地改良工事積算マニュアル(土木工事) 財団法人 農業農村整備情報総合センター
土木工事積算標準単価 財団法人 建設物価調査会
建設物価 財団法人 建設物価調査会
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