新水路工の主な改訂内容とその感想

農業土木の憲法とも言える 土地改良事業計画設計基準・設計「水路工」が、工期に追われるこの3月、度重なる工期延長を経て、やっと手元に届きました。設計基準が体に染みこんでしまっているオジサン技術屋にとって、基準の改定は悩みの種です。古い頭のメモリーの書き換えは容易ではないのです。そこで、年度末のお祭り騒ぎの一段落したところで、今回の改訂内容で個人的に関係すると思われる内容をまとめて見ました。参考にしていただくと共に、ご意見などいただければ幸いに思います。

項  目

内  容

感  想

余裕高の算定方法

  • 現行の算定式に対して、水路内施設によって決
まる係数βが付け加えられた。(p201)
  • 用水路と排水路について余裕高の算定法を区分した。(p203,p204)
  • 急勾配水路の余裕高の算定式が明記された(p205)
  • 二次製品に関しては『標準設計図面「鉄筋コンクリート二次製品」利用の手引き』によることとしている。

算定法が煩雑になったダケのように思う、特に排水路については、設計流量自体が便宜的なものであるので、8割水深とか、0.30m以上とかの決め方で良かったのではないか?(現実に、排水路の水はマンニング式で流れてはいない)

土圧公式の分類と適用

  • 構造分類によって採用公式が明記された(p211)
  • フリューム水路について壁面摩擦角を考慮するよう変更された(p211・表-7.1.2)

壁面摩擦角については、学会誌等で事前に公開されており、国営の事業所では内部基準で既に採用している所もあったが、県、市町村の設計では、暫く混乱がありそうだ。

土の単位重量

  • 水路の設計に用いる土の単位重量と、矢板等現況地盤に直接構築される構造物の設計に用いる土の単位重量を区分して考えるよう記述された(p212)
  • 土の水中重量が湿潤重量から9kN/m3を差し引いた値とした。(p212)

表-7.1参-1はあくまで参考として示されているが、ここに示された以上、これが実質の基準となると思われる。自然地盤はともかく、盛土埋め戻しについては統一すべきでは無かったのか?。(他基準との整合への苦慮の結果と感じられる)

土の水中重量については、表-7.1.1に示された土砂の単位重量、湿潤18,水中10に矛盾している(今まで全て、湿潤−8でやっていた、未完成業務、直さないといけないか?)

内部摩擦角の推定式

  • 大崎の式と道路橋示方書の方法が列記された(p212)

農林の基準書には大崎の式が書かれたものが多いと思ったが、実際の設計では、使い分けがまちまちで、会検でも問題になったらしい。このため「より良き設計の・・」で道路橋の式が示され、これによる設計が多くなったと聞いたが、この記述で,水路関係は大崎の式に統一される事になりそうだ(ちなみに12年度未完成業務は道路橋でやってしまった)

粘着力の推定式

1.N値から粘着力を算出する式が明記された

算式が二通り示されたが、それぞれの式による結果が随分異なる。設計者にとって便利な時もあると思うが、会検対策に苦労するのではないかと思われる。適用区分を示すか、どちらか一つのみにして欲しかった。

載荷重の換算

  • 換算係数を求める時のHが底版中心からの高さとなった(P248 図-7.3.2)
  • 自動車荷重を分布荷重で考えるようになった
(P251)

Hについては「鉄筋コンクリート用水路(解説編)」の計算例で底版上面から取っていたのでこれによっていたが、本来はこちらが正しかったのだろう。自動車荷重についてはT-25への対応(T-20と同じになる)と思われるが、今までは後輪荷重で考えていたので、これもソフトを修正しなくてはいけない

地盤改良厚さ算定法

  • 地盤改良厚を算定する方針が示された

以前からよく見かけた方法であり、疑問を感じながらも使っていた方法だが、ここに示されたのなら仕方ない、しかしθ=30〜45°との、幅のある表現では、現場技術者は悩むだろう

水路の杭基礎設計

  • 杭の中心間隔に対する考え方が示された(p276)
  • 杭頭処理の方法が工種ごとに示された(p276)
  • ブロック積水路や松杭の考え方が記載された(p278)

図-7.5.9(b)の剛結合の方法、ファームポンドにも記載されているが、鉄筋を曲げて定着長を確保することには疑問がある

編土圧の生じるフルームの計算

  • 受動土圧が期待出来る盛土幅が示された(p286)
  • 反力側の側壁の部材設計の方針が示された(p287)

 どちらも「目安」と「参考」ではあるが、特に反力側の側壁の考え方は「ポンプ場」の地震時の反力の考え方と整合しないように思う、そもそも滑動の安全率は摩擦抵抗の不確実さを考慮した安定計算上の処理であって、側壁応力に同様の安全率を考慮する必要があるのか?

鉄筋の許容応力 

  • 用水路と排水路の許容応力が区分された(p291)

 同じ水槽を設計する場合でも、水路工によると、176kNn/mm2、ポンプ場によると157kN/mm2としていた不都合は解消されたようだ。ところで、一般部材として設計された水路に実際、構造的な問題があったのだろうか?

コンクリートのせん断応力度

  • せん断応力度の照査法をボクスカルバートと擁壁、フリュームで区別した(p308)
  • せん断応力の照査位置が明記された(p308,p309)

 

 

せん断応力の照査法は他基準との整合を図ったものと思われるが、市販のアプリケーションを使う上では、擁壁も平均せん断応力にして欲しかった。今もっている擁壁のソフトでは最大せん断応力の計算が出来ない。

フルーム水路のせん断力照査位置について、この図を示されると、またソフトの修正が必要だ

配力筋及び最小鉄筋量

  • 配力筋及び最小鉄筋量の考え方が他基準と統一された(p309)

旧基準のコンクート断面積に比率をかける方法が削除されたのは良かったと思う。他の要因で部材厚を大きく取ったとき、主筋より配力筋が大きくなって悩んだことや、それを平然とやっている設計例をみて驚いたこと、配力筋の決め方が統一されておらず問題になったこともあったが、これで一安心だ

鉄筋の段落し

  • 段落しの計算方法が示された
  • 壁高3.0m以下の場合の簡易法が示された(p312)

建設関係ではこの面倒な処置は無くす方向なのに、新たに明記されたことは残念。しかし、資源循環社会を掲げる農業土木の立場としては、必要な処置かも知れない。無駄な鉄筋を使うことのないよう、しっかり設計しましょう。 

鉄筋のかぶり 

  • 小規模の場合を除き、鉄筋のかぶりが通常の場合、60mm以上となった(p313)
  • 部材厚ごとに鉄筋の被りの標準値が示された。(p313)

 以前、D13でもかぶりが60mmという話を聞き、60mmでやっていたら。そうでない設計例が多かったので、最近また50mmに変えていた。今まとめている配筋図、50mmで書いてある。新基準の出る前の成果(本来なら)だからいいとして、新年度業務に同様の規模のものがあったら、小規模かそうでないか、新たな悩みが出てきそうだ。

鉄筋の継手及び定着

  • 重ね継ぎ手の規定が詳細に示された(p315)
  • ラーメン隅角部の定着位置の決め方が示された(p316)

重ね継ぎ手の配置については今までも規模の大きな(判断基準は請負金額だったが)構造物には考慮して来たが、通常は無視していた。この規定にはただし書きがないので、これから面倒になるかも知れない。

また、ラーメン隅角部の定着位置について、モーメントのシフトを考慮する土工指針の考え方と異なるので、市販のアプリケーションで計算された計算書が問題になる事も予想される

杭基礎としたフリュームの計算

  • 杭の形式、間隔による計算方法が示された(p343)

考え方は分かりやすくなったが、実務的には工法検討の手間が増えたかも?

ウィープホール及びアンダードレーン

  • ウィープホール及びアンダードレーンの設置の目安が示された(p346)

 擁壁の水抜き同様、2〜3m2を目安にして設計したこともあったが、今後はこれが目安となるだろう。

継目間隔 

  • 1バレルの長さの標準が9〜12mになった(p348)

 水資源公団では以前から12mとしていたので、それに合わせたものと思われる。それにしても、SI単位系となった今も、9とか12とか、尺貫法の名残のある数字がのこっているのが面白い。

環境との調和に配慮した水路の考え方

  • 流速や粗度係数の考え方が示されている(p378)
  • 参考事例が示されている(p381〜)

 今後、農業土木事業の中で主流となる分野と予想されるが、冒頭文中の「創意工夫による設計」が出来るような体制が望まれる。

補修・改修対策

  • 農業用用排水施設についての補修・改修の必要性の判断基準およびその技術・工法が示された

これからの技術者はこれらの章を開くことが多くなるのだろう。