2001年を振り返る

仕事は今年も
 今年も仕事は忙しかったけど、収入はさっぱりだった。同業者の話を聞くと、皆同様であり、自分だけでないこのとに安心するものの、その先の会話は暗い。コンサルさんとの打ち合わせでも、厳しい現状を切々と聞かされることが多く、未来を照らす明かりは風に揺れるローソクの炎のように頼りない。ある同業者が「こんな仕事する人が減ってくれれば、自分たちも何とか生きていけるのだろうに」と言ったのに対し、「そう思って待っている人が沢山いるんだろうから減ることは無いでしょう」と答えた自分も、実は彼と同じ事を期待していた。この仕事が好きで、いや、こんな仕事しか出来ない自分達には、微かな希望にすがりながら、自分の選んだ道をひたすら歩んでいくしかないのかも知れない。たとえ報酬は少なくとも「自分自身」が商品であるこの商売、誇りを持って続けて行きたいものである。

21世紀の最初の年は
  新しい世紀を迎えたからでも無いのだろうが、今年は事務所の機器類の故障が多く、結局、電話、プリンター、有線放送を流しているステレオシステムを新調する羽目になった。これらを皆、安売り商品で間に合わせてしまったことは、今年の事務所の経済事情を象徴している。そしてさらに、年末になって、妻の車が寿命を訴えてきた。夏頃から買い替えを勧める車屋さんに何とか来年の車検までは持たせようと修理を頼んできたが、もう限界が来たようだった。仕方なく新車を注文し、暮れも押し迫った今日、12月30日、新しい車がやってきた。車は今まで普通車だったが、経済事情から軽四にした。それでも、車一台の出費は痛い。今日から、新しい車が事務所の車庫に置かれる事になるが、乗るのは随分古びた妻である、妻が新しかった頃を思い浮かべると懐かしいが、前の車を買うときには普通車一台分を普通預金の通帳から一括で支払うことが出来たあの頃も、遠い昔の思い出として終わってしまうのだろうか。妻は仕方ないとしても、後者はもう一度よみがえって欲しい過去の思い出である。

変わりゆく事務所

 
独立して13年、この事務所に入って、もう10年になる。事務所内を見渡すと、もう使わなくなったものが多々ある。独立当時これぞ商売道具と思って買ったドラフター、プラニメーター、カーブ定規、図面へのテンプレートでの数字書きに疲れ果てた結果導入したペンシルロボ、こららは皆、CADの出現によって不要になった。計算書等、全てPCで処理するようになった昨今ではデーターでの受け渡しや保管が通常になり、コピー機も殆ど使わない。青焼き屋で待たされる時間が惜しくて買ったA1のコピー機も、最近は事務所の片隅で使われることを待っているが、この機械に電源が入れられるのは業者がメンテに来たときだけになってしまった。さらにCAD関連についても不要なものが出てきた。CAD導入当時、多額な金額の内訳となっていたペンシルプロッターやテーブル式のデジタイザーも最近では殆ど使ったことが無い、ペンシルプロターの変わりに活躍しているHPのプリンターも、最近では図面出力用のレーザープリンターの出現で、「マイラー出力にしか使わない遅いプリンター」となっているようであるが、我が事務所では、また当分活躍するだろう。デジタイザーは当初、第二原図等への出力が必要な時に図面内容をCADに読み込むのに役立っていたが、最近では測量の現況データーが殆どCADデーターとして渡されることや、CADがラスターデーターを扱えるようになったため、その活躍の場は無くなっている。CADも当時はOS2で動いており、CAD用のPCは専用のソフトしか使用出来なかったが、今はOSがWindowsに変わり、CAD以外のアプリケーションも動くようになり、他のPCとLANで結んでデーターを共有出来るようにもなった。さらに今年は、使うことは無いであろうと思っていたAutoCADが必要に迫られてインストールされ、一つのPCの中で、2つのCADが同時に動くような状況も生じてきた。
こんな環境の下での現在の事務所の機器のレイアウトは、過去の隆盛を誇る無用の長物が、新しい力の円滑な発揮を阻害しているかのように思われた。このため、年内の仕事の一段落した先日、思い立って事務所内のリニューアルを試みた。絡み合う配線に頭を悩ませ、ギックリ腰を恐れながら機器の移動を行っているとき、コンサルさんから電話があって新しい業務の打ち合わせがしたいと言ってきた。来年3月工期の仕事とのことで、願ってもない話のため、翌日午後の打ち合わせの問いかけに二つ返事でOKして電話を切った。現在手持ちの業務と新規業務が重複する事になり、時間的焦りと新しい業務は新しい体制でとの期待から、作業にも力が入り、翌日打ち合わせに出かける直前に仕上がった新しい機器の配置を眺めていると、単なる物置と化したデジタイザーや、HPの後方に姿を隠したペンシルプッロターが、この業界における自分の姿にも思えたが、新規業務の打ち合わせとあって、弾む気持ちで事務所を出た。
新規業務はパイプラインの末端配管で得意な分野ではなかったが、来年の仕事の予定が無く、今後ありつける可能性も少なかった私には、ありがたい話であり 「もし全部できないようであれば、他の協力業差者さんに分割しても良いですよ」
との言葉に「是非、全部やらせてください」 とすかさず答えて内容を聞いて行くと、この業務、地元協議の関係で随分前から引きずっていて、急きょGOサインが出たものらしく、その作業のなかに、第二原図に鉛筆で手書きされたパイプラインの計画線に継手の詳細図を書き足さなければならないことがあった。今さら手書きは出来ない、CADを使うとなると、来る前に無用の長物と決めつけたデジタイザーやペンシルプロッターをまた引っ張り出さなければならない、昨日からの重労働を後悔しながら打ち合わせを終え、事務所に帰って再び配置を考え直した。幸い、有力なパートナーとして復活した両者と、、キャスター付きデスクに乗った、これも昔活躍したCAD専用PCとの接続が出来たため、手直しは最小限に押さえられ、晴れて新年を迎えられる事となった。新しい年を迎えての仕事は、昔のパートナー達との仕事になるが、彼らと励んだあの頃のような時代が再び訪れることを願って、新しい年を迎えることにしよう。



  
今年一年お世話になった皆様、ありがとうございました。

来年も宜しく御願いします。