尖度
(1)個別データの尖度 Kurtosis
尖度は、データが平均の回りに集中している度合いを示す尺度です。
分散や標準偏差も似た趣旨ですが、次元が異なります。各データの、平均からの
偏差をもとにして測ります。
尖度は、分布について平均や分散以外の特性を知りたい場合などに利用されます。
尖度には、単位呼称はありません。
尖度は、分布図の視覚による尖りの度合いとは必ずしも一致しません。
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理論
個別データを
X1,X2,....,XN
とし、これらの平均をμ、標準偏差をσとするとき、
γ2=Σ(Xi-μ)4/(Nσ4) (1) 重要注意
Σはiについて1からNまで合計する意味。
が尖度です。尖度は常に1より大きくなります。なお、式(1)は、次のように表すこ
ともできます。
γ2={Σ(Xi4)/N-4μΣ(Xi3)/N+6μ2Σ(Xi2)/N-3μ4}/σ4 (2)
式(1)と(2)は数理的に同じで、どちらを使用しても構いません。
データが多いときは、式(2)が意外に便利です。
尖度を求めるには、予めデータ数、平均、標準偏差の値を用意する必要があります。
式(1)によるγ2から3を引いたものを尖度と定義することがあります。こ
れは、正規分布の尖度が常にγ2=3 となることから、γ2-3は
正規分布で0となり、他の分布もこれを基準にしようというものです。これを3引き
型尖度ということがあります。
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計算例
個別データが
8,5,2,9,5,3,7,5
の場合、尖度を求めるに、先ず、N=8, 平均はμ=(8+5+2+9+5+3+7+5)/8=5.5
分散は σ2=(82+52+22+92+52+32+72+52)/8-5.52=5
となるので、尖度は式(1)により
γ2={(8-5.5)4+(5-5.5)4+(2-5.5)4+(9-5.5)4+(5-5.5)4+(3-5.5)4
+(7-5.5)4+(5-5.5)4}/(8*√54)=1.9175
式(2)を用いるときは、N,μ,σのほか、ΣX2,ΣX3, ΣX4を数値として
準備する必要があります。
すなわち、データより ΣX2=282, ΣX3=1994, ΣX4=15030となるので
γ2=(15030/8-4*5.5*1994/8+6*5.52*282/8-3*5.54)/√54=1.9175
と同じ結果が得られます。
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| 尖度の意味と計算手順のまとめ
意味:集団の平均の回りの集中度。分散などとは別次元。
目で見た尖り度とは異なる場合がある。
計算手順:1、データから N, μ, σ, ΣX2, ΣX3, ΣX4 を求める。
2、これらを上式 (2)にあてはめる。 |
練習問題
25 世帯が住むアパートがあり、各世帯の人数は次の通りです。
3, 4, 2, 4, 6, 2, 5, 3, 2, 5,
4, 2, 3, 1, 5, 3, 4, 4, 2, 3,
2, 3, 2, 5, 4
世帯人員の尖度を求めなさい。[答 2.17]
重要注意
尖度として、
{N(N+1)/(N-1)/(N-2)/(N-3)}Σ(Xi-m)4/S4-3(N-1)2/(N-2)/(N-3) (3)
などの式を用いているものがあります。mは平均、S2は分母がN-1の分散。Σは iについて
1から Nまで合計する意味。
この尖度は、与えられた大きさNの集団の尖度ではなく、この集団を等確率、独立な1群の標本とする
別にある母集団(大きさも内容も不明)の3引き型尖度の推定量です。前出の尖度と同じ名称ですが、
対象集団が違うので、注意を要します。
(例)大きさ8の集団を、8,5,2,9,5,3,7,5 とするとき、この8個に対する尖度は、式(1)により、
1.9175 です。
一方、この8個が、別にある母集団(大きさも内容も不明)からの等確率、独立な標本であるとするとき、
3引き型尖度は、式(3)により、-0.87325 と推定されます。式(3)による値は、この8個に対する尖度で
はなく、別にある母集団(この8個を生み出した元の集団。大きさも内容も不明)に対する尖度です。
この値は不偏推定値ではありません。
尖度など、集団の統計値を出すときは、どの集団に対するものかを認識する必要があります。
上記の(1)式の尖度と(3)式の尖度とは、対象集団が異なります。




















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