(6)級内相関係数
級内相関係数は、一定数のデータからなる組(級という)が幾つかあって、全体として1つの集団を形成
しているとき、級の内部の類似性を全体として表わす指標です。
例えば、リレー競走を幾つかのチームで行うとき、チーム内の選手の実力の均一度を測るには、この級内
相関係数が便利です。
普通の相関係数では、級内の変数の順序は動かせませんが、級内相関係数では級内の変数の順序は関係あ
りません。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
理論
一定数個の変数の組(級)を
(X11,X12,...,X1k)
(X21,X22,...,X2k)
(X31,X32,...,X3k)
:
:
(XN1,XN2,...,XNk)
と表すとき、これら N組の級データにより、外分散σb2、内分散σw2、全分散σ2が計算されます。
このとき、次の式で求められるρを、級内相関係数といいます。
ρ={σb2-σw2/(k-1)}/σ2 (1)
この式を用いて級内相関係数を計算するときは、予め k,σb2,σw2,σ2の各値を算出しておく必要が
あります。
級内相関係数は、最高1、最低 -1/(k-1)です。
級内相関係数が1となるのは、級の間でデータが異なっても、どの級の中もデータが同じである場合です。
下記参考(1)
級内相関係数が -1/(k-1)となるのは、どの級の中の平均も同じである場合です。下記参考(2)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
計算例
4人1チームで、400mリレー競走を6チームで行うとき、各選手の100mのベストタイムは、次の表の
通りです。ベストタイムについて、級内相関係数を求めます。
チーム(級) | 4人の選手の記録 |
1 | 11.5, 11.6, 11.5, 11.4 |
2 | 12.3, 11.7, 11.6, 11.6 |
3 | 11.3, 11.1, 11.5, 11.7 |
4 | 11.7, 11.5, 11.4, 11.4 |
5 | 11.6, 11.5, 12.0, 11.3 |
6 | 11.4, 12.2, 12.1, 11.5 |
この表から k,σb2,σw2,σ2の各値を計算すると
k=4,σb2=0.023',σw2=0.0575,σ2=0.08083'
となるので
ρ={(0.023'-0.0575/(4-1)}/0.08083'=0.05154
となります。
これにより、この場合級内は無相関といってよいでしょう。
参考(1):ρ=1となるのは、データが次のようにチーム内で選手の記録が全員等しい場合です。
チーム(級) | 4人の選手の記録 | チーム内平均 |
1 | 11.5, 11.5, 11.5, 11.5 | 11.5 |
2 | 11.8, 11.8, 11.8, 11.8 | 11.8 |
3 | 11.4, 11.4, 11.4, 11.4 | 11.4 |
4 | 11.7, 11.7, 11.7, 11.7 | 11.7 |
5 | 11.6, 11.6, 11.6, 11.6 | 11.6 |
6 | 11.8, 11.8, 11.8, 11.8 | 11.8 |
k=4
σb2=0.02'
σw2=0
σ2=0.02'
ρ=1
(評価)級内相関は最も強い。勝敗の予想は容易。
参考(2):ρ=-0.3'(この場合負で最強)となるのは、データが次のようにチーム内の平均が全チームに亘っ
て等しい場合です。
チーム(級) | 4人の選手の記録 | チーム内平均 |
1 | 11.5, 11.6, 11.5, 11.4 | 11.5 |
2 | 11.7, 11.6, 11.3, 11.4 | 11.5 |
3 | 11.5, 11.5, 11.5, 11.5 | 11.5 |
4 | 11.4, 11.6, 11.6, 11.4 | 11.5 |
5 | 11.5, 11.7, 11.4, 11.4 | 11.5 |
6 | 11.6, 11.6, 11.5, 11.3 | 11.5 |
k=4
σb2=0
σw2=0.0116'
σ2=0.0116'
ρ=-0.3'
(評価)級内相関は負で最も強い。勝敗の予想は困難。
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級内相関係数の意味と計算手順のまとめ
意味:級(同じ大きさの部分集団、組、セット)の中の均一度
計算手順:1、データの配列を確かめる。
2、級内データ数 k,外分散σb2,内分散σw2,全分散σ2を算出する。
3、これらを上式 (1)にあてはめる。 |
練習問題
駅の構内に5基の公衆電話があり、利用者が行列を作ることがあります。一定時間ごとに、待ち人数を観
察したところ、次のデータを得ました。電話器利用の状況について、級内相関係数で測りなさい。
(表内の数字は待ち人数)
観察時点 | 電話器 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
1 | 1 | 2 | 1 | 0 | 1 |
2 | 1 | 0 | 0 | 2 | 0 |
3 | 2 | 4 | 3 | 3 | 1 |
4 | 3 | 2 | 4 | 3 | 1 |
5 | 1 | 2 | 3 | 2 | 0 |
6 | 0 | 1 | 1 | 0 | 1 |
7 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 |
ヒント:先ず、k,σb2,σw2,σ2の各値を出します。
次に式(1)を用いて ρを計算します。
[答]
k=5
σb2=0.762449
σw2=0.662857
σ2=1.425306
ρ=0.41867
(評価)級内相関は正。すなわち、混む時は各電話器とも混み、空く時は各電話器とも空くという傾向は
認められるが、あまり顕著ではない。
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