質問1 (分散や標準偏差を求めるときの分母の決め方)電動模型自動車を、模型コースを1周する のに10秒かかるよう設計し、2台製作しました。そして、1台をとり、実際に (1)5回計測したところ、かかった時間(秒)は、8,9,10,11,12 でした。 一方、同じ設計の別の1台について (2)10回計測したところ、かかった時間(秒)は、8,8,9,9,10,10,11,11,12,12 でした。 計測値のばらつきを、分散で計るとして、(1)と(2)のばらつきは、同じでしょうか、異なる でしょうか。また、分散の値はどうなるでしょうか。 答 (1)と(2)のばらつきは、異なるものと判断します。分散の値は (1)の場合2.5、(2)の場合2.2222となって、(2)の方がばらつきが小さいと判断します。 解説 平均や分散などは、集団の特性値と呼ばれます。これらを求めるときは、必ずそれらが対象 とする集団を明確に認識しなければなりません。そこで、まず本問の分散が対象とする集団をはっ きりさせましょう。 (1)の場合、現実のデータとして8,9,10,11,12の5個がありますが、本来は「その電動模型自動車 が模型コースを1周したときに生じうる計測値の全ての可能な集団(母集団)」を対象とすべきで す。5個の計測値は、この母集団から偶発的に発生した標本と考えるのです。母集団の内容は、不 明ですが、7や13などが含まれていないとは断言できません。求めるべき分散は、この母集団の分 散ということになります。しかし、直接計算することはできません。計測値からこれを推定するし かありません。即ち5個の計測値に対して、その平均からの偏差の平方和を、計測値の個数から1を 引いた値(この場合5-1=4)で割って、所要の分散(の推定値)とします。具体的には、5個の計 測値の平均は10、平均からの偏差は-2、-1、0、1、2、これらの平方は4、1、0、1、4、で和は10、 これを4で割れば、求める分散は2.5となります。平方和を、計測個数から1を引いた値で割る ことが大切です。 同じ考えで(2)の場合の分散を求めると、2.2222となります。 (1)も(2)も計測値の範囲は同じですが、(2)は計測回数が多く、7や13などが含まれている可 能性が、(1)の場合よりも小さいとみられ、分散が小さく出るものです。 標準偏差は、分散の平方根です。変動係数(相対標準偏差)は標準偏差を平均(正)で割ったもの です。 なお、このほか2つの分散の差異を確率を用いて論ずることもできます。 (明星大学教授 船津好明)