それから、5年の歳月が経ちました。
 蘇った泉は、それから多くの生命を生み、そして多くの生命を抱きとめました。
緑は咲き誇り、鳥は歌い、川はさえずり、人は日々の営みに勤しむばかり。
こうして過去の飢えも忘れられようともしていましたが、そうでもない人も多かったのです。
 5年前のあの日・・・今も大切にしている仲間達が今日この日、集まりました。
 これをお読みの皆々様、しばしその時を一緒に覗いてみませんか?
 なお、空白の部分は、皆様の想像で埋めて下さいね。
(注:決して作者の手抜きでは御座居ません。念のため)

ドドン・・・!!と大音響が響き、幾つもの花火が雲一つない澄んだ夜空に七色の華を咲かせました。
 小高い岩場の頂上から地下水がこんこんと湧き出、小川のせせらぎとなって流れ出している生命の泉。
その周囲は憩いの緑地になっていて、今宵人々は祝い訪れました。
今日は、泉の復活祭。思い思いに人々は、祝いのこころを発しています。
 泉の水をすくい、祈りを捧げる少女。
 アコーディオンとバイオリンの演奏をBGMに、輪になって踊りに踊る若人達。
芝生に寝転がり、読書に耽る青年。
 木陰で明日を語る若いカップル。
出店の威勢良い売り子達。
 樹に草に駈け回る子ども達。見守る夫婦。
そんな一人一人の小さな楽しさを一つの大きな幸せに集め、今日も泉は小さな幸せを人々に発散し続けているのです。
 さて、いつともなく続く喧噪の中で、一人の青年が人捜し気に歩いていました。
 その背後に、近づいてくる2人の青年がいました。その手が、前を歩く青年の肩を叩きます。驚き、振り返る青年。
「あっ・・・タッティ!オッターも一緒じゃないか!?」
「フローク、久しぶり!」
「久しぶりだなぁ・・・村に戻ってそれぞれの道を行くって決めて、それっきりだったもんなぁ・・・今、何してるんだ?」
「ああ・・・僕は     で、あちこちを駆け回ってるよ。タッティ、君は?」
「ああ、オレは     をしてるんだ。まぁ、それなりに忙しいね。」
「僕も聞いてくれる?」
「じゃタッティ、君は?」
「へへへ・・・実は     をやってるんだな・・・意外でしょ?」
「へええ、タッティが・・・こいつぁ面白いや!でも合ってるよ。」
「どうも!」
「あっ、ボス!」「こっちにいましたぜ!」
「あっ、フランツ、ジャック!」
「それにフードマン!」
「やあやあ諸君!元気だったカネ?」
「一応聞いておくか・・・フードマン、あんたは今何してるんだい?」
「一応とは失礼な!まぁいい、それ程聞きたければ言って聞かせよう。何を隠そう、      をしておるのだ!どうだ、驚いて腰を抜かしたか!?」
「またまた・・・」「よせばいいのに・・・またいつものドジが出ちゃうよ?」
「ええい、あの頃の私と一緒にするな!私は生まれ変わったのだ!どう生まれ変わったか、今からとくと話して聞かせてやる!私はな・・・」
「やれやれ・・・」「付き合っちゃいられないよ。」「ああ・・・行こうぜ。」
「あっ、お前達、どこへ行く!?」
さっさと行ってしまった3人に残されたフードマンは、仕方なく隣のフランツとジャックに愚痴任せに演説ぶちます。いい加減聞き飽きたフランツとジャックは、相次いでトイレに走り、フードマンがそれを怒鳴って追い掛けて行ってしまいました・・・
一方フローク達は、泉の岩場の下を歩いていました。夜も深まり、周りに人気はありません。ただ澄みきった夜空に浮かぶ真っ白い月だけが、3人をほの白く照らします。
感慨深げに、フロークが泉を見上げます。
「もう・・・5年が経つんだな・・・」
「ああ・・・あの頃は、ここまで復活するなんてな、想像もつかなかった。」
「自然の力は・・・大きいね。」
こんこんと湧き出る泉のせせらぎを耳に流しつつ、3人は頷きます。
ふと、フロークが口にしました。この5年間、一時も忘れることのなかった名前を。
「アプリは、今頃どうしてるかな?」
瞬間、3人の間に、様々な出来事が噴き出しました。思い返せば想い出はとめどもなく溢れ、辛いことも時にあったけど、一つ一つがかけがえのない宝物です。
 繕いをしているアプリ。きれいだと思った。
 熱を出したオレの為に、危険を冒して薬草を取りに行ってくれたアプリ。その後、ずっと看病してくれたっけ。オフクロ以外で、そこまでしてくれた女の子は、アプリが初めてだったな。
初めて見たお姫様。やっぱりどこか違ったな。気品が漂っているというか・・・何か近寄りづらかったけど、一緒にいると、その辺の女の子よりおてんばなんだもんなぁ。
「わがままで人騒がせな娘だったけど・・・寂しいなぁ。」
「きっと幸せにしてるよ!だって、みんなこんなに幸せじゃないか!?」
「だといいな・・・うん、きっとそうだよ!」
 そしてフロークは、そっと懐のペンダントを握りしめました。
 あの日、彼女が彼らに残していった、ルビーのペンダント。輝きは、今も色褪せません。むしろ、強めているくらいでしょうか。
いつか、アプリに訊いたことがあったよね。
゛前から気になってたんだけど・・・そのペンダントはどうしたの?゛
゛あ、これ?ママと別れた時、私の代わりにってママがしてたのを渡してくれたの。゛
゛アプリ・・・ママって言うのはやめた方がいいよ。子供っぽいよ。お母さんの方がいいと思うけど。゛
゛子供じゃないもん!゛
゛じゃ、言い直せば?゛
 その後、寂しそうに呟いてたのを覚えてる。確かお母さんとは、フォンテーンランドを脱出した時、生き別れてたんだよね。
゛お母さん・・・どうしてるかな。もう・・・会えないのかな。゛
そしてしばらく俯いてたけど、すぐにいつもの笑顔を見せてくれた。
゛大丈夫!いつか、どこかでまた会えると信じてるから。゛
そして、そのペンダントを大切そうに握りしめてた。
 今は、それを僕がこうして握りしめている。何だか不思議だね。
゛アプリ・・・見えているかい?こんなにも幸せな人達を、今まで見たことがあるかい? これからも、ずっと続いていくんだよ。この幸せが。゛
゛でも・・・もう一度、もう一度だけでいい。アプリに会いたい。会いたいよ!゛
 ペンダントを握りしめる手に、一際ぐっと力がこもりました。
 その時でした。
゛フローク・・・゛  
慌てて、フロークは辺りを見回しました。確かに、彼女の声が聞こえたのです。空耳なんかではありません。
 我を忘れて、フロークは叫びました。
「アプリ?アプリなのかい!?」
「どうしたんだ、フローク?」「アプリなんかいないよ?」
 びっくりして訝しがる二人をさておき、フロークはペンダントを握りしめます。
゛フローク、こっちよ。来て。゛
 何かに導かれるように、フロークは駈け出しました。訝しがるタッティとオッターも、とりあえず彼についていきます。
 泉の岩場に、一際夜風が吹き巡り、せせらぎが踊りました。  

不思議そうについてくるタッティとオッターをそのままに、フロークは地下の宮殿跡へと一心に下りていきます。
 5年前は陰気な洞窟でしたが、今はすっかり観光地として照明も道も付けられ、整備されています。
「おいフローク、何だってこんな所に来るんだ?」
「アプリが、こんな所にいる訳ないでしょ?」
 後ろから声をかけたタッティとオッターの声にも耳を貸さず、一心に走っています。
仕方なく、彼についていく二人。 
 突然フロークが立ち止まりました。
不思議そうに、前を見やるタッティとオッター。
 次の瞬間。フロークもタッティもオッターも、一瞬息も言葉も失いました。我が目を疑いました。
 一番奥の広間。一人の女性が立っています。3人にとって、見慣れていないようなあまりにも見慣れた筈の一人の女性が。
ティアラを頭に付け、質素なドレスを纏って、立ち尽くす3人に微笑みかけます。
金縛りにあったように、3人はその女性を見据えたまま。
 当の彼女は、3人の驚きを楽しむように、静かに微笑んでいました。
 そうであって欲しい・・・そうであってくれ・・・!
 声をかけた途端、消えてしまったりしないでくれ・・・
 茫然と、フロークが恐る恐る訊きました。
「アプリ・・・?アプリなのか?」
 お返しに彼女は、スカートの裾を持ち上げ、3人にお辞儀をします。
「皆さん・・・御機嫌うるわしく?」
そしていたずらっぽく、舌を出して笑います。
その瞬間。
 3人は呪縛を解かれたように、彼女に駆け寄ります。
 互いに抱き合い、頬を寄せ合い、現実の奇跡をかみしめる4人たち。今の今まで、溜めに溜めていた数え切れない想い出が、出逢いの奇跡が、再会の願いが、再会の歓びが、この一瞬で堰を切り爆発して止まりません。大事な人がいなかった寂しさや切なさなど、今や跡形もなく消し飛んでいました。 
 口をついて出る歓びの声が、どれもうわずって震えています。
「夢なら、醒めないでくれ!」
「おいおい、これって夢じゃないよな!?幽霊じゃないよな!?」
「失礼ね!ちゃんと、脚もありますよーだ!」
「まだ信じられない!」
ウオッフォン!!
 突然、誰かが奥で聞き慣れた咳払いをしました。固まる4人。
「まさか・・・?」「そう・・・そのまさかなの。」
 恐る恐る振り返ると、やっぱりそこには礼装姿のエンダーがいました。そしてその傍らに・・・
 真っ白い、ミニのドレスを纏った細身の女性が、そこに立っていました。確かに見慣れた女性ですが、柔らかな視線が、かつて見慣れたものと異なるのは明らかでした。
 別人?否、紛れもなく彼女。
「・・・ダミア・・・なのか?」
「しばらくじゃないか?みんな、元気だったようだね。」
声が確かにダミアでした。手を腰にやり、勢揃いした一同を見回します。
 ここに、お馴染みの顔ぶれが揃いました。アプリコット、フローク、タッティ、オッター、エンダー、そしてダミア。
「でも・・・何で?何でアプリもダミアもここに?」
 オッターが、当たり前の疑問を口にしました。
 これには、エンダーが応えます。
「確かに泉は、復活を願う王女様の意志の力が必要じゃった。しかし今や完全に復活なった泉から、王女様は解放されたのじゃ。そしてダミア様は、過去の罪を悔やまれて、帰るべきところに戻られた。今は、立派にフォンテーンランドを統べられる女王陛下なのじゃ。」
「まぁそういうことさ。それよりアプリコット・・・伝えたいことがあるんだろ?」
 ダミアの言葉にアプリコットは頷き、フロークに向き直ります。一方ダミアはタッティとオッターに目配せをして、それに気付いた2人は、気を利かせてそっとその場から離れます。ダミアとエンダーもそれに続いて。
アプリコットとフロークだけになりました。
 こわごわと視線を上げつつ、目と目が合うと慌てて視線を逸らしてしまう、いつまでも初な二人なのでした。
やがて、フロークがやっと口を開きました。
「まだ・・・まだ信じられないよ。まさかアプリが戻ってくるなんて。」
「そう・・・これからもずっと一緒なんだよ?」
「ねぇ・・・外に出ようか。」
「うん・・・」 
 頷いたアプリコットは、歩き出したフロークにさりげなく腕をからめます。驚いたフロークがアプリコットを見ますが、すました顔で何事もないかのように歩いています。
ただ、頬を少し赤らめて。そのまま、二人は当たり前のように歩いていきます。
腕をつないだまま。アプリコットの指には、あの日のままのリングがしっかりあります。 寄り添う二人の影が、後ろに長く長く続いていました。
 
真っ白い月と満天の星星が、見つめ合う二人を見守っています。
 宮殿を振り返り、懐かしそうにアプリコットは言いました。
「そういえば私、よくお城を抜け出して、町で同じくらいの年の女の子と遊んだりしたわ。」
「元々おてんばだったんだ。」 
「かも、ね。」
 そう言って、アハハと笑います。
 そして夜空を仰ぎ見たアプリコットは、すっきりした面持ちで言いました。
「私・・・王位を捨てちゃった。」
「王位を?それって・・・」
「そう・・・もう王女でも何でもない。ただの二十歳を迎えた、一人の女の子ってこと。」
 そしてアプリコットは、不意に真剣な表情でフロークに向き直ります。思わず、ゴクリと喉を鳴らすフローク。
「フローク・・・もう私はお姫様でも何でもない、ただの女の子だけど、でもこんな私を・・・」
途中で、思わず詰まってしまうアプリコット。俯いたまま、次の言葉が怖くて言い出せません。
 そっと、フロークが彼女の手を握りました。頷くアプリコット。
「こんな私を・・・あなたは受け容れてくれますか?」
フロークをまっすぐ見つめるアプリコット。
 次の瞬間。
 言葉で到底足りないフロークは、力一杯アプリコットを抱きしめるのでした。思わず、驚きの声を上げるアプリコット。
 目を離せない妹、時に背伸びをしてみせる姉、どんな事でも打ち明けられる親友、そして秘かに想いを寄せた恋人。その全てが、彼女でした。時が経つ毎に、共に過ごす毎に、どんなに切なく想ったことか。どんなに強く願ったことか。手が届きそうで、決して届くことのない禁断の果実。
 その彼女が、今こうして彼の腕に抱かれている。この温もり、けして離すものか!
 抱きしめる彼の腕の中で、アプリコットはただ震えていました。嗚咽を時に漏らして。
 フロークの腕の中に抱かれて、アプリコットは静かに泣いていました。
 気がつけば、いつもそばにいてくれた。時に厳しく違ったこともあるけど、決して見放さず、いつも助けてくれた。でも時に、愛しい弟のように。どんな事でも打ち明けられる親友。こころの叫びに、いつも助けてくれる頼もしい兄。恋人。
今、私は彼に抱かれてる。この温もり、いつまでも包まれていたい・・・
「帰ろう、ボスコの村へ。僕の育った村へ。君に見て欲しい。僕達の育った村を。」
そして泣いている彼女の頭を、ぽんとはたきます。
「だから、そんな泣いてちゃダメだよ。みんなに笑われる。」
笑うフロークにつられて、アプリコットもまた笑顔を見せて頷きました。
 と、その時です。
パパーーン!!
 いきなり後ろで、何かが破裂しました。飛び上がって振り返る二人。
「いやいやいや・・・おめでとう、ご両人!」
「ちぇっ・・・最後には結局、フロークがいいとこもっていっちまうんだよなぁ・・・」「妬くんじゃないよ、タッティ。あんたもいい娘見つけりゃいいんだ。」 
「フローク・・・アプリコット様の騎士としては少々物足りんが、まぁよかろう。認めてやるわい。」
いつの間にやら、クラッカーを手に手にしたタッティ、オッター、ダミア、エンダー達が、口々に歓声を上げていました。
 覗かれていたと知った二人は、真っ赤になってそのまま俯いてしまいます。
 それを見たタッティは、日頃の恨みとばかり、意地悪そうに笑って叫びました。
「よーし!別に何も用意してないけど、今から幸多き二人のためにパーティだ!」
「何のパーティだい?」
「そうだなぁ・・・今日は泉の復活祭だし、アプリの誕生日ってことにしよう!」
 そして二人は、肩を組んで歌い出します。途中から、フロークも。

 そこで、突然ダミアが3人を張り倒します、
「大の男が歌っちゃ気持ち悪いんだよ!見てな、私がキメてやるから。」
言い放って、やおらダミアはダンスを始めます。


途中から剣舞を始めたエンダーと、ピシッと最後のステップをキメ、拍手喝采となりました。
アプリコットは満面の笑顔で、それぞれの祝いの言葉に応えます。
「みんな、今日は私のために、本当にありがとう。私も、歌で応えようと思います。」

 
 そして、再び拍手、口笛喝采です。  
 勢いに乗ったフロークは、とびきりの笑顔で宣言しました。
「よーし!今から、ボスコの村へ行こうか!僕らのボスコ号で。」
「エーッ!今から?」「冗談だろ?こんな夜遅くに?」「フローク・・・明日の朝でもいいじゃない?」
「関係ないって!一刻も早く行きたいんだ。眠くなったら、途中で下りて休めばいいよ。 さぁ出発!」
 俄然張り切るフロークに、あとの3人は肩を竦めるばかりです。
「やれやれ・・・その代わりフローク、君が操縦してくれよ。」
「僕達は、眠いのでさっさと寝まーす!」
 張り切るフロークと、ぶつぶつぼやくタッティ、早くも寝ぼけ眼のオッターが、宮殿を後にしていきます。
 しばし残ったアプリコットは、見守るダミアとエンダーに向き直りました。そっと手を差し出します。
 その手をエンダーが、少し戸惑ってダミアも手を重ねて握り合います。
 エンダーが、名残惜しそうに語りかけました。
「王女様・・・エンダーにとっては、いつまでもアプリコット様は王女様です。いつでも、お好きな時に来て下され。楽しみにお待ち申し上げておりますぞ。」
「エンダー、今までさんざん迷惑をかけちゃったね。ごめんね。」
「ワハハ、何をおっしゃる。このしがない老人にとっては、またとない刺激でしたわい。」
「エンダーの言う通りだ。アプリコット・・・ここは、お前の生まれ育った所。フロークに嫌気が差したら、いつでも好きな時に戻ってくるんだ。」
「お姉さまも、いい女王になってね・・・いる場所は違っても、ずっと応援してる。」
「任しときな!このダミア様にかかったら、向かう所敵なしだよ!」
「でもその前に、お姉さんもいい男性見つけなきゃ、ね。」
「・・・余計なお世話だっつーの!」「いたーい!!」
 いたずらっぽく笑うアプリコットに、すかさずダミアの張り手が飛びます。大げさに痛がって、心一杯笑い声をあげるアプリコットにダミアの本当のこころは見えていたでしょうか。
妹っていうのも、いいもんじゃないか。
 それを知ってか知らずか、エンダーもニコニコ笑っています。
「じゃ、エンダーもお姉さまも元気でね!また帰ってきます!」
 満面の笑顔で手を振り、アプリコットはボスコ号のクルー達の元へ一心に駆けていきました。長ったらしいドレスの裾を持ち上げて、生脚も露に。
 それを見ていたエンダーが、嘆かわしそうに言います。
「王女様にお付きしてやり残しも多かったが、行儀作法だけはもっとお教えするべきでしたわい。」
「いいじゃないか、あれがあの娘なんだから。」
 愉快そうに、腕を組んでその後姿を眺めているダミア。
゛ふん・・・元気なもんだね。別れを惜しんだのがばからしいよ。゛
 ニヤリとするダミア。
 そしてアプリコットの姿が見えなくなるまで見届け、不意に声を張り上げます。
「さぁ・・・こんな所でぐずぐずしてられないよ!泉が復活したからって、やるべきことは山ほどあるんだ。エンダー、手伝ってくれるね!」
「御意にございます、女王陛下!」
 畏まるエンダーに、何故かダミアは幾分不満顔です。 
「エンダー・・・お前がそんな素直だと、どうも調子が狂っちまう。」
「何をおっしゃる!この不肖エンダー、女王陛下の為に老骨にむち打ってお尽くし申し上げますぞ!」
「それが気味悪いっていうんだ。あーあ、明日は大雨だね。月に雲もかかってきた。」
「雲一つございませんぞ?」
「あー、分かった分かった!黙って従いてきなさいって!」
 ぼやきながら立ち去るダミア達を、こんこんと岩場から流れ続ける泉のせせらぎが、いつまでも見送り続けていました。
 澄みきった夜空に、真っ白く輝く月。瞬く、満天の星空。今、流れ星が流れました。
 今宵、彼らはどんな夢を見るのでしょうか。

向かう道は違っても・・・to be continued・・・・・

    



    
    





 ある晴れた日曜の朝、小さな村の教会で、祝福の鐘が鳴り渡りました。
 歓声が湧き、白いブーケが青空を舞います。
 それを受け取ったのは・・・































 





      the Day after ,tomorrow・・・・・

  ようやく書き終えました。一部出ていないキャラクターがあり、賛否両論かと思いますが、今回は人間関係を優先して書きたかったので、ご容赦を・・・。
  さて、僕がこの「ボスコアドベンチャー」という作品に出会ったのは、今から実に16年前、小学校6年生の秋でした。ちょうど、チェルノブイリ原発事故があった頃でしたね。遥かウクライナから流れてきた死の灰が雨と一緒に落ちてきて、頭が禿げてしまう、とか言われていたのを覚えておられますか?
  そうそう、ボスコのことでしたね。その出会いは突然でした。妹が何気なく、チャンネルを変えていた時、ある少女キャラクターを目にしました。それが、アプリコットとの出逢いでした。そしていつしか当時の僕は、この作品の素朴な、どこか懐かしい世界の虜となっていました。妹の手前、少し照れながら、そっと見ていたのを今も覚えています。最終回の時もよーく覚えていますよ。夕方と夜、2度に分かれていましたね。そして最終回の最後の瞬間、僕の心の中はぽっかりと、大きな穴が開いたままでした。
 それからが大変!何とか彼らにまた会いたいと、グッズを捜し回ったものです。雑誌の切り抜きを集めたり、テレカにパズル、絵本を照れながら買ってきたり・・・ 
全作を運良くVTRで見たこともありました。残念ながら、もう手元にはありませんが、一つ一つが甘酸っぱい、今となってはかけがえのない想い出たちです。
「晴れた日にも愛をください」・・・どこかぎこちなくて初々しい、甘酸っぱい初恋の味ですね。好きですよ、この歌。見る見る目の前の視界が開けていくような、「ときめきは forever」、こちらも好きですけど、ね。
ボスコを想い返す度、いつも疑問に思うのです。何故、ここまで僕はこの作品の事が忘れられないのか・・・と。最近、ちょっと分かりました。これが、僕にとっての初めての「初恋」だったのかな・・・と。甘酸っぱい初恋の味は、いつまでも忘れられないものですよね。それが、手の届かないものなら手の届かないものである程に。
 高校生の頃まで、僕は相当なアニメオタクでした。でも大学に入学した頃から、アニメの世界に閉じこもっていてはいけないと痛感するようになり、アニメを断って以後、今に至っています。その過程で、ボスコのことも記憶から抹殺しようと躍起になったこともありました。でも今は、そうならずによかったと心から思います。
 っていうか、忘れようがないって!ここまで16年間、僕の記憶に焼き付いた甘酸っぱい想い出を、今更消せる筈がありません。そして二十代後半も過ぎ、今になってボスコの記憶は、遥か時の彼方の多感な思春期の原風景として、いつまでも色褪せることはありません。
 そして多分この先も、年老い、今際の枕の際でもなお新鮮に、ついほんの昨日のように、「ボスコ」の想い出はこころに流れ続けることでしょう。幼い頃に聞いた童謡のように。  残念ながら、僕は「ボスコファン」ではありません。本当に、今も「ボスコ」を想い続けている方に失礼ですからね。あくまでも「ゲスト」に過ぎません。その招かれざる「ゲスト」が書いた拙い文章ですが、お楽しみ頂けたら幸いです。あの最終回、ZZ-JAPANさんのHPの書き込みにあった通り、僕も別の形で完結を作りたいと思いました。あと投稿作品で、たいく2・きりこさんのイラストです。そこで今回の作品となった訳ですが、ご納得頂けたでしょうか。僕なりに、彼らに幸せになって欲しいと思って贈る物語です。結構、僕は満足なんだな。描いている時も、彼らの動き、表情、声、空気の一つ一つが、生でひしひしと感じるんです。まるで彼らがすぐそこにいるみたいにね。その一欠片しか描ききれないのが残念ですが、そこは皆さんの愛情とこころで補って下さい。細かいところはあまり突っ込まないでね。でも「こんなの違うーーー!!」と力一杯叫ばれたあなた、どうかもっと幸せな物語を彼らに創ってあげて下さい。
さて、作品中に、幾つか歌詞が出てきましたよね。実は岡本真夜さんの歌です。作者の独断と偏見により、僕が愛してやまない彼女の歌を、この場を借りて宣伝させて下さい。
彼女の歌は何より温かく、強い。優しいだけじゃなく、芯が強いんです。遥か高知県から歌手を夢見て東京に出てきた決意。夢が少しずつ実現していく希望。青い空と海で育った初々しい恋。街で芽生えた大人の恋。なかなか夢が自分の納得できるものにならない焦り。恋人と夢の両立にこころを痛めた末の身を斬るような決心。自分の作りたい歌が見えなくなった戸惑い。それを乗り越えた末に見つけた目標。それは手が届きそうで届かない、夢を追う限り決して届くことのない目標。だからこそ追い続ける。そんな彼女のこころの結晶です。だからこんなに温かく、優しく、強いんです。
 時に僕は、人を疑い、裏切ることが強いんだと思う時もありました。でもそうじゃない。人を愛し、信じ抜くこころより強いものはないんだね。時に疑い、折れそうになっても、それでも愛する人を最後まで信じ抜く。そのこころより強いものはないんだよ。
彼女の歌が教えてくれました。
 学習研究社から菊田まりこさんが出版されている、「ハピハピ バースデイ」という本をご存知ですか?真夜さんのCD付の絵本なんですが、とにかく目を通してみてください。
すべてが温かくて、すべてがやさしくて、泣けてしまいました。
 あと、真夜さんの恋のエッセーに、
   ソニーマガジンズ 「For Smile」
   メディアファクトリー 「恋する金魚」 素朴で不器用で、強くて可愛らしい 
                      岡本真夜を感じてください。
   講談社 「ロマンスへようこそ!」 特にオススメです。恋をしている人にもそうでない人にも、静かで強い励ましになるでしょう。
徳間書店 「恋、がんばって」 俵 万智さんとの恋の語り合いです。
 もし大きな書店で機会があったら、ぜひ目を通してみて下さい。きっと、心が洗われて温かい気持ちになれると思います。新しい気持ちで、明日へと望めることと思います。 

とまぁ、そんなところです。長くなっちゃいましたね。そろそろお開きにしましょう。
では最後に、この作品を作るのになくてはならなかったZZ-JAPANさんのHPと、そこに関わった全ての方々、もちろん他のボスコサイトの皆さん、何よりボスコワールドに心一杯のありがとうを贈って、筆を置きたく思います。つまらない文章でしたが、ここまで読んでくれてありがとう。この世界を知る全ての人に、もっともっと幸せが増えますように!


  
   想い出は、いつまでも色褪せない!何時いつまでも、僕らの胸に生き続ける。

 ありふれた言葉を、今、あなたに伝えます。今、こころから思います。
やっぱり僕は、「ボスコ」が好きです。

 2002年、桜が咲く頃に。