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「いつの間にか、1998年ね。去年の後半はとにかく金融機関の破綻が相次いで大変だったわね。それに、TVアニメで子供たちに異変が生じるという信じられない事件も起こるし。」
「そうだな。都市銀行、大手証券会社と続いたからな。僕なんか、預けるだけのお金がないから、どうってことはないんだけど、それでも何となく世の中不安になるよね。」
「保険会社も倒れたし、保険は結構入っているから気になるわ。」
「アジア全体が金融不安なんだよね。他の国は債務がかさんでいるのに対して、日本は債権国だからね。アジアが倒れると、日本も共倒れってことかな。経済にはとにかく疎いから間違っているかも知れないけれど、日本の債権の元と言えば、僕たち国民の預金も入っているのじゃあないかな。つまり、アジアがぽしゃると、日本の金融機関がぽしゃる。そして、僕たち国民の預金もぽしゃるってことになるのでは?財政の方は借金漬けだから、ついには国もぽしゃる。」
「何か、いつもの脅かしめいたものにきこえるけど。」
「よくわからないんだよ。僕だって。お金にはとんと縁のない人間だもの。」
「まあいいわ。ところでTVアニメの件はどう思うの。」
「いろいろ意見は出尽くしたところかな。技術の発達はとどまるところを知らない。それに対して、人間に与える影響というものはあまりよく知られていない。これは、科学技術の発展段階では常に見られたところだと思うよ。公害もそうだった。だから、科学技術の発展を常に人間あるいは自然の立場で考える人がどうしても必要になっていく。別に新しいことじゃなくて、今までだって常に言われていたことだと思うけど。」
「でも、ついつい忘れちゃう。」
「忘れているわけじゃないけど、これだけ科学が発達して複雑になってしまうと思いがけないことが起こるものだよ。問題は、危機管理と同じで、起こった時にどう対処するかだよね。絶対に起こらないと言うことはないんだから。もちろん、起こらないようにできるだけ努力することも当然必要だけどね。」
「そうね、基本的には同じことなのね。」
「そう思う。」

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 とにかくいろいろなことが起こった。経済のことに関して、直接の影響はそれほどないが、間接的には知らぬところで影響を受けているだろう。最もグローバルな世界が経済だと思ってきた。ところが、このところの事件は、いかに日本の経済が特殊なものであるかを露呈したようにも思える。一国だけで自給自足できる体制ではないのだから、何とかこのハードルを越えていってもらいたいものだ。心がけとしては、何が起こっても動じないように、心理的に余裕を持って冷静に見ていくことしかないだろう。そして行動は迅速に。言うは易し行うは難しかな。まあ、心がけだから。実際どうなるかは、神のみぞ知る。
 一月に入って、急に寒くなった。東京関東地方は、大雪に二度も見舞われている。長野は嬉しい雪だっただろうが、東京などは大変だっただろう。とにかく、何事にもめげずに生きていくこととしよう。

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「いつの間にか1998年も終わね。雑記のコーナー、今年はほとんど何も書かなかったわね。何もなかったと言うわけではないのに。」
「なんだか知らないけど、本当にそうだ。一年を振り返ってみるといろいろあったなあ。前半は、いろいろ他のことで忙しかったような。」
「ニューヨーク・ボストンコンサートツアーのことね。」
「個人的には今年の一番のニュースなんだろうけど、他の人にとってはね、どうってことはない。帰って驚いたのは、家の庭中草ぼうぼうだったことかな。向こうではいい天気でよかったんだけど、こちらはその間じゅうお日様が顔を見せた日はほとんどなかったというよ。」
「そうなの。その頃は雨ばかりで、今年も冷夏かしらと心配する向きもあったわ。」
「こちらは、夏は結構暑さがあったけど、北日本は梅雨が結局明けなかったんだよね。でも、何と言ってもお天気では、那須町と高知の集中豪雨かな。」
「あれはすごかったわね。那須町のときは、こちらでは雨が降らない日が続いて水不足の心配まであったというのに。」
「そうなんだ。でも、その後は、こちらでも雨雨雨。高知の水害はすごかった。お年寄りの中には、自宅の庭とか家の中で溺れ死んだ人までいるくらいだから。」
「こんなことってあるのかしらって感じだったものね。」
「今年の異常気象は、エルニーニョ現象が急速に解消して、続いてラニーニャ現象が急速に起こったらしい。極端から極端に急激に変化するんだよね。この影響は日本だけの話では決してない。世界中で起こっていることなんだ。中米での猛烈なハリケーンもそうらしい。」
「ところで、ラニーニャって何?」
「ラニーニャかい。エルニーニョ現象は知っているよね。」
「それはね。ペルー沖の海水温が通常より高くなる現象でしょう。クリスマスの時期に起こるので、神の子と言う意味のエルニーニョって言うんでしょう。」
「その通り。で、ラニーニャと言うのはね。その逆の現象で、ペルー沖の海水温が通常より低くなる現象なんだ。同じように、異常気象の原因だと考えられている。」
「ふーん。そうなの。でも、どうしてこんな異常が起こるのでしょうね。この異常気象はいつまで続くのかしら。」
「それを世界中の学者たちが研究しているんだよ。原因が分かり解決策が見つかればいいんだけどね。地球環境の問題はいろんなことが複雑に絡み合っているからね。そう簡単にはいかないだろう。地球温暖化の問題も絡んでいるだろうし、他にも予期しないところに原因があるかも知れない。異常気象は当分続くだろうね。」
「困ったもんね。人類の存亡にも関わっている。」
「そうなんだ。だから重大な問題だ。」
「話は変わるけど、今年の重大事件に、和歌山の毒入りカレー事件があるわね。」
「そうそう。それを忘れるところだった。それを発端に全国で同様の事件が続発した。」
「最近では、青酸化合物をインターネットのホームページから購入して自殺するなんて事件まで起こってるし。」
「カレー事件も驚いたけど、これにも驚いた。そんな簡単に青酸化合物が手に入るんだろうかって。これは考えてみれば、実に怖い話なんだ。」
「そうね。一体どうなっているんでしょう。日本は。」
「分からないけど、日本も変わりつつあるのかも知れない。」
「いい方に変わってくれればいいのだけど、経済にしても、何か悪い方悪い方へ行っている見たいな気がしないでもないわね。」
「とにかく、1998年も終わりだ。来年に期待しよう。」
「そうね、そうしましょう。」

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 気がついたら、1998年も終わりになってしまった。今年の印象は、とにかく異常気象が一番印象に残っている。私のところは、那須町や高知市のような被害はでなかったものの、いつ同じような災害に見舞われるか分からないと言うことを常に念頭においておくことが必要だろう。今年台風の発生は観測史上最少だったと言うが、来年、再来年には巨大な台風に襲われるかも知れない。自然は、やさしく人間を包んでくれるだけではない。そのことをとにかく知っておく必要があるだろう。ある人の意見では、日本では、自然というと花鳥風月、つまり愛でいとおしむ自然のことで、災害をもたらすような自然は自然ではなく、鬼神だと言ってきたそうだが、日本人もそのことを知らないわけではなかった。古人の知恵と現代の科学とをうまく融合して、これからの災害に備えなくてはならないだろう。
 それから、頻発続発する毒物事件。現代人は、どこかに異常な心理を抱えているのかも知れない。そうでなければ、これだけ続いてこんな事件が起こるわけはないだろう。病める現代社会と現代人。そんなことを象徴しているような気がしてならない。来年は、よい年でありますように。

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