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 「MUSICA MUNDANA No.26」をお届けします。

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           MUSICA MUNDANA NO.26
             Mar.30.2003
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             ◆ 目次 ◆

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 ◎ 音楽史
    ギリシア--アリストクセノス(その2)
 ◎ 数学史
    ギリシア--ソクラテス
 ◎ Homepage Updated (Mar.30.2003)
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 ◎ 随想
 ◎ あとがき
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━━[音楽史]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ◆ギリシア--アリストクセノス(その2)◆  

 アリストクセノスの音楽理論は、数学的な比率というより、人間の耳に
 よる判断を重視して組み立てられているというお話は、前回しました。

 実は、彼の理論は、ゲルマン人の侵入(AD400年代)の後、西ヨーロッパで
 は忘れ去られ、その後、ルネサンスの時代に再発見されることになりま
 す。アリストクセノスは、BC300年代中頃に生きていた人ですが、現存す
 る最も古い写本は、1150年頃、コンスタンチノープルで書かれたもので
 すので、ギリシア語を話す地域ではずっと知られていたようには思えま
 す。

 彼が、1450年頃、イタリア人によって再発見されたとき、12音の等し
 い音律(今日日常的に使用されている普通の音階=平均律)の考えは、
 多くの議論の対象であり、その調音を擁護する多くの理論家たちは、ア
 リストクセノスの小さな音程の近似をそれを正当化するものとして解釈
 しました。彼らの解釈は間違っていましたが、その考えは500年以上
 ずっと主張され続けています。

 彼の著作は、三書からなるハルモニカ・ストイケイア(ハルモニア原論)
 (普通は、ラテン語の名 Elementa harmonicaで知られている。)が最も
 よく知られています。また、アリストクセノスの理論の要旨は、AD100年
 頃のクレオニデスのエイサゴゲに書かれています。(以前、ユークリッ
 ドの著作と考えられていたものですね。一方、クレオニデスの解釈は、
 アリストクセノスの実際の理論として、広く誤解されていると主張する
 人もいます)

 内容にはちと踏み込めないのですが、参考となる書物を紹介しておきま
 す。

 アリストクセノスの標準的な英訳は、
  Aristoxenus. The Harmonics of Aristoxenus. Ed. with trans.,
  notes, introduction, and index of words by Henry S. Macran.
  Oxford: Clarendon Press, 1902.

 で、最新の訳は、
  Barker, A., Translator (1989). Greek Musical Writings.
  Two Volumes. Cambridge University Press, Cambridge, 
  Massachusetts.

 ということです。日本では、

  アリストクセノス「ハルモニア原論」の研究 山本建郎
                   東海大学出版会 2001

 が出ていますね。

━━[数学史]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ◆ギリシア--ソクラテス◆

 さて、数学史でソクラテスを取り上げるというのは、不思議な感じがし
 ないでもないのですが、D.E.Smith の「History of Mathematics」では
 それが取り上げられています。この数学史に私が惹かれる所以でもあり
 ますが。

 ソクラテスの前に、エレア派のことに触れないわけにはいかないでしょ
 う。パルメニデスは、「論理」の重要性を強調してその後の哲学にとり
 わけ大きな影響を及ぼしました。 

 パルメニデスの弟子であるゼノンは、「弁証法(dialektike)の父」と言
 われ背理法(間接証明)の完成者としての側面を持っています。この背
 理法は、定理と公理との区別に用いられることになり、直接証明できな
 いものを背理法で試みて、それでも証明できないものを公理とし、こう
 して幾何学の体系が構築されることになります。

 また、「アキレスと亀」や「飛ぶ矢」などのパラドクスは有名ですね。
 運動している物体は、同時に動きの中にいなければならない。なぜなら、
 止まっていると空間を占めるから。時間の中の空間は、関係が異なれば、
 長くも短くもなると主張します。その運動と空間の論理は、現代の相対
 性理論のある特徴を思い起こさせると言います。

 さて、いよいよソクラテスですが、彼のことは、私たちは、普通、アテ
 ネの政治家で哲学者であると考え、数学者であると考えることはあまり
 ないでしょう。ただ、帰納法についての考え方や、正確な定義を求める
 主張から、論理幾何学の初期の発展において関連があるということはで
 きます。例えば、プラトンやユークリッドその他の人々がソクラテスに
 大きな影響を受けたという証言を私たちは持っています。

 一方、クセノフォンとディオゲネス・ラエルティウスの証言は、私たち
 にこう語っています。「ソクラテスは、幾何学と天文学が有益なのは、
 単に畑を測量したり一日の時刻を決めるためだけだと感じていた。」と。

 これは、本当にソクラテスによって取られた見解だとしても、その後、
 どの世代においても、遙かに精神性のない人々によって提出され、空し
 い結果をもたらした見解であると、D.E.Smith は、述べています。

 幾何学にしろ天文学にしろ、ひっくるめて数学という学問は、単に実用
 のためだけにあるというのではないということですね。数学と言う学問
 の持つ精神性とか芸術性といった側面にも私は注目してみたいと思って
 います。長い目で見れば、それが人類の進歩に大きく寄与したというこ
 とでしょう。

━━[随想]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 花見の季節になってきましたが、一方で英米のイラク攻撃(イラク戦争)
 は、長期化の様相を呈してきました。アメリカは12万人の地上軍を新
 たにイラク領内に増派することを決めたようですね。

 今回の戦争とは直接の関係はありませんが、ロシア祖国戦争(ナポレオ
 ンのロシア侵攻)のことを少し書いておきましょう。

 当時のロシアは過酷な専制農奴制がしかれていましたが、ナポレオンの
 侵攻は、広範な民衆に祖国への熱烈な愛国心を呼び覚ましました。以下
 С.М.フロリンスキー「ロシア文学史」に書かれていることです。

 「19世紀初め、ロシアの生活では、私たち祖国の極めて長い歴史にと
 って、最大の意味を持つ記念すべき出来事が起こった。1812年、祖国戦
 争が始まった。ナポレオンが侵略者としてロシアに侵入した。ナポレオ
 ンとの戦争は、ロシアにとって生活のための戦いという側面が十分にあ
 った。それは民衆の戦争であった。祖国への熱烈な愛の感情が広範な民
 衆を捕らえた。

 どの村も、私たちが近づくと火の手が上がったりあるいは要塞に変わっ
 た。--後になってフランス人兵士たちは書いている。

 ナポレオンは疲労困憊した。彼は、自らの軍隊と皇帝(ツァーリ)アレ
 クサンドルの軍隊の数量を計算して戦争の計画を立てた。しかし、彼と
 の戦争にはすべてのロシア民衆が立ち上がった。すなわち、ロシアの民
 衆が、称賛を浴びていた軍の指揮官に強力な一撃を与えたのだ。

 祖国戦争は、民衆の力を目覚めさせ、民衆の自覚と愛国的精神との高ま
 りを呼び起こした。」

 ロシア祖国戦争は、結局は冬将軍の到来が勝敗を決しましたが、イラク
 戦争の場合も、砂嵐という気象条件が英米軍を悩ませそうですね。また、
 イラクの国民を解放するという英米連合軍の大義名分が、イラクの国民
 に受け入れられるかどうか、逆にイラクの民衆の祖国への愛国心をかき
 立てるようなことになれば、戦いはさらに困難を増すのではないでしょ
 うか。

 私としては、戦争ははやく終結して欲しいと願うばかりですが。

━━[催し物情報]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 第9回 花まつりコンサート
  --フォルテ・ピアノによる-- 楽興の春宵
   フォルテピアノ 武久源造  ソプラノ 松堂久美恵
   ヴァイオリン  大西律子
             共催 百観音明治寺・幼い難民を考える会
      http://www.evam.ne.jp/meijidera/index.html

 徳島県立博物館のその他の催し物情報は、以下のサイトをご覧ください。
      http://www.museum.comet.go.jp/

━━[Homepage Updated]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ホームページ update情報

 落書き帖第142号
 音楽史/Oxford/第2部/14世紀のアルス・ノヴァ/
             トレチェント(14世紀)マドリガーレ
             フランチェスコ・ランディーニ
 音楽史/Pelican/第一巻/単旋律聖歌/
         セーラム、ガリア、モザラベ、アンブロシウスの典礼
ビザンティン、ロシアの典礼/典礼劇
 数学史/Smith/第六章/1300年から1400年までのキリスト教ヨーロッパ/
  14世紀の全般的活動・イタリアの著述家たち・コンスタンチノープル
  イギリスの著述家たち・フランスの著述家たち・他の著述家たち
 語学/ロシア文学/ロシア解放運動の初期の時代の文学/19世紀初期/
   ロシア解放運動の3段階・19世紀第一四半期の政治的社会的状況
   教育と文化・19世紀第一四半期の文学における階級闘争
   文学傾向の論争  

 MySouda--惣田正明のホームページ
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 重くて仕方のない方は、[SIMPLE版]をご覧ください。

━━[あとがき]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 イラク戦争について、新聞などでは、英米の誤算というかたちでいろい
 ろと報道されています。気象条件として砂嵐、英米軍はイラク南部にお
 いてもそれほど歓迎されていない、など。ロシア祖国戦争のことをふと
 思い出したので「随想」のところで書いてみました。

 一昨日(27日)、徳島気象台ではソメイヨシノの開花宣言がありまし
 た。開花の早かった昨年に比べますと8日ほど遅いそうですが、平年よ
 りは2日早いそうです。一週間もすれば満開になるとのことです。

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     ■発行人:文責:相原寛彰   ■発行:MySouda
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