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 「MUSICA MUNDANA No.23」をお届けします。

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           MUSICA MUNDANA NO.23
             Dec.30.2002
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             ◆ 目次 ◆

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 ◎ 音楽史
    ギリシア--プラトン
 ◎ 数学史
    ギリシア--ピュタゴラス
 ◎ Homepage Updated (Dec.30.2002)
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 ◎ 随想
 ◎ あとがき
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━━[音楽史]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ◆ギリシア--プラトン◆

 前回の話からも分かるとおり、プラトンの時代は、古典様式の音楽が衰
 退をしていた時代でありました。プラトンは、その古典時代を理想とし
 て音楽を語っています。

 ギリシアの教育学派には二つの大きな流れがあり、ともに人間に自由な
 教育を授けようと企図されたものです。一つは体育、すなわち身体の文
 化、もう一つは音楽、すなわち精神の文化です。音楽は、すでに述べま
 したが、歌、詩、楽器の演奏、踊り、そして雄弁術をも含むものですが、
 明らかに衰退していました。

 プラトンは、ハルモニア(ギリシアの旋法)の内的な性質、倫理的な意
 義を考察しながら、真の意味でその価値が評価されていた時代を振り返
 ります。プラトンは、古典音楽は自然を真に模倣したものと信じていま
 した。すなわち、フェノメナ(phenomena)自然の現象ではなく、ヌメナ
 (noumena)自然の原理を模倣したものであると信じていたのです。だから
 こそ、その旋法に応じて避けられないエトスを生ずるものと信じていた
 のです。

 音楽と言葉は、互いに補完しあう関係にあります。言葉は理性的であり、
 音楽は情感的です。言葉を通して、異なるハルモニアは、それ自体が持
 つ情感、言外の意味を持つのであってそれを混同してはいけない。そう
 した混同が、群衆や子供たちにとって「とても快く」盛んに広まってい
 るのですが、それが、現代のムシケーの愚行と堕落の兆候であるという
 のです。

 どんな場合も、その基準は単に快楽を与えることだけではない、と言い
 ます。プラトンにとっては、理想の国家においては、二つのハルモニア
 だけが必要です。音楽は、三つの要素、言葉、ハルモニア、それにリズ
 ム(あるいは韻律)からなっていますが、これらは一致しなければなり
 ません。唯一英雄的なドーリア旋法と説得的なフリギア旋法だけが残さ
 れるのです。

 楽器については、リラとキタラで満足すべきだと言います。弦の多いペ
 クティスやトゥリゴノンのような楽器は、多くのハルモニアが可能なた
 めに勧められません。アウロスに対しては、プラトンは軽蔑しか持って
 いなかったようです。

 音楽の教育的効果については、「最も初期の段階の子供たちに、演劇に
 おいて、その音楽を通して、法の精神と秩序とをしみ込ませなければな
 らない。」と説きます。すなわち「プロタゴラス(326b)」の中で書いて
 いるように、ハルモニアとリトュモスとを熟知することによって子供た
 ちはエウハルモスティア(よい性質)とエウリトュミア(優美優雅さ)
 を学ぶのです。

 しかし、これは常に体育とペアでなされなければなりません。これは多
 くの人々が想像するように、ムシケーが魂によく体育が身体によいから
 というわけではなく、教育のこれらの様相は相互に補完的であり調整的
 であるからです。一方なしの片方だけの教育は、女々しさへとあるいは
 粗雑で手に負えない状況へと導くからです。

 「体育と音楽とを最もよく調和させ、それらを魂に最もふさわしく運用
 する人は、最も完全で調和のとれた音楽家と、私たちが呼ぶにふさわし
 い人である。」

 プラトンにとって、そうした人こそが、国家の保護者として必要とされ
 る人であったのです。

━━[数学史]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ◆ギリシア--ピュタゴラス◆

 さて、古代数学史の中で、極めて興味のある人物はピュタゴラスでしょ
 う。しかし、ピュタゴラスについては、様々な伝承が伝えられているわ
 りには、その実像はほとんど知られていません。歴史上のピュタゴラス
 については、宗教団の創始者であること以外、明確なことはわかってい
 ません。

 伝承されたピュタゴラスは、ピュタゴラス派の人々が長い年月の間に作
 りあげてきたものと考えられ、ピュタゴラスの教え、哲学、数学という
 ものは、ピュタゴラス派の人々の教えであり、哲学であり数学であると
 いうことができるでしょう。

 ピュタゴラスは、ユークリッド(エウクレイデス)やヘロン同様、生ま
 れた場所、年代は知られていません。BC580年から BC568年の間に生まれ
 たのではないかと言われています。サモスの人と言われていますが、確
 証はありません。

 ピュタゴラスの生きた時代は、インドでは、ブッダが教えを説き始めた
 時代、中国では、孔子や老子が哲学的宗派を創設しようとした時代とほ
 ぼ一致します。ピュタゴラスは、こうした世界の偉大な精神運動の機の
 熟した時代に生きていました。

 ピュタゴラスの生涯について、私たちが知っていることは限られていま
 す。初期の著述家たちは、競い合ってピュタゴラスの旅や奇跡的力、教
 えに関する作り話を作ったからです。

 AD150年頃のローマの著述家、アプレイオスは、ピュタゴラスは、ペルシ
 アのカンビセス大王に捕らえられ、マギたちから学び、ソロアスターの
 足下に座したと主張しています。(年代的にあり得ない話ですが)ピュ
 タゴラスより1世紀後の著述家、イソクラテスと3世紀頃のカッリマコ
 スは、ピュタゴラスはエジプトで数年過ごしたと主張しています。スト
 ラボンは、ピュタゴラスはバビロンで学んだと言っています。

 しかし、どれ一つとっても明確な証拠はありません。

━━[随想]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 前回でタレスは終わりましたが、少し補足しておきます。

 ミレトスのタレスは、すでに古代において賢者と自然探究者の理想とさ
 れ、イオニア学派の創始者と見なされていましたが、彼の思想は、アリ
 ストテレスにとっても、もはや確実に再構成できないものになっていま
 した。現代、タレスの教説の多くは、アリストテレスに基づくものです。

 タレスは、すべてのものができている元素が何であるか初めて問うた人
 でした。アリストテレスによると、そのような原理を「水であると言っ
 ている。それ故に大地は水の中にあると唱えた。」(形而上学 I,3)の
 です。

 彼が哲学の創始者と言われる理由は、物事の説明のために理性的根拠を
 提示しようとするところにあります。例えば、地震は大地の下の水が揺
 れることによって起こると説明します。

 また、タレスにとっては水が根源的物質なのですが、その根本原理は死
 んだ物質ではなく、物質でも生命でもあり、質料でも魂でもあるものな
 のです。物質がその中に生命あるいは魂を持つとすれば、自ら変化する
 力をそれ自体の中に持っているでしょう。そうしたものの例として、タ
 レスは磁石を挙げています。

 タレスのものとされる「すべてのものは神々に満ちている」(霊魂論 I,5)
 は、万物が生命(魂)に満ちているという観念に基づくものだと考えら
 れます。

 タレスの哲学的意義は、彼が自然全体の中に統一性を問い求め、一つの
 原理から存在するもの全体を理解しようとしたことにあると言えるでし
 ょう。

 クラウス・リーゼンフーバー「西洋古代・中世哲学史」(平凡社)参照

━━[催し物情報]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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 ◇特別陳列「楠コレクションの歴史・美術資料」
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 博物館では,昨年,楠弘美氏から歴史・美術・民俗などの分野にまたが
 る約3,000点の資料の寄贈を受けました。この度,このコレクションの中
 から,整理のすんだ資料の一部を,広く県民の皆さまに公開します。展
 示資料の中には,藩絵師の渡辺広輝が描いた「光格上皇修学院御幸儀仗
 図巻」,同人筆「祖谷山絵巻」,守住貫魚筆「全国名勝絵巻」の3件の
 県指定文化財がふくまれています。

 ○日  時  1月21日(火)〜3月2日(日)
        休館日:月曜日
 ○場  所  博物館企画展示室

 徳島県立博物館のその他の催し物情報は、以下のサイトをご覧ください。
      http://www.museum.comet.go.jp/

━━[Homepage Updated]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ホームページ update情報

 落書き帖第139号
 音楽史/Oxford/第2部/
         14世紀のアルス・ノヴァ/政治的儀式のモテトゥス
 音楽史/Pelican/第一巻/単旋律聖歌/
            ローマの典礼:グレゴリオ聖歌の旋律
 数学史/Smith/第六章/西洋の東洋文明/
     スペイン・11世紀のユダヤの学者・ラビ、ベン・エズラ
     12世紀のスペイン・12世紀のユダヤの著述家
     13世紀のユダヤの著述家・12世紀のアラビアの著述家
     13世紀以降のアラビア著述家
 語学/ロシア文学/ラジーシチェフ/ラジーシチェフの生涯と功績
 語学/ロシア語/初級コース/lesson29

 MySouda--惣田正明のホームページ
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 重くて仕方のない方は、[SIMPLE版]をご覧ください。

━━[あとがき]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 2002年もいよいよ終わりですね。

 一年を振り返って、いろいろな感慨に浸る人もいるかも知れませんが、
 どうも、私にとっては、あまり変化のなかった年のような気もします。

 来年こそは、よい年になりますように。よいお年を。

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   ■発行人:文責:相原寛彰   ■発行:相原基礎学習所
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